2010年度基礎ゼミ:情報と法律 第1回 ガイダンス (講義の趣旨,内容,評価の説明) 2010年4月19日(月) 東北大学法学研究科 金谷吉成 <[email protected]> 2010年度基礎ゼミ:情報と法律 1 2010年4月19日 ガイダンス 概要 – 講義の趣旨、内容、評価について説明し、本講義の位 置付けを確認する。また、情報社会およびインターネッ トの成り立ちとわが国の対応、インターネットが持つ光 と影を概説し、インターネット上で生じるいくつかの法 律問題を紹介する。 目的 – – – – 本基礎ゼミの位置付けを確認する ゼミ生同士がお互いの顔を覚える 情報社会およびインターネットの現状がわかる 情報に関する法律問題について、どのような問題が実 際に生じているかを理解する 2010年4月19日 2 2010年度基礎ゼミ:情報と法律 基礎ゼミ:情報と法律の内容 シラバス参照 – 2010年度基礎ゼミ:情報と法律ホームページ http://www.law.tohoku.ac.jp/~kanaya/kisosemi2010/ – 少なくとも1人1回はゼミ報告 – 最終レポート 2010年4月19日 3 2010年度基礎ゼミ:情報と法律 アイスブレーキング(自己紹介) 名前だけでなく、何か一言 たとえば…… – インターネット利用歴 – 情報法の分野で何か興味を持っていること – その他、最近関心を持っていること – PCやインターネットの活用術・失敗談 – この演習に期待すること – などなど 2010年4月19日 4 2010年度基礎ゼミ:情報と法律 進展する情報化社会 情報革命 – 「市民革命」「産業革命」とならび称されるほどの変化 – しかも現在進行形 携帯電話でのインターネット利用は1999年から 10年後の携帯電話で何ができるか? – e-Japan戦略(2001年)以降、国家戦略としてICT利用 を推進 パソコンの国内出荷実績(2009年度) – デスクトップ 241万8,000台 2,473億円 – ノート型 581万4,000台 5,244億円 (社)電子情報技術産業協会(JEITA) http://www.jeita.or.jp/japanese/stat/pc/2009/ 2010年4月19日 5 2010年度基礎ゼミ:情報と法律 携帯電話の進化(NTTドコモの例) (出典)携帯電話の歴史-DoPlaza::携帯電話情報サイト http://www.doplaza.jp/museum/index.html 1987年NTT TZ-802B 1996年NEC N201 HYPER 2010年4月19日 2007年Panasonic FOMA P903iX 6 2010年度基礎ゼミ:情報と法律 インターネットの利用者数・人口普及率の推移 (出典)総務省『情報通信白書平成21年版』120頁(2009年7月) http://www.johotsusintokei.soumu.go.jp/whitepaper/h21.html 2010年4月19日 7 2010年度基礎ゼミ:情報と法律 インシデント報告数の推移 メール 通報件数 CERTへのメール通報件数・インシデント報告件数 インシデント 報告件数 800000 160000 700000 140000 インシデント報告件数が 2003年までしかないのは、 これ以後は多すぎて把握できず セキュリティ指標とできないという 判断があったため 600000 500000 400000 120000 100000 80000 300000 60000 200000 40000 100000 20000 0 0 1988 1989 1990 1991 1992 1993 1994 1995 1996 1997 1998 1999 2000 2001 2002 2003 2004 2005 2006 (出典)CERT Statistics http://www.cert.org/stats/ 2010年4月19日 8 2010年度基礎ゼミ:情報と法律 不正アクセス禁止法違反事件検挙件数の推移 (出典)総務省『情報通信白書平成21年版』130頁(2009年7月) http://www.johotsusintokei.soumu.go.jp/whitepaper/h21.html 2010年4月19日 9 2010年度基礎ゼミ:情報と法律 身近になったコンピュータとインターネット 受講生の皆さんは、生まれたときからコン ピュータやネットワークが身近にある社会 に生きている(ディジタル・ネイティブ世代) しかし、コンピュータやインターネットの歴史 はそれほど古くはない インターネットが発展することで、何ができ るようになったか?