成熟型のmiR-183は転写因子であるGATA3により抑制的に制御されており

Mature miR-183, negatively regulated by
transcription factor GATA3, promotes 3T3-L1
adipogenesis through inhibition of the canonical
Wnt/β-catenin signaling pathway by targeting LRP6
成熟型のmiR-183は転写因子であるGATA3により抑制的
に制御されており、LRP6を標的としてWnt/b-catenin経路
を抑制することで、3T3-L1細胞の脂質合成を促進する。
2014/12/08
藤森諒
Wnt/b-catenin経路について
http://www.ishiyaku.co.jp/magazines/ayumi/AyumiArticleDetail.aspx?BC=923310&AC=9228
 細胞の増殖や分化、細部周期の制御に関わる
 Wntタンパクが脂質合成を抑制する S.E. Ross, Science, 289 (2000), pp. 950–953
miRNAについて
 転写されるが翻訳されない
小分子RNA
 mRNAに結合し、分解したり、
翻訳を抑制したりすること
で特定の遺伝子の発現を
抑制する
 細胞内に存在するが、エキ
ソソームにより細胞外に放
出され、近接する細胞へ輸
送される
 一部のmiRNAはガン細胞
に関わるとされており、創
薬のターゲットとしても現在
注目されている。
Vectorbiolabs HPより
背景と目的
 肥満マウスの肝臓でmiR-183の発現量が野生型に比べて4倍多かった。
N. Nakanishi, Biochem. Biophys. Res. Commun., 385 (2009), pp. 492–496
 分化した3T3-L1細胞でmiR-183の発現量が未分化のものに比べて2倍多
かった。
E. John, Nucleic Acids Res., 40 (2012), pp. 4446–4460
miR-183は脂質合成に関わるのではないか??
miR-183が脂肪細胞の分化に与える影響
1. miR-183のミミックまたはNCを3T3-L1細胞に導入
2. 24時間後に分化誘導培地(IDM)に置換
3. 5日後にOil redにより脂肪滴を染色
miR-183は脂肪細胞の
分化を促進した。
IDM:インスリン、DEX(デキサメタソン)、IBMX(イソブチルメチルキサンチン)
miR-183が脂肪細胞の分化に与える影響
Oil redの定量化
キットによりTGを定量
miR-183が脂肪細胞分化に関わる
遺伝子に与える影響
1. miR-183のミミックまた
はNCを3T3-L1細胞に
導入
2. 24時間後に分化誘導
培地(IDM)に置換
3. qPCRにより定量
(bアクチンで標準化)
分化の初期過程
(Day2とDay4)で、
各遺伝子の発現量
を増加させた。
miR-183の抑制が脂肪細胞の分化に与える影響
1. miR-183のinhibitorまたはNCを3T3-L1細胞に導入
2. 24時間後に分化誘導培地(IDM)に置換
3. 4日後にOil redにより脂肪滴を染色
miR-183のinhibitor:miR-183とペアの塩基対のもの
miR-183の抑制により、脂肪
細胞の分化は抑制された。
miR-183の抑制が脂肪細胞の分化に与える影響
Oil redの定量化
キットによりTGを定量
miR-183の抑制が脂肪細胞分化に
関わる遺伝子に与える影響
miR-183の標的遺伝子の同定
コンピュータのソフトウェアにより、miR-183と結合する可能性のある脂質合成
に関わる遺伝子を解析
→ LRP6( Wntが結合する受容体)の3’UTR(転写されるが翻訳されない部分)
に結合する可能性があると解析された。
そこで、
① miR-183によりLRP6の発現量やWnt/b-catenin経路が抑制されるかどうか
② それはLRP6のmRNAと結合することによるものかどうか
③ LRP6の抑制は実際に脂質合成に影響を与えているか
これらを検証した。
① miR-183がLRP6に与える影響
導入して24 h後にqPCR
導入して48 h後にウエスタンブロット
miR-183はLRP6を抑制した。
① miR-183がWnt/b-catenin経路に与える影響
