鉄道インフラの輸入が国内経 済に与える影響 名古屋大学 柳瀬ゼミⅱ(矢田、倉田、立山、木下) 2015/11/21 1 目次 1.研究の動機 2.インフラ輸出について 2.1 インフラ輸出の概要 2.2 インフラ輸出の現状 3.実証研究 3.1 鉄道建設と失業率 3.2 鉄道建設とGDP 4.結論 5.参考資料 2015/11/21 http://rail.hobidas.com/news/info/sp/article/101795.html 2 1.研究の動機 北陸新幹線開通(2015)を皮切りに、今後、北海道新幹 線、九州新幹線、北陸新幹線(金沢~敦賀)の整備が計画 されている ↕ 同時に国内でのインフラ需要の減少、限界が懸念されつつ ある 安倍政権の下は「成長戦略」として、トップセールスを行 い、海外のインフラ需要を積極的に国内に取り込むことに 力を注いでいる ↓ インフラ輸出がなぜ注目されているのか どのような影響を国内外に与えうるのか 2015/11/21 3 2.インフラ輸出について 2.1 インフラ輸出の概要 インフラ輸出とは? 「鉄道、水道施設、エネルギー関連施設をはじめとする、人々 の生活に欠かすことのできない基盤となる設備を輸出するこ と」 製品、技術、建設ノウハウ、オペレーションメンテナンス、定期的メン テナンス <特徴> ・投資に近く、独占的な財であるため、国家間の長期的な関係 を築く ・主に先進国から途上国に輸出される 受け入れ国側 2015/11/21 4 2.1 インフラ輸出の概要 先進国はインフラ建設において高い技術を誇る ・安全性 ・正確性 ・環境への配慮 しかし、少子高齢化・人口減少が進行中の国内のみでは、 高いインフラ需要は見込めない →発展途上国(インフラ整備が不十分、人口が増加傾 向)の高いインフラ需要を取り込み、積極的に輸出を行 うことが国内産業の発達、経済成長に向けた一つのキー である 2015/11/21 5 2.2 インフラ輸出の現状(世 界) 近年、世界規模でインフラ市場が拡大傾向にあり、そのうち海 外受注額は約4割を占めており、世界的にインフラの輸出入が 盛んであることがわかる 世界の上位225コントラクターの売上高推移における自国内/海外別の推移 2015/11/21 出典 総務省HP Top 225 Intnational Contracto 6 2.2 インフラ輸出の現状 (日本) 成長戦略の一環として、インフラ輸出を促進させ、2020年 にはインフラ輸出総額を30兆を目標に掲げている(2010年 は10兆円) 日本 「海外交通・都市開発事業資源機構」 (2014) 設立 企業のみの大型案件を受注、包括的なインフラ整備を行うの は困 難であり、政府と企業が協力し、官民一体で高速鉄道 の輸出増加を目指す →国の政策として鉄道輸出に注力している 今回は鉄道インフラの輸出に注目 輸出国にとってリターンがあるのは明らかである 2015/11/21 鉄道の輸入は受け入れ国に何か影響を与えるの 7 3.実証研究 <研究内容> 鉄道インフラの輸入が行われ、その整備が輸入国内に与える 影響を計測し、明らかにする。 ①鉄道建設と失業率(鉄道建設の直接効果の分析) ・鉄道建設のための労働需要の増加 ・鉄道建設による交通の利便性→地方の人々が職を探しや すくなることによる 労働供給の増加 →鉄道建設によって失業率が減少すると想定 2015/11/21 8 3.実証研究 ②鉄道建設とGDP(鉄道建設の間接効果の分 析) ・鉄道の建設において外資の受け入れの変動が ある →鉄道の建設と外資受け入れの増加が国内 経済(GDP)にどのような影響を与えるのかを 回帰分析によって明らかにする。 調査国 アジア6カ国(インド、フィリピン、韓国、ベト 2015/11/21 ナム、タイ、台湾) 9 3.1 鉄道建設と失業率 ①鉄道建設と失業率 鉄道建設が失業率に変化を与えると想定し、その変化の大 きさは建設された鉄道網の規模(発展具合)に依存すると 予測 <方法> 当該国で行われた鉄道建設事業における ①規模(距離)、②利用者数、③貨物輸送量 のデータを収集し、その3つの観点からポイント付けを行 い、発展度の指標を作成し順位付けをする →発展度と失業率の変遷の関係を調査 2015/11/21 10 3.1 鉄道建設と失業率 下のグラフは調査対象国におけるデータを収集しまとめた ものである 完成年度 インド 国鉄延線 2005 フィリピン マニラ・メトロレール 1999 韓国 韓国高速鉄道 2004 ベトナム 国鉄延線 2005 タイ 国鉄延線 1999 台湾 高速鉄道 2007 km 800 16.8 240 71 23.5 