分岐形態を考慮した模擬冠動脈つき CT用新型心臓動態ファントムの 開発および使用経験 福井 利佳1), 田中 功1), 周東 太久馬1), 星野 有紀1), 佐藤 宗邦2), 沈 雲1), 石川 拓也1), 館 悦子1), 町田 治彦1), 上野 惠子1) 1) 東京女子医科大学東医療センター 放射線科 2) フヨー株式会社 背景 現在、心臓CT検査は広く臨床応用されて いる。時間分解能や画質の向上、被ばく低 減に向け、さまざまな撮影技術が開発され てきた。 心臓CT検査において、新技術の性能評価 を行うためには心電図同期が可能なファン トムが必要であり、これまでCT装置用の心 電図同期型心臓動態ファントムが開発され、 用いられてきた。 背景 従来の心臓動態ファントムの課題点 冠動脈の分岐形態が考慮されていない。 模擬冠動脈内の溶液濃度の変更が容易でない。 溶液が模擬冠動脈内に封入されているため、冠動脈内の 血流をシミュレーションできない。 motion-correction algorithmであるSnapShot Freeze (SSF) の再構成が不可能である。 心室部 模擬冠動脈 目的 分岐形態を考慮した模擬冠動脈を有し、 その内容液の循環や濃度変更も可能なCT 用新型心臓動態ファントムを開発し、その 有用性を検証する。 使用機器 心臓動態ファントム(以下、ファントム) PFCP-1 (フヨー株式会社) CT装置 Discovery CT750 HD (GE Healthcare) ワークステーション Advantage Workstation VolumeShare 4.6 (GE Healthcare) ファントムの構造 冠動脈の分岐形態を考慮した構造を有している 模擬冠動脈内の溶液の循環が可能 模擬冠動脈 材質 :シリコン 血管壁の厚さ :0.5~1.0 mm ファントム駆動部 CT値 :200~300 HU 左前下行枝 コントロール部 冠動脈フロー ポンプ&コントロール部 左回旋枝 検討項目 1. 模擬冠動脈内の循環 2. 心室と模擬冠動脈の動きの連動性 3. 心位相における心室容積の変化 4. SSFによるmotion artifact低減の有無 方法 1. 模擬冠動脈内の循環 拍動させたファントムの模擬冠動脈内に赤色 色素で着色した希釈造影剤を循環させ、循環 の様子を目視にて確認した。 模擬冠動脈内にCT値約200 HU(@120 kV)の希 釈造影剤を循環させたファントムを心電図同 期CT撮影した後、CT値約450 HU(@120 kV) の希釈造影剤を循環させ、再度ファントムの 撮影を行った。 得られたCT画像において模擬冠動脈内のCT値 を測定し、溶液濃度の変化を確認した。 方法 2. 心室と模擬冠動脈の動きの連動性 心拍数60 bpmにおいてファントムを拍動さ せ、心電図同期CT撮影を行った。 心位相5%ごとに再構成を行いVR画像を作成 し、心位相の変化に伴う心室と模擬冠動脈の 動きの連動性を評価した。 方法 3. 心位相における心室容積の変化 心拍数40, 60, 80, 100 bpmにおいてファント ムを拍動させ、心電図同期CT撮影を行った。 心位相2%ごとに再構成を行いVR画像を作成 し、各心位相における心室容積を計測した。 ファントムの心室容積変化が臨床の左室容積 変化と乖離がないか確認した。 方法 4. SSFによる再構成の有無 心拍数70, 80, 90 bpmにおいてファントムを拍 動させ、心電図同期CT撮影を行った。 SSFの有無の両者にて再構成を行い、SSFに よるmotion artifactの低減効果の有無について 評価を行った。 撮影条件 管電圧 :120 kV 管電流 :400 mA Rotation speed :0.35 s Helical pitch :0.16 : 1 コリメーション :64×0.625 mm 結果 1. 模擬冠動脈内の循環 結果 1. 模擬冠動脈内の循環 210.4 HU 440.7 HU 結果 2. 心室と模擬冠動脈の動きの連動性 拡張期 収縮期 結果 2. 心室と模擬冠動脈の動きの連動性 冠動脈と心室の固定が部分的である 冠動脈と心室を模擬心筋で固定 模擬心筋 材質 :透明人肌ゲル 心筋の厚さ :18 mm CT値 :約 -50 HU 結果 2. 心室と模擬冠動脈の動きの連動性 拡張期 収縮期 動きの連動性が向上した 結果 3. 心位相における心室容積の変化 低心拍 高心拍 大久保善朗、川良徳弘、東條尚子、他. 生理機能検査学 第2版. 医歯薬出版. 2003; 71-2.(改変) 結果 3. 心位相における心室容積の変化 低心拍 60 bpm 心室容積 (cm3) 心室容積 (cm3) 40 bpm 240 220 200 180 160 140 120 100 0 50 心位相 (%) 100 240 220 200 180 160 140 120 100 0 50 心位相 (%) 100 結果 3. 心位相における心室容積の変化 高心拍 100 bpm 心室容積 (cm2) 心室容積 (cm2) 80 bpm 240 220 200 180 160 140 120 100 0 50 心位相 (%) 100 240 220 200 180 160 140 120 100 0 50 心位相 (%) 100 結果 3. 心位相における心室容積の変化 60 bpm 0% 10% 20% 50% 60% 70% 30% 80% 40% 90% 結果 4. SSFによる再構成の有無 70 bpm SSF (-) R-R 75% SSF (+) 80 bpm 90 bpm 考察 今回開発した新型心臓動態ファントムは 容易に溶液が変更可能であることが確認さ れた。 模擬冠動脈の位置を変化させることなく 溶液濃度の変更が可能であるため、冠動脈 内腔の造影剤濃度がSSFのmotion artifact低 減効果に与える影響などの評価に有用であ ると考えられる。 結論 新型心臓動態ファントムの特長を検証した 本検討より、本ファントムは冠動脈CTにお ける基礎評価に有用であると示唆された。
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