2016 コミュニティ・デザインと政策 (その1)

コミュニティ・デザインと
政策
(その1)
2016年
放送大学
神奈川学習センター
講師:國重正雄,Ph.D
面接授業
各回の授業テーマ
第1回
第2回
第3回
第4回
第5回
第6回
第7回
第8回
コニュニティとは? 県内にいくつあるのか?
地域の課題とコミュニティ・デザイン
人的資源開発と地域の産業社会
若年者の就業問題と地域組織間連携
コミュニティを基盤とした参加型調査(CBPR)
社会開発からコミュニティを考える
地域組織活動の持続性と地域組織間連携
―地域組織における共鳴現象と振り子現象―
地域課題への政策的アプローチ
コミュニティ・デザインと政策(國重)
2
はじめに
「計画や施策というものは、大なり小なり、
現状の否定である。」
「住民はある種の現状の中で地域生活を営んでお
り、それを少しでも改善したいと願っている。そ
のために、計画が立てられ、それが施策として実
行されるのだが‥‥」(鳥越晧之)
出所:鳥越晧之(1994)『地域自治会の研究』はしがきp.1
コミュニティ・デザインと政策
3
現状(今のありさま)を表す言葉と
未来(これから取り組むこと)を表す言葉(デザイン)
(現状を表す言葉)
・生活
(未来を表す場合は、「未来生活」)
・運営、経営、運用
・社会
(未来を表す場合は、 「未来社会」)
(未来を表す言葉)
・計画、政策
(「未来計画」、「未来政策」とは言わない)
・設計、意匠、デザイン
(未来に実現するもの)
(現在から未来を表す言葉)
・開発、ディベロップメント
コミュニティ・デザインと政策
4
第1回
コニュニティとは?
県内にいくつあるの
か?
コミュニティ・デザインと政策
5
コミュニティへの理解
地域社会とは、コミュニ
ティとは一体なにを示すの
か、
一人ひとりの地域住民に
とって、それが明確でなけ
れば、具体的な議論や行動
に結びつかないであろう。
◦ いま多くの市町村では、この地域自
治会の上にコミュニティ協議会のよ
うなものをつくったり、(中略)さ
まざまな工夫をしている途上にある。
しかしまずは、一番基本単位である、
近隣関係、「隣、近所でのつきあ
い」を基礎としたこの住民組織の十
全な理解がなければ、地域にかかわ
る真のソフトな計画や施策は成り立
(授業内容)より。 たないであろうと私は考えている。
(鳥越晧之)
コミュニティ・デザインと政策
6
コミュニティ【community】
広辞苑を引くと
①一定の地域に居住し、共属感情を持つ人々の集団。地域社
会。共同体。
②アメリカの社会学者マキヴァー(Robert M.MacIver 1882
~1970)の設定した社会集団の類型。個人を全面的に吸収
する社会集団。家族・村落など。
③群集②に同じ。⇒〔生物〕(community ; biocenosis)
一地域内に何らかの関係をもって生活するすべての生物個
体群。生態学の研究対象。植物だけの場合には群落という。
コミュニティ・デザインと政策
7
コミュニティ【community】
ジーニアス英和を引くと
①地域社会:市[町,村](自治体):(同じ時に造成された)地域;そ の人
びと
②[通例the~](利害・職業・宗教・国籍などを同じくする人の)社会(集
団),共同体(society)
⇒EC:European Community ヨーロッパ共同体(1993年にEUと改称)
③[the~]一般社会[大衆]
④〔生物〕群集;〔植物〕群落。
⑤(思想・利害などの)共通性,一致,類似;(財産などの)共有,共用
⑥交際,交流(association)
コミュニティ・デザインと政策
8
communityの語源
ラテン語 communitat より
communis (=common)+tat(=ty)
=互いに奉仕する状態
出所:プログレッシブ英和辞典
コミュニティ・デザインと政策
9
コミュニティの定義
(一例)
「自主性と責任を自覚した人々が、問題意識
を共有するもの同士で自発的に結びつき、
ニーズや課題に能動的に対応する人と人のつ
ながりの総体」
(2005
国民生活審議会 総合企画部会報告)
コミュニティ・デザインと政策
10
コミュニティ概念の3要素
地域性
と 共同性
一定の地域に居住し、共属感情を持つ人々の集団。
(広辞苑)
地域性
と
共同性
と
社会的相互作用※
※相互依存的な関係ー相手を助けようという意思の欠如した
助け合いー生態学での共生、共棲(R.E.Park)
倉沢進(1998)「コミュニティ論」(財)放送大学教育振興会
コミュニティ・デザインと政策
11
ゲマインシャフトとゲゼルシャフト
○ゲマインシャフト(Gemeinschaft)
地縁や血縁、友情で深く結びついた自然発生的な共
同体組織。人間関係が最重視される。
○ゲゼルシャフト(Gesellschaft)
機能や利益を第一に追求するもの。機能体組織。利
益社会。利益面や機能面が最重要視される。
テンニエス(1957)「ゲマインシャフトとゲゼルシャフトー純粋社会学の基本概念」岩波書店
コミュニティ・デザインと政策
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コミュニティとアソシエーション
○マッキーバーは、コミュニティを基礎的社会としてとらえ、アソシ
エーションー派生的な集団ーと区別・対比して論じた。
○アソシエーション(association)
人間が、何らかの共通の関心事を達成するために作る組織。共同の目
的を基礎に、明確に作られた社会的統一体。
○コミュニティ(community)
社会生活、すなわち人間の共同生活の結節点。
○1つのコミュニティの中には、多くのアソシエーションがあるだけで
なく、敵対的なアソシエーションがある場合もあろう。
倉沢進(1998)『コミュニティ論』放送大学教育振興会
コミュニティ・デザインと政策
pp.20-21
13
「コミュニティ」3つの区分の視点
①「生産のコミュニティ」と
「生活のコミュニティ」
②「農村型コミュニティ」と
「都市型コミュニティ」
③「空間コミュニティ(地域コミュニティ)」と
「時間コミュニティ(テーマコミュニティ)」
広井良典(2009)『コミュニティを問いなおす』p.11
コミュニティ・デザインと政策
14
農村・漁村・山村と都市のまち
農村
漁村
山村
=
=
=
農業
漁業
林業
+
+
+
集落(住まい)
集落(住まい)
集落(住まい)
むら(伝統的地域社会)=第一次産業+集落(住まい)
街
=
労働市場(通勤-商店) + 住宅(住まい)
まち(近代都市社会)=第二・第三次産業+住まい
コミュニティ・デザインと政策
15
(参考)社会学による社会類型
◦ 狩猟採集社会
(紀元前5万年前から現在まで)
◦ 牧畜社会
(紀元前1万2000年から現在まで)
◦ 農耕社会
(紀元前1万2000年から現在まで)
◦ 伝統的国家ないし伝統文明
(紀元前6000年から19世紀まで)
◦ 工業社会(近現代社会)
◦
<近現代世界の社会類型>
第一世界
(18世紀から現在まで)工業生産と自由企業経済システムに基盤
第二世界
(1917年ロシア革命から1990年代初めまで)計画経済
第三世界
(18世紀から現在まで)農業に従事し、農産物の一部は世界市場に
新興工業国(1970年代から現在まで)かつては第三世界に
アンソニー・ギディンズ(1992)「社会学」(改訂第3版)而立書房
コミュニティ・デザインと政策
16
地域をどのように捉えるか
近隣区域
向こう三軒両隣
自治会・町内会 数百世帯(100~1,000世帯)
(連合自治会
自治会・町内会を束ねる区域)
小学校区
小学校が設置されている区域
中学校区
中学校が設置されている区域
コミュニティ・デザインと政策
17
横浜市港南区には?
自治会・町内会
小学校
中学校
高等学校
174(約5百世帯・1250人)
21(約4千世帯・ 1万人)
11(約8千世帯・ 2万人)
4(約2.2万世帯・5万人)
港南区は9万世帯・人口21万8千人
コミュニティ・デザインと政策
18
神奈川県内には?
自治会・町内会
?(約5百世帯・1250人)
世帯数、人数で割ると約7,000~8,000自治会・町内会
小学校
892(約4千世帯・ 1万人)
中学校
481(約8千世帯・ 2万人)
高等学校
236(約1.6万世帯・4万人)
神奈川県の世帯・人口 398万世帯・912万人
コミュニティ・デザインと政策
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港南区・町内会の世帯構成2010(平成22)年国勢調査
総
数
核家族
港南区
65歳以上世帯員のみ
一般世帯
単独世帯
90,043世帯
60,424
大久保一丁目
1,231
551
大久保二丁目
1,852
大久保三丁目
夫婦のみ
24,526(27.3%)9,429
単独世帯
7,993 (8.9%)
615(50%)
59
143(11.6%)
1,050
714(38.6%)
111
157 (8.5%)
1,724
1,199
446(25.9%)
134
132 (7.6%)
東永谷一丁目
809
565
194(24%)
112
109(13.4%)
東永谷二丁目
450
332
85(18.9%)
67
44 (9.8%)
東永谷三丁目
1,357
983
279(20.6%)
179
128 (9.4%)
~
コミュニティ・デザインと政策
出所:データブック港南
p.12~13
20
町内会の世帯構成の多様性
○上大岡駅に近い大久保一丁目では、
単独世帯が半分、
しかも若い人の単独世帯が多い。
○大久保二丁目、三丁目では、
坂を登るにつれて、核家族の割合が増える。
○坂の上の東永谷一丁目では、
単独世帯の半分以上が、65歳以上の高齢者。
高齢者の一人暮らしが、13.4%。
コミュニティ・デザインと政策
21
町内会の住宅構成
総
数
住宅の建て方
持ち家
89,030戸
58,737(66%)
大久保一丁目
1,217
大久保二丁目
大久保三丁目
一戸建て
共同住宅
38,144(43%)
49,622 (56%)
527(43%)
321(26%)
877(72%)
1,848
1,040(56%)
575(31%)
1,244(67%)
1,714
1,328(77%)
758(44%)
925(54%)
東永谷一丁目
804
687(85%)
681(85%)
109(14%)
東永谷二丁目
448
392(88%)
337(75%)
107(24%)
東永谷三丁目
1,352
1,149(85%)
962(71%)
359 (27%)
港南区
~
コミュニティ・デザインと政策
22
町内会の住宅構成の多様性
○上大岡駅に近い大久保一丁目では、
共同住宅が7割、持ち家率は4割
○大久保二丁目、三丁目では、
坂を登るにつれ、持ち家率の割合が増え5割→7割
○坂の上の東永谷一丁目では、
持ち家率、一戸建て共に85%
コミュニティ・デザインと政策
23
地域社会のイメージ(神奈川県内)
自治会・町内会
=
数百世帯・1,000人程度
(全国では、2002年で町内会等は29万6,770団体
平均428人)
×10自治会・町内会⇒小学校区/4千世帯・1万人
×2小学校区
⇒中学校区/8千世帯・2万人
コミュニティ・デザインと政策
24
小田原市で考えると
計算上は?
