ISS-P-120

情報・システムソサイエティ特別企画 学生ポスターセッション予稿集
ISS-P-120
複数人の走行テンポを集約した楽曲メタデータによる
楽曲検索システムの検討
綾香†
南雲
鷹野
孝典†
† 神奈川工科大学情報学部情報工学科
1. はじめに
音楽を聴きながらジョギングする人を対象とし
た音楽配信システムの需要が高まっている.このよ
うな音楽配信システムの実現において,特に,ジョ
ギングあるいはウォーキング中の走行(歩行)テン
ポに応じた楽曲選曲機能を実現するには,対象とす
る楽曲からのテンポ抽出が必要とされている.しか
し,多くの携帯音楽プレイヤーで利用されている
MP3 や AAC 等の音楽データ形式は基本的にトラック
分割ができないため,人間が感じ取れるテンポとし
て重要なメイントラックからのテンポ抽出が困難
である.本研究では,走行テンポにあった楽曲検索
を実現するために,ある楽曲を聴いた際の複数人の
走行テンポを集約することにより,その楽曲に対し
て人の感じる「体感テンポ」を抽出する方式を示す.
2. 提案方式
Step-2: 走行テンポの
抽出
Step-3: 複数人の
走行テンポの集約
体感テンポ
メタデータDB
走行テンポ
DB
走行テンポ
の収集
携帯音楽
プレイヤー
走行
Step-1: 走行テンポ
抽出
走行テンポに
応じてプレイリストを生成
Step-4: 楽曲選曲
楽曲DB
楽曲再生
図1. 提案方式の概要図
本方式では,下記の手順で体感テンポ抽出および
楽曲選曲を行う(図 1).
Step-1: 時刻 t におけるモバイル端末の加速度セン
サから得られる xyz 各軸の加速度を ax(t),ay(t),az(t)
とする.S=|ax(t) - ax(t - 1)|+|ay(t) - ay(t - 1)|+|az(t) az(t - 1)|がしきい値αを超えたときに「1 歩」と計測
し,一定時間 Δt 内にカウントされた歩数 w に基づ
いて,走行テンポ T を T = w / Δt として算出する.
Step-2: ユーザ x がある楽曲を聴いている際の走行
テンポ Txi を Δt の間隔で算出し,曲の初めから終わ
りまで聴いた際の走行テンポ列を Tx = [Tx1, Tx2, Tx3,
…, Txm]のように時系列データとして表現する.
Step-3: 着目している楽曲 m に対して,走行テンポ
2014/3/18 〜 20 新潟市
列の傾向が似ている N 人のユーザを対象とし,体感
テンポを算出する: T (m)   N m Txi / m / N
x 1
i 1


Step-4: ジョギング時の楽曲選曲の際には,楽曲 m
の体感テンポ T(m)とユーザ x の走行テンポ平均との
差に基づいて,楽曲のランキングを行い,上位 n 個
の楽曲を再生リストに追加する.
3. 予備実験
実験では,提案方式により被験者 1 名から抽出さ
れた体感テンポを用いて走行テンポにあった楽曲
検索が実現可能であるかを,既存のソフトウェアを
用いて抽出した BPM 値を用いた場合と比較するこ
とで確認する.なお,被験者 1 名が端末を腹部に抱
えて 30 歩を 2 回,15 歩と 60 歩を 1 回走った結果,
Step-1 のしきい値αを 160 に設定した時が,実際の
歩数に近かったためα=160 として実験を行う.
表 1 に,10 曲のポップス曲を対象とした楽曲検索
の結果の正解率を示す.10 種類の走行パターンに基
づいて 10 回の楽曲検索を行い,上位 5 件について
正解判定は人間が聴いて行った.表 1 の結果より,
提案方式による体感テンポの方が人の感じるテン
ポに適った楽曲を得ることができたことが確認で
きる.これは,BPM 値を用いた場合は人がテンポ
として知覚しないものをノイズ・テンポとして抽出
してしまったためと考えられる.
表 1. 体感テンポ(本方式)とBPM値の比較結果
体感テンポ
正解率
60%
BPM 値
27%
4. まとめ
今後の課題として,複数人の走行テンポに基づく
実証実験を行い,提案方式の実現可能性および有用
性を検証していく予定である.
参考文献
[1] 帆苅隼佑, 長安達也,”ジョギングのペースに再
生速度を同期させるスマートフォン用音楽プレ
イヤー”,情報処理学会全国大会講演論文集,
Vol.75(3),pp.249-250, 2013.
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