第13回資源植物学 木質資源植物 2016年1月8日 生命環境科学域 植物バイオサイエンス課程 尾形 善之 本講義の概要 ★木質資源植物について ♦定義 ♦特徴 ♦目的 ♦利用 ♦探索 樹木はどれでしょうか? Wikipedia 木質資源植物はどれでしょう か? Wikipedia 木質資源植物とは ★ネットで調べても出てきません ♦「樹木」と言えればいいのですが…… ★木質資源とは ♦「木質バイオマス」とも言います ♦林野庁によると、「再生可能な、生物由来 の有機性資源(化石燃料は除く)の中で木 材からなるもの」 ★木材:樹木からの材、主に幹や枝 木質とは ★大辞林 ♦木の性質。植物の幹の内部の固い部分。木化し た細胞からなる。木材に似た性質。 • 木材:建築物・工作物やパルプなどの材料あるいは原 料として用いる木。材木。 ★大辞泉 ♦木の性質。木のたち。木材に似た性質。 ♦「木質部」に同じ。 • 木質部:樹木の幹の内部の、木質化して堅い部分。 • 木質化:植物の細胞壁のリグニンが沈着して、組織が 堅くなること。木化。 木質とは ★木材の性質。または木材に似た性質。 ★木質化した組織、すなわち植物の細胞 壁にリグニンが沈着して堅くなった組織。 ★「木化した細胞壁」 ♦セルロース ♦ヘミセルロース ♦リグニン Wikipedia 木質資源とは ★木質をもつ植物資源 ♦木質バイオマスとも呼ばれます ★林野庁 ♦再生可能な、生物由来の有機性資源(化 石燃料は除く)の中で、木材からなるもの ★「木化した細胞壁を基にした資源」 木質資源植物 ★針葉樹(イチョウを含める) ♦マツ、スギ、ヒノキなど ★広葉樹 ♦ケヤキ、ナラ類、カンバ類、カエデ類 ★つる植物 ★タケ類(ヤシ類を含める) ★イネ科草本類 リュウゼツラン ★高さ10数メートル ★20~30年 木質資源植物の形態的特徴 ★マクロ的特徴 ♦幹と茎と稈 木質資源植物の形態的特徴 ★ミクロ的特徴 ♦木化した細胞壁 単子葉植物 双子葉植物(草本) 樹木(木本) チェックポイント・I 1. 木質とは? 2. 木質資源とは? 3. 木質資源植物とは? 4. 木質資源植物のマクロの特徴は? 5. 木質資源植物のミクロの特徴は? 木質資源植物を研究する目的 ★木質資源は最大のバイオマス ♦微生物と比べると、量が多く合成が中心 ★細胞壁成分の中心は多糖類 ♦分解すれば糖としてバイオエネルギーに利 用 ★その他の成分の多くが未利用 ♦種子の脂肪などもバイオエネルギー等に利 用 ★天然の合成系を利用 そのまま利用する ★木材 ♦建材、楽器など ★端材・間伐材 ♦家具、ウッドチップ、DIY、燃料など ★木粉 ♦パーティクルボード 銘木 ★シタン(紫檀) ★コクタン(黒檀) ★タガヤサン(鉄刀木) ★ウォールナット(胡桃) ★チーク ★マホガニー ★ジンコウ(沈香) Wikipedia スポーツや芸術の分野では… ★スポーツ ♦野球のバット:アオダモ、アッシュ ♦弓道の弓:マダケ、ハゼノキ ★芸術 ♦ヴァイオリン:ドイツトウヒ、イタヤカエデ、黒 檀 ♦ピアノ:ドイツトウヒ、スプルース、黒檀 Wikipedia 木材利用の課題 ★建材として使われなくなった。 ♦「暮らしごこち」のためには使われる。 ★一般的な利用価値が少ない。 ♦スポーツや芸術は限られた利用にすぎな い。 ★産業利用が期待される。 ♦バイオエネルギーや工業部品。 細胞壁の成分を利用する ★セルロースが最大の標的 ♦ヘミセルロースやリグニンの除去がポイント ♦従来は、紙など ♦今後の課題はセルロースの分解 細胞壁の成分を利用する ★セルロースの効率的な分解 ♦酵素糖化 • 効率的に分解できるセルラーゼの探索 • シロアリ、マツノザイセンチュウ、ヨコエビなど ♦工業的な分解 • 蒸煮爆砕法、希硫酸前処理、加圧熱水など ♦現状では、産業ニーズには届いていない。 