株主への利益配分について 配当性向

証券市場論前期 (6)
希薄化DILUTION 自社株買い 配当との比較
配当性向PAYOUT RATIO 株式分割STOCK SPLIT
総配当性向 シグナリング効果
金庫株TREASURY STOCKの使い方
自社株買いを批判する考え方 2つのR&D
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1
Equity Financeと株主(1)
株数を増やして資本を増やすことはdilution希薄化を招く したがって
株主は通常は賛成ではない。
企業が株主支配のもとにあれば 株数を増やすことを株主は歓迎しな
い。
しかし企業の成長局面では、利益が急速に増加するので肯定されるこ
とがある。
企業側はEquity Financeの合理性を示すために、equity storyと呼ばれ
る「お話」を示す。株式発行で集めたお金が、いかに企業の利益の成
長につながるかを示そうとする。
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2
Equity Financeと株主(2)
株主の立場からは、実は株数の増加は嬉しいことではない。株主の立
場からは、自己資本の増やし方としては、内部留保すなわち利益を留
保して自己資本を増やす方が望ましい。
やむを得ず株数を増やすのであれば、そこで株主の立場からは保有
株数に応じて新株の権利(購入する権利)が割り当てられるライツイシ
ューrights issueと呼ばれる発行方法が望ましい。それ以外の発行方法
には第三者割当と公募がある。
しかし株数を増やすだけなら、株式分割という方法がある。Rights
issueが意味があるのは、払い込みが必要な場合。払い込み額をどうす
るかで成立しない可能性・・・結果としてright issueの利用が広がらない。
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3
dilution対策
rights issue 確かに株主の不満は抑えられるが、株数を増やすだけな
ら株式分割があり、払い込み額設定はむつかしいので、結局利用が広
がらない。
Equity storyの実現 増資による資金で利益をいかに稼ぐか
増配
配当性向を上げ利益還元強化。
自社株買いstock repurchases=自己株式の取得(市場での売り圧力
は減少 ただしそのままでは潜在的発行要因 消却処分すれば純粋
に減少 曖昧な金庫株treasury stockより消却が好まれる)
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4
自社株買いと配当との比較
機動性 安定配当主義
配当は通常毎年一定時期で時期が限定。
自社株買いはいつでも可能 → 機動性に優れる
配当は全株主に一律という点で公平
自社株買い 恩恵は売却に応じる株主だけ?効果は一時的?・・・・・・
(株数の償却まで進めば効果は持続?)
安定配当か配当性向公約か 1株当たり配当金額を安定させると利益
増えても配当ふやせない。米国では配当性向を安定させる企業が多
い。→業績改善が株主配分増にむすびつきやすい。配当金額で安定
させると業績改善から自社株買いに進む可能性あり。
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5
総配当性向
株主への利益配分について
配当性向:利益の変動で減配リスク → 配当総額を自己資本で割る
自己資本配当率を導入する企業も。
総配当性向:配当総額+自社株買いを利益で割る
自己資本総配分率:配当総額+自社株買いを自己資本で割る も導
入始まる 包括的株主配分策へ
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6
Dividend 配当について
利益のうちのどれだけを配当に回すか。
配当性向payout ratio
基本的な考え方 急速に成長している企業 利益を全額再投資する
zero dividend 許される。あるいは株主の投資収益率機会に比べて、そ
の企業のROEが高い場合。
成長率が鈍化した場合 高い配当性向となるべき。
高い配当と、株式分割stock splitとは近い。たとえば2分割は、100%配
当と意味が近い。
株価が高いときに、株主への利益還元と株価引き下げを目的に株式
分割が行われることがある。
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7
強まる配当重視⇔内部留保戦略は
低成長のもとではとりにくいからか?