19.6万人÷1,000人⇒196自治会
現実の値
⇒254自治会※
※約80%の加入率
÷1万人 ⇒20小学校区 ⇒ 26小学校
÷2万人 ⇒10中学校区 ⇒ 13中学校
・小学校の数は、県平均より小規模なため、やや多い。
・自治会数は、小学校数の10倍、
・中学校数も小学校数の半分となっている。
コミュニティ・デザインと政策
25
神奈川県内にいくつあるのか?
神奈川県(900万人)
≒8,000の町内会(×1,000人)
≒800小学校区(×1万人)
≒400中学校区(*2万人)
コミュニティ・デザインと政策
26
全国・神奈川の地縁団体数
○ 神奈川県の値は、7,281団体と想定の8,000団体に近い値となっている。
自治会 町内
会
神奈
5,080 1,531
町会
227
部落会 区会
0
13
区
その他
合計
うち認可
地縁団体
82
348
7,281 (946)
6,903 3,980 38,880
37,141
294,359 (35,564)
川県
全国
122,916
66,905
17,634
総務省(2008年4月)
コミュニティ・デザインと政策
27
地縁による団体(地方自治法第260条の2)
◦ 第 260 条の2 町又は字の区域その他市町村内の一定の区域に住所を有する者の地縁 に基づいて形成された団体(以下本
条において「地縁による団体」という。)は、地 域的な共同活動のための不動産又は不動産に関する権利等を保有するた
め市町村長 の認可を受けたときは、その規約に定める目的の範囲内において、権利を有し、義 務を負う。
◦ 2 前項の認可は、地縁による団体のうち次に掲げる要件に該当するものについて、 その団体の代表者が総務省令で定め
るところにより行う申請に基づいて行う。 1.その区域の住民相互の連絡、環境の整備、集会施設の維持管理等良好な地
域社 会の維持及び形成に資する地域的な共同活動を行うことを目的とし、現にその活 動を行っていると認められること。
2.その区域が、住民にとって客観的に明らかなものとして定められていること。 3.その区域に住所を有するすべての
個人は、構成員となることができるものとし、 その相当数の者が現に構成員となっていること。4.規約を定めているこ
と。
◦ 3 規約には、次に掲げる事項が定められていなければならない。
1.目的 2.名称 3.区域 4.主たる事務所の所在
地 5.構成員の資格に関する事項 6.代表者に関する事項 7.会議に関する事項 8.資産に関する事項
◦ 4 第2項第2号の区域は、当該地縁による団体が相当の期間にわたって存続している区域の現況によらなければならない。
◦ 5 市町村長は、地縁による団体が第2項各号に掲げる要件に該当していると認める ときは、第1項の認可をしなければ
ならない。
◦ 6 第1項の認可は、当該認可を受けた地縁による団体を、公共団体その他の行政組 織の一部とすることを意味するもの
と解釈してはならない。
◦ 7 第1項の認可を受けた地縁による団体(以下「認可地縁団体」という。)は、正当 な理由がない限り、その区域に住
所を有する個人の加入を拒んではならない。
◦ 8 認可地縁団体は、民主的な運営の下に、自主的に活動するものとし、構成員に対 し不当な差別的取扱いをしてはなら
ない。
コミュニティ・デザインと政策
28
地域自治会の5つの特徴
1 行政の末端機構(行政の末端機構としての役割)
2 包括的機能
(地域生活に必要なあらゆる活動を引き受けている)
3 全世帯加入制(全世帯の加入を前提)
4 地域占拠制(地域内に1つしかない)
5 世帯単位制(加入単位が世帯)
鳥越晧之(1994)「地域自治会の研究」p.9
コミュニティ・デザインと政策
29
コミュニティ概念の拡大
○第三空間の理論
第一空間としての住居、第二空間としての職場、2つの空間から解放された空間としての第三
空間。乗客や歩行者、映画館の観客、百貨店や飲食店の顧客、銀座のバー、浅草の酒場でのなじみ
客の世界、それらを包摂する盛り場、そこでの親密な人間関係、ある種の一体感が疑似地域社会的
な関係として認識されている。(磯村英一)
○アカデミック・コミュニティ
放送大学の場合、地域学習センターを設けるとか、面接授業を組み込むとかの工夫がされるわけ
である。~共通の関心と共同性を強調して学問する仲間の一体感を強調しようという意図で、あえ
て使われる表現である。
○単身者コミュニティ
単身者(単独世帯)だけのコミュニティ、単身者を包み込んだコミュニティが今後の課題となる
であろう。コミュニティ概念は、ここでも拡大、変質をもとめられることになろう。
倉沢進(1998)「コミュニティ論(財)放送大学教育振興会」
コミュニティ・デザインと政策
30
コミュニティ活動の3類型
(1)自己充実型活動
さまざまな公的に提供される学習機会、カルチャーセンターなどの商業サービスとして提供
される学習機会、公共的なスポーツ施設やスポーツ行事、商業的なスポーツ施設利用。
(2)社会奉仕型活動
さまざまな領域におけるボランティア活動。川をきれいにする活動、清掃活動、福祉関係の
ボランティア活動、花いっぱい運動など。
1995年の阪神大震災の折の多くの人のボランティア活動。
(3)問題解決型活動
住民運動も問題解決型のコミュニティ活動の一種。1960年代から70年代にかけて、公害を始
め高度経済成長の過程で生じたさまざまな問題をめぐって、全国各地に起きた。施設要求や
制度要求など、一層積極的に町づくりや生活の向上にかかわる運動や活動を含んで展開され
る。
倉沢進(1998)「コミュニティ論」(財)放送大学教育振興会
コミュニティ・デザインと政策
31
存在概念(Sein)としてのコミュニティと
当為概念(Sollen)としてのコミュニティ
◦ …… 伝統的なコミュニティの地域性と共同性が、それぞれ、かつバラバラに力を
失い、社会関係としてのコミュニティと、居住地区としてのコミュニティとの分
離と異質化とが進んでいくなかで、しかしながら、逆に新たな近隣的なコミュニ
ティ(居住地区コミュニティ)の意義が、住民生活の必要から増大してきている。
◦ 一つには精神的共同体への人々の希求から、いま一つには生活防衛上の機能的共
同化の必要から、それへの期待が高まっているのである。
◦ つまり存在概念(Sein)としてのコミュニティがあるかないかを問うのではなくて、
当為概念(Sollen)としてのコミュニティをいかにあらしめるかを考えるとき、コ
ミュニティ形成の戦略的基準として、一定範囲としての地域性を想定しておくこ
とが必要となるのであろう。
コミュニティ・デザインと政策
32
コミュニティをいかに創造的にデザインするか
ここでいう範域性をもつコミュニティは、かつて松原(治郎)が思い描いてい
た当為概念ではない。一人ひとりのライフスタイルの問題を処理する力能が、責
任主体に求められることを前提とするからである。責任の共同化をいかに進める
かも、責任主体が選ぶべき(メタレベルの)選択の問題となるのである。
しかも、地域性を基盤とした共属感情や連帯感が重要であるとしても、個人の
選択が重視される現代社会においては、共生の価値さえ人々に強制することはで
きない。選択的な参加の形態を前提とせざるを得ないからである。
コミュニティをいかに創造的にデザインするか。問われているのは、個人化しつ
つ共同の責任から逃れることのできない私たち自身である。
苅谷剛彦ほか編(2004)『創造的コミュニティのデザイン』㈱有斐閣
苅谷剛彦 第1章 「創造的コミュニティと責任主体」 p.19
コミュニティ・デザインと政策
33
第2回
地域の課題とコミュニティ・デ
ザイン
コミュニティ・デザインと政策
34
地域の課題とは?
