Gluon Contribution to Dark Matter Direct Detection 永田 夏海 名古屋大学・東京大学 25 July, 2013 @ 新潟大学 Outline 1. Introduction 2. The method of Effective theory 3. Some results a) Pure bino DM b) Pure wino/higgsino DM (high-scale SUSY scenario) c) KK photon DM in the MUED model 1. Summary 1. Introduction Introduction 暗黒物質の存在証拠 銀河スケール 銀河団スケール Begeman et. al. (1991) Clowe et. al. (2006) 宇宙論的スケール Planck (2013) Planck (2013) Introduction Weakly Interacting Massive Particles (WIMPs) 暗黒物質の有力な候補に Weakly Interacting Massive Particles (WIMPs) がある。 • 数十GeV 〜 数TeV程度の質量を持つ • 通常の物質と,弱い相互作用と同程度の強さの相互作用を行う • 観測されている暗黒物質の量がその残存量によって自然に説明 される [thermal relic scenario]. • 標準模型を超える物理理論にしばしば現れる Introduction 暗黒物質直接探索実験 [XENON100 collaboration, arXiv: 1207. 5988] • 暗黒物質直接探索実験によって,WIMP暗黒物質と核子との弾性 散乱断面積は非常に強い制限を受けている (for WIMPs of mass 55 GeV) • 数トン規模の検出器を用いた将来実験も複数計画されていて,検 出感度の飛躍的向上が今後も期待されている Motivation 暗黒物質直接検出実験の結果を元に暗黒物質の性質を調べるためには, WIMP暗黒物質・核子の弾性散乱断面積 を高精度で求めることが必要である。 ■ 先行研究 • マヨラナ暗黒物質 e.g.) M. Drees and M. Nojiri, Phys. Rev. D 48 (1993) 3483. • ベクトル暗黒物質 H. C. P. Cheng, J. L. Feng and K. T. Matchev, Phys. Rev. Lett. 89, 211301 (2002). G. Servant and T. M. P. Tait, New J. Phys. 4, 99 (2002). これまでの計算では,断面積に対する主要な寄与が正しく取り 入れられていなかった 有効理論の立場に基づいて,断面積を系統的に評価する方法を 研究した 2. The method of effective theory 有効理論の方法 1. 重い粒子を積分してしまうことで,WIMP暗黒物質とクォーク・ グルーオンとの有効相互作用を構築する 演算子積展開 (OPE) Ci (μ):Wilson係数 短距離 (short-distance) の情報を含む。 Oi (μ):有効演算子 高次元の演算子で,その行列要素が長距離 (long-distance) の情報を含む。 μ:factorization scale(μ〜mZ) 高エネルギーの理論と低エネルギー有効理論のマッチングを 行い,short-/long-distanceを分離するスケール。 有効理論の方法 2. 演算子の核子行列要素を(適当なスケールで)求める。 行列要素を評価するスケールまで降ろしていく際,フレーバー数 が変わる場合は適宜マッチングを行う。 DM Q DM Q DM g DM g 3. 上で得られた核子行列要素を用いて,散乱断面積を評価する。 散乱のエネルギー・スケール 暗黒物質の局所平均速度 (mean local velocity) v 〜 (2-3)00 km/s 散乱過程は非相対論的 散乱のエネルギー・スケール 暗黒物質質量 M 〜 100 GeV とすると, 暗黒物質直接検出実験では,数十keV程度の反跳エネルギーに 感度のある検出器を用意する必要がある。 Spin-dependent vs. Spin-independent 非相対論的極限で,暗黒物質と核子との相互作用は次の二種類に 大きく分けられる: • スピンに依存する (spin-dependent) 相互作用 • スピンに依存しない (spin-independent) 相互作用 後者の相互作用は,各核子同士について加算的に干渉するため, 核子数が多ければ多いほど断面積が増大する。 質量数の大きな原子核を標的に用いることで,スピンに依存しない 散乱の断面積に対しては検出感度を上げることができる。 例)Xe (A 〜 130) [Xenon100, XMASS など] 注)標的原子核の質量数が小さい場合,Spin-dependentに 感度がある場合もある。 [例:IceCube] マヨラナ暗黒物質に対する有効ラグランジアン スピンに依存する相互作用 スピンに依存しない相互作用 マヨラナ条件 Twist-2 演算子 ベクトル暗黒物質に対する有効ラグランジアン スピンに依存する相互作用 スピンに依存しない相互作用 Some conditions Twist-2 演算子 核子行列要素(クォーク・スカラー) スカラータイプのクォーク演算子の核子行列要素は,QCD格子 シミュレーションで評価されている。 mass fractions (mN:核子質量) 残りはグルーオンの寄与に対応 Mass fractions for proton H. Ohki et al. (2008) カイラル摂動論で評価された値と比べると, ストレンジ・クォークの量が一桁くらい少ない。 (以前はもっと多いと思われていた。) 核子行列要素(グルーオン・スカラー) グルーオン場の強さの核子行列要素は,エネルギー・運動量 テンソルのトレース・アノマリーを用いて評価できる。 エネルギー・運動量テンソルのトレース・アノマリー(Nf = 3) 重いクォークの寄与 グルーオンの寄与 M. A. Shifman, A. I. Vainshtein and V. I. Zakharov, Phys. Lett. B 78 (1978) 443. 核子行列要素(Twist-2 演算子) Twist-2演算子の核子行列要素は,パートン分布関数(PDF)を用いて 評価される。 ただし,q(2), G(2) 等はPDFのsecond momentと呼ばれる量で, 次式で定義される。 J. Pumplin et al., JHEP 0207:012 マヨラナ暗黒物質と核子との有効結合定数 マヨラナ暗黒物質と核子とのスピンに依存しない相互作用の 結合定数は,次のように与えられる。 αs で抑制される 暗黒物質とグルーオンとのスカラー相互作用は,高次の 量子効果で誘導されるにも関わらず,クォークとの相互作用 と同程度に寄与しうる。 弾性散乱断面積 上で得た有効結合定数を用いて,暗黒物質と原子核とのスピンに 依存しない散乱断面積を求めることができる。 以下では,参照値として,暗黒物質と陽子との弾性 散乱断面積を計算することにする。 有効理論の方法(まとめ) • 演算子積展開に基づいて有効理論を構築する • 特に,長距離の寄与と短距離の寄与とを適切に分離 して扱う必要がある • 演算子の核子行列要素は各々適切な方法を用いるこ とで求めることができる • グルーオンの寄与は,クォークの寄与と比較すると 高次の量子効果によってもたらされるにも関わらず, 主要な寄与の一つとなりうる 3. Some results a) Pure bino DM in the MSSM Pure Bino DM Quark contribution | Tree-level 相互作用ラグランジアン: 有効結合定数: Pure Bino DM Gluon contribution | 1-loop 長距離の寄与と短距離の寄与とを適切に分離して 取り込む必要がある。 Long-distance contribution vs. Short-distance contribution 長距離の寄与 ループ積分において,クォーク質量と同程度のスケールの運動量 が支配的であるようなダイアグラムの寄与 クォーク質量→0で発散する形になっている(赤外領域の物理に 強く依存) 特に軽いクォークの場合,長距離の寄与はWilson係数に含めては ならない(核子行列要素 に含まれる) 短距離の寄与 ループ積分において,重い粒子(DM, スクォークなど)の質量と 同程度のスケールの運動量が支配的であるような寄与 J. Hisano, K. Ishiwata, N. Nagata, Phys. Rev. D 82, 115007 (2010). Pure Bino DM Gluon contribution | 1-loop 短距離の寄与 Vanish ! 長距離の寄与 軽いクォークがループを回る場合,長距離の寄与(d)を 積分計算に含めてはならない スピンに依存しない有効結合定数・断面積 (Bino DM) 有効結合定数fpに対する各過程の寄与 ビーノ暗黒物質と陽子との弾性散乱断面積 ref.) M. Drees and M. Nojiri, Phys. Rev. D48 (1993) 3483. 断面積にして,O(10)% 程度変化するとわかった。 J. Hisano, K. Ishiwata, and N. Nagata, Phys. Rev. D82 (2010) 115007. 3. Some results b) Pure wino/higgsino DM (high-scale SUSY scenario) 質量スペクトル 一般的なケーラー・ポテンシャルと,超対称性を破る場が何らかの 対称性の下で量子数を持つこと(singletでない)を仮定 (ループ因子の分軽くなる) アノマリー媒介機構 L. Randall and R. Sundrum (1998) G.F. Giudice, M.A. Luty, H. Murayama, R. Rattazzi (1998) ヒッグシーノも軽くなりうる (他に対称性がある場合) ゲージーノ質量は ゲージ結合定数の β関数に比例している ウィーノが一番軽くなる 暗黒物質 仮定 この模型における,最も軽い超対称性粒子(LSP)が宇宙の 暗黒物質を占めている 熱残存量 • • ウィーノ (3 TeV) ヒッグシーノ (1 TeV) スカラー粒子 グラビティーノ (103 TeV) 特徴 • • • • • 126 GeV ヒッグス質量 SUSY フレーバー/CP 問題 グラビティーノ問題 ゲージ結合定数の統一 次元5演算子による陽子崩壊 M. Ibe, T.T. Yanagida (2012). ダイアグラム ツリー・レベル ``Higgs” contribution pureな極限でゼロになる過程 この場合ループの寄与が 支配的になる 有効結合定数 (Zij: ニュートラリーノ混合行列) ダイアグラム 1ループ ``Scalar” ``twist-2” SU(2)パートナー質量 ≒ DM質量 [ΔM = O(100) MeV] これらの過程は,暗黒物質の質量が電弱スケール よりも十分重くても小さくならない. ゲージボソン質量程度の運動量がループ積分に最も寄与することに 由来する,non-decoupling効果 J. Hisano, S. Matsumoto, M. Nojiri, O. Saito, Phys. Rev. D 71 (2005) 015007. ダイアグラム 2ループ ``Gluon” contribution 以前の計算では抜けていた 1-loopのクォークの寄与が効くならば,2-loopのグルーオンの寄 与も同程度に効きうる これらのダイアグラムもnon-decoupling J. Hisano, K. Ishiwata, and N. Nagata, Phys. Lett. B 690 (2010) 311. Wino-like DM 陽子との有効結合定数 tanβ = 1, 2, 5, 50 (from top to bottom) tanβ = 1, 2, 5, 50 (from bottom to top) 各々の寄与の間で打ち消し合いが起こっている. Wino-like DM 陽子との散乱断面積 • ループの寄与とツリーの寄与とが打ち消し合って いるため,断面積が非常に小さくなる場合がある. • 多くの領域で,ループの寄与が主になっている. J. Hisano, K. Ishiwata, and N. Nagata, Phys. Rev. D87 (2013) 035020. Wino-like DM 陽子との散乱断面積 tanβが小さい場合,ループの寄与とツリーの寄与とが重なり合う場 合がある. 結果得られた断面積は,ループの寄与が支配的な領域で10-47 cm2 くらい(以前の結果と比べて1桁くらい小さい) Results Higgsino-like DM J. Hisano, K. Ishiwata, and N. Nagata, Phys. Rev. D87 (2013) 035020. EWIMP DM Electroweak interacting massive particles (EWIMPs) SU(2)L のn重項(ハイパーチャージ Y)の中性成分が暗黒物質に なっている場合 この場合も,各寄与の間で打ち消し合いがみられた。 J. Hisano, K. Ishiwata, N. Nagata, and T. Takesako, JHEP 1107 (2011) 005. 3. Some results d) KK photon DM in the MUED model KK photon DM Minimal UED model Minimal Universal Extra Dimension (MUED) model 一つの余剰次元が,S1/Z2 orbifold上でコンパクト化 全ての標準模型粒子が余剰次元を伝搬 KKパリティの保存則により,最も軽いKK数奇の粒子 (LKP) は標準模型粒子に崩壊できず,安定となる •KK数奇 : KK パリティ +1 •KK数偶 : KK パリティ -1 未定なパラメーターは3(→2)つだけ •余剰次元の半径 : R •カットオフ・スケール : Λ •ヒッグス粒子の質量(〜126 GeV) T. Appelquist, H. C. Cheng, B. A. Dobrescu (2001) H. C. Cheng, K. T. Matchev, M. Schmaltz (2002) KK photon DM MUEDの質量スペクトル n番目のKK粒子はツリー・レベルで縮退している [n番目のKK粒子の質量] 〜 n/R 輻射補正によって質量差が生じる H. C. Cheng, K. T. Matchev, M. Schmaltz (2002) Point 1番目のKK photon が LKP 小さなカットオフ DM 輻射補正が小さい 縮退した質量スペクトル • QCDジェットがソフトになるため,加速器で探索するのが困難 • 一方で直接検出率はこの場合増大する傾向にある。 KK photon DM Quark & Higgs contribution | Tree-level ツリーレベルのダイアグラム 有効結合定数 KK photon DM Gluon contribution | 1-loop 1-loopダイアグラム 陽子との有効結合定数に対する各相互作用の寄与 全ての寄与が同じ符号で加算的に 重ね合わさるとわかった。 KK photon DM スピンに依存しない散乱断面積 小さなカットオフ 散乱断面積が増大する 以前の計算と比べて,一桁ほど大きい断面積を得た。 J. Hisano, K. Ishiwata, N. N, and M. Yamanaka, Prog. Theor. Phys. Vol. 126, No. 3 (2011) 435. 4. Summary Summary • 暗黒物質と核子との弾性散乱断面積を,有効理論の 方法に基づいて導出した • 高次の量子補正によってもたらされるのにも関わら ず,グルイーノの寄与は,クォークの寄与と同程度 になりうる • pure wino/higgsino DMの場合についてグルーオンの 寄与を含め計算した結果,従来計算と比較して一桁 ほど小さい断面積を得た • KK photon DMに関しては,従来計算と比較して一桁 ほど大きい断面積を得た Backup Higgs-nucleon coupling Large mass fractions (f_Tq large) Higgs-nucleon couplings are enhanced Input parameters H. Y. Cheng (1989) ■ Lattice results (ours) ■ Chiral perturbation (traditional) M. M. Pavan et al. (2002) H. Ohki et al. (2008) B. Borasoy and U. G. Meissner (1997) 運動方程式 有効演算子中のクォーク場に対し,ハドロン行列要素を考える 限り運動方程式を用いることができる。 H. Politzer, Nucl. Phys. B 172 (1980) 349.
© Copyright 2024 ExpyDoc