345 億人km 450増 0.3 30 2増 2増 71 億トンkm 450増 0.02 0 2増 1増 0 人km、トンkm・・・輸送量の単位 人km 旅客の人数とその移動距離をかけたもの トンkm 貨物の重量(トン)とその移動距離をかけたもの 2015/11/21 11 3.1 鉄道建設と失業率 上記の鉄道建設を以上のような3つの観点からポイント したものが下記の表である ①規模-建設した鉄道の長さ/国土面積 ②利用者数-増加した利用者数/ 人口 ③貨物輸送量-増加した貨物輸送量/建設前の貨物輸送量 台湾 インド 韓国 ベトナム フィリピン タイ 2015/11/21 ① 76pt 2pt 22pt 2pt 0pt 0pt ② 53pt 18pt 27pt 1pt 0pt 1pt ③ 24pt 17pt 17pt 8pt 12 3.1 鉄道建設と失業率 面積(100km)人口(十万人) 貨物輸送量(億トンkm) 台湾 36 22 インド 3287 1144 3400 韓国 100 47 ベトナム 330 84 23 フィリピン 300 76 1.5 タイ 513 61 30 2015/11/21 13 3.1 鉄道建設と失業率 ①規模-建設した鉄道の長さ/国土面積 ②利用者数-増加した利用者数/ 人口 ③貨物輸送量-増加した貨物輸送量/建設前の貨物輸送量 ① 台湾 インド 韓国 ベトナム フィリピン タイ 2015/11/21 ② 9.8 0.24 2.4 0.21 0.05 0.04 ③ 1.55 0.72 0.53 0.02 0.003 0.02 0.13 0.08 0.08 0.03 14 3.1 鉄道建設と失業率 1位 台湾 129pt 4位 ベトナム 20pt 2位 韓国 5位 フィリピン 17pt 49pt 3位 インド 44pt 2015/11/21 6位 タイ 9pt 15 3.1 鉄道建設と失業 率 建設された鉄道のポイント上位3か国の失業率の 0は建設完成年度を指す %推移 6 5.5 5 台湾 4.5 インド 4 韓国 3.5 3 -3 -2 -1 0 1 2 3 4 5 上位3か国では建設終了前に失業率の下降がみられた。 また、建設終了とともに、一時的に失業率が上がるも、 その後失業率は再び下降していくのもみられ、比較的大き 2015/11/21 16 な変化が見られた。 3.1 鉄道建設と失業 率 建設された鉄道のポイント下位3か国の失業率の %推移 14 12 10 8 ベトナム 6 フィリピン 4 タイ 2 0 -3 -2 -1 0 1 2 3 4 5 下位3か国では、建設期間においては失業率が下がっているが、 建設終了に際して失業率が上がった後、 上位3か国のように下降していかなかった。 2015/11/21 17 3.1 鉄道建設と失業 率 以上より、鉄道の建設はその期間において、失 業率の低下をもたらす。また、建設する鉄道発 展度合が高いほうが、その後の失業率に大きな 変動をもたらす。 2015/11/21 18 3.2 鉄道建設とGDP ②鉄道建設とGDP 今回、鉄道の建設について調べる中で、建設の計画に応じ て、外資規制の緩和が多く行われることが分かった。 外資規制 国家の安全や主権維持のため、国内企業への外国資本に制限を設ける →外資規制の緩和により対内直接投資に変化があり、 その変化はGDPに影響をあたえると予測 <方法> 対内直接投資の増加はGDPの変化とどのような相関がある のかを回帰分析によって調べる まず各国の対内直接投資の変化についてみていく 2015/11/21 19 3.2 鉄道建設とGDP 鉄道完成年 インド 対内直接投資(百万ド 47,138.73 35,657.25 27,431.23 25,349.89 20,327.76 5,629.67 4,321.08 5,777.81 2002 2015/11/21 2003 2004 7,621.77 2005 2006 2007 2008 2009 2010 20 3.2 鉄道建設とGD P ベトナム 対内直接投資(百万ドル) 9,579.00 6,981.00 1,954.00 1,400.00 1,450.00 1,610.00 2002 2015/11/21 2003 2004 2005 8,000.00 7,600.00 2,400.00 2006 2007 2008 2009 2010 21 3.2 鉄道建設とGD P フィリピン 対内直接投資(百万ド ル) 2240.00 1752.00 1542.00 1520.00 1249.00 1247.00 688.00 491.00 195.00 1996 2015/11/21 