○限界集落
(65歳以上が人口の半数で冠婚葬祭などが困難に)
○子どもと女性の貧困
○子育て放棄、不登校、ニート・フリーター
○DV(ドメスティック・バイオレンス)虐待
○買い物難民、介護
○高齢者の単独世帯、孤独死 ・・・・
コミュニティ・デザインと政策
35
日本における年収300万円以下の労働者の
人数と割合
(単位:万人、%)
H11
1999
H12
2000
H14
2002
H16
2004
H18
2006
H20
2008
H22
2010
H23
2011
1,491
1,507
1,559
1,666
1,741
1,819
1,846
1,866
全労働者に占め
33.2
る割合
33.5
34.9
37.4
38.8
40.0
40.6
40.9
統計年
300万円以下の
労働者数
出所:国税庁 「民間給与実態統計調査」をもとに算出
コミュニティ・デザインと政策
36
下流社会
新たな階層集団の出現(2005)
◦ 「中流化」から「下流化」へ
若年層で下流化が進行
◦ 団塊ジュニアの「下流化」は進む
◦ 年収300万円では結婚できない
◦ 年収150~250万円未満の男性は未婚率が60%(白波瀬佐和子)
◦ 「下流」の男性はひきこもり、女性は歌って踊る
◦ 団塊ジュニアは83%が今後も同じ地域に住む
◦ 階層による居住地の固定化が起きている
三浦展(2005)「下流社会」光文社、白波瀬佐和子(2005)「少子高齢社会のみえない格差」東大出版会
コミュニティ・デザインと政策
37
非正規雇用
(役員を除く)
比率の推移(全国)(単位
H元(1999)年
65歳以上
H16(2004)年
%)
H26(2014)年
96万人(6.1)
234万人(11.9)
55~64歳
125万人(15.3) 296万人(18.9)
421万人(21.5)
45~54歳
191万人(23.4) 316万人(20.2)
376万人(19.2)
35~44歳
228万人(27.9) 292万人(18.7)
397万人(20.2)
25~34歳
106万人(13.0) 310万人(19.8)
303万人(15.4)
15~24歳
132万人(16.2) 253万人(16.2)
231万人(11.8)
36万人(4.4)
出所:総務省「労働力調査(特別調査)、」総務省「労働力調査(詳細集計)」
コミュニティ・デザインと政策
38
地域別非正規雇用比率の推移
年齢階
級
(歳)
1997年
三 大 都 地方圏
全国 市圏
全国
2002年
三 大 都 地方圏
市圏
全国
2007年
三 大 都 地方圏
市圏
15-19
20-24
25-29
55-59
60-64
54.2
25.3
14.8
24.1
48.8
64.6
30.1
15.7
25.4
49.8
46.2
21.4
14.0
23.1
48.1
72.5
40.8
23.4
30.3
60.0
80.2
45.6
24.5
32.9
61.8
66.5
37.0
22.5
28.4
58.6
71.8
43.2
28.2
34.2
62.2
77.4
46.7
27.8
35.2
64.0
66.6
40.4
28.6
33.6
60.8
65歳以上
58.5
58.0
58.9
66.7
66.9
66.5
69.1
70.8
67.7
出所:平成21年版 労働経済白書
コミュニティ・デザインと政策
p.264
39
非正規雇用の増加
○近年は高齢者において非正規雇用が増え
ている。
○地方圏と三大都市圏を比較すると、
三大都市圏において、非正規雇用比率が
高まっている。
コミュニティ・デザインと政策
40
非正規雇用と所得の二極化
サスキア・サッセンは、サービス産業における雇用と雇用関係の非正規化に関して、重要な2つの指摘を行っている。
◦ 1点目は、サービス産業が技術水準の高低で両極端に分断されていることである。アメリカにおける労働集約型サー
ビス産業の新規雇用の大半は低賃金であり、新規雇用に占めるその割合が、1970年代の29%から1980年代は37%へ増
加している。その対極に位置するのが情報・知識集約型サービス産業における知識専門職ということである。先に述
べた我が国における日雇い派遣労働者の状況とIT関連産業における高額所得者の出現とも符合する指摘である。
◦ サッセンの指摘の2点目は、雇用関係の非正規化には2つの傾向があることである。第一の傾向は、雇用関係の構造
化において、企業の役割が弱体化していること。第二の傾向は、募集、選抜、訓練といった伝統的な労働市場の機能
が、労働市場や企業から、コミュニティや世帯に移転していることである。
◦ この2点目の指摘は極めて注目すべき、重要な指摘である。雇用関係の構造化において企業の役割が弱体化している
ことを示すのは、企業内労働市場の比重低下であり、企業の垂直的統合の比重が低下し、多数の企業で労働需要が二
極化に向けて再編されていることに照応している。高度な専門性をもち、高等教育を受けた労働者に対する需要が増
大すると同時に、事務職、サーヴィス職、工業サーヴィス、生産労働のいずれも非熟練労働者の需要が増大している。
そして、中程度の技能や訓練を備えた労働者への需要が縮小した結果、企業が内部に労働市場をもつ必要も利点も減
じてしまった、としている。
◦
また、労働市場機能が世帯やコミュニティへ移転していることについて、サッセンは、移民コミュニティの場合、
もっとも鮮明に現れ、一人であれ数人であれ、いったん移民労働者がある職場に雇用されると、仕事に空きが出るた
びに彼らは自分たちのコミュニティから仲間を呼び込む傾向がある。労働市場は雇用主とコミュニティ・世帯が同じ
空間で互いに依存しあう、ある種の活動空間として捉え直される、と指摘している。
サスキア・サッセン(2004)「グローバル空間の政治経済学」pp.227-234
コミュニティ・デザインと政策
41
賃金格差と空間の二極化
○サスキア・サッセンは、賃金格差と空間の二極化について、グローバル化の流れの
中で、詳細かつ丁寧に論じている。
○すなわち、アメリカ・日本をはじめとする先進諸国で、国民経済の重要なセクター
だった製造業の主要部門が落ち込んでいること、しかし製造業自体はグローバルな
レベルではめざましく伸びていること、
○さらに、今日の成長は、産業複合体で起きており、中産階級が増えることなく、所
得格差が開いていること、
○そして、社会経済的な二極化は、ニューヨーク、ロンドン、東京といった大都市で
起きており、新しい成長セクターが大都市に集積される中で、収益性の低いサービ
スや低賃金労働に対する需要も生み出されていることを指摘している。
サスキア・サッセン(2008)「グローバル・シティ」pp.372-376
コミュニティ・デザインと政策
42
雇用に関するグループ分け
『新時代の「日本的」経営』
◦ 1995年に日経連(現在の日本経団連)が『新時代の「日本的」経営』を発表した。その中
で、雇用に関して極めて重要なグループ分けを行っている。
◦ 第一のグループは、管理職や基幹労働者等の「長期蓄積能力活用グループ」(会社が長期
的に継続雇用しようと考え、社員もそのように働きたいと考える、雇用期間の定めのない
グループ)
◦ 第二のグループは、企画、研究開発・営業等の「高度専門能力活用型グループ」(会社の
抱える問題解決に専門的熟練・能力をもってこたえ、必ずしも長期雇用を前提としない有
期雇用のグループ)
◦ 第三のグループは、「雇用柔軟型グループ」(有期雇用で、職務に応じて柔軟に対応でき
るグループ)
◦ この経団連の雇用の3グループ論は、2000年前後から急増した非正規雇用を雇用者側の考
え方として、裏付けるものである。
コミュニティ・デザインと政策
43
不登校生徒数(中学校)の推移
1994年
61,663人 ⇒
(100)
1998年
2002年
101,675人 ⇒ 105,383人
(165)
(171)
○8年間で、不登校の生徒数は、1.7倍
出所:青少年白書
コミュニティ・デザインと政策
44
夫から妻への犯罪の検挙状況(傷害)
1996年
309件
(100)
2000年
⇒
838件
(271)
⇒
2004年
1,143件
(370)
○ドメスティックバイオレンスは、8年間で、
なんと3.7倍
出所:男女共同参画白書
コミュニティ・デザインと政策
45
消滅可能都市
2010年から2040年までの間に
「20~39歳の女性人口」が5割以下に減少する自治体数
は、現在の推計に比べ大幅に増加し、896自治体、全
体の49.8%にものぼる結果となった。
これらを「消滅可能都市」とした。
日本創成会議・人口減少問題検討分科会(平成26年5月)「ストップ少子化・地方元気戦略」
コミュニティ・デザインと政策
46
消滅可能性都市ランキングワースト50 2010年から30年間での20〜39歳の女性人口の減少率順
1位 南牧村89.9 群馬
2位 川上村89.0 奈良
3位 今別町88.2 青森
4位 奥尻町86.7
北海道
5位 木古内町86.5
北海道
6位 神流町85.5群馬
7位 夕張市84.6
北海道
8位 歌志内市84.5
北海道
9位 松前町84.5
北海道
9位 福島町84.4
北海道
9位 吉野町84.4奈良
12位 下仁田町83.7
群馬
12位 那賀町83.7 徳島
14位 室戸市83.4 高知
15位 粟島浦村83.2
新潟
16位 外ケ浜町83.1
青森
17位 南山城村83.7
京都
17位 高野町83.0
和歌山
19位 東吉野村82.7
奈良
20位 東秩父村82.6
埼玉
20位 神山町82.6 徳島
22位 妹背牛町82.1
北海道
23位 早川町82.0
山梨
24位 能勢町81.4
大阪
25位 能登町81.3
石川
25位 若桜町81.3
鳥取
25位 大月町81.3
高知
28位 南幌町80.9
北海道
29位 曽爾村80.6
奈良
30位 新上五島町
80.4 長崎
コミュニティ・デザインと政策
31位 大豊町80.2
高知
32位 豊能町79.8
大阪
33位 中泊町79.7
青森
34位 深浦町79.3
青森
34位 笠置町79.3
京都
36位 三笠市79.0
北海道
36位 豊富町79.0
北海道
36位 愛南町79.0
愛媛
39位 紀美野町78.8
和歌山
40位 奈井江町78.6
北海道
41位 すさみ町78.5
和歌山
42位 上砂川町78.2
北海道
43位 鮭川村78.1
山形
43位 奥多摩町78.1
東京
45位 小谷村77.9
長野
45位 三好市77.9
徳島
47位 七戸町77.8
青森
48位 上ノ国町77.7
北海道
49位 津和野町77.5
島根
50位 栄町 77.3
千葉
47
日本のコミュニティ政策の変遷
1
1940年代のコミュニティ政策
戦時体制下での町内会等の制度化 1940年「部落会町内会等整備要領」で町内会等の整備を指示。
2
1970年代~90年代のコミュニティ政策
1971~73年自治省、モデル・コミュニティ地区を全国で83地区を設定。コミュニティ施設の整備
について所要の財源措置。1983~85年コミュニティ推進地区を147地区設定。近隣協議会の結成な
ど。1990~92年コミュニティ活動活性化地区を141地区設定。計画づくり、行事・運動への取組み。
3
1993年以降、自治省は全市町村を対象とするコミュニティ政策に改めた。
4
1991年地方自治法を改正し、町内会等に法人格を取得し、団体名での不動産登記等
ができるようになった。2002年時点で、全国29万団体のうち、2万2千団体(7.4%)が認可を得
て、法人格を取得。
5
2007年総務省、コミュニティ研究会を発足。地縁団体と機能団体(NPO等)の両方の
コーディネート、プラットフォームの構築、ICTの活用等を議論。
出所:横道清孝(2009)「日本における最近のコミュニティ政策」
コミュニティ・デザインと政策
48
コミュニティ・デザイン論(1960年~1970年頃)
○ニュータウンなどの住宅デザイン
「生活の入れ物」をうまくデザインすることによってコミュニ
ティを生み出そうという試み
○既成市街地での再開発
既成市街地の居住環境をいかに整備するか。ハード整備から。
一定の地理的範域を対象にした主としてフィジカルな対応
山崎亮(2012)「コミュニティデザインの時代」pp.114‐118
コミュニティ・デザインと政策
49
1960年代から1970年代にかけての
コミュニティ論
1
伝統的地域社会が崩壊した。現代の都市的社会は、村落共同体や、隣保組織
の持つ拘束性から人々を解放した。
2
一方、現代都市社会は、個人の拘束性からの自由の代償として、人間関係の
希薄な社会となり、人々は孤独感に襲われるという事態となった。
⇓
3
そこで、自立した個人と家族を構成主体として、地域性と各種の共通目標を
もった開放的で信頼感のある集団をコミュニティと呼ぶことにしよう。
国民生活審議会
コミュニティ小委員会(1969年)
倉沢進(1998)「コミュニティ論」pp.33-37
コミュニティ・デザインと政策
50
コミュニティ・デザイン(1970年代)
1「地区」を対象とすること
2 物的な空間形成を主眼においていること
3 アーバンデザインを観点として内包していたこと
森村道美ほか(1976)「特集コミュニティ・デザイン」建築文化5
コミュニティ・デザインと政策
vol.31 p.355
51
コミュニティ・デザイン(1980年頃)
○コミュニティによる施設のデザイン
公共施設のデザインは、将来その施設を使う住民とともに考えるべき
「地域の生活環境であり計画である。地域、公園、地域の施設、小規
模の雇用周旋センター、そして時には町全体を、より公平な環境的
資源の再分配のために創造し、計画する」(ランドルフ.T.へス
ター)
山崎亮(2012)「コミュニティデザインの時代」pp.118‐121
コミュニティ・デザインと政策
52
ボランティア元年(1995年)
◦ 1995年1月17日阪神淡路大震災が発生.全国から数多くのボランティアが集まり
支援活動を展開した.1995年は,ボランティア元年と呼ばれている.
