若者の投票率について ~メディアによる投票率への影響~ 名古屋学院大学 経済学部 経済学科 4年 上山ゼミ 狩野 友良 篠田 晃瑛 本研究の目的 投票率の低下が叫ばれて久しい現代。 特に若者の投票率の低下は如実に現れている。 その原因は一体どこにあるのか。 どうすれば投票率を上げることができるのか。 これらの問題をメディア等の媒体を用いて考 察し、解決策を導き出していく。 目次 1.衆議院議員選挙の投票率の推移 2.衆議院議員選挙投票率に関する回帰分 析 3.選挙への意識に関するアンケート調査 4.本研究のまとめと結論 1.衆議院議員選挙の投票率の推移 (%) 全体の投票率(衆議院議員選挙) 90 80 70 60 74.57 73.45 73.31 71.76 71.4 68.51 68.01 67.94 67.26 73.99 67.51 62.49 59.86 59.65 69.28 59.32 52.66 50 40 30 19671969197219761979198019831986199019931996200020032005200920122014 (年) 年代別投票率の推移 (%) 20歳代 30歳代 40歳代 50歳代 60歳代 70歳代以上 90 80 70 60 50 40 30 (年) 衆議院議員総選挙の実施年の投票率 http://www.soumu.go.jp/senkyo/senkyo_s/news/sonota/nendaibetu/ 若者(20代・30代)の投票率 90 (%) 80 77.88 70 66.69 20歳代 60 30歳代 50 42.09 40 32.58 30 19671969197219761979198019831986199019931996200020032005200920122014 (年) 投票率向上に対する政府の方針 ICT(情報通信技術)を活用した投票環境の向上 他市町村不在者投票の投票用紙等のオンライン請求 都道府県選挙の選挙権に係る同一都道府県内移転時の取り扱いの 改善 投票所における選挙人名簿対照のオンライン化 選挙当日における投票区外投票 期日前投票用の利便性向上 商業施設等への期日前投票所の設置 期日前投票の投票時間の弾力的設定 最高裁判所裁判官国民審査の期日前投票期間等の見直し 選挙人名簿制度の見直し 選挙人名簿の内容確認手段の閲覧の一本化 選挙人名簿の登録制度の見直し 2.衆議院議員選挙投票率 に関する回帰分析 衆議院議員選挙投票率に関する回帰分析 回帰分析を用いて若者の選挙行動に影響を 与えそうな事象を調べる(衆議院議員総選 挙の投票率を被説明変数とする)。 若者を20代と設定し、20代で有意になった 変数をほかの年代にも当てはめてみる。そ して、年代ごとに変化の違いを見る。 得られた結果を基に結論を考察する。 回帰分析とは 影響される変数(被説明変数)に どのような変数(説明変数)が影 響を与えるのかという因果関係を 検証する分析方法 (最小二乗法を用いて分析する) 回帰分析の結果(20代) 被説明変数(衆議院議員選挙20代の投票率) テレビ視聴時間 スマホ発売ダミー(発売後を1) 消費税率 ゆとり教育ダミー(期間中を1) 期日前投票ダミー(開始後を1) 切片 自由度8 -7.37*** 6.6*** 2.4** 8.78*** -6.33*** 10.18*** 補正R2 0.97 注)***は1%水準、**は5%水準、*は1%水準で有意を表す。 回帰分析の結果(30代) 被説明変数(衆議院議員選挙30代の投票率) テレビ視聴時間 -5.04*** スマホ発売ダミー(発売後を1) 5.82*** 消費税率 0.61 ゆとり教育ダミー(期間中を1) 7.80*** 期日前投票ダミー(開始後を1) -6.99*** 切片 8.40*** 自由度8 補正R2 0.97 注)***は1%水準、**は5%水準、*は1%水準で有意を表 す。 