エイジフリー雇用に向けた提言 ー定年制の再考ー 近藤 裕佑 日本の社会保障費の推移 年間100兆円! 日本の財政問題 年金支給開始年齢の引き上げ 【基礎年金】2001年から61歳に引き上げられ、以降段階 的に2013年には65歳まで引き上げ 【厚生年金】男性は2025年度、女性は2030年度までに 段階的に65歳まで引き上げ さらに、引き上げるスケジュールを3年に1歳ずつから 2年に1歳ずつに早め、65歳への引き上げ時期を前倒し した上で、 基礎年金とともに、68歳〜70歳程度へ引き 上げる案もある。 少子高齢化/ピラミッド型人口構成 平均寿命 〈終戦直後(1947年)〉⇒〈2010年〉 男性:50歳 ⇒79.6歳(世界4位) 女性:54歳 ⇒84.4歳(世界1位) 高齢化率(65歳以上人口が総人口に占める割合) 1970年:7.1% ⇒ 1995年:14.5%⇒ 2010年:23.1% (高齢化社会) (高齢社会) (超高齢化社会) 合計特殊出生率 年 1970 1980 1990 2000 2005 2010 % 2.13 1.75 1.54 1.36 1.26 1.37 性別・年齢別就業理由 (2004年,単位:%) 性別/ 年齢 就業率 経済的 理由 健康上の 理由 男性 71.5 79.2 4.2 6.5 55~59歳 90.1 91.7 0.6 60~64歳 68.8 71.8 65~69歳 49.5 女性 いきがい・ 余裕があ 社会参加 るから その 他 不明 4.8 4.4 0.9 2.4 1.1 3.3 0.9 6.3 9.3 6.1 5.5 1.0 60.3 9.6 11.8 12.1 5.3 0.9 45.6 67.6 5.1 10.6 8.1 7.6 1.0 55~59歳 62.2 72.4 3.2 9.4 6.5 7.6 0.8 60~64歳 42.3 67.1 5.6 11.3 9.1 5.8 1.0 65~69歳 28.5 55.3 9.3 12.5 10.8 10.8 1.3 早期退職の動きと厳しい再就職 定年制を定めている企業でも定年年齢での退職は多くない ⇦退職前の異動、退職・独立を含めたコース選択、早期退 職優遇制度、転職援助斡旋制度、独立開業支援制度など 有効求人倍率(2009年度) 55~59歳:0.34倍 60~64歳:0.32倍 求職者10人に3人の就職口しかない ⇒高齢での再就職は難しい また、65歳まで継続して雇用する何らかの制度を持つ企業 はまだ少なく、希望者全員の雇用を保障する企業はさらに 少ない 日本の高齢者労働力の高さ 年齢別労働力人口の見通し 1990年 2000年 2005年 2010年 2015年 2025年 計 6,384 6,766 6,845 6,740 6,572 6,188 15~29歳 1,475 1,588 1,400 1,229 1,110 1,082 30~59歳 4,178 4,260 4,348 4,215 4,128 3,871 60~64歳 372 426 504 630 561 530 65歳以上 360 493 594 665 773 705 高齢者の就業意欲(2002,男性のみ) (単位:万人) 75歳以上 有業者 就業希望者 70〜74歳 無業者 就業希望者 65〜69歳 有業者 非就業希望者 無業者 非就業希望者 60〜64歳 0% 20% 40% 60% 80% 100% • 年金支給開始年齢は引き上げられつつある ⇄定年年齢とのギャップ • 超高齢化社会と財政問題 • 高齢者の労働力/労働意欲は高い ⇒定年制は高齢者の活力をそいでいる 高齢者の雇用を促進するべきではないか 考えられる方策 ① 継続雇用制度の導入 再雇用制度)一旦契約を終了後、新たな契約を締結 勤務延長制度)従前の契約を終了させることなく継続 ② 定年年齢の引き上げ(68歳?70歳?