貸付金 100

1
2012/4/20. mail: [email protected]
簿記からはじめる会計学
第4回
甲南大学マネジメント創造学部
講師
新井康
平
【前回の演習の解説】
• 実施問題
6, 9, 12, 14, 16, 22
2
CASE 32 現金貸し付け
3

現金100円を貸し付けた。
 貸付金
100 /
現金 100
 「貸付金」勘定は,将来の現金化されることが期
待される資産勘定。
CASE 33 現金貸し付けの返済
4


貸付金の返済には利息がつく。
貸し付けた現金100円の返済を受け,10円の利
息とともに現金を受け取った。
 現金
貸付金 100
受取利息 10
 「受取利息」勘定は,収益項目。
110
/
CASE 34 現金の借り入れ
5


お金を借りてくることは借り入れと呼ばれる。
銀行から100円借り入れた。
 現金
100
/
借入金 100
 「借入金」勘定は,負債項目。
CASE 35 現金借り入れの返済
6

銀行から借り入れた600円を利息とともに現金
で支払った。なお,利息は年利率2%で,10か
月間借りていた。
 利息は,600×0.02×(10÷12)=10
 借入金額×年利率×(借入月÷12ヶ月)
 借入金
600 /
現金 610
支払利息 10
 「支払利息」勘定は,費用項目。
|
CASE 36 手形貸し付け
7


貸し付けの証拠として,借用証書ではなく約
束手形を用いることがある。
100円を貸し付け,約束手形を受け取った。
 手形貸付金
100 /
現金 100
 貸付金と手形貸付金は種類が異なるため,別勘定
で処理。
 「手形貸付金」勘定は,資産項目。
CASE 37 手形借り入れ
8


借用証書ではなく約束手形を用いたときの借
り入れの場合は,次のようにする。
100円を借り入れ,約束手形を渡した。
 現金
100
/
手形借入金 100
 借入金と手形借入金は種類が異なるため,別勘定
で処理。
 「手形借入金」勘定は,負債項目。
第7章の勘定科目
9
資 産
負 債
費 用
収 益
貸付金
支払手形
支払利息
受取利息
手形貸付金
手形借入金
純 資 産
その他
-
-
CASE 38 売買目的有価証券
10

企業は,余った資金を他企業の株式を購入す
ることで有効利用しようとすることがある。
 この目的は売買目的とよばれる。その他の目的は,
大企業でしかみられないため,3級では割愛。

売買目的で1株10円で10株を購入し,売買手数
料10円とともに代金は現金で支払った。
 売買目的有価証券
110
/
現金 110
 10×10+10=110
 株価×株数+売買手数料
 「売買目的有価証券」勘定は,資産項目。
CASE 39 配当金
11



売買目的有価証券の所有者は,年に1度か2度
ほど配当金を受け取ることが出来る。
10円の配当領収書を受け取った。
現金 10
/ 受取配当金
10
 配当領収書は,銀行に持参すればすぐに現金化で
きるので,現金扱い
 「受取配当金」勘定は,売上などと同じく収益項
目。
CASE 40 株式の売却
12



売買目的有価証券は,売却したときに個別に損益
が把握しやすい。そのため,商品ではあまり用い
られない分記法的な仕訳を行う。
@11円で購入した株式5株を,@15円で売却し代
金は現金で受け取った(@は単価の意味)。
現金 75 /
売買目的有価証券
55
有価証券売却益
20

取得時は11×5=55。売却時は15×5=75。

「有価証券売却益」勘定は,収益項目のため右側に記
載。

逆に損をした場合は,費用項目である「有価証券売却
CASE 41 株式の決算処理
13



売買目的有価証券の価値は,市場で決まっている
ので,所有している有価証券の評価額を決算の時
に変更する(評価替え)。
決算において,帳簿価格55円の株式を時価60円に
評価替えする。
売買目的有価証券 5 / 有価証券評価益 5
価格が上昇しているので,「売買目的有価証券」とい
う資産を増加させる。
 なお,上昇分は収益扱い。つまり,「有価証券評価
益」という収益項目を右側に記載。
 逆に損をした場合は,「有価証券評価損」という費用
項目を左側に記載。

CASE 42 社債
14

企業は,余った資金を他企業の社債を購入す
ることで有効利用しようとすることがある。
 社債や国債とは,まとめて公社債と呼ばれ,国や
企業が借金をするための一つの手段。
 額面と呼ばれる発行金額の表示額と実際の購入価
格はずれることが多い。
 売買目的で額面総額1,000円の社債を,額面100円
につき96円で購入し,代金は売買手数料10円と
ともに現金支払った。
 売買目的有価証券 970
/
現金 970
 96×10+10=970
 単価×口数+売買手数料
CASE 43 社債の利息
15



