(PDT)の光若返り効果に寄与する

Journal of Investigative Dermatology, 13 June 2013
Prolonged Activation of ERK Contributes to the
Photorejuvenation Effect in Photodynamic Therapy in
Human Dermal Fibroblasts
ERKの持続的活性化は
繊維芽細胞における光線力学的治療法(PDT)の光若返り効果に寄与する
2015.09.28 ゼミ
M2 中山千華
PDT(光線力学的治療)とは
生体内の病巣に親和性のある光感受性物質を投与し、可視光線照射によって発生
したROS光化学反応を利用した局所的治療法。
正常組織への障害が非常に少ない低侵襲な治療法である。
癌や皮膚疾患、加齢黄班疾患 等に用いられる。
真皮層には600 nm波長の赤色光を用いる
ALA(5-Aminolevulinic acid)
→→→
ポルフィリン
ROSはMAPKを活性化する
ROSはMAPKを活性化する
ERKは細胞成長とか、あとの二つはサイトカンやストレス応答
コラーゲン合成・MMPにも関わる
http://www.medogene.com/My%20Researches/Signaling%20pathways/MAPK-Pathway.html
ERK5
??
MMP
PDTは光老化の治療に効果的と言われている
→だが分子メカニズムは分かっていない
・・・そこを明らかにしたい
本実験では
線維芽細胞を用いて、PDT後の皮膚再生過程における分子メカニズムを明らかに
することを目的とした。
Fig① PDT処理は線維芽細胞の増殖を促進する
PDT処理条件の検討(MTT assay)
ALA, Photo(633 nm red light), PDTによる細胞毒性は認められなかった
Fig① PDT処理は線維芽細胞の増殖を促進する
PDT処理が細胞増殖に与える影響を評価(d: MTT assay, e: PCNA)
(ALA 0.1mM, Photo 3 J/cm2)
PDT処理のみ、線維芽細胞の増殖を促進した
Fig① PDT処理は線維芽細胞の増殖を促進する
線維芽細胞の運動性を評価(scratch wound assay)
▶皮膚再生に関して、
PDTは細胞増殖・運動性の両方を促進している可能性がある
Fig②PDT処理は、線維芽細胞におけるERKの持続的活性化を誘導する
(western blot)
PDT処理によって、ERKは素早く活性化し、8時間持続した
一方、Photoのみは初期のみ活性化、ALAのみは活性化せず
(30 ng/mL, 30 min)
PDT処理はERKのみ活性化した
Fig②PDT処理は、線維芽細胞におけるERKの持続的活性化を誘導する
(免疫組織・蛍光染色)
▶PDTはMAPKのうちERKのみ選択的に活性化する
Fig③PDTに誘導されるERKの活性化は線維芽細胞の増殖に寄与する
PD98059(ERK阻害剤) 20 µM, 30 min → PDT処理
→ 4時間後western blotting
ERK阻害剤は、PDT処理によるERKの活性化を阻害した
PCNA評価
ERK阻害剤は、PDT処理による
PCNAの発現の増加を抑制した
Fig③PDTに誘導されるERKの活性化は線維芽細胞の増殖に寄与する
PD98059(ERK阻害剤) 20 µM, 30 min → PDT処理 → 16 時間後 wound healing assay
PDT処理による運動性の増加は
PD98059により阻害された
▶PDT誘導性のERKの持続的活性化に引き起こされる、
線維芽細胞の増殖・運動性促進作用が肌再生の主なメカニズムである
Fig④PDTに誘導されるROSはERKを持続的に活性化し、線維芽細胞の増殖を促進する
PDT or H2O2処理後、DCFH-DAを用いてROS産生量を測定・蛍光顕微鏡・共焦点顕微鏡
時間の経過とともにROS産生は増加したが、H2O2刺激に比べると少ない
Fig④PDTに誘導されるROSはERKを持続的に活性化し、線維芽細胞の増殖を促進する
NAC(1 mM, 30 min)処理後、PDT処理 →
c : 4時間後 western blotting
d : 24時間後 PCNA免疫染色
NAC(抗酸化剤)により、PDTに誘導されるERKの活性化・PCNA発現上昇が打ち消された
Fig④PDTに誘導されるROSはERKを持続的に活性化し、線維芽細胞の増殖を促進する
(BHA:butylated Hydroxyanisole, NAC:N-acetyl-L-cysteine) ともに抗酸化剤
抗酸化剤添加によって線維芽細胞の運動性が抑制された
▶PDT処理によって産生される細胞内ROSがERKを持続的に活性化させ、
線維芽細胞の増殖を促進する
Fig⑤MMP活性・コラーゲン合成に与えるPDTの影響
a : PCR, b : western blot
MMP-1, 2, 12のmRNA・タンパク質量には影響を与えなかったが、
MMP-3, Collagen type IαのmRNA・タンパク質量は増加した
Fig⑤MMP活性・コラーゲン合成に与えるPDTの影響
PD98059(ERK阻害剤) 20 µM, 30 min → PDT処理 →
e,f : 24時間後 PCR
g : 48時間後 western blot
PD98059はMMP-3, Collagen type 1αのmRNA発現を抑制した
---MMP-3, Collagen type 1αの発現は、 ERKの持続的活性化に直接的に促進される
▶PDTはMAPK経路を介して線維芽細胞の細胞機能を活性化する
Fig⑥PDTによる組織学的な変化は紫外線ダメージを受けた皮膚の回復を示唆する
週2回のPDT治療を4週間受けた後
b : HE染色
c : MT染色(Masson's Trichrome Stain)
d : EVG染色(Verhoeff-van Gieson Elastic Stain)
コラーゲン量の増加・変性弾性繊維の減少が認められた
▶PDTは臨床応用に効果的な皮膚再生治療法と言える
総括
実験結果より、PDT処理は
①線維芽細胞の増殖・運動性を促進する
②MAPKのうちERKのみ選択的に活性化する
③ERK持続的活性化を誘導し、それに続く線維芽細胞の増殖・運動性促進作用が皮膚再生にお
ける主なメカニズムである
④細胞内ROS産生を促進して、ERKの持続的活性化を誘導し、線維芽細胞の増殖を促進する
⑤臨床的にも効果的な結果を示す
PDT処理
ROS⇧
ERK活性化
細胞増殖
MMPs⇧
肌再生
▶PDT(光線力学的治療)による肌再生の分子メカニズムが明らかになった