バイオエタノール ★糖質原料(単糖や二糖が中心) ♦サトウキビの搾りかす、ほぼそのまま利用可能 • ブラジル ★デンプン質原料(多糖類) ♦トウモロコシ(可食部)、分解が必要 • アメリカ ★セルロース系原料(多糖類) ♦木質(非食部)、分解が必要 • 各国で研究段階(スイッチグラスなど) Wikipedia 各種成分を利用する ★樹皮に含まれる成分 ♦ラテックス(パラゴムノキ) • 長所:強度、伸縮性 • 短所:熱、気候、油 ★種子に含まれる成分 ♦菜種油 ♦ヤトロファ燃料(ヤトロファ) • 例えば、バイオマスジャパン株式会社 Wikipedia バイオディーゼル ★原料 ♦欧州:菜種、ひまわり ♦北中米:大豆 ♦熱帯:ヤトロファ、ヤシ ★精製 ♦脂肪酸メチルエステル(FAME) • メチルエステル化~グリセリン除去 ♦水素化処理油(BHD) • まだ研究段階 Wikipedia バイオ燃料の現状 ★原油価格の影響をまともに受ける ♦価格が高騰すると、脚光を浴びる ♦継続的な研究開発が不可欠 Wikipedia 遺伝資源としての植物 ★遺伝資源とは… ♦「現実の又は潜在的な価値を有する遺伝素 材(遺伝の機能的な単位を有する植物、動 物、微生物その他に由来する素材)」 • 生物多様性条約第2条より ♦あえて簡単に言えば、「遺伝子とその派生 物」 遺伝資源を保つには… ★生物多様性が重要 ♦多くの遺伝子の機能は、まだ分かっていな い ♦潜在的な価値をもつ遺伝子の消失を防ぐ ♦いつまでも機能が分からないままでは…… ♦多くの遺伝子の機能を明らかにしていく ♦さらに、明らかになった遺伝子を活用してい く 有用遺伝子の探索・合成編 ★重要成分の合成量を増やすには… ♦生合成経路を活性化する!! ♦経路に関わる遺伝子を探す ♦その植物のゲノムを解読する ♦条件ごとに遺伝子発現を調べる ♦合成量と高発現した遺伝子の関係を知る ♦その遺伝子が高発現する条件を知る 木質資源植物のゲノム解読 ★ポプラ:モデル樹木 ★ブドウ:つる性果樹 ★ユーカリ:ユーカリオイル ★ヤトロファ:バイオ燃料 ★リンゴ:バラ科果樹 ★ほか続々 Wikipedia 木質資源植物の遺伝子探索 ★木質(細胞壁)形成の関連遺伝子の探索 ♦セルロース合成酵素 ♦ヘミセルロース合成酵素 ♦リグニン合成酵素 ★二次代謝成分の生合成関連遺伝子の探索 ♦果実の利用:食用、バイオ燃料用 ♦薬効・機能性成分:果皮、樹液 セルロース合成酵素 ★茎で遺伝子発現量が高い Wikipedia 遺伝子の探索・分解編 ★例えば、セルラーゼ遺伝子の探索 ♦セルロースを分解できる生物を探す • 木材腐朽菌、シロアリ腸内、ウシの消化管内 ♦注目微生物のゲノムを解読する ♦セルラーゼ遺伝子を選び出す ♦セルラーゼによる分解プロセスを明らかにす る ♦有用な分解プロセスを活用する 探索例 ★汚泥試料 ♦セルロース 入り ♦時点1 • A, B, C ♦時点2 • D, E, F Yamazawaら、2014 遺伝子探索の今後… ★植物・微生物ともに、多くの生物のゲノ ムが解読されていない ★ゲノムが解読され遺伝子が予測されて も、遺伝子の機能が分かっていない ★遺伝子の機能を明らかにするために… ♦遺伝子の塩基配列から攻める!! ♦遺伝子の発現傾向から攻める!! チェックポイント・II 6. 木質資源植物を研究する目的は? 7. 木質資源植物はどのように利用されるか? 8. 木質資源植物の遺伝子を探索する方法 は? 今日の課題 ★木質資源植物を対象として、どのような 研究をしてみたいですか? 植物種、目 的、期待する結果を含めて書いてくださ い。
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