◦ 1997年1月にロシア船籍のナホトカ号が日本海で沈没した際にも,数多くのボラ
ンティアが海岸清掃作業に参加した.
◦ 1998年12月には特定非営利活動促進法,いわゆるNPO法が施行された.NPO法に
は保健,医療または福祉の増進を図る活動等,17のカテゴリーが定められている.
◦ 2011年3月11日発生の東日本大震災の際にも,数多くのボランティアが参加した.
災害時におけるボランティア活動は,確実に定着してきた.全国から集まったボラ
ンティの中には阪神淡路大震災の被災地からも多くのボランティアが駆け付けた.
◦ 2014年8月の広島の豪雨の土砂崩れの災害時にも,全国からボランティアが駆け
付け,助け合いの精神が根付いた.
◦ 2014年度末のNPO法人の数は、全国で48,985法人に上っている.
コミュニティ・デザインと政策
53
コミュニティ・デザインの系譜
(第3のコミュニティ・デザイン)?
○人々の集まりが力を合わせて目の前の課題を乗り越え、さらに
多くの 仲間を増やしながら活動を展開することを支援するの
が、第3のコミュニティ・デザインである。(山崎亮)
○コミュニティ・エンパワメント、コミュニティ・オーガニゼー
ション、コミュニティ・ワーク、コミュニティ・ディベロップメ
ント
○「第3のコミュニティ・デザインについては、『ものをつくる
ことを前提としないコミュニティ・デザイン』というほどのイ
メージしかない」(山崎亮) 山崎亮(2012)「コミュニティデザインの時代」pp.121‐129
コミュニティ・デザインと政策
54
コミュニティ・デザインへの多角的なアプローチ
(本講義で扱う既存の概念)
○コミュニティ・マネジメント
社会開発
○コミュニティ・オーガナイジング
社会学
社会福祉
○コミュニティ・オーガニゼーション
コミュニティ・デザイン
都市計画
教育学
○コミュニティ・ディベロップメント
○コミュニティ・ガバナンス
○コミュニティ・ジョブ
作成:國重
経済学
政治学
CBPR:Community Based
Participatory Research
○寄りあいワークショップ
コミュニティ・デザインと政策
55
コミュニティ・デザイン論の展開
○なぜ、コミュニティ・デザイン論は、
市街地再開発やアーバンデザイン、公共施設のデザイン、
都市の生活環境の整備に止まっていないのか
○コミュニティ・エンパワーメントやコミュニティ・オーガ
ニゼーションといった議論にまで、発展せざるを得ないの
か?
○コミュニティは、人々の暮らしを支えるものであり、都市
社会の変遷や社会経済情勢の変化を踏まえた分析を試みる
必要があるから。
56
コミュニティ・デザインと政策
地域再生に関する法整備
○2004年
都市再生特別措置法の改正
まちづくり交付金制度を創設。
・2005年度予算で1330億円を384地区に支出。
○2005年
地域再生法の施行
・税制上の特例措置を創設し、民間による税制上の地域再生を促進する。
特例措置の対象は、道路、農道、林道、下水道、集落排水施設、港湾施設、漁港施設
で、従来の公共事業と変わらない物的な事業
・地域再生基盤強化交付金を創設。
○2006年
都市計画法、中心市街地活性化法、大規模店舗立地法の改正
・最終的にコンパクトシティをつくりあげるねらいだが、最大の施策はまちづくり交付
金の事業枠拡大。
出所:本間義人(2007)「地域再生の条件」岩波新書
コミュニティ・デザインと政策
57
コミュニティデザインの進め方
コミュニティデザインの4段階
第1段階:ヒアリング
・どんな活動をしているのか、・その活動で困っていることは何か、・ほかに興味深い活動をして
いる人がいたら紹介してくれないか
第2段階:ワークショップ
・地元で生活する人たち自身が発案し、それを組み立て、自分たちができる範囲でプロジェクトを
立ち上げる
第三段階:チームビルディング
・アイデアが出そろった段階で「誰がどのプロジェクトを担当するのか」を決める
バランスも重要
・チーム内の
第四段階:活動支援
・経済的な支援を受けられる体制づくり支援、相談会の設置、専門家のレクチャー
など
・(コミュニティデザインの教科書は、当面書けそうもない。)
山崎亮(2012)「コミュニティデザインの時代」中公新書
コミュニティ・デザインと政策
58
寄りあいワークショップの進め方
(地域再生起動ステップガイド)
0「設営・提供」
行政から、地域に対してワークショップの導入・開催を働きかける。
1「事前調査」
外から見た資源写真地図作成。
2「課題の明確化」意見地図の重要ポイントの重みづけで皆で投票・評価。
3「現地調査」
住民自らが地元を探検し、もの、こと、シーンの写真取材を行う。
4「実態把握」
班ごとの「資源写真地図」を全体で発表し、視野の広がりをもつ理解を図る。
5「アイデア出し」住民自らが「イラストアイデアカード」にイラストを用いてアイデアを描く。
6「解決策・実行計画立案」「暮らし再生メニュー地図」を描き、皆で評価。実行計画案を作成。
7「実行組織の立ち上げ」
住民主体のもとに実行組織を立ち上げる。リーダーを選任する。
8「実践と取材」
計画を煮詰め、計画の実現に取り組む。結果、成果、新たな課題を写真取材する。
9「結果の検証」
検証写真地図を作成する。イラストアイデアカードを用いて改善アイデアを作成。
10「次計画立案」ステップ6の進め方に準じる。2~3年と継続し、地域経営の視点からの取組みが必要に。
山浦晴夫(2015)『地域再生入門―寄りあいワークショップの力』筑摩書房。
コミュニティ・デザインと政策
59
「まちづくりの実践」より
「まちづくり」を継続する力
これからの時代に求められるもの
1
「まち」を愛する心
◦ 自己中心主義からの脱皮
2
人が好き、出会いが好き
◦ 国際性を育てる
3
楽しむ心、ゆとりの心
◦ 人間環境を守り育てる
4
小さな成功を重ねる
◦ 人生を豊かにする
5
小さな感動をもつ
6
互いに元気づける
◦ 新しい自由な人間の結びと出会いの場をつく
る
7
相手を恐れない少しばかりの勇気
◦ 未来と対話する
8
次の世代へ繋げる
9
たまには立ち止まる
出所:田村明(1999)「まちづくりの実践」岩波新書
コミュニティ・デザインと政策
60
日本の名目GDPの推移(1997年がピークだった)
年
1 9 8 0 1 9 8 1 1 9 8 2 1 9 8 3 1 9 8 4 1 9 8 5 1 9 8 6 1 9 8 7 1 9 8 8 1 9 8 9
246,464.50
年
289,314.59
307,498.71
330,260.58
345,644.50
359,458.42
3 8 6 ,4 2 7 .7 9
4 1 6 ,2 4 5 .8 6
476,430.98
487,961.51
490,934.25
495,743.50
501,706.90
511,934.80
523,198.30
5 1 2 ,4 3 8 .6 0
5 0 4 ,9 0 3 .1 0
2 0 0 0 2 0 0 1 2 0 0 2 2 0 0 3 2 0 0 4 2 0 0 5 2 0 0 6 2 0 0 7 2 0 0 8 2 0 0 9
509,860.00
年
278,178.97
1 9 9 0 1 9 9 1 1 9 9 2 1 9 9 3 1 9 9 4 1 9 9 5 1 9 9 6 1 9 9 7 1 9 9 8 1 9 9 9
449,392.30
年
264,966.29
505,543.30
499,147.00
498,854.70
503,725.40
503,903.00
506,687.00
512,975.20
5 0 1 ,2 0 9 .3 0
4 7 1 ,1 3 8 .6 0
単位:10億円
61
2 0 1 0 2 0 1 1 2 0 1 2 2 0 1 3 2 0 1 4 2 0 1 5
482,384.40
471,310.80
475,110.30
480,128.10
487,882.30
500,736.90
コミュニティ・デザインと政策
日本の経済成長率の推移(1956‐2013)
実質GDPの対前年度増減率
コミュニティ・デザインと政策
62
戦後の日本経済の3つの段階と地域社会
第一段階 :
年平均9.1%の経済成長
1956年から1973年(もはや戦後ではない~第一次オイルショック)
(都市圏への激しい人口流入、公害等の住民運動や反戦・学生運動
第二段階 :
など)
年平均4.2%の経済成長
1974年から1990年(第一次オイルショック~バブル崩壊)
(都市圏へ緩やかな人口流入、まちづくり運動やスポーツ・文化活動
第三段階 :
など)
年平均0.9%の経済成長
1991年から2015年(バブル崩壊~リーマン・ショック~今日)
(長期の経済停滞、シャッター商店街、2つの大震災、NPO法人の成長
コミュニティ・デザインと政策
など)
63
移行理論(Transition Theory)
◦ M.ビーンストックは、「移行理論(Transition Theory)」により、周辺地域に波及した工業化が、
相対価格を変化させ、部門間・地域間の利潤率を変えて、世界的な構造変化を加速させたと主張し
ている。移行理論の命題は次のようなものである。
(1)1960年代半ばから途上国の経済成長率が上昇し、特に製造部門での成長が加速したこと
(2)1970年代に世界的な工業製品価格が低下したこと
(3)この工業製品の下落により、工業部門における収益が悪化し、旧工業地域(OECD諸国全般)
の脱工業化が進んだこと
(4)新工業地域(途上国)の収益増大と旧地域(OECD諸国)からの国際資本移動が進んだこと
(5)旧地域内では、相対価格の変化と低い資本ストックに適用すべく、制度的硬直性や摩擦によっ
て構造的失業が増大、移行期における過渡的な性格の不況が生じたこと