近年は株主への利益還元として配当性向dividend payout ratioを安定
させる(高める)考え方が広がりこうした配当金安定主義の修正が始ま
っている。
配当性向=配当/利益
また自社株買いも株主への利益還元ととらえ配当に自社株買いを加
えたものの対利益比率=総還元性向(総配当性向)total return ratioを
安定させる(高める)考え方もある。
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8
安定配当主義
なお日本では配当金の安定を方針とする傾向があった。そこで利益と
配当性向が逆に動く結果をもたらした。
このように配当金額を安定させようとする配当政策を「安定配当主義」
と呼んでいる。
これに対して近年、配当性向あるいは総還元性向を国際的水準で安
定させるべきだという主張が、機関投資家から出されている。
3割(30%)程度の数値が多い。
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9
FCF仮説
free cash flow hypothesis
根強い経営者不信を反映した学説
FCFが多い企業はそれを浪費しがちと見る。
こうした経営者不信論の圧力のもとで、経営者は配当をできるだけ増
やすことを意識するようになったのでは?
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10
日米大企業の配当性向(生命保険協会調べ)
米S&P500 日TOPIX 構成企業
2006
2007
2008
2009
2010
米配当性向
27.4%
31.7%
36.6%
32.8%
30.0%
米ROE
18.2
16.4
15.0
12.5
14.0
米DOE
5.0
5.2
5.5
4.1
4.2
日配当性向
23.7
26.7
38.9
36.8
30.3
日ROE
9.7
9.4
5.9
5.4
7.3
日DOE
2.3
2.5
2.3
2.0
2.2
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11
日本の上場企業の配当政策
(生命保険協会調べ 2010年実績)
増配
据え置き
減配
小計
増益
37.2%
31.0%
1.8%
70.0%
減益
4.4
18.1
5.7
28.2
小計
41.6
49.1
7.5
98.2
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12
自社株買い(1)
1994 商法改正 自社株買い解禁 明らかに株価対策だった
1997 商法改正 自社株買いの目的にストックオプションstock
options加える
2001 目的を問わない金庫株treasury stock制度導入
→このあと 顕著に増加 FY2001 1兆円超える
2003 総会決議でなく取締役会決議で柔軟に実施できることに。
FY2007peak 4兆6000億 2008-2009 減少 FY2009 1兆円割れ
FY2010 1兆2800億円
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13
自社株買い(2)
stock buybacks
市場で出回る浮動株を減らせる(消却すれば潜在的株式も減少する)
ので株価が上昇しやすくなる。株主への利益還元策になる。
アナウンスメント効果 経営者が株価が割安だと判断しているという情
報を市場に伝える(買いを誘う)効果がある。逆に増資には株価を割高
とみているという情報伝達効果(売りを誘う効果)がある。
負債の借入と組み合わせることで、資本コストを引き下げる効果(負債
が増えて自己資本が減るので)がある。戦略的に資本コストを引き下
げるため、負債の増加と自社株買いを組み合わせることが考えられる。
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14
資本コスト
資本コストは正式には加重平均資本コストWACC:weighted average
capital costといい自己資本と負債(債務あるいは他人資本)という2つ
の資本コストの加重平均である。
このうち株主資本(自己資本)コストは、引き受けているリスクの関係で
債務資本コストより高いとされるので、債務比率を上げるとWACCは下
がる。
ただし債務比率を増やし過ぎると倒産可能性が増えて、債務資本コス
トは上昇し始める。
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15
自社株買いの動機
背景 手元資金(余剰資金)の増加
合理化 在庫削減 → 投資抑制 手元資金増加
業績改善のケースもある?