回帰分析の結果(40代) 被説明変数(衆議院議員選挙40代の投票率) テレビ視聴時間 -4.16*** スマホ発売ダミー(発売後を1) 3.53*** 消費税率 1.38 ゆとり教育ダミー(期間中を1) 7.06*** 期日前投票ダミー(開始後を1) -5.56*** 切片 7.04*** 自由度8 補正R2 0.93 注)***は1%水準、**は5%水準、*は1%水準で有意を表 す。 回帰分析の結果(50代) 被説明変数(衆議院議員選挙50代の投票率) テレビ視聴時間 -6.76*** スマホ発売ダミー(発売後を1) 7.36*** 消費税率 1.70 ゆとり教育ダミー(期間中を1) 11.01*** 期日前投票ダミー(開始後を1) -8.20*** 切片 12.27*** 自由度8 補正R2 0.97 注)***は1%水準、**は5%水準、*は1%水準で有意を表 す。 回帰分析の結果(60代) 被説明変数(衆議院議員選挙60代の投票率) テレビ視聴時間 -6.09*** スマホ発売ダミー(発売後を1) 5.90*** 消費税率 2.17* ゆとり教育ダミー(期間中を1) 10.47*** 期日前投票ダミー(開始後を1) -7.70*** 切片 12.6*** 自由度8 補正R2 0.96 注)***は1%水準、**は5%水準、*は1%水準で有意を表す。 回帰分析の結果(70代) 被説明変数(衆議院議員選挙70代の投票率) テレビ視聴時間 -5.18*** スマホ発売ダミー(発売後を1) 3.13** 消費税率 2.45** ゆとり教育ダミー(期間中を1) 9.56*** 期日前投票ダミー(開始後を1) -7.37*** 切片 11.50*** 自由度8 補正R2 0.95 注)***は1%水準、**は5%水準、*は1%水準で有意を表す。 年代ごとのメディア媒体の係数比較 テレビ視聴率 スマホダミー 20代 30代 40代 50代 60代 70代以上 -1.0363 12.72315 -0.72425 11.47213 -0.67846 7.904232 -0.60688 9.068438 -0.4491 5.949551 -0.32014 2.65007 回帰分析の結果からの考察 テレビ視聴時間に負の因果関係が見られるのは、あ まり報道番組を見ないからではないか。 スマートフォンが発売されることにより、情報取得 がしやすくなったのではないか。 消費税率やゆとり教育などの社会的に大きな変化が 起きた際に人々は政治に関心を持ったのではない か。 期日前投票があるという安心感から選挙に行かない 人々がいるのではないか。 メディア媒体に関する変数の影響は20代での係数が 1番反応が大きいので、若者への影響が大きい。 そこで… テレビやスマホといったメディア 媒体が、若者の投票率に影響を及 ぼしている。 メディア媒体に注目したアンケー トを実施した。 3.選挙への意識に関す るアンケート調査 アンケート調査の概要 名古屋学院大学経済学部1年生251人を対象に実施 (欠損値:9) 選挙に対する意識を基に調査 安保関連法案前後での意識の変化 情報取得のメディア媒体について 次回の参議院選挙(H28.7.25)に行くかどうか 結果はクロス集計で分析(SPSS使用) 問1:回答者の性別・居住場所 居住場所 性別 女 11% 下宿 15% 男 89% 実家 85% 問2:安全保障関連法案について 知っていますか 知らない 9% 聞いたこ とがある 31% よく知っ ている 5% 大雑把に 知ってい る 55% 問2-1:安保法案について何を通して 知りましたか(複数回答可) 85.3 25.5 31.5 20.7 10.4 4.4 10.4 0.8 6.8 1.6 問2-2:安保法案を知ってから政治に 対する関心度は変わりましたか 以前から変わ らず関心はな い 38% 変化があり、 以前より関心 が薄れた 7% 変化があり、 以前よりも関 心を持った 29% 以前から変わ らず関心があ る 26% 問3:あなたは政治についてどの程度 知識があると思いますか よく知って いる 2% 知らない 11% ある程度知っ ている 22% あまり知らな い 65% 問4:普段、政治等のニュースについ て話す機会はありますか ある 21% ない 79% 問4-1:どのような人と話しますか 16.3 (単位:%) 11.2 0.8 2.0 0.0 0.4 問5:次回の参議院議員選挙 (H28.7.25)に行きますか 必ず行く 18% 行かない 51% テーマに よっては行 く 31% アンケートからのクロス集計 これらのアンケート結果からクロス集計を 行う。 