(6)世界的資源配分と構造転換、工業生産力の移転と工業製品の交易条件悪化によって、中心地域
に相対的に不利な所得再分配がなされたこと、である。
(Beenstock,1984,pp.14-17,61)
コミュニティ・デザインと政策
64
コミュニティ・オーガナイジング
○1990年以降、急速にアメリカ社会の中で存在感を高めてきた。
○弁護士になる前のオバマ大統領が関わっていた。
○3つの意味
①企業、労働者とその家族、学校、教会など、さまざまな利害をもった者が集う、そう
した利害がせめぎ合う場所が、コミュニティであり、そこで利害関係者を探し出し、
話し合いのテーブルにのせること。
②コミュニティに集う人と人、組織と組織をつなぎ合わせることで、お互いが助け合う
しくみをつくること。
③そうしてつなぎ合わせることで得られた力を使って、一人ひとりが生きがいをもって
暮らせるように、社会を変えていくこと。
出所:山崎憲(2014)「『働くこと』を問い直す」岩波新書
コミュニティ・デザインと政策
65
地域の課題の多くは……
◦ 貧困
◦ 子育て
不登校
ニート
◦ DV(ドメスティック・バイオレンス)
◦ 買い物難民
介護
◦ 高齢者の単独世帯
孤独死
……
○地域の課題の多くは、家庭(household)から
派生している。
コミュニティ・デザインと政策
66
家庭を機能づける構成要素
土地に関する要素
人に関する要素
資金に関する要素
生活機能
家屋や電気・水の
供給を含む[生活装
置]
家事・教育・娯楽
及び福祉の対象と
なる[家族]
生活に関わる[現
金・消費財]
生産機能
農地・商店・工場
をはじめとする[生
産装置]
生産のための就労
に関わる家族[労働
力]
生産に関わる[資
金・生産材]
管理機能
生活・生産装置の 生活・生産に関す 生活・生産に資金
[処分・利用]を決め る家族の役割[分担] を[分配する]機能
る機能
を決める機能
出所:J.F.Jones&T.Yogo(1994)”New Training Design for Local Development”,UNCRD
コミュニティ・デザインと政策
67
人間生命の再生産 ⇒ 家庭
○人間生命の再生産を担う普遍的な存在としての家庭が、一番
重要視されなければならない。
○家庭構成要素を「分解」することによって所得の最大化を図
ろうとするのが都市的社会における家庭であり、「結合」を
通じて最大化しようとするのが農村的社会の特徴である。
○したがって、分解を志向する都市社会にとっては、同好的な
ネットワーク関係が好まれ、結合を志向する農村社会にとっ
ては、地縁的な組織関係が重要な意味を持っている。
余語トシヒロ(2005)「地域社会と開発の諸相」p.167
コミュニティ・デザインと政策
68
地域社会システム
行政
中間組織
市場
家庭
地域
社会
出所:余語トシヒロ(2005)『地域社会と開発の諸相』p.168
コミュニティ・デザインと政策
69
地域社会システムにおける家庭の状況
○何らの規制を受けることなく、自らの判断で市場や政策機会をと
らえ、家庭構成要素の獲得・処分・取引を自由に行えることが生
活福祉達成の条件となる。
○しかし、多くの家庭は、職業や移動の自由が制度的に制限されて
いたり、あるいは、家庭構成要素の一部が地域社会や組織に固定
されていることから生じる慣習によって、職業や移動の不自由に
あるのが現実である。
○市場や政策の内容、そこに至る距離の違いもあって、すべての家
庭が必要十分な要素を確保できているわけではない。
出所:余語トシヒロ(2005)『地域社会と開発の諸相』p.168
コミュニティ・デザインと政策
70
地域社会システムにおける中間組織の重要性
◦ 家庭と地域社会を結ぶ線上にあるのは、社会組織、家庭と市場を結ぶ線上にある
のは経済組織、家庭と行政を結ぶ線上にあるのは政治組織として理解され定義づ
けもされている。
◦ 中間組織とは、地域社会・市場・行政の諸機能の一部あるいは全部を内在化して
いるものと定義される。
◦ 途上国の多くでは、人々が生活し生産する場を取り巻く地域社会・市場・行政の
機能不全が問題となる。(途上国でなくとも、地域社会・市場・行政の機能不全
が問題となる場合がある。)
◦ システムの機能不全を補っているのが中間組織であり、開発協力の一つの焦点が
この組織作りにあると思われる。
余語トシヒロ(2006)「地域社会と開発の諸相」p.168
コミュニティ・デザインと政策
71
コミュニティ・ガバナンス
○ボウルズとギンティスは、ソーシャル・キャピタルに基づくガバナンスを「コ
ミュニティ・ガバナンス」として、重要視している。
○コミュニティ・ガバナンスは、小集団の社会的相互作用の集まりであり、市場
のガバナンス、政府のガバナンスを補完する必要がある。
○余語の指摘する中間組織、ボウルズとギンティスの指摘する「小集団の社会的
相互作用の集まり」はともに、市場や政府の機能を補完するという点で、共通
する概念となっている。
コミュニティ・デザインと政策
72
地域の諸機能に対する範域・全体(数字は%)
以下のことを共に行う仲間は、主にどこに住んでいます 向う三軒 班域
か?(複数回答可)
両隣
数班の集 自治会域 広域
合域
①地域運営:まちや近所の人の様子について相談する
26
14
14
28
34
②防災:地震や火事など災害対策について話す
24
11
11
22
36
③防犯:交通や防犯など地域の安全について話す
23
14
11
27
36
④環境整備:川の掃除などの整備活動を一緒に行いやす 22
い
⑤楽しみ:遊びに行くなど皆で楽しむ集い
5
18
13
24
29
9
5
18
75
⑥助け合い:気軽に頼みごとをしやすい
21
11
9
16
51
⑦教育:子育てや子供に関することを相談する
11
11
8
20
64
出所(『日本建築学会計画系論文集』第552号、202頁、鈴木・藍澤・高橋『地域社会の機能・範域・人の縁からみた社会単位に関する研究』(2002年)より。)
コミュニティ・デザインと政策
73
地縁・組織縁・学校縁・社縁・子ども縁の内
容と具体例
種類
内
容
具
体
例
①地縁
同自治組織に加入していることでつながる仲間
自治組織メンバー、氏子集
団
②組織縁
ある目的が一致した時のみ集まる仲間
趣味・学習・宗教活動での
知人
③学校縁
同じ学校に通ったことでつながる仲間
同級生、同窓生
④社縁
職場を通じた仲間
職場の仲間、同僚
⑤子供縁
子供を媒介とした仲間
PTAや子供の遊び場での
知人
出所:『日本建築学会計画系論文集』第552号、202頁、鈴木・藍澤・高橋『地域社会の機能・範域・人の縁からみた社会単位に関する研究』(2002年)
コミュニティ・デザインと政策
74
機能ごとの縁の種類・全体
(数字は%)
以下のことを共に行う仲間は、主にどこに住んでいますか?(複数 地縁 組 織 学 校 社縁 子 供
回答可)
縁
縁
縁
①地域運営:まちや近所の人の様子について相談する
②防災:地震や火事など災害対策について話す
42
32
7
6
6
3
6 16
8
7
③防犯:交通や防犯など地域の安全について話す
④環境整備:川の掃除などの整備活動を一緒に行いやすい
32
29
6
6
1
3
5 12
3
6
⑤楽しみ:遊びに行くなど皆で楽しむ集い
⑥助け合い:気軽に頼みごとをしやすい
14 18
26 10
⑦教育:子育てや子供に関することを相談する
13
6
12 17 16
9 14 13
4 10 20
出所:『日本建築学会計画系論文集』第552号、202頁、鈴木・藍澤・高橋『地域社会の機能・範域・人の縁からみた社会単位に関する研究』(2002年)
コミュニティ・デザインと政策
75
第3回
人的資源開発と地域の産業社
会
コミュニティ・デザインと政策
76
今回のねらい
①地域活動団体にはどのようなものがあるのか。どのような機能を果たしている
のか。
②ソーシャルキャピタルとは何か。新資本理論における社会関係資本(ソーシャ
ルキャピタル)と人的資本の位置づけ
③さまざまな社会的課題、特に雇用・就業問題について、人的資源(ヒューマ
ン・キャピタル)の観点から考察する。
②神奈川で人的資源開発、職業能力開発がどのように展開され、地域の産業社会、
地域の企業集団が、どのように関わってきたのかを考える。
コミュニティ・デザインと政策
77
現代社会におけるコミュニティの類型
コミュニティによって提供される機能の数
地域的
基盤
必要
多数
少数
(1)完全な地域コミュニ ( 2 ) 限 定 的 コ ミ ュ ニ
ティ
ティ
(3)社会としてのコミュ ( 4 ) 個 人 的 コ ミ ュ ニ
不必要 ニティ
ティ
出典:園田恭一(1978)『現代コミュニティ論』東京大学出版会
コミュニティ・デザインと政策
78
地域的基盤と提供機能数に基づく地域社会単
位の類型
地域社会単位により提供される機能の数
多 数
少 数
Ⅰ
Ⅲ
濃厚
地縁型活動団体(自治会 テ ー マ 別 地 縁 活 動 団 体
地域的
(狭域) 等)
(消防団、老人会、子供
会等)
基盤
Ⅱ
Ⅳ
薄弱
地域ネットワーク協議会 テーマ別ネットワーク活
(広域) (まちづくり協議会等) 動団体(NPO法人等)
(作成は國重)
コミュニティ・デザインと政策
79
地域活動団体の類型と提供される機能
地域活動団体により提供される機能
多
濃厚
(狭域)
地域的
基盤
薄弱
(広域)
数
Ⅰ 地縁型活動団体
(自治会等)
○環境美化・清掃
○住民相互の連絡
○お祭り・イベント開催
○行政からの広報・連絡
○街路灯・ 集会施設の維持管理
Ⅱ 地域ネットワーク活動団体
(まちづくり協議会等)
○住民意見の行政への反映
○予算の配分
○まちづくりへの参加
など
少
数
Ⅲ テーマ別地縁活動団体
(老人会,子供会,消防団)