社債の所有者は,年に1度か2度ほどの利払日
に利札を切り取って銀行に持参すれば利息を
受け取れる。
利払日に10円の利札を銀行に持参し現金を受
け取った。
現金 10
/ 有価証券利息 10
 「有価証券利息」勘定は,売上などと同じく収益
項目。
CASE 44 社債の売却
16


先に@97円で購入した社債10口(額面総額
1,000円,売買目的)を@98円で売却し,代金
は現金で受け取った。
現金 980
/ 売買目的有価証券 970
有価証券売却
益
10
 株式の売却と同様に処理可能。
 もし,取得価額(帳簿価額)よりも売却価額が低
い時は,「有価証券売却損」勘定を用いる。
第8章の勘定科目
17
資 産
売買目的
有価証券
負 債
-
純 資 産
-
費 用
収 益
有価証券売却損
有価証券売却益
有価証券評価損
有価証券評価益
受取配当金
有価証券利息
その他
-
CASE 45 未払金
18



商品のように商売の基本となるモノではなく,
建物など商売を補助する資産についての後払
いの処理は,「買掛金」ではない。
倉庫を100円で購入し,代金は月末払いとした。
建物 100
/ 未払金 100
 商売の営業循環(モノを仕入れて,売掛金にして,
現金にして,というサイクル)から外れた,補助
的な資産については,買掛金と区別するために
「未払金」勘定を用いる。
 「未払金」勘定は負債項目。
CASE 46 未収金
19



商品以外のものを売った時の後払いでの代金
の受け取りは,通常の儲けと区別するために
「売掛金」勘定を用いない。
倉庫を100円で売却し,代金は月末受取りとし
た。
未収金 100 / 建物 100
 「未収金」勘定は資産項目。
 語尾の言葉での判断も覚えておく。
 「…仕入れた」:買掛金,「…購入した」:未払金
 「…売り上げた」:売掛金,「…売却した」:未収金
CASE 47 前払金
20


商品100円を注文し,内金として20円を現金で
支払った。
前払金 20 / 現金 20
 「前払金」勘定は資産項目。
 なぜなら,将来商品という資産を受け取る権利を
表すため,前払金自体にも資産としての役割があ
る。
CASE 48 前払金支払い後
21


商品100円を受け取り,すでに支払った内金20
円以外の残額は掛けとした。
仕入 100
/ 前払金 20
買掛金 80
 「前払金」勘定は資産項目で,その役割がなくな
るため,右側に書く。
CASE 49 前受金
22


商品100円の注文を受け,内金として20円を現
金で受け取った。
現金 20
/ 前受金 20
 「前受金」勘定は負債項目。
 なぜなら,将来商品という資産を譲り渡す義務を
表すため。なので,この時点ではいまだ売上げて
はいないということになる。
CASE 50 前受金受取り後
23


商品100円を渡し,すでに受け取った内金20円
と代金は相殺し,残額は掛けとした。
前受金 20 / 売上 100
売掛金 80
¥
 前受金は,商品を受け渡す義務としての負債項目
だったが,その義務が消滅したため左側に記載。
24
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簿記からはじめる会計学
第5回
甲南大学マネジメント創造学部
講師
新井康
平
CASE 51 仮払金
25

従業員に旅費の概算額100円を渡した。
 仮払金
100 /
現金 100
 「仮払金」勘定は,とりあえずは従業員のために
使われる予定である,という将来の自社への貢献
を意図したもので資産項目となる。
CASE 52 仮払金の確定
26

旅費の概算額100円を渡された従業員が戻り,
80円を旅費として支払った旨の報告を受け,
残額は返金された。
 旅費
80
/
仮払金 100
現金 20
|
 「旅費」勘定は,費用項目。
 仮払金という資産が減少し,旅費の発生,現金の
増加があった,ということ。
CASE 53 仮受金
27

よくわからない100円が当座預金に振り込まれ
た。
 当座預金
100
/
仮受金 100
 「仮受金」勘定は,負債項目。というのも,この
金額が何だかわからないため,自分のものかどう
かも不明であるため。
CASE 54 仮受金の内容判明
28

先によくわからない100円が当座預金に振り込
まれたが,これは売掛金の回収であることが
判明した。
 仮受金
100 /
売掛金 100
CASE 55 仕入れの立替金
29

