ロジスティクス

2015年春学期
「現代の経営」
第12回 事業システムとロジスティクス
樋口徹
1
出席カード
• ある会社の昨年度末時点での総資産は36億円、純資産12億円、
負債10億円でした。その会社の昨年度の売上高は2億円、総利
益が4000万円、経常利益は1800万円でした。
• この会社の昨年度の売上高対営業経常利益率は?
• この会社の昨年度の自己資本比率は?
• この会社の昨年度のROA(総資産対経常利益率)は?
※ROA(総資産利益率)で用いられる利益は一様ではない。
総利益、営業利益、経常利益などの場合がある。
ある会社の昨年度末時点での総資産は36億円、純資産12億
円、負債10億円でした。その会社の昨年度の売上高は2億円、
営業利益が4000万円、経常利益は1800万円でした。
• この会社の昨年度の売上高対営業経常利益率は?
=4000万円/2億円=20%
• この会社の昨年度の自己資本比率は?
=12億円/36億円=33.3%
• この会社の昨年度のROA(総資産対経常利益率)は?
=1800万円/36億円=0.5%
平成26年度損益計算書(1/1~12/31)
科目
売上高
直営店売上高
フランチャイズ収入
売上原価
直営店売上原価
フランチャイズ収入原価
売上総利益
販売費及び一般管理費
営業利益・損失
営業外収益
受取利息
業務受託収入
受取補償金
その他
営業外費用
支払利息
貸倒引当金繰入額
店舗用固定資産除去損
その他
経常利益・損失
金額(単位:百万円)
159,749
62,505
154,721
49,355
2
569
44
120
1,009
143
1,115
120
222,254
左の表は平成26年度の
日本マクドナルド株式会
社の単独の損益計算書
204,076
18,178
25,105
-6,927
735
2,387
-8,579
4
平成26年度の日本マクドナルド単独の損益関連重要指標
=
18,178
222,254
= 8.2%
売上高経常利益率 =
-8,579
222,254
= -3.9%
売上高対販売費・
=
一般管理費率
25,105
222,254
= 11.3%
売上高総利益率
※売上高の91.1%が売上原価(かなり危険)。
※マックは薄利多売(販売量で挽回=規模)
※分母は売上高
5
戦争遂行に必要なものは?
6
ロジスティクスの語源と変遷
戦
争
と
と
も
に
発
展
• “Logistikos”(古代ギリシャ語)で「計算」
↓
• “Logista”(ラテン語)
↓
• “Logistique” (フランス語)で「宿営」
↓
• “Logistics”英語で「後方支援」
↓
• 日本語で「兵站」 or 「ロジスティクス」
7
戦争前に必要なことは:
計算
必要な兵士の数
必要な武器・弾薬
必要な輸送手段
計
算
計
算
必要な生活物資
必要なサポート人員
必要な燃料
計算
必要な燃料
どれくらいの戦力でどのくらいの期間戦えるか計算
8
戦争中の兵隊と物資の補給
基
地
本
国
補
給
本
隊
基
地
最
前
線
敵
基
地
兵隊の配置を計画・準備し、補給(後方支援)を円滑に行う
9
ビジネスへの応用
(ビジネス・ロジスティクス)
協力
工場
協力
工場
協力
工場
協力
工場
卸売
工
場
卸売
卸売
小
売
店
客
材料・部品
製品
顧客満足度の高い品揃えを効率的に確保し続ける(=後方支援)
10
6-1-1 事業システムの概念とその内容(p.143)
組織間の分業
• 最終消費者に財やサービスを提供するために必要なすべての プロセス を単一の
組織で賄えることはほとんどない。例えば、ある工業製品の原材料を採掘するための
設備や器具を自前で製造し、必要な原材料のすべてを自社で採掘し、それを自社の輸
送機器と人材で運び、必要な部品や半完成品に加工し、完成した製品を国内外の消
費者が購入できるように世界的な流通ネットワークを構築することは合理的ではない。
• 下図で示しているのは、従来型のセットメーカーを中心とした 分業構造 である。一
般的に、最終消費者に製品が届くまでの過程の中には、川上から川下までの 垂直
的な活動と地球規模での活動が含まれるので、関連する企業の数は膨大な数になる。
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事業システム
• 日本国内における最終消費者に財やサービスを関連する企業群が協
力して提供するのに関わるプロセスを研究した文献として加護野・石井
(1991)がある。
• そこでは、国内の酒類の 流通過程 について、酒造メーカーがどの
程度までの垂直的な活動を 自社 で行い、どのような活動を 他社
に任せているのかを明らかにしている。
• 加護野・井上(2004)では、このような分業構造を「 事業システム 」
と呼び、以下のように定義している。
• 「 経営資源 を一定の仕組みでシステム化したものであり、①どの活
動を自社で行うか、②社外の様々な取引相手との間にどのような関係
を築くか、を 選択 し、分業の構造、インセンティブ・システム、情報、
