eijironagasaki

結果
序論
ベバシズマブ(アバスチン)はVEGFに対するモノクローナル抗体である。ベバシズマブは
血管新生を阻害し、抗がん剤の腫瘍内への到達を増加させることで抗がん剤の効果を
増強すると考えられる。
再発進行大腸がん・非小細胞肺がんに対して用いられており、一定の評価を得ている。
進行・再発乳がんに対しては、抗がん剤と組み合わせることによりPFSの延長を認め、
2006年に米国FDAが承認し(ただし2011年11月取り消し)、本邦では2011年9月より保険
適応となった。
今回、当院での使用状況を報告する。
方法
2011年9月から2013年4月に、慈恵医附属病院でPaclitaxel(PAC)+Bevacizumab(Bev)療
法を行った22例に対して解析を行った。治療は承認用法・用量に準じた。
[投与法] PAC 90mg/m2, d1, 8, 15 q4w
Beva 10mg/kg, d1,15 q4w
患者背景
年齢中央値 (range)
病型
HR(+)HER2(-)
HR(-)HER2(-)
組織型
IDC
ILC
転移組織数
1
2
3
4
5
内蔵転移を有する
転移臓器
骨
リンパ節
肺
肝
胸膜
脳
51.5
(32-71)
15
7
68.2 %
31.8 %
20
2
2
4
8
6
2
1
15
90.9 %
9.1 %
(1-5)
18.2 %
36.4 %
27.3 %
9.1 %
4.5 %
68.2 %
[Dose Intensity]
PAC 72 %、Bev 87 %
[奏効率]
評価可能症例 18/22例
[施行コース]
中央値 5コース (1-17)
非標的病変のみ
CR
Non CR/Non PD
PD
標的病変有り 11 例
CR
0
0%
PR
4 36.3 %
SD*
4 36.3 %
Long SD*
4 36.3 %
PD
3 23.1 %
奏効率
4 36.3 %
臨床的有用率 8 72.7 %
Triple negative
標的病変有り
PR
SD
PD
非標的病変のみ
Non CR/ Non PD
PD
PR+Non CR/ NonPD
SD例は全例 Long SDで、-30%未満の腫瘍
縮小効果を認めた。
Long SDは6ヶ月以上のSD持続と定義した。
rd
6例
3例
2 例 66.7 %
0例
1 例 33.3 %
3例
2 例 66.7 %
1 例 33.3%
4/6例 66.7%
3 line 以降
標的病変有り
PR
long SD
PD
非標的病変のみ
Non CR/ Non PD
PD
PR+long SD+Non CR/
NonPD
患者 評価可能 ホルモン
受容体 レジメン
No
病変
PACを含む前治療
line 効果
line 効果
途中からBev追加
2nd SD (Minor response)
(+)
weekly PAC 1st PR
2
あり
(+)
Nab-PAC
3
なし
(+)
GT
1st 改善あり
weekly PAC 2nd 不変
好中球減少のため中止
3rd 不変
途中からBev追加
4
なし
(-)
weekly PAC 6th 評価なし
途中からBev追加
5
なし
(-)
GT
5th SD (Minor response) 痺れ、痒みで中止
1st 不変
前ホルモン療法数
白血球減少
好中球減少
リンパ球現象
貧血
血小板減少
末梢神経障害
疲労
爪
AST/ALT上昇
高血圧
味覚障害
食思不振
皮膚
便秘
鼻出血
悪心
口内炎
発熱
ビリルビン上昇
下痢
浮腫
歯肉感染
帯状疱疹
蛋白尿
(-)~(±)
17 77.3 %
7
5
1
0
0
1
1
0
1
8
0
1
1
0
0
1
0
0
1
0
0
1
0
4
7th
0.8
0.8
0.6
0.6
Probability
1.0
0.4
4.5 %
4.5 %
4.5 %
4.5 %
4.5 %
(+)
18.2 %
縮小効果あり
0.2
0.0
0.0
100
200
300
400
HR
ホルモン受容体なし
0
1
ホルモン受容体あり
0.4
0.2
0
500
100
200
300
500
日
治療期間
N=22
中央値 343日 95% CI 123-NA
治療ライン
タキサン前治療
1-2 line Line.3
0
3rd line以降1
0.8
0.8
0.6
0.6
0.4
0.4
0.2
0.2
0.0
0.0
100
200
300
400
taxan
1.0
Probability
Probability
400
n median medianCI p.value
なし 7
NA
57-NA
0.413
あり 15 346
58-NA
タキサン前治療なし
0
1
タキサン前治療あり
0
500
日
治療期間
100
200
300
400