また、どんな問題が生じ ているか? 2010年4月19日 10 2010年度基礎ゼミ:情報と法律 インターネットでできること 電子メール メーリングリスト、メルマガ Webによる情報収集、情報発信 ネットショッピング、ネットオークション、インター ネットバンキング 娯楽としてのインターネット(電子掲示板、チャット、 ネットゲーム) インターネット・ラジオ、インターネット・テレビ SETI@home(分散コンピューティングによる地球 外知的生命体探査) – いつでもどこでも誰とでも – 携帯電話からも利用可能 2010年4月19日 11 2010年度基礎ゼミ:情報と法律 広がるインターネット利用(大学) 2007年10月3日、カリフォルニア大学バークレー校(UC Berkeley)は、いくつかの講座の全講義を YouTube で無 料公開すると発表した。 – UC Berkeley first to post full lectures to YouTube (Webware) – UCバークリー校、YouTubeで講義を無料公開 (ITmedia News) – UC Berkeley - YouTube また、2009年3月18日、マサチューセッツ工科大学(MIT) は、学術論文をWebで無償公開する方針を明らかにした。 – マサチューセッツ工科大学、Webで論文を一般公開 (ITmedia News) – DSpace@MIT 東北大学の取り組み – 東北大学インターネットスクール 2010年4月19日 12 2010年度基礎ゼミ:情報と法律 広がるインターネット利用(政府機関等) 政府や国の行政機関でもインターネットを使った広報活 動を積極的に行っている。 – 政府インターネットテレビ http://nettv.gov-online.go.jp/ – 衆議院審議中継 http://www.shugiintv.go.jp/ – 参議院審議中継 http://www.webtv.sangiin.go.jp/ メディアが紙媒体のものからインターネットに変わりつつ ある一例を挙げると、『高等裁判所民事判例集』『高等裁 判所刑事判例集』は54巻2号(平成14年)をもって休刊と なり、現在下級審判例の公式な公表は、裁判所ホームペ ージ(http://www.courts.go.jp/)の「裁判例情報」でのみ 行われるようになっている。 2010年4月19日 13 2010年度基礎ゼミ:情報と法律 インターネットの歴史① ホッブズのインターネット年表(日本語訳) http://www.zakon.org/robert/internet/timeline/ http://museum.scenecritique.com/lib/defcon0/hc/rfc2235-jp.txt 1940年代 プログラム内蔵式電子計算機の登場 1950年代 1957年:ソ連が最初の人工衛星スプートニクの打ち上げに成功。そ れに対しアメリカは、国防総省内に高等研究計画局 (ARPA: Advanced Research Projects Agency) を創立する。 1960年代 1961年:アメリカで電話中継基地の爆破テロにより、非常事態での 通信不能が判明する。核戦争にも耐えうる通信システムの研究 が開始される。 1969年:アメリカ国防総省の委託研究によりインターネットの前身と なる ARPANET が誕生する。最初の接続ノードは UCLA、その後 スタンフォード研究所、カリフォルニア大学サンタバーバラ校、ユ タ大学が接続される。 2010年4月19日 14 2010年度基礎ゼミ:情報と法律 インターネットの歴史② 1970年代 1971年:電子メールプログラムの発明。 1973年:ARPANET への最初の国際接続。 