C-mycの発現量
核内のb-カテニンのタンパク量
miR-183はWnt/b-catenin経路を抑制した。
② miR-183の標的遺伝子の結合部位の変性
1. BHK細胞にwild typeまたはmutantの部位を持つルシフェラーゼプラスミドを導入
2. miR-183のミミックまたはNCを導入
3. 24時間後にcell lysatesを回収し、ルシフェラーゼ活性を測定
② miR-183の標的遺伝子の結合部位の
変性によるプロモーター活性への影響
結合部位の変性
により、miR-183に
よる抑制が見られ
なくなった。
miR-183の活性に
は標的遺伝子へ
の結合が重要であ
ると考えられる。
③ siRNAによるLRP6の抑制の確認
24時間後 qPCR
48時間後 ウエスタンブロット
siRNAによるLRP6の抑制が確認された
③ LRP6の抑制が脂肪細胞の分化に与える影響
1. siRNAを導入して24h後に分化誘導培地に置換
2. 4日後にOil redで染色
分化を促進した。
③ LRP6の抑制が脂肪細胞の分化に与える影響
Oil redの定量化
キットによりTGを定量
③LRP6の抑制が
脂肪細胞分化に
関わる遺伝子に
与える影響
ゲノム上のmiR-183の構造の解析
オンライン上のソフトウェアとpri-miR-183の配列から、ゲノム上でのmiR-183
の位置を予測した。
Pri-miR-183の転写領域の5’側(上流)に複数のプロモーター配列を見つけた。
→ どのプロモーター部位が作用してpri-miR-183を転写しているか??
レーポーターアッセイによって調べた。
1. pGL3-basic(ホタルルシフェラーゼ), pGL3-control, pGL3-miR-183 promoter
fragmentをBHK細胞に導入
2. pRL-TK(ウミシイタケルシフェラーゼベクター)を導入
3. 24時間後にcell lysatesを回収し、ルシフェラーゼ活性を測定
Promoter-1,2の活性
Promoter-2が転写活性を示した。
Promoter-2のどの部分が特に重要であるか??
5’末端側が特に重要か。
pre-miR-183のcore promoterに結合する
転写因子の同定
オンライン上のソフトウェアにより、pre-miR-183のcore promoterに結合する転写因
子の候補としてsp1とGATA3を見つけた。(どちらも脂肪細胞の分化に関わっている)
→ miR-183の転写活性に影響を与えるかどうか、sp1とGATA3をプラスミドで過剰発
現させることで調べた。
過剰発現の確認(導入して24 h後にqPCR)
sp1またはGATA3の過剰発現が
miR-183の転写活性へ与える影響
sp1
GATA3
導入して24 h後にcell lysatesを回収し、ルシフェラーゼ活性を測定
GATA3の過剰発現により、転写活性が抑制された。
miR-183のリプレッサーとしてはたらくと考えられる。
GATA3の過剰発現がmiR-183の
発現量に与える影響
導入して48 h後にqPCR
GATA3の過剰発現により、miR-183の発現が抑制された。
GATA3の過剰発現がmiR-183の標的遺伝子
であるLRP6の発現量に与える影響
qPCR
ウエスタンブロット
GATA3の過剰発現はmiR-183の発現量の抑制を通して、
LRP6の発現を上昇させた。
GATA3の作用はcore promoterに
結合することによるものか
core promoterを変異 → ルシフェラーゼ活性を測定
core promoterの変異により
活性が上昇した。
GATA3を過剰発現
core promoterを変異したとき、GATA3
の過剰発現は影響を与えなかった。
クロマチン免疫沈降による
core promoterとGATA3の結合の確認
タカラバイオ HPより
得られたDNA断片をPCRで増幅し、DNAシー
ケンシングをしたところ、core promoterであ
ることが確認された。
Core promoterとGATA3の
結合が確認された。
総 括
 Wnt/b-catenin経路は脂
質合成を抑制する
 miR-183はWntの受容体
であるLRP6を抑制するこ
とでWnt/b-catenin経路
を抑制し、脂質合成を促
進する
 GATA3はmiR-183を抑制し、
またPPARgも直接抑制し
て脂質合成を抑制する。