商品100円を掛けで仕入れたが,先方負担の引
取り運賃10円を一時的に立て替えた。立替分
は現金で支払った。
 仕入
100
/
買掛金 100
立替金 10 /
現金
10
 当店負担の仕入諸掛りは「仕入」に含む。
 先方負担の仕入諸掛りは「立替金」勘定を用いる。
なお,「立替金」は資産項目である。
 立替金勘定を用いずに,そのまま買掛金と相殺する場
合もある。
CASE 56 売上げの立替金
30

商品150円を掛けで売上げたが,先方負担の引
取り運賃10円を一時的に立て替えた。立替分
は現金で支払った。
 売掛金
150 /
売上 150
立替金 10 /
現金
10
 当店負担の売上諸掛りは個別の費用項目(例えば,
「発送費」など)とする。
 先方負担の売上諸掛りは「立替金」勘定を用いる。
なお,「立替金」は資産項目である。
 立替金勘定を用いずに,そのまま売掛金に含める場合
もある。
CASE 57 従業員の立替金
31

従業員負担の生命保険料40円を現金で立て替
えた。
 立替金
40 /
現金
40
 従業員負担でも,先ほどと同様に処理する。
CASE
58
従業員立替金の支払い
32

給料500円のうち,先に建て替えた従業員負担
の生命保険料を差し引いて現金で支払った。
 給料
500
/
立替金 40
現金
460
 「給料」勘定は,費用項目。
 立替金を減少させ,残額を現金で支払うという処
理をする。
CASE 59 源泉徴収
33


従業員は給料のいくらかの割合を所得税とし
て納める必要があるが,企業がこれを代行す
ることを源泉徴収という。
給料500円のうち,源泉徴収税額50円を差し引
いて残額を現金で支払った。
 給料
500
/
預り金 50
現金 450
 「預り金」勘定は,将来,預かった金額を別の誰
かに払う必要があるため,負債項目となる。
CASE 60 預り金の支払い
34

預り金として処理していた源泉徴収額50円を,
税務署に現金で納付した。
 預り金
50 /
現金 50
 「預り金」という負債項目が減少した,と処理す
る。
CASE 61 商品券
35

商品券100円を発行し,現金を受け取った。
 現金
100
/
商品券 100
 「商品券」勘定は,将来,その商品券を発行した
顧客に商品などを提供する義務が生じるため,負
債項目である。
CASE 62 商品券の利用
36

商品150円を売り上げ,商品券100円と現金50
円を受け取った。
 商品券
100 /
売上 150
現金
50
|
 「商品券」という負債が減少したように処理する。
CASE 63 他店商品券
37

商品150円を売り上げ,他店商品券100円と現
金50円を受け取った。
 他店商品券
100 /
売上 150
現金
50
 「他店商品券」は,資産項目。
|
CASE 64 他店商品券の精算
38

当店が保有する他店商品券100円と,他店が保
有する当店商品券80円を交換し,残額は現金
で精算した。
 商品券
80
20
/
他店商品券 100
現金
|
 「他店商品券」という資産が減ると同時に,「商
品券」という負債も減る。
第9章の勘定科目
39
資 産
負 債
費 用
未収金
当座借越
旅費
前払金
前受金
給料
仮払金
仮受金
立替金
預り金
他店商品券
商品券
純 資 産
-
その他
-
収 益
-
CASE 65 消耗品の購入
40

コピー用紙を100円で購入し,現金で支払った。
なお,購入時に資産として処理する。
 消耗品
100 /
現金 100
 「消耗品」勘定は資産項目。
 消耗品には,購入時に費用として処理する方法もある。
 消耗品費
100
/
現金 100
 「消耗品費」勘定は費用項目。
CASE 66 消耗品の決算
41

決算時点における消耗品100円のうち,すでに
80円分が使用されており,残りは未使用であ
る。
 消耗品費
80 /
消耗品 80
 「消耗品」勘定は資産項目だったので,使用分の
資産を減少させる。
 減少分は費用処理する。
 もし,「費用処理」する形式だったら,80円分でよ
かったのに100円分も費用にしてしまっているので,
20円分消耗品費を減らし,20円分新しい資産「消耗
品」を計上するように仕訳けする。
 消耗品 20
/
消耗品費 20
第10章の勘定科目
42
資 産
消耗品
負 債
-
費 用
消耗品費
純 資 産
-
その他
-
収 益
-
CASE 67 貸倒れ
43


売掛金は,相手先が倒産したら回収されない。
また,相手が倒産したら自分も現金がなく
なって倒産することを「連鎖倒産」という。
当期の売掛金80円が貸倒れた。
 貸倒損失
80 /
売掛金 80
 「貸倒損失」勘定は費用項目。
CASE 68 貸倒引当金
44