1976年:パーソナル・コンピュータという言葉が登場する。 1977年:日本語ワープロ専用機が発売される。表計算ソフトが発売 される。 1980年代 1982年:米国防衛通信局 (DCA、現在はDISA) と ARPA が、イン ターネットの基本プロトコルである TCP/IP を確定する。 1984年:ドメイン名システム (DNS) が導入される。ホスト数が1,000を 突破する。JUNET (Japan Unix Network) が創設される。 1986年:コンピュータ・ウイルスが作られ始める。 1987年:ニフティサーブ (NIFTY-Serve) スタート。日本にパソコン通 信ネットワークが普及する。 1989年:ホスト数が100,000を突破。インターネットと商用パソコン通 信との間で初の電子メール交換開始。 2010年4月19日 15 2010年度基礎ゼミ:情報と法律 インターネットの歴史③ 1990年代 1990年:ARPANET が解消される。 米国で最初の商用プロバイダが現れる。 1991年:CERN (ヨーロッパ合同素粒子原子核研究機構) によって World-Wide Web (WWW) がリリースされる。 1992年:ホスト数が1,000,000を突破する。 クリントン大統領の米国大統領選挙の公約「情報スーパーハイ ウェイの実現」 Microsoft Windows 3.1 日本語版 リリース 1993年:画像を扱うことのできるWWWブラウザ Mosaic がリリースさ れ、WWW の利用が急速に普及する。 1994年:ショッピングモールがインターネットに進出する。 この頃、最初の迷惑メールが登場。 また、インターネット銀行が登場する。 1995年:Microsoft Windows 95 が発売され、WWWや電子メールが本 格的に家庭で使われるように。 1999年:最初のネット専門銀行が設立される。 2000年問題が取り沙汰される。 2010年4月19日 16 2010年度基礎ゼミ:情報と法律 インターネットの歴史④ 2000年代 – 2000年:サービス妨害攻撃 (DoS: Denial of Searvice) が広範囲で 行われる。 中央官庁のホームページが一斉に書き換えられるなどの被害が 出る。 Webページの総ファイル数が10億ページを越える。 – 2001年:欧州理事会がインターネット上の犯罪防止協定を締結す る。 ウイルス (Code Red worm and Sircam virus) が各地のWebサー バーに感染し猛威をふるう。 – 2002年:ブログが流行し始める。 – 2003年:スイスのアニエールで、スイス初の公式オンライン選挙 が実施される。 全米レコード協会(RIAA)が、音楽ファイルの違法共有に対して 261人の個人を提訴する。 – 2009年:インターネット、40周年を迎える。 2010年4月19日 17 2010年度基礎ゼミ:情報と法律 インターネットの歴史⑤ その後も、新しいサービスが次々と登場 – ブログ、ソーシャル・ネットワーキング・サービ ス(例:mixi、Facebook)、動画提供サービス (例:YouTube、ニコニコ動画)、地図情報サー ビス(例:Google Maps)、新しいコミュニケー ション・サービス(例:Twitter、pixiv)などなど …… こうした新しいサービスに対しても、考えな ければならない法律問題はいくつでもある ように思われる。 2010年4月19日 18 2010年度基礎ゼミ:情報と法律 インターネットをめぐる政府の対応 「高度情報通信社会に向けた基本方針」(1995年2月21日, 高度情報通信社会推進本部決定) 1. 2. 3. 4. 5. 6. 7. 誰でもが情報通信高度化の便益を安心して享受できること 社会的弱者に配慮すること 活力ある地域社会の形成に寄与すること 情報の自由で安全な流通を確保すること 情報通信インフラを総体的に整備すること 諸制度の柔軟な見直しを図ること グローバルな高度情報通信社会の実現を図ること 「情報化」の一つの柱として「電子政府の実現」を推進 – 「ミレニアム・プロジェクト」(1999年12月) – 電子政府の総合窓口 http://www.e-gov.go.jp/ 2010年4月19日 19 2010年度基礎ゼミ:情報と法律 国家戦略の推進(e-Japan戦略、IT政策) 高度情報通信ネットワーク社会形成基本法(IT基本法、2000年12月6 日公布、2001年1月6日施行) 高度情報通信ネットワーク社会推進戦略本部(IT戦略本部、2001年1 月22日設置) – e-Japan戦略(2001年1月) 「我が国が5年以内に世界最先端のIT国家になること」 – e-Japan戦略II(2003年7月) 「IT利活用により、元気・安心・感動・便利社会」 – IT新改革戦略(2006年1月) 「いつでも、どこでも、誰にでもITの恩恵を実感できる社会の実現」 構造改革による飛躍、利用者・生活者重視、国際貢献・国際競争力強化 – IT政策ロードマップ(2008年6月) 国民生活者の視点の重視と、新たな成長戦略を進める観点から、取組の強 化が特に必要な3分野を抽出し、今後の取組の方向性と具体的段取り(工程 表)を明確化 – デジタル新時代に向けた新たな戦略(三か年緊急プラン)(2009年4月) 現下の世界的な金融危機に伴う我が国経済の失速 クラウドコンピューティングといった革命的新技術の登場 2010年4月19日 20 2010年度基礎ゼミ:情報と法律 法制面での整備 電子署名及び認証業務に関する法律(電 子署名法,2000年) 電子消費者契約及び電子承諾通知に関す る民法の特例に関する法律(電子消費者 契約法,2001年) 電子政府オンライン化関係3法 – 行政手続等における情報通信の技術の利用 に関する法律(2002年)など 2010年4月19日 21 2010年度基礎ゼミ:情報と法律 インターネットの光と影 良い点 – 個人が情報を自ら主体的に選択して収集することが可能になった – 地球規模のコミュニケーション – 個人が自己の情報を発信することが可能になった 悪い点 – インターネットの普及に必要なインフラの整備が不十分 – インターネットの利便性を享受できる人とできない人の間の格差 (デジタル・デバイド) – 無責任な情報の氾濫 – インターネット上での名誉毀損・プライバシーの侵害 – わいせつな画像をサーバにアップロード – インターネット上での殺人依頼、集団自殺 – 爆弾の製造方法や自殺のためのノウハウ等の情報が流布 – 青少年に対する有害な表現の送信 – 著作権侵害の問題 – ネットカフェ難民 2010年4月19日 22 2010年度基礎ゼミ:情報と法律 電子商取引の分野では ビジネスのあり方が変化 – インターネット上の通信販売 – インターネットを通じた銀行サービス、保険契約、証券 売買 – 取引の決済方法 これまでのクレジットカードや銀行口座からの引落としに加え て、「電子マネー」による決済が普及しつつある 他方で次のようなトラブルも – 代金を支払ったのに商品が送られてこない – 注文したものと違うものが送られてきた – 認可を受けていない薬品や譲渡を禁止されている麻 薬等の売買 – インターネット上での詐欺やねずみ講 2010年4月19日 23 2010年度基礎ゼミ:情報と法律 インターネットの規制 ドイツ – 1997年にいわゆるマルチメディア法 (情報サービス及び通信サー ビスのための大綱条件の規律のための法律) を制定し、電子商 取引とともに、表現行為についても規制を盛り込む アメリカ – 品位を欠く表現や明らかに不快な表現を青少年に送信することを 禁止する通信品位保持法(Communications Decency Act of 1996 “CDA”)を制定したが、政府は自主規制路線を進んできた。 これはアメリカがインターネットの発達を重視する政策をとったため なお、CDAは1997年のレノ対アメリカ自由人権協会事件で合衆国最 高裁判所により違憲とされた 日本 – 総務省(旧郵政省)は包括的な法規制を構想してきたが、経済産 業省(旧通産省)は民間主導の発展を主張し、結局自主規制路 線がとられることになった。 2010年4月19日 24 2010年度基礎ゼミ:情報と法律 インターネットの立法による規制 1987(昭和62)年 – 刑法に電子計算機損壊等業務妨害罪(刑法234条の2)が加えられた。 