モノ、カネ、などの流れの 設計 の 結果 として生み出されるシス
テム」と定義している
12
境界の設定
• 企業にとって、事業システム内の 境界設定 は重要な意味を持つ。
なぜなら、当該企業が自社と自分が所属する事業システムの強みを
考慮し、どの部分までを取り扱うかを決め、そして残りの部分をどのよ
うに他社を活用して補うかを考える必要があるからである。
• 事業システムの概念は、財だけでなく、 サービス の提供にもあて
はめることができる。ある事業者が、サービス提供に必要な器具や消
耗品をすべて自前で準備することは非効率的となることの方が多い。
• 人々が多様な財やサービスを割安な価格で購入あるいは利用できる
背景には、このように多様な企業や人々が集まって、 効率的 な事
業システムを構築・運営していることがある。
13
以下補足【ビールのサプライチェーンの事例】
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国別ビールの生産量と消費量
※KIRIN「キリンビール大学」より抜粋
【流通チャネル】生産者≠消費者
流通は、仏教用語で経典や教えを広めること意味している。
そしてチャネルは(channel)は水路や路線を意味する。
流通活動が必要な理由⇒生産者と消費者の間に 乖離 存在
1. 社会的 分業 が前提となっているので、人々の役割が異な
ることである(⇔自給自足)。
2. 生産場所と消費場所が離れており、それによって、 輸送
活動が必要になる。
3. そして、生産時点と消費時点が異なっており、 貯蔵・保管
が必要になる。
4. 最後に、消費者と生産者の間には情報の隔たりがある。生
産者と消費者を 仲介 する人が必要。
※流通の役割は、生産者と消費者の乖離を埋め、生産者から
消費者への製品やサービスの提供を円滑に行うことである。
16
マーチャンダイジング・サイクル
• マーチャンダイジングとは、販売するために、商品の仕入れや品
揃えをすることである。
• マーチャンダイジング・サイクルは、販売と 補充 の繰り返し、
およびそれに付随する一連の活動のことであり、発注(受注)、
受領(出荷)、在庫、管理などが含まれる。
• 最終消費者が小売店で製品を購入することによって、小売店の
在庫が減少し、卸売り(問屋や物流センター)からの補充が必要
になる。
• そして、卸売りも製品を出荷した後は、在庫が減るので、セット
メーカー(工場)からの 補充 が必要になり、注文を行う。
• 工場では、注文を受けた場合、新たに生産するか在庫から対応
する。工場でも、材料や部品あるいは製品の在庫が減るので、
協力企業から 補充 が必要になる。
※サプライチェーンでは、消費者の購買(需要)から補充(供
給)の連鎖が始まる。
17
物流の基礎
• 物流(物的流通;physical distribution)は米国における大陸横
断 鉄道 の開通に伴って、 商圏 拡大した時に誕生した言
葉である。
※自給自足生活なら大規模な物流活動は必要ない。
• 広域に物資を運搬するには、運搬(輸送)と 保管 を統合して
物流として捉えることが必要となる。輸送費用と保管費用の合
計が安くなるように、物流システムを設計するようになる。
• 国民生活の中で、物流費用(輸送費用、保管在庫費用、物流
関係管理費用)は約9%程度を占めると言われている。
• 国民生活に多大な影響を及ぼす物流を円滑にするために物流
インフラ(鉄道・道路・港湾・空港・物流センター)や法体系の整
備が進められている。
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物流の機能
1.
2.
3.
4.
5.
輸送 :自動車(トラック)、鉄道、船舶、航空機などの輸送手段
によって物品を移動する行為。石油やガスなどのパイプラインも輸
送となる。
保管 :物理的に保存し、管理すること。倉庫や棚などの保管設
備の管理と物品の管理作業がある。
荷役 :物品の荷卸しから格納までの作業と出荷指示に基づい
たピッキング、仕分け、積み込み作業などが含まれる。
包装 :物品の輸送と保管の際に、物品の状態を維持・保護す
るために容器などを利用する。個装(消費者が購入際の包装状
態)、内装(個装を1ダースなどの単位にまとめた包装状態)、外装
(輸送・保管に際して物品の保護目的のため、箱、袋、樽、缶、折
り畳みコンテナなどにいれた状態)
流通加工 :物流の過程において、値札付け、アイロン、パック
詰めなど工場あるいは店舗で行っていた作業を倉庫内で実施。
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図 流通機能
工場
完
成
品
(
個
装
済
み
)
(
荷
役 輸送
(包装) )
内 外
装 装 積
込
(
1
カ
ー
ト
ン
)
店舗
倉庫
(
荷
役
)
荷
卸
し
(
荷 輸送
役
)
積
込
( 保 管 )
↺
(流通加工)
(
荷
役
)
荷
卸
し
(保管)
↓
販売
値札付けなど
20
領域から見た物流の分類
動 1.