○老人相互の親睦
○子供を通じた親睦
○消防・防犯
など
など
コミュニティ・デザインと政策
Ⅳ テーマ別ネットワーク活動団体
(NPO法人等)
○地域福祉・保健
○教育(不登校・引き
こもり等)
○芸術・文化活動 など
出所:國重(2012)
80
互酬性の規範と市民的積極参加のネットワーク
○現代では、社会的信頼は、相互に関連する2つの源泉(互酬性の規範と
市民的積極参加のネットワーク)から現れる可能性がある。
○市民的積極参加のネットワークは、近隣集団、合唱団、協同組合、ス
ポーツ・クラブ、大衆政党など、活発な水平的交流を表すものである。
○市民的積極参加のネットワークは、社会資本の1つの本質的な形態であ
る。
○共同体のこの種のネットワークが密になればなるほど、市民は相互利益
に向けて協力できるようになろう。
ロバート・パットナム(2001)「哲学する民主主義-伝統と改革の市民的構造」
コミュニティ・デザインと政策
81
ソーシャルキャピタル(結合型と橋渡し型)
性質
形態
結合型 (*bonding 結束型)
(例:民族ネットワーク、県人会)
フォーマル
(例:PTA、労働組合、町内会・自治会)
厚い
(例:家族の絆)
源泉とその発現 役割と規則、ネットワークその他の人的関係、手続き
と先例
内部志向
志向
(例:商工会議所)
強い紐帯
紐帯
程度
橋渡し型(*bridging 接合型)
(例:環境団体)
インフォーマル
(例:バスケットボールの試合)
薄い
(例:知らない人に対する相槌)
規範、価値、態度、信念
外部志向
(例:赤十字)
弱い紐帯
領域
社会組織
市民社会文化
動的要因
水平的連携、垂直的連携
信頼、結束、協力、寛容
出所:坂本治也(2002)「ソーシャルキャピタル概念の意義と問題点」など。
コミュニティ・デザインと政策
82
資本の理論の類型
古典理論
マルクス
理論家
説明
資本
分析レベ
ル
人的資本
新資本理論
文化資本
社会関係資本
シュルツ、ベッ ブルデュー
カー
リン、バート、
マースデン、フ
ラップ、コールマ
ン
社会関係:資本家(ブルジョア 労働による余剰 支配的なシンボルと 社 会 的 ネ ッ ト ワ ー
ジー)によるプロレタリアートの搾取 価値の蓄積
価値(バリュー)の再生 ク に 埋 め 込 ま れ た
資源の利用とアク
セス
ブルデュー、コー
ルマン、パットナ
ム
A.(消費市場における)使 技術的スキルと 支配的な価値の吸収 社 会 的 ネ ッ ト ワ ー
(internalisation)、又は クの投資
用価値と(生産-労働市場 知識の投資
における)交換価値の間の
不承認
(misrecognition)
余剰価値の一部
B.財の生産と流通における
投資
相互の評価
(recognition)と
承認
(acknowledgment)の
投資
構造的(階層)
個人
個人/階層
個人
グループの連帯意
識(solidarity)
と再生
(reproduction)
グループ/個人
出所:(Nan Lin ,1999)國重訳
コミュニティ・デザインと政策
83
社会関係資本論の変遷
研究者
年
概
要
自治のためのコミュニティ発展のためには「ソーシャル・キャピタル(善意、仲間意
L.J.ハニ
ファン
1916年 識、相互の共感、社会的交流)」の蓄積が必要であり、そのための投資も必要である。
(学校が成功するためには、地域社会の関与が重要であると強調。)
(L.J.Hanifan)
建築学・都市社会学的な視点から都市開発への問題を提起し、近代都市における隣人
J.ジェイコブ
ズ
1961年 関係など社会的ネットワークを「ソーシャル・キャピタル」と表現し、その重要性を
強調した。
(Jane Jacobs)
アメリカにおいて、白人と有色人種を比較した場合、白人の方が生まれた時点におい
ラウリー
1977年 て、既に人的資本獲得に有利な環境にある。このような利点を指摘し、それをソー
(Glenn Loury)
シャル・キャピタルとした。
人間の日常的、現実的なコミュニケーション活動に着目し、その円滑化のための資本
として、文化資本やソーシャル・キャピタルを定義した。(当人になんらかの利益を
ブルデュー
1986年 もたらす形で社会化された人間関係の総体であり、例えば「人脈」や「コネ」、「顔
(Pierre Bourdieu)
の広さ」といったもの)
コールマン
(James
S.Coleman)
ソーシャル・キャピタルとは社会構造の、ある局面から構成されるものであり、そ
1988年 の構造の中に含まれている個人に対し、ある特定の行為を促進するような機能を
もっているもの。
コミュニティ・デザインと政策
出所:内閣府委託調査(2002)に國重加筆
84
先端産業から地場産業に至るまでの技術・人
材・資金の類型
産業
資源
技術
人材
資金
先端産業
◦
自動車産業、家電産業、 地域伝統文化産業、
商業・流通業など
地場産業、コミュニティ・ビ
ジネスなど
金属加工技術、電子組 伝統技能・技術
立技術、機械技術、
陶芸・木工等の技術
食料品製造業技術等
ハイテク技術(新素
材・新エネルギー産業)
など
ベンチャー企業経営者
熟練技能者、技術者、
大 学 、 国 ・ 県 研 究 機 中小企業者、商工会議
関の研究者
所、工業会
新興株式市場
ベンチャーファンド
地銀、信用金庫・信用
組合等
コミュニティ・デザインと政策
自治会・町内会、シル
バー人材センター、地
域作業所・授産所
コミュニティ基金
85
人的資源開発(職業能力開発、技術者研修)
◦ 産業構造の変化に対して、地域における職業能力開発政策は、ある程度適応し、有効に働いてき
たと考えられる。その適応について、大きな働きをしてきたのが、地元の中小企業群である。
従って職業能力開発は、経済合理性だけでは、うまく機能しない。
◦ 地域経済集団(主に中小企業群・地域職人集団)と職業能力開発政策との相互作用は存在すると
考えられる。
◦ 自治体は地域経済集団(主に中小企業集団・地域職人集団)と職業能力開発政策との相互作用を
尊重しつつ、職業訓練環境の整備を推進することが望まれる。
◦ 自治体は職業能力開発政策を教育訓練政策としてのみではなく、地域産業政策の一環として、位
置付けられなければならない。さらに、地域産業政策の一環としてのみではなく、地域社会開発
の一環として、位置付けることが重要である。
◦ 地域格差・所得格差の是正、地域の自律的発展に向け、自治体は今後の産業構造の展開の行方を
見据えつつ、地域住民の職業能力開発、技能の習得に取り組まなければならない。
コミュニティ・デザインと政策
86
職業能力開発の類型(神奈川県(平成19年度)の場合)
施設内訓練(公)
求職者(未就
職者・離転職
者)
在職者
委託訓練・認定校(民)
県立職業技術校(8校1分校1,070人) 離転職者委託訓練
県立短大校(400人)、障害校(180
県立職業技術校・短大校
(2校、1,012人)⇒各専門学校・各種学校
人)
市立職業訓練校
障害校 ⇒各専門学校・各種学校
(1校200人)
(1校、342人)
(独)雇用・能力開発機構(他に短大校)
(2校、579人)
県立職業技術校(他に短大校、障害
校)
(7校、624コース、8,120人)
事業内職業能力開発(認定校)
長期間(9校、402人)
短期間(48団体、27,737人)
出所:國重(2011)
コミュニティ・デザインと政策
87
訓練コースの類型
ハード
機械加
工・溶接
板金・自
動車整備
室内施
工・ビル
管理
短期
長期
コン
ピュータ
組み込み
開発
介護サー
ビス
ソフト
コミュニティ・デザインと政策
出所:國重(2011)
88
各職業技術校と訓練コース
A校
B校
C校
•工業系:チャレンジプロダクト、自動車整備、機械Cadなど
•建築系:建築設計、室内施工、ビル設備管理など
•社会サービス系:ケアワーカー、給食調理など
•工業系:マシニング&Cad/Cam、選択型プロダクト電気、自動
車整備、機械Cad
•社会サービス系:ケアワーカー、介護調理
出所:國重(2011)
コミュニティ・デザインと政策
89
職業訓練における就職までの過程
企業実習
実習
座学
(コースにより異なる)
出所:國重(2011)
コミュニティ・デザインと政策
90
技術校入校者の最終学歴(平成19年度以下同じ)
入校者
中学卒
高校卒
短大卒
大学卒
その他
933人
43
468
149
248
25
(4.6%) (50.2%) (16.0%) (26.6%) (2.7%)
出所:國重(2011)
コミュニティ・デザインと政策
91
技術校入校者の状況
募集 入校 受講指 女性
定員 者
示
351
940
933
(37.6%)
154
~34
35~
45~
60~
歳
44歳
59歳
歳
588
137
170
38
(16.5%) (63.0%) (14.7%) (18.2%) (4.1%)
出所:國重(2011)
コミュニティ・デザインと政策
92
職業能力開発校の就職率(全国・神奈川)
平成18年度
受講者
短期課程(離
職者訓練)
普通課程(学
卒者訓練)
全国
神奈川
75.2%
93.3%
92.6%
88.7%
コミュニティ・デザインと政策
出所:國重(2011)
93
職業技術校生の就職後(同一職場)定着率
平成16年度の修了
生
平成16年末日
回答者
定着者
離職者
定着率
離転職率
210
200
10 95.2%
4.8%
平成17年末日
210
158
52 75.2%
24.8%
平成18年末日
210
128
82 61.2%
39.0%
平成19年11月1日
(約3年経過)
210
111
99 52.9%
47.1%
出所:國重(2011)
コミュニティ・デザインと政策
94
職業能力開発推進協議会(推進協)とは
何か?