それ以上?) ③ 「ゾーン定年」「フリー定年」の導入 ④ 定年退職制度の廃止/エイジフリー雇用 定年制を必要とした要因 平均寿命との関係 労働力の確保と切り捨て 労使関係の維持 雇用を保障する終身雇用制度 年齢基準の明快さ 労働者の納得を得やすい 雇用調整が容易 従業員規模の管理 年功制度の存在 勤続年数による処遇の相違 高齢者雇用促進の課題と方策 1. 従業員構成の高齢化に伴う人件費コストの増大 ⇒賃金・退職金・年金制度を抜本的に見直す ・年功的賃金カーブの修正/フラット化 ・勤続年数に応じた賃金部分を縮小 ・能力主義/成果主義の導入 2. 体力や意欲などニーズは多様 ⇒雇用形態を工夫 ・それまでと同じ勤務日数/勤務時間 ・勤務日数/勤務時間を短くする ・フレックス勤務 (段階的に退職に近づけるという案も) 定年制度の廃止は 若年層の雇用阻害になるか ヨーロッパ諸国の事例 若年者における失業率の高さから、雇用促進のために1980年代を中心 に高齢者の早期退職を促進する政策がとられたが効果はなく、年金財 政問題から高齢者の雇用促進に転換した。 また、定年制が廃止されたからといって、企業に居続け る高齢者は一部にすぎない ⇒若年者の雇用にそれほど影響はないのでは? ※それよりも、雇用している正社員を保護することで 新規採用を抑制している定年制度の方が悪影響であると いう見方もある。 国際比較 欧米では、定年制度そのものがないか、あっても事実上意 識されないでいるのが一般的 ⇔「定年」によって強制的に退職させられるのではない 「国際基準」:年金支給開始年齢=退職・引退の時期 雇用における年齢差別禁止法(米) ≒定年制は違法 年齢差別による雇用終了に対する規制・保護 ⇒高齢者に対する一定の雇用保障として機能 【スウェーデンの年金制度】 支給開始年齢を65〜70歳の間で選べる ※受給開始年齢に関わらず年金額は等価 提言 定年制を廃止する期限を定め、段階的に エイジフリー雇用を目指してはどうか。 【主な具体策】 • 「脱年齢」化 成果主義/能力主義導入 年齢差別撤廃 • 不当な解雇の規制 • セーフティネットの整備 欧米の法制度は参考程度に、 日本型雇用慣行の長所を維持 し、 日本の実情に即したエイジフ リー化を図るべき! 【メリット】 • 労働意欲を持つ高齢者のいきが い実現 • 年金財政の改善 • 経済成長に寄与 • 老後生活や年金支給までの資金 確保 • 経済活性化の一助 ⇦消費抑制の必要性が低下 • ジェンダーフリー化 女性労働力の活用 • 主体的な生き方 自分のキャリアは自分で設計 中高年での進路の多様化 45歳 55歳 早期退職 転職 60歳 65歳 自営・開業 退職 キャリア設計 退職 勤務延長/再雇用 多様なコース選択 専門職 フルタイム パートタイム パートタイム 関連会社で雇用 出向 他企業へ再就職 定年制度に対する意識調査(2004) 定年制度をやめ、退職 年齢を自分で選べるよ うにするべき 定年制度は維持し、退 職年齢を上げるべき 総数 75歳〜 65〜74 定年制度は維持し、退 職年齢も今の水準で適 切 定年制度は維持し、退 職年齢は下げるべき 60〜64 50代 40代 わからない 30代 20代 無回答 0% 20% 40% 60% 80% 100% 論点 • 高齢者の雇用は促進すべきか • 定年退職制度の役割 (必要or不必要?) (定年年齢の引き上げ?) • 日本におけるエイジフリー雇用の可能性と 有効性 参考文献・資料 • 有森美木『世界の年金改革』第一法規 2010 • 横溝雅夫 北浦正行『定年制廃止計画』東洋経済新報社 2003 • 西沢和彦『年金大改革』日本経済新聞社 2003 • 石水喜夫「人口減少社会における労働政策の課題」経済 産業研究所 2005 • 総務省 http://www.stat.go.jp/data/nihon/16.htm (最終閲覧 2012/5/11) • 厚生労働省 http://www.mhlw.go.jp/houdou/2007/03/h03281.html (最終閲覧 2012/5/11)
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