選挙への関心に関係があると考えられる事 象から詳細なデータを求める。 続いて、クロス集計から得られた結果を提 示する。 クロス集計結果 安保法案を知ってからの関心度と 選挙に行くかどうか(問2-2と問5) 必ず行く 関心を持った 関心が薄い もとから関心あり テーマによる 55.6% 27.5% 12.7% もともと関心なし 10.5% 行かない 33.3% 11.1% 25.5% 47.1% 33.6% 21.1% 53.7% 68.4% 各媒体と選挙に行くかどうか (問2-1と問5) 必ず行く インターネット テレビ 新聞 テーマによっては行く 22% 行かない 37% 18% 41% 35% 45% 47% 37% 16% 元から関心があるが選挙に行かない (問2-1⑤⑥と問2-2) 関心持つ 友達や先輩 関心薄い 10% 家族や親族 4% もともと関心あり 80% 21% もともと関心なし 10% 71% 4% 住む場所と新聞を読む人の比較 (問1と問2-1② ) 読む 実 家 下 宿 読まない 32.1 10 (単位:%) 67.9 90 政治についての知識度と 選挙に行くかどうか(問3と問5) 必ず行く テーマによる 80% よく知っている 29% ある程度知っている あまり知らない 知らない 行かない 12% 15% 0% 20% 47% 33% 15% 24% 55% 70% 安保法案の知識と 選挙に行くかどうか(問2と問5) 必ず行く テーマによっては行く 行かない 47% よく知っている 31% 21% おおざっぱに知っている 8% 7% 6% 聞いたことはある 29% 30% 22% 知らない 16% 32% 52% アンケートから得られた結論 政治について知識がある。 安保法案を通して政治に関心を持つように なった。 安保法案についての知識がある。 新聞やネットから知識を得た人はテレビよ りも関心度が高い。 これらの人は、選挙に行く。 政治に対する関心と参政 テレビよりも新聞やインターネットで安保法案を 知った人の割合が多い。 政治に対する関心は元からあっても、選挙に行く かは別問題。 →むしろ友人や家族から安保法案に関する知識 を得たので、周りの人が関心があるだけで興味の 度合いが薄いのではないか。 自分から安保法案を知り政治に関心を 持った人が、選挙に行くと答えたので はないか? 4.本研究のまとめと 結論 結論 テレビでの政治に関する報道などは若 者への参政意識にはつながりにくい。 ネット活用は今後の伸びしろが大きい と思われる。 知識と関心の両方がある人は選挙に行 く。 新聞を読んでいる人は政治への関心度 がより高い。 まとめ 投票率を上げるためには、個々人それぞれが 自ら政治についての情報を取り入れることが 必要である。そのためには新聞が有効である と考えられる。 新聞を読むことを教育の一環として用いるこ とが政治への意識が高まるのではないか。 意識が高まることによって、政府が行ってい る投票年齢の引き下げ・ネット活用などの政 策が効果を発揮し、投票率が向上するのでは ないか。 参照 衆議院議員総選挙の実施年の投票率 http://www.soumu.go.jp/senkyo/senkyo_s/news/sonota/ne ndaibetu/ 総務省 投票環境の向上方策等に関する研究会 中間報 告 http://www.soumu.go.jp/menu_news/snews/01gyosei15_02000107.html 総務省 視聴時間量 http://www.soumu.go.jp/johotsusintokei/field/housou05.html
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