調達物流 ;メーカーにとっては原材料や部品の調達、流
物 3.
販売物流 (配送);売り上げを上げるための物流(顧客あ
通業においては仕入れに関する物流
脈 2. 社内物流 ;社内の拠点間の輸送と保管(倉庫→支店など)
るいはユーザーへの配送)
流
静
4. 返品物流 (リバース・ロジスティクス);返品、回収、廃棄に
伴う物流(原因は誤送、破損・汚損、製品の不具合、売れ残り)
※返品物流は販売物流の3倍の費用
脈 5. 回収物流 ;納品に使用したパレットや通い箱などの回収、
製品の不具合(リコール)による回収がある。※3R(リデュース、
物
リユーズ、リサイクル)により注目集める
流 6. 廃棄物流 ;廃棄物の輸送や処分を行う物流。家庭からの一
般ごみは市町村に処理責任がある(産業廃棄物は排出業者に
責任がある)。
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領域から見た物流の分類
サプライヤー
(協力企業)
メーカー
(工場)
顧客
(ユーザー)
動脈物流
調達物流
静脈物流
社内物流
販売物流
返品物流
回収物流
廃棄物流
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【企業内の各部門とロジスティクス】
関連部門間が連携することにより、効果的な活動や効率的に運営
部品
メーカー
調達⇒加工・保管⇒出荷
セット
メーカー
調達⇒加工・組立・保管⇒出荷
※各企業単位で利益を最大化するた
めに、ロジスティクス活動を行う。しか
し、完全に独立しているわけではない。
卸 小
売 売
り り
調達⇒保管・流通加工⇒販売
消
費(
者ゴ
へー
のル
販)
売
• 製品開発部門:ロジスティクスに効果的な設計DFL( Design for
Logistics)が着目されている。
-輸送・保管しやすい 包装 (形状やサイズ、強度)
-パラレル処理(受注を受けてから、並行して部材製造や加工を
行う;直列だと時間が長い)
-製造の最終工程をできるだけ売る 直前 に持ってくる(中間
部材を標準化し、流通加工化)
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【企業内の各部門とロジスティクス】(続き)
生産部門:原材料や部品の調達物流と完成品の流通においてロジ
スティクスと深い関わりがある。
• 例えば、欠品(品切れ)と過剰在庫(売れ残り)を削減するために、
正確な 需要予測 (情報システム)や市場への反応速度を高め
る(近接地域での加工や保管)必要がある。
• さらに、生産計画をサプライヤー(協力企業)との間で共有すること
や発注の電子化(紙ベースだと2~3度手間)などが有効(時間と手
間の削減)。
※返品や回収などの 静脈 物流は一個当たりの費用が高いので、不良
品の削減や売れ残りは削減が望ましい。
より正確な需要予測をするには?
あなたは、補充の責任者です。より正確な予測をするためにどのような
工夫をしますか?
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【企業内の各部門とロジスティクス】(続き)
営業(マーケティング)部門:受注(顧客との折衝)が販売物流の起点
となる。その際に、締め時間の 遵守 (生産や配送
計画のやり直し)やイレギュラー納品の 受注 制限
(配達時間帯の変更やドライバーの変更などは余計な
手間になる)し、物流業の効率化や品質向上を目指す。
※キャンペーンなどによる販売促進は需要の一時的な 波動 を生む。事
前に把握していれば、在庫や車両の手配など円滑に行える。リベート、協力
金、ディスカウントなども波動を生み出すこともあるが、 物流効率化
を促すように設定することも可能である。
財務部門:在庫は 資産 (将来現金化されるもの)とみなされるが、
在庫削減・ 処分 、評価減(見直し)が必要な時もある。
情報システム 部門:中心的な存在で、物流業務効率化に向けた
作業支援や物流業務実態の把握が求められている。物
流情報システムはメンテナンスが他のシステムより必要
になる場合が多い。
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【流通構造の変化】
※小売りのチェーン化やネット通販・宅配の進展により、卸売り業者
の必要性が弱まった。卸売りを経由しない( 中抜き した)方が
時間と費用を短縮できる。しかし、金融機能、メーカーの営業代行、
リテールサポートなどを長年行ってきたので、物流は変えても、商
取引を維持することがある。このような現象を 商物分離 という。
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