1997 1998 1999 2000 2001 2002 2003 2004 22 3.2 鉄道建設とGDP 韓国 対内直接投資(百万ド 13,294.4013,643.20 11,187.50 9,161.90 8,826.90 6522.30 2001 2015/11/21 9,021.90 7,010 5,475.10 2002 2003 2004 2005 2006 2007 2008 2009 23 3.2 鉄道建設とGD P タイ 対内直接投資(百万ドル) 8,066.54 7,492.00 6,106.38 5,073.20 3,882.00 3,410.12 5,858.58 5,222.35 3,355.42 2,338.00 1996 2015/11/21 1997 1998 1999 2000 2001 2002 2003 2004 2005 24 3.2 鉄道建設とGD P 台湾 対内直接投資(百万ド 7,424.007,769.00 5,432.00 2,805.002,492.00 1,898.001,625.00 2004 2015/11/21 2005 2006 2007 2008 2009 2010 3,207.00 2011 2012 -1,957.00 25 3.2 鉄道建設とG DP 以上のように、鉄道の建設に応じて、対内直接投資の増加 の傾向が見られた。 これに関して、対内直接投資の増加はGDPの変化とどのよ うな相関があるのかを回帰分析によって調べる。 2015/11/21 26 3.2 鉄道建設とGD P 2015/11/21 27 3.2 鉄道建設とGD P 正の相関がみられた国 ベトナム フィリピン GDP成長 率+1 1.3 1.9 1.25 1.7 1.2 1.5 Series1 1.3 Linear (Series1) Series1 1.15 Linear (Series1) 1.1 1.1 0.9 1.05 0.7 1 0.5 0 2015/11/21 2 4 6 8 0 対内直接投資成長率+1 10 1 2 3 4 28 3.2 鉄道建設とGD P 正の相関がみられた国 インド 1.4 1.3 1.2 Series1 1.1 Linear (Series1) 1 0.9 0.8 0 2015/11/21 0.5 1 1.5 2 2.5 3 29 3.2 鉄道建設とGD P 相関があまり見られなかった 国 韓国 台湾 1.2 1.3 1.15 1.2 1.1 1.1 1.05 Series1 1 1 Series1 Linear (Series1) 0.9 Linear (Series1) 0.95 0.8 0.9 0.7 0.85 0.8 0.6 0 2015/11/21 0.5 1 1.5 2 0 1 2 3 4 5 30 3.2 鉄道建設とG DP 相関があまり見られなかった 国 タイ 1.2 1.1 1 0.9 Series1 Linear (Series1) 0.8 0.7 0.6 0 2015/11/21 0.5 1 1.5 2 2.5 31 3.2 鉄道建設とGDP では、この相関がみられた国とみられなかった国との違い はなんだろうか? 外資の変化によるGDPの変化が大きい 生産が外資に依存するところが大きい 国内の産業が発達していないのでは? 2015/11/21 32 3.2 鉄道建設とG DP 2015/11/21 33 3.2 鉄道建設とGD P 6か国のうち 一人当たりGDPの上位3か国は、対内直接投資の変化によ るGDPへの影響が少なく、下位3か国は影響が大きい事が 分かる。 以上から、外資は発展途上国には、強い経済成長効果をも たらすものの、その国が発展するにつれて、その効果はし だいに弱くなっていく。 よって、先進国での鉄道の建設は発展途上国に比べると経 済成長効果は弱い。 2015/11/21 34 4. 結論 鉄道の建設は、雇用創出効果と外資の受け 入れを促進させる効果がある。 雇用創出効果においては、その建設される 鉄道の発展度が鉄道建設終了後の失業率に まで影響を与える。 対内直接投資の増加は、発展途上国におい てより大きな経済効果を生み出す。 2015/11/21 35 5.参考資料 日本貿易振興機構 HP 世界の経済ネタ帳 HP GLOBAL NOTE HP 『世界の統計 2000~2015』 日本統計協会 『世界国勢図会』 矢野恒太記念会 『世界経済社会統計 2001~2012』 柊風舎 『台湾の運輸事業』 国土交通省 2015/11/21 36
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