1998(平成10)年 – 風俗営業法の改正により、アダルト映像をインターネットを通して送信す ることに対して規制を強化 1999(平成11)年 – 不正アクセス行為の禁止等に関する法律(不正アクセス禁止法) 2000(平成12)年 – 電子署名及び認証業務に関する法律(電子署名法) 2001(平成13)年 – 特定電気通信役務提供者の損害賠償責任の制限及び発信者情報の開 示に関する法律(プロバイダ責任制限法) 2002(平成14)年 – 特定電子メールの送信の適正化等に関する法律(迷惑メール規制法) 2008(平成20)年 – 青少年が安全に安心してインターネットを利用できる環境の整備等に関 する法律(青少年ネット規制法)(※2009年4月1日施行) 2010年4月19日 25 2010年度基礎ゼミ:情報と法律 インターネット上の電子商取引の規制 日本は、電子商取引についても包括的な法規制 はなく、ここでも民間主導の自主的なルール作り が続けられてきた。 しかし、実際にさまざまなトラブルが生じており、 民法や消費者基本法の規定をインターネット上の 取引にどのように適用していくべきかが重要な法 律問題となってきている。 電子商取引を推進するには、さらに包括的な法 制度の整備が求められる。 – – – – 「電子マネー」に関する法制度の整備 「暗号技術」の開発とその法的保護 取引に伴う消費者のプライバシー保護 インターネット上の紛争を裁判外で解決する処理方法 2010年4月19日 26 2010年度基礎ゼミ:情報と法律 情報に関するさまざまな法律問題① 電子メールとプライバシー – 会社による従業員の電子メールの閲読は、法律上問 題となるか。大学による学生の電子メールの閲読はど うか。会社が従業員の電子メールを閲読して、実際に 裁判となった事例はあるか。電子メールを送信した第 三者のプライバシー権は。 迷惑メール – 迷惑メール(スパムメール)とはどんなものか。迷惑 メールの問題点は。裁判例はどうなっているか。今後、 法改正を含めてどのように対応していくべきか。外国 の規制の動向は。 – 浦和地決平成11年3月9日判タ1023号272頁 – 横浜地決平成13年10月29日判時1765号18頁 – 東京地判平成15年3月25日判時1831号132頁 2010年4月19日 27 2010年度基礎ゼミ:情報と法律 情報に関するさまざまな法律問題② インターネットと刑法 – 「不正アクセス禁止法」は、何を目的とした法律か。不正アクセスとは、実 際にどのようなものがあるか。ネットワークへの攻撃はどのように行われ るか。不正アクセスを予知・防止したり、不正アクセス元を解析する方法 はあるか。不正アクセスを受け、情報が漏洩したり、サーバを踏み台とし て利用されたりすることで、法的責任を追及されることはあるか。刑法の 定める、電磁的記録不正作出・共用罪、電磁的記録毀損罪、電子計算 機損壊等業務妨害罪、電子計算機使用詐欺罪との関係は。 インターネットとわいせつ罪 – 刑法175条の基本的論点は何か。わいせつ物の概念について。公然陳 列の要件について。ハイパーリンクは幇助にあたるか。海外のサーバに アップロードした場合はどうなるか。判例のポイントは何か。 – 「京都アルファーネット事件」最三小決平成13年7月16日刑集55巻5号317 頁 – 「FLMASK事件」大阪地判平成12年3月30日(判例集未登載) サイバーポリス – 「ハイテク犯罪」に対して、政府や行政機関はどのような取り組みを行っ ているか。警察庁・都道府県警察の取り組みはどうか。「ハイテク犯罪」 の手口にはどんなものがあり、サイバーポリスはそれに対してどういった 対策を取り得るのか。ログ(通信記録)を調べることで、どんなことがわか るか。 2010年4月19日 28 2010年度基礎ゼミ:情報と法律 情報に関するさまざまな法律問題③ 電子商取引 – 電子商取引とは何か。「電子消費者契約法」とはどのような法律 か。「IT書面一括法」における書面交付義務とは何か。電子消費 者契約における意思表示の錯誤とは。発信主義と到達主義。 電子決済・電子マネー – 電子マネーとは何か。電子マネーの分類および法的性質。電子 マネーを使った取引の仕組みはどのようになっているか。電子マ ネーの発行主体が倒産したときの損失負担はどうなるか。