A社
A校職業能力
開発推進協
議会
• 機械部品
メーカー
B社
(推進
協)
C社
• 自動車販
売会社
• 高齢者福
祉施設
出所:國重(2011)
コミュニティ・デザインと政策
95
推進協と地域商工関係団体の関係
各地区工
業会
商工会議
所・商工
会
各事業共
同組合
推進
協
出所:國重(2011)
コミュニティ・デザインと政策
96
技術校の訓練生規模と推進協の規模
会
員
数
B短大校
200人
353社
D技術校
115人
116社
A技術校
580人
166社
C技術校
185人
85社
コミュニティ・デザインと政策
校の定員
出所:國重(2011)
97
職業能力開発推進協議会会員への就職率
協議会
就職者数
会員企業就職者数
割合
H
138人
12人
8.7%
F
28
25
89.3
O
82
7
8.5
D
69
24
34.8
T
154
94
57.3
S
77
18
23.4
合計
558人
180人
32.3%
出所:國重(2011)
コミュニティ・デザインと政策
98
技能育成(職業能力開発)から技術開発へ
職業能力開発
↓
企業内技術開発
↓
↓
異業種交流
新事業分野進
出
↓
新事業創出
高度技術
↑
技術
技能
コミュニティ・デザインと政策
↑
99
イノベーション人材育成のための取組み
上司あるいは先輩の指
60 導による技術・技能の
継承, 56.2
50
40
30
セミナー や講演会等へ
の参加促進, 37.3
役職・責任あるポジ シ ョ
ン、決定権限の付与,
26.5
外部機関が行うプ ログ
ラ ム 等への参加促進,
28.3
20
技術革新の成果を報
酬に反映, 25.9
社内ジ ョ ブ ロー テ ー
シ ョ ンによる幅広い知
識・技術を習得させる,
14.4
10
0
コミュニティ・デザインと政策
100
工業技術研修事業の各種研修
研修の種類
研修の目標
研修時間数
受講者数
長期技術者研修
若手・中堅技術者を将来の指導的技術者に育成するために
必要な幅広い技術の基礎と応用技術を習得させること
講義約230時間、
実習約80時間、合計310時
間
4,339人
(2007年までの延
べ人数)
中期技術者研修
最新の技術開発の成果を新製品の高付加価値化に活かすこ
と(プラスチック成形加工、メカトロニクス、IC応用技術
など)
講義48時間、
実習約12時間、合計60時間
2,382人
短期技術者研修
企業の生産現場の仕事に関連した実践的な技術的内容を中
心に、現場の改善に活かすこと(建築構造技術、プラス
チック成形加工、材料利用技術など)
講義および実習で約36時間
4,133人
産地産業研修
地場産業における後継者育成等のために、専門技術の高度
化を図ること
講義および実習で約36時間
1,702人
高度技術者研修
より高度な専門技術や複合技術など、開発や改善に必要な
ハイレベルの技術を付与すること
講義および実習で約65時間、 1,162人
ゼミナール・論文で15時間
新技術技術者研修
先端技術の有する必要事項について、基礎的知識を付与す
ること
講義および実習で約9時間
2,932人
民間企業技術者研修
民間企業の有する先進的な技術を活用し、応用開発に役立
ててもらうこと
講義および実習で約30時間
250人
出所:國重(2011)
コミュニティ・デザインと政策
101
工業技術研修センター規模別会員企業の割合
13%
5%
12%
9%
14%
8%
21%
0-10人
11-30人
31-50人
51-100人
101-200人
201-300人
301-500人
501-人
18%
コミュニティ・デザインと政策
102
地域別会員数の変化
300
250
252
1988年
度 (657
社)
200
150
130
98
100
44
50
0
横浜市
27
12
38 33
川崎市 横須賀市 藤沢市
37 25
32 40
25 29
平塚市 相模原市 大和市
コミュニティ・デザインと政策
2007年
度 (461
社)
103
長期技術者研修受講者の学歴別推移
140
中卒
120
100
高卒
80
短大卒
60
40
大卒
20
(大学進学率・
男子 %)
0
1966年 1973年 1980年 1987年 1994年 2001年 2007年
コミュニティ・デザインと政策
104
長期技術者受講者の平均年齢の推移
35
30
25
20
22 43
22 43
1966年
1973年
22 98
25
22 76
25
22 54
23
30
28
33 10
29
機械関連
化学関連
電子技術
15
10
5
0
1980年
1987年
1994年
コミュニティ・デザインと政策
2001年
2007年
105
神奈川県の産業別生産額の割合変化
45
40
35
30
25
20
15
10
5
0
38.1
36
37.7
32.2
22
3.2
22.7
22.2
21.5
12.9
13.7
29.7
25.6
11.3
29.7
29.5
12.9
34.3
29.9
12.3
29.8
27.9
14.3
一般機械
+輸送機
29
25
15.8
電気機械
化学工業
3.3
1966年 1971年 1976年 1981年 1986年 1991年 1996年 2001年 2006年
コミュニティ・デザインと政策
106
長期技術者研修受講者のコース別推移
120
100
96
機械関連
コース
80
電子技術
科
60
49
40
44
37
37
31
28
21
20
0
52
0
1966年
0
1971年
1976年
19
1981年
44
40
23
36
29
26
30
27
21
36
31
33
30
化学関連
コース
22
14
1986年
1991年
1996年
コミュニティ・デザインと政策
2001年
2006年
107
職業能力開発政策のフェイズ
職業能力開発施策のフェイズ
指 標
1
最初のフェイズ(訓練と就職の量
的拡大)
訓練生の就職率
就職先の企業のゆるやかな会合
2
中間のフェイズ(訓練と就職の質
的向上)
訓練修了生の追跡調査
訓練生による授業評価
3
主要なフェイズ(地域企業集団と
の連携、産業構造変化への対応)
企業集団の組織化
組織化された企業集団による活動
2009/1/24 研究会(國重)
コミュニティ・デザインと政策
108
第4回
若年者の就業問題と地域組織間連携
コミュニティ・デザインと政策
109
今回のねらい
①深刻化する若年者の就業問題について、職業能力開発の観点から考
察する。
②就業問題に対する職業能力開発において、それぞれの地域組織がど
のように機能しているかを見ていく。
③それぞれの地域組織がどのように連携しているのかを考える。
④地域組織間連携とは何か。生活困窮者やニート・引きこもりの問題
への対応の可能性を探る。
110
コミュニティ・デザインと政策
若年者失業率の推移
%
14
15-19歳
12.5
12
12.8
12.1 12.2
11.9 11.7
20-24歳
10.6
25-29歳
10
9
全年齢計
7.1
6.6
6.6
8.4
7.5
3.8
3.7
3.8
2.8
2.3
2.7
2.1
2.8
2.9
2.1
2.2
7.1
6.7
5
4.3
4
3.4
2.5
8.7
8.4
7.1
5.7
3.9
9
8.6
6.7
4.7
2
9
3.2
2.9
6.2
6.1
6.2
4.9
4.6
6.4
5.4
4.7
4.7
5
7.5
6
5.7
7.1
4.7
4.4
4.1
3
5
7
9.1
7.1
7.1
5.1
5.1
3.9
4
3.4
0
平成元
9
6
5.3
4.1
3.4
6.2
9.8
8
7
6.2
5.6
9.6
9.4
9.3
7.7
6
4
9
8.2
8
7
10.2
9.8
9
11
13
コミュニティ・デザインと政策
15
17
19
21
111
若年者失業率の推移から何が分かるか?