500
日
治療期間
n median medianCI p.value
Line<3 14 542.0 346-NA 0.0142
Line≧3 8 186.5
51-NA
n median medianCI p.value
タキサンなし 4
NA
NA-NA
0.19
タキサンあり 18 343
58-NA
[症例提示]
51才 ER 10% HER2 (-)
03年8月 左Bt+Ax。T4bN2M0、n 24/24、
ER10% PgR10% HER2 2+ FISH陰性。
術後CEF6コース、DOC 4コース、TAM。
12年3月 肝転移、骨転移。
3月よりPac+Bev開始。
治療前
0
1
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
PD
ホルモン受容体
1.0
0
副作用
G3
4.5 %
22.7 %
4.5 %
0%
0%
4.5 %
4.5 %
0%
4.5 %
36.4 %
SD (Minor response)
好中球減少のため中止 3th
中央値
0
(0-4)
全体
13 86.4 %
12 54.5 %
13 59.1 %
7 31.8 %
1 4.5%
19 86.4 %
18 81.8 %
16 72.7 %
13 59.1 %
12 54.5 %
12 54.5 %
10 45.5 %
9 40.9 %
9 40.9 %
8 36.4 %
7 31.8 %
6 27.3 %
5 22.7 %
3 13.6 %
3 13.6 %
2 9.1 %
1 4.5 %
1 4.5 %
7th
[無増悪生存期間]
1.0
以前に用いた化学療法剤 (アジュバント含む)
21
95.5 %
Anthracycline
17
77.3 %
Docetaxel
8
36.4 %
Capecitabine
5
22.7 %
Paclitaxel/Nab-Pac.
5
22.7 %
Vinorelbine
3
13.6 %
Gemcitabine
3
13.6 %
Eriblin
2
9.1 %
CMF
33.3 %
66.7 %
転機
治療期間
日
31.8 %
31.8 %
13.6 %
9.1 %
4.5 %
4.5 %
4.5 %
(0-6)
20 %
60 %
20 %
PAC+Bev
あり
0
前化学療法数 (アジュバント含まず)
7
0
7
1
3
2
2
3
1
4
1
5
1
6
1
中央値
例
例
例
例
例
例
例
例
5/8例 62.5 %
1
Probability
77.3 %
40.9 %
40.9 %
36.4 %
18.2 %
4.5 %
8
5
1
3
1
3
1
2
[前治療でPAC/Nab-PACを使用していた症例]
全体
17
9
9
8
4
1
7例
0
0%
5 71.4 %
2 28.6 %
G4
0%
4.5 %
0%
0%
0%
0%
0%
0%
0%
0%
0%
0%
0%
0%
0%
0%
0%
0%
0%
0%
0%
0%
0%
(++)以上
1 4.5 %
・皮疹で1例1コースで中止となった。
・高血圧G3 8例認めたが全例降圧剤(ARBもしくはCa拮抗薬)でコントロールされた。
6コース後 PR
考察
奏効率36.3%、臨床的有用率72.7%、PFS 343日で比較的良好な成績であった。
PFSは1-2次治療例で542日、3次治療以降で186.5日であり、早いラインでのPFSが有意
に良好であった。しかし、3次治療例でも奏効率20%、臨床的有用率80%であり、治療のオ
プションと考えられる。
予後不良と考えられるTriple negative 乳癌においても、奏効率66.7%と良好な成績で
あった。
タキサン前治療のない症例ではPFSが長い傾向であったが、さらなる観察が必要である。
海外PIII試験(E2100)では1次治療例でPFS 11.3ヶ月、奏効率50%、国内PII試験
(JO19901)では1次治療例でPFS 12.9ヶ月、奏効率73.5%であり、奏効率は当院の成績
より良好であったがPFSは同等であった。3次治療以降の例も多く含まれていることを考
えれば遜色ない成績と考える。
副作用に関しては高血圧がG3 36.4%と多かったが、全例降圧剤でコントロールされ治療
を継続できた。中止例は皮膚障害の1例のみで認容性に問題はないと考える。
結語
・PTX+Bev療法は奏効率が高く、長期の病勢コントロールが可能であった。
・3次治療以降の症例では1-2次治療例よりもPFSは短いが、比較的高い奏効
率、臨床的有用率を認め、有効な治療戦略と考えられた。
・Triple negative乳癌に対しても高い有効性を認め、有効な治療戦略と考えら
れた。
・副作用はアバスチンに特有な高血圧を高率に認めるも、治療の中止には至
らず認容性は高かった。