財務政策として 流通株式数の減少 1株当たり利益の増加 余剰資
金減少で資本効率の改善 見込める
資本関係(いわゆる株式持ち合い)の解消も一因 親会社との資本関
係解消 親会社や関係会社の持ち分を買い取るものも
シグナリング効果を含め株価対策 になる
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16
シグナリング効果
signaling effect
自社株買いは株価が割安と経営者が判断しているシグナルになる。
結果として投資家による株式購入 株価上昇につながると理解されて
います。
このような効果を自社株買いのシグナリング効果といいます。
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17
財務リストラとの比較
財務リストラが進み財務改善したから自社株買いへ
自社株買い
財務リストラ: 上がりすぎた負債比率引き下げ 自己資本
比率は上げる行為
自社株買い
↓
自己資本比率は
下げる行為
負債返済の加速 負債比率下げ 負債(固定)コスト下げ
遊休資産(低収益資産)売却 負債返済
DES 負債圧縮 自己資本増やす
株式を発行 負債を返済
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18
自社株買いと並行して
ストックオプションを行うことには矛盾もある
自社株買いの一方でストックオプション(経営者に株主権付与)を実施
自社株買いによる株価上昇効果をストックオプションによる潜在的株
式数増加が吸収。
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19
なぜ長期投資にお金を向けないのか
過度の自社株買いには批判
2つのR&D
研究開発投資 research & developmentにではなく
自社株買い(repurchase)と配当dividendに会社のお金を使うと、長期
的には会社の競争力が低下する
背景にあるのは自社で工場をもたない(ファブレス)身軽な経営(外部
委託 アウトソース)。
借り入れて(社債発行をして)まで自社株買いに走る傾向も。
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20
グループ事業の再編と自社
株買い
グループ企業の子会社化を自社株発行で行うと発行株式数が増加す
る(潜在的株式押し下げ要因)
これを親会社が金庫株でやるという発想へ。
逆に資本関係の解消
子会社は 親会社との資本関係解消 親会社の持ち分を買い取ること
に
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21
金庫株が筆頭株主
treasury stock
保有筆頭が自社 購入した株を消却せずにもつ状態:金庫株
2003年3月末 39社
2007年3月末 127社
2010年9月末 236社
2011年3月末 192社
10位までに自社株
2003年3月末
19.2%
2007年3月末
28.8%
2010年9月末 全上場会社の46.5%
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22
金庫株の使い方
(=発行済み株式-流通株式数)
1)消却で発行済み株式数減
2)再び市場に放出して資金調達(売り出し)
3)第三者に譲渡して資金調達
4)M&Aに活用(代用自己株式) 例 グループ企業の子会社を株式交
換方式で完全子会社化。M&A会社価値を増加させる方法の一つ。
金庫株の放置 2)から4)は 流通株式数の再上昇で株式希薄化懸念
あり
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23
金庫株をうまくつかえば
発行株式数を抑えられる
金庫株は潜在的な発行株なので、完全に新規の発行に比べて市場に
与える影響が小さい。
株式交換の場合に通貨のように使う
ストックオプションに活用
資金調達に利用
転換社債における転換にあてる。
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24
自己株式取得について
生命保険協会アンケート
投資家(機関投資家) より積極的に実施するべきとするものの比率
H22(2010)年度 66.7%
H23(2011)年度 79.7%
企業側(上場会社)
今後積極的に実施するものの比率
H22(2010)年度 62.2%
H23(2011)年度 62.9%
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25
上場会社自己株式
取得処分状況(東証)
暦年
自己株式取得状況
件数 株数
金額
件
億株 億円
自己株式処分状況
件数 株数
金額
件
億株 億円
差額
株数
億株
金額
億円
2009
401 7.4
8,377
150 7.9
9,836
-0.5
-1,459
2010
369 8.4
9,180
212 10.7 16,791
-2.3
-7,611
2011
393 10.2 16,525 171 12.7 17,799 -2.5
-1,273
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26
上場会社自己株式
処分状況(東証) 2011年
2011年暦年
件数
株数
億株
%
金額
億円
%
引受ける者の募集
55
0.9
7
合併、株式交換、
株式分割に伴う
移転
37
3.4
27
3,412 19
消却処分
81
8.4
66
13,601 76
小計
171
12.7
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785
4
17,799
27
宿題
配当と自社株買いを株主への利益還元の方法として比較しなさい。
自社株買いについて説明しなさい
株式分割はどのようなときに実施されるか説明しなさい。
金庫株の利用方法について説明しなさい。
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