決算日(期末)に,売掛金のうちいくらかは,
返ってこないことを想定する場合がある。そのと
き,「貸倒引当金」という「マイナスの資産」を
設定する。
決算日に売掛金の期末残高400円のうち,2%を貸
倒引当金とする。
貸倒引当金繰入額
 400×0.02=8

8/
貸倒引当金 8
「貸倒引当金」勘定はマイナスの資産項目。
 「貸倒引当金繰入額」勘定は費用項目。
 結局,売掛金は全部回収できるか不明なので,回収出来な
さそうな部分を見積もって,①新しくマイナスの資産項目
を作ることで資産を減らし,②新しく費用項目を作って利
益を減らす,という作業をしていることになる。

CASE 69
れ
貸倒引当金がある貸倒
45

前期に発生した売掛金50円が貸倒れた。なお,
貸倒引当金残高は8円である。
 貸倒引当金
貸倒損失
8
42
/
売掛金 50
|
 「貸倒引当金」をとりくずす。
 引当金では足りない部分は,「貸倒損失」として処理
する。
CASE
70
貸倒引当金がある決算
46

決算日に売掛金の期末残高600円のうち,2%
を貸倒引当金とする。なお,期末の貸倒引当
金残高は5円である。
 貸倒引当繰入
7
/
貸倒引当金 7
 600×0.02=12
 しかし,すでに5円分は引当金が存在するため,
差額の7円のみ追加すればよい。
第11章の勘定科目
47
資 産
-
負 債
-
純 資 産
-
費 用
貸倒損失
貸倒引当金繰入
その他
貸倒引当金
収 益
-
48
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簿記からはじめる会計学
第6回
甲南大学マネジメント創造学部
講師
新井康
平
CASE 71 固定資産の購入
49

建物1,800円を購入し,代金は月末払いとした。
なお,購入にあたっての登記料および仲介手
数料計200円は現金で支払った。
 建物
2,000 /
未払金 1,800
現金
200
 「建物」勘定のように長期的に保有するものは固
定資産と呼ばれ,他にも「土地」,「備品」,
「車両運搬具」などがある。
 固定資産の付随費用も取得原価に含める。
CASE 72 減価償却
50


固定資産の価値の目減り分を期末に修正する
ことを減価償却(げんかしょうきゃく)とい
う。
建物2,000円について減価償却を行う。定額法
で耐用年数は30年で残存価額は取得原価の
10%である。
 減価償却費
60
/
建物 60
 (2,000-2,000×0.1)÷30=60
 上記の方法は,建物の価値を直接減らしているが,
元々の価額情報を残して,価値の目減り分を別に提示
する間接法という方法もある。
 減価償却費 60
/
減価償却累計額 60
CASE 73
却
期中取得資産の減価償
51

12/31が決算の企業で,9/1に取得した2,000円
の建物について減価償却を行う。定額法で耐
用年数は30年で残存価額は取得原価の10%で
ある。なお,記帳は関節法による。
 減価償却費
18
/
減価償却累計額 18
 (2,000-2,000×0.1)÷30×(4÷12)=18
CASE 74
法)
固定資産の売却(直接
52

期首に,取得原価400円,減価償却累計額180
円,直接法で記帳された備品を250円で売却し
代金は月末受取りとした。
 未収金
250 /
備品 220
固定資産売却益
 「固定資産売却益」は,収益勘定
 固定資産の価値は,400-180=220円。
30
CASE 75
法)
固定資産の売却(間接
53

期首に,取得原価400円,減価償却累計額180
円,間接法で記帳された備品を250円で売却し
代金は月末受取りとした。
 未収金
250 / 備品
400
減価償却累計額 180 / 固定資産売却益 30
 間接法なので,帳簿上の備品の価額は400。
 減価償却累計額が180あるが,これは売却により
不要になるので,消滅させる。
CASE 76 固定資産の期中売却
54

2005年10/1に,2002年1/1に取得した取得原
価1,000円,期首の減価償却累計額540円,耐
用年数5年,残存価額10%で間接法・定額法で
記帳されたトラックを250円で売却し代金は月
末受取りとした。なお,会計期間は1/1から
12/31とする。
 未収金
250 /
1,000
減価償却累計額 540
|
減価償却費
150
|
車両運搬具
第12章の勘定科目
55
資 産
建物
土地
備品
車両運搬具
負 債
-
純 資 産
-
費 用
減価償却費
固定資産売却損
その他
減価償却累計額
収 益
固定資産売却益
【演習】
• 教科書の問題
• 27, 30, 35, 44, 45, 47
56