○失業率は、1997(平成9)年頃から急上昇し、
平成14、15年頃にピークに達した。
○2002、03(平成14、15)年以降、失業状況は
回復したが、2008(平成20)年のリーマン・
ショック後に再び上昇している。
○リーマン・ショック後、失業率は、全体に上
方に収束する傾向にある。特に20-24歳は、
高止まりの傾向にある。
コミュニティ・デザインと政策
112
正社員として採用する若年者に求める資質・能
力(県内企業1117社アンケート)
若年者に求める資
質・能力
責任感、確実性
協調性、柔軟性
行動力、実行力
誠実な人柄
コミュニケーション能力
精神的な強さ
体力
若年者に求める
ビジネススキル
68.2%
63.8%
59.9%
53.6%
45.1%
35.4%
29.5%
営業・企画職
技術・開発職
生産工程・労務職
事務
接客・販売職
経理
総務・人事
コミュニティ・デザインと政策
37.6%
35.1%
34.3%
14.1%
14.0%
12.2%
11.3%
113
地域組織のネットワークの類型
連携の広さ
狭いネットワーク
広いネットワーク
同種・異種
同種連携
会員組織型
連合会型
異種連携
プラットフォーム型
連絡会型
出所:國重(2012)
コミュニティ・デザインと政策
114
人的資源開発に関係する地域組織の類型
連携の広さ
狭いネットワーク
広いネットワーク
同種・異種
同種連携
異種連携
会員組織型
調理技能士会,塗装協会など
プラットフォーム型
地域職業能力開発推進協議会,
商工会,商工会議所,
異業種交流グループなど
連合会型
左官業組合連合会
技能士会連合会など
連絡会型
職業能力開発推進団体連合会,
人材育成支援ネットワーク,
異業種交流グループ連絡会,
障害者雇用推進連絡会など
出所:國重(2011)を修正
コミュニティ・デザインと政策
115
地域組織間連携とは
第一の連携
公共機関相互の連携
第二の連携
公共機関と地域社会との連携
第三の連携
地域社会における企業・団体の
連携
コミュニティ・デザインと政策
116
地域組織活動の継続性と振り子現象
◦それぞれ3つの連携の間で新たな取組みや提案,働きかけが,
第一の連携から第二の連携,第三の連携の方向へ,
◦また,第三の連携から,第二の連携,第一の連携の方向へと
振り子のように往復することにより,それぞれの活動が継続
性のあるものになる。
◦活動の継続性に関する振り子現象がある.
國重(2011), p.164,國重(2014),pp.63‐69
コミュニティ・デザインと政策
117
職業能力開発政策における地域組織間の連携
連携パターン
第一の連携
第二の連携
第三の連携
内 容(例示)
・公共職業安定所と職業能力開発校との連携
・職業能力開発校と教育機関(高校・専門学校等)との連携
公的機関相互の連携 ・公設試験研究機関と職業能力開発校との連携
・職業能力開発校と都道府県職業能力開発協会との連携
・都道府県と(独)高齢・障害・求職者雇用支援機構との連携 など
・職業能力開発校と地域職業能力開発推進協議会(地域企業)との連携
公的機関と地域社会 ・都道府県職業能力開発協会と職種別団体との連携
・公設試験研究機関と商工会議所・商工会との連携
との連携
・公共職業安定所と商工会議所・商工会との連携 など
・地域職業能力開発推進協議会と職業能力開発推進団体連合会との連携
・地域職業能力開発推進協議会と商工会議所・商工会との連携
地域社会における企 ・地域職業能力開発推進協議会と職種別団体(塗装協会,調理技能士会
業・団体の連携
等)及び技能士会連合会との連携 など
コミュニティ・デザインと政策
出所:國重(2011)
118
経営者団体内におけるセミナー等の主要な対象
者の雇用就業形態
全体
事業主団体
うち協同組
合・商工組
合
うち商工会
議所・商工
会
民間企業
公益法人
専修学校等
大学等
職業訓練法人
(複数回答)
大企業サ
パート・
対象層を
中小企業サ 公務員・ 自営業・
主婦・ 離職者・
合計
ラリーマ
アルバイ
想定して
ラリーマン 団体職員 自由業
学生
無業者
ン
ト
いない
5,750
21.0
60.3
20.5
40.2
14.9
18.7
20.9
13.2
1,337
8.6
72.2
7.3
72.6
11.0
8.2
6.4
3.9
231
2.2
78.4
3.0
42.0
7.8
2.2
0.9
3.9
1,106
9.9
70.9
8.1
79.0
11.7
9.4
7.6
2.4
606
1,559
296
1,215
737
39.9
36.0
10.8
9.7
18.6
61.7
77.5
33.1
19.2
79.6
19.5
29.8
13.9
26.4
18.9
27.6
27.5
27.0
26.7
46.4
20.1
6.2
29.7
22.1
18.6
23.3
7.4
44.9
37.9
15.7
28.5
15.1
63.2
24.5
30.3
16.7
3.7
7.8
43.0
2.3
119
出所:(独)労働政策研究・研修機構編(2008)(単位:%,合計欄縦列は実数)
コミュニティ・デザインと政策
「地域活動団体の連携」と近隣・中間域・広域との関係
地域活動団体
コミュニティを巡る
状況の変化
コミュニティの
潜在能力
近
隣
(neighborhood)
町内会・自治会,
消防団,青年団,老人
会,檀家制度
ライフスタイルの個性
化により共通の課題が
見いだせない.
広
域
(Region)
近隣,広域のそれぞれの NPO法人
団体が自由に参加できる.県人会,スポーツクラブ,
高校・大学同窓会
広域に活動が偏る人も近 携帯電話やインターネットでの情
隣に活動が偏る人も,新 報交換が容易になった.
たな活動の場として注目
中
間
域
近所づきあい,
活動への新たな取組みを 方言,郷土意識
ボランティア活動,防災訓練, 展開する場,縁域の異 子育てやスポーツなどの
信頼関係
なる活動者同士をつな 趣味の友人関係
ぐ場
出所:國重(2006)を修正
コミュニティ・デザインと政策
120
職業能力開発政策における4つの主体
行政
地域
産業
社会
個人
企業
(筆者作成)
コミュニティ・デザインと政策
121
職業能力開発政策における3つの役割と
地域組織
D2:職業紹介・社会サー
ビス機関
就業継続(労働市場への社会的統合)
B:労働市場
A:個人
職業能力開発
D1:教育訓練機関
C:地域社会
D3:試験研究機関
近隣大学
出所:國重作成
コミュニティ・デザインと政策
122
生活困窮者の生活支援の在り方に関する
特別部会報告(社会保障審議会)
○生活困窮者の相談支援体制では関係機関のネットワークづくりを一層進めると
ともに、訪問支援を通じた対象者の把握も必要。
○新たな相談支援事業と関係機関のネットワーク(イメージ)では,友人・知人
などの仲間,近隣の地域住民,町内会,自治会,商店等の外側に,福祉事務所,
就労準備支援事業者,中間的就労事業者,ハローワーク,サポートステーショ
ン,障害・介護・児童等福祉サービス提供事業者,社会福祉法人,NPO,商
工会議所等民間企業,公益企業,民生委員,児童委員,インフォーマルな支援
組織,矯正・更正保護機関,教育機関,医療機関,保健所・市町村保健セン
ター,法テラス等,社会福祉協議会,家計相談支援事業者という実に多様な関
係機関を記載.
社会保障審議会(2013)「生活困窮者の生活支援の在り方に関する特別部会」報告書
コミュニティ・デザインと政策
123
地域における職業能力開発政策のダイナミズム
職業紹介・社会サービス
機関
就業継続(労働市場への
社会的統合)
労働市場
個人
職業能力
開発
教育訓練
機関
地域社会
試験研究
機関、
近隣大学
出所:國重(2011)
コミュニティ・デザインと政策
124
ニート・引きこもり等に対する社会的統合の
プログラム(試案)
段階(フェイズ)
1
最初のフェイズ
2
中間のフェイズ
3
主要なフェイズ
4
プログラムの評価
内
容
①自信の構築、②調和の確
立、③ゆるやかに構造化さ
れた会合
①プロジェクト集団の継続
的な構造化、②連帯、③活
発な内部的な参加
社会的弱者の社会的統合
ニート・ひきこもり等を地域で見
出す、個々人の問題の発見 地域
での会合
コミュニティを基盤とする参加型
調査(CBPR)による連帯、職業
訓練プログラムの計画・立案
①構造化された組織、②公 職業訓練の実施、コミュニティ、
式化、③独自の行動、④外 地域組織間連携によるインターン
部との接触
シップ、就職への誘導、就職
就職後のアフターケア、質問紙調
①社会的統合事業の評価
査、追跡調査の実施
出所:國重作成
コミュニティ・デザインと政策
125
地域参加型調査のプロセスと社会的統合
プロセス
内
容
Ⅰ
対象と問題にあ
たりをつける
Ⅱ
組織をつくる
Ⅲ
問題を特定する
・問題を特定するため、多様なアプローチを用いてニーズ調査や ニーズ調査やデータ
収集
データ収集を行う。
Ⅳ
プログラムの計
画・実施
・コミュニティの意見や調査から得られた住民の対処をガイドに 職業訓練、インター
して、コミュニティに合った問題解決のための具体的な介入計画 ンシップ、就職への
誘導、就職
を立案する。
コミュニティメンバーの育成、サービスの提供、コミュニティ
のグループ育成やサポート、コミュニティ組織のネットワーク
Ⅴ
プログラムの評
価
・プログラム及びプロジェクトの評価を計画立案と同時に計画す
る。評価の方法は、介入調査、質問紙調査、追跡調査の実施、
あるいは複数の方法の併用など。
(國重作成)
・コミュニティがなんらかの問題をもっている、CBPRの対象と
なるコミュニティを決定する。例えば貧困層のコミュニティ、
専門職がいないハーレムなど。
・研究者やコミュニティの代表者等で構成されるコアとなる組織
・CBPRの財源確保や運用における安全保障のための支援組織
社会的統合
コミュニティ・デザインと政策
ニート、引きこもり
に対象を絞る
地縁団体、民生児童
委員、NPO法人等
の支援組織をつくる
就職後のアフターケ
ア、質問紙調査、追
跡調査の実施
126