電子マ ネーに対する強制執行の問題。電子マネーの不正取得、不正作 出の問題など。 電子署名・認証制度と電子公証制度 – 電子署名・電子認証の意義。公開鍵方式など、暗号技術の仕組 み。電子署名の仕組み。「電子署名及び認証業務に関する法律」 は、何を目的とした法律か。電子認証制度とは、また電子公証制 度とは何か。 2010年4月19日 29 2010年度基礎ゼミ:情報と法律 情報に関するさまざまな法律問題④ デジタル時代の著作権 – インターネットの普及と情報のデジタル化、ITビジネスの進展によ り、著作権法の法的枠組み自体が変更を迫られている。インター ネット上の表現行為に対してどのように著作権を保護するべきか。 既存の著作権の保護をそのまま認めることはインターネットの普 及に大きな足かせとならないであろうか。 – これに対して、日本の著作権法では、自動公衆送信権や送信可 能化権という権利を新たに創設して、インターネット上での著作物 の利用行為について、権利者に排他的権利を認めて、ネットワー ク時代における権利者の保護を図っている。これは、果たして妥 当な解決と言えるか。 – その他、ディープリンクや他人のホームページのコンテンツの利 用など、リンクに関わる問題、技術的保護手段の回避に係る規制 の問題、送受信の過程でメモリ上に一時的に蓄積した情報を複 製と見なすかどうかの問題などもある。デジタルコンテンツの流通 をめぐる法的紛争としては、中古ゲームソフト販売をめぐる判例も 出されている。 – 「中古ゲームソフト販売事件」最一小判平成14年4月25日(判例集 未登載) 2010年4月19日 30 2010年度基礎ゼミ:情報と法律 情報に関するさまざまな法律問題⑤ ファイル共有ソフトの法律問題 – 利用者のパソコン間でデータを送受信させるいわゆるピアツーピア (P2P)技術を用いて、不特定多数の利用者のパソコンに保存されている 電子ファイルの中からさまざまなデータをダウンロードする行為は、法律 上どのような問題があるか。P2Pの仕組みはどうなっているのか。今後の 展開は、どうなっていくと予想されるか。 – 「ナップスター事件」A&M Records, Inc. v. Napster, Inc., 239 F.3d 1004 (9th Cir. Cal. 2001) – 「グロクスター事件 連邦控訴裁判決」MGM Studios, Inc. v. Grokster Ltd., 380 F.3d 1154 (9th Cir. Cal. 2004) – 「グロクスター事件 連邦最高裁判決」MGM Studios Inc. v. Grokster, Ltd., 545 U.S. 913 (U.S. 2005) – 「ファイルローグ事件」東京地決平成14年4月9日および東京地決平成14 年4月11日判時1780号25頁、東京地判平成15年1月29日判時1810号29 頁、東京地判平成15年12月17日判時1845号36頁、東京高判平成17年3 月31日判時判例集未搭載 – 「Winny事件」京都地判平成18年12月13日判例タイムズ1229号105頁 2004年5月に、ファイル交換ソフト「Winny」の作者が逮捕・起訴された事件。著 作権法違反行為を幇助したとして、刑事責任を問われた。 第1審:罰金150万円(求刑懲役1年)の有罪判決 控訴審:逆転無罪→上告審で裁判継続中 2010年4月19日 31 2010年度基礎ゼミ:情報と法律 情報に関するさまざまな法律問題⑥ ビジネスモデル特許 – ビジネスモデル特許とは何か。プライスライン特許、ワンクリック 特許と呼ばれる特許は、どのようなものか。そもそも特許とはどの ような仕組みなのか。米国のプロパテント政策とは。 プロバイダ責任制限法 – あるインターネット・サービス・プロバイダ(ISP)では、利用者が自 由に自作のCGをアップロードできる掲示板を設置している。Aさん の作品をアップしていたところ、Bさんから「あの作品は私の作品 で著作権侵害だからすぐに削除してくれ」との連絡があった。Aさ んに連絡したところ「あの作品は完全に自分のオリジナルだ」との 回答があった。プロバイダはどのような対応をすべきか。 – BさんはAさんを訴えようと思ったが、掲示板ではハンドル名しか わからないためAさんに連絡することができない。Bさんは、どの ような方法で発信者情報の開示を求めることができるか。プロバ イダ責任制限法による発信者情報開示の限界は。 2010年4月19日 32 2010年度基礎ゼミ:情報と法律 情報に関するさまざまな法律問題⑦ 個人情報保護 – 情報社会における個人情報保護のあり方。個人情報はどこまで 保護され得るか。「個人情報保護法」とはどんな法律か。その位 置付け、内容、個人情報取扱事業者の義務は何か。個人情報保 護法施行前と施行後で個人情報保護はどのように変わったか。 ドメイン名紛争 – ドメイン名とは何か。なぜ、ドメイン名について紛争が起きるのか。 ドメイン名紛争を解決するルールにはどんなものがあるか。実際 にドメイン名について争われた事例として、「jaccs.co.jp」「gameboy.com」「madonna.com」など。 – 「JACCS事件 第一審判決」富山地判平成12年12月6日判時1734 号3頁 – 「JACCS事件 控訴審判決」名古屋高金沢支判平成13年9月10日 最高裁ホームページ 2010年4月19日 33 2010年度基礎ゼミ:情報と法律 情報に関するさまざまな法律問題⑧ インターネット時代の通信と放送の融合 – 通信と放送の区分と法制度。通信と放送の中間的領域の登場。 サービスの融合か、事業体の融合か、伝送路の融合か、端末の 融合か。通信と放送の融合に対する法制度上の対応は。また、 今後の法制度の動きは。 インターネットと国際訴訟 – 国際的な紛争解決の法的枠組みはどうなっているか。国境を越 えたインターネットに関する紛争はどこの国の裁判管轄に服する のか、そしてどこの国の法律によって規律されるべきなのか(裁 判管轄と準拠法の問題)。国際裁判管轄とは何か。 – この問題が示された典型例が、2000年に世間の注目を集めたヤ フー事件である。この事件で、パリ大審裁判所は、米国ネット検索 サイトを運営するヤフー(Yahoo!)が取り扱うナチス・ドイツ関連物 品の競売サイトの差し止めを求め、フランス国内からの同サイト の利用を不可能にする措置をとるようヤフーに命じた。これに対し て、ヤフーは米国連邦地方裁判所に上記命令の無効確認を求め た訴えを提起し、同裁判所はヤフーが上記命令に従わないことを 容認する判決を下した。この事件を、どのように理解するべきか。 2010年4月19日 34 2010年度基礎ゼミ:情報と法律 その他の話題 平成20年新司法試験「論文式試験・公法系 科目・第1問」において、インターネットにお ける表現行為に対して、フィルタリング・ソフ トを用いた表現内容規制の問題が出題さ れた。 – 試験問題(平成20年新司法試験試験問題) – 論文式試験出題の趣旨(平成20年新司法試 験の結果について) インターネットに関する法律問題は、もはや 新しい問題とばかりも言っていられない。 2010年4月19日 35 2010年度基礎ゼミ:情報と法律 参考文献、Web 高橋和之,松井茂記,鈴木秀美編『インターネットと法』 (有斐閣,第4版, 2010年) 堀部政男『インターネット社会と法』(新世社, 2003年) 松井茂記『インターネットの憲法学』(岩波書店, 2002年) 夏井高人『ネットワーク社会の文化と法』(日本評論社, 1997年) 酒匂一郎『インターネットと法』(信山社,2003年) 小向太郎『情報法入門』(NTT出版,2008年) 電子政府の総合窓口 http://www.e-gov.go.jp/ 総務省『情報通信白書平成21年版』(2009年) http://www.johotsusintokei.soumu.go.jp/whitepaper/h21. html 2010年4月19日 36 2010年度基礎ゼミ:情報と法律 おしまい この資料は、2010年度基礎ゼミ:情報と法 律のページからダウンロードすることができ ます。 http://www.law.tohoku.ac.jp/~kanaya/kisosemi2010/ 2010年4月19日 37 2010年度基礎ゼミ:情報と法律
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