CO 2

Xi’an Jiaotong University
Dec. 16, 2011
Global warming
What is the scientific truth?
YOSHIDA Hideo
Department of Aeronautics and Astronautics
Kyoto University, Japan
[email protected]
エネルギー・資源 2009年1・3月号 (30巻, 1・3号)
http://www.jser.gr.jp/
コーディネーター:吉田英生
京都大学 大学院 航空宇宙工学専攻
[email protected]
企画にあたって
1988年6月23日の翌日,The New York Times は次のように報じました(抜粋).
Global Warming Has Begun, Expert Tells Senate
Dr. James E. Hansen of the National Aeronautics and Space Administration told a
Congressional committee that it was 99 percent certain that the warming trend
was not a natural variation but was caused by a buildup of carbon dioxide and
other artificial gases in the atmosphere.
それから約20年が経過し,2007年のノーベル平和賞がAlbert Gore米国元副大統領と気
候変動に関する政府間パネル(Intergovernmental Panel on Climate Change, IPCC)に
授与されるに至り,世界はCO2主因説による地球温暖化論とその対策の議論とで一色となり
ました.しかし,わが国の大部分のマスコミや関係機関がCO2による地球温暖化を疑いのない
事実と報じ,また一般の人々もそれを無条件的に信じる一方で,科学的決着はまだついてい
ないとする意見,あるいはCO2による温暖化そのものを否定する意見も,実は多数存在してい
ます.
2008年7月の洞爺湖サミットでも最重要課題として取り上げられたように,地球温暖化は21
世紀初頭の世界を席巻している最大の問題であり,その社会的インパクトはよくもわるくも比
類ないものです.しかし,その出発点で十分な科学的なコンセンサスを得ないまま,予防原則
に重点をおいてその先の議論を進めることは,たいへん危険であります. “科学的な真偽はと
もかく,人類が自分達の活動が及ぼす環境影響について目覚めるよい機会になり,省エネル
ギー・省資源も促進されるからよいではないか” というようなあいまいな立場ではなく,純粋に
科学的な検討を徹底的に行うことが焦眉の急といえるでしょう.
そこで2009年新年号では恒例の新春対談の形を変えて,地球温暖化論に対してさまざまな
意見をお持ちの第一線の方々による誌上討論を,e-mailを利用して実現しました.同様の討
論は,過去にもテレビやシンポジウムで何度か行われているようですが,限られた時間的制
約の中では論点が必ずしも噛み合うとは限らず,またその場で消えゆく言葉という限界があり
ます.そこで本企画では,討論者間の徹底的なメール審議で厳選した論点につき,各討論者
が時間をかけて練り上げた内容を学会誌の誌面(および学会ホームページ
http://www.jser.gr.jp/index.html)に論拠となるデータ等も含めて明確に記録することにより,
2009年現在の読者が自身で本問題を判断するための確固とした情報となり,さらに後世の読
者に対しても2009年の時点における科学的知見のアーカイブとなることを願っております.
なお,地球温暖化論に関しては今後の気候変動に伴うさまざまな自然現象に加え政治的経
済的側面も含めた極めて広範な論点がありますが,今回は地球温暖化の議論で出発点とな
る地球表面付近の温度変化に関する科学的分析だけに話題を限定しました.
最後に,この企画を進めながら繰り返し思っていたことを付記したいと思います.それは,英
語の “science=科学” と “conscience=良心” はほとんど同じ語でありラテン語の “scio
=知る” を語源とすること,そして,人間がものごとを正しく知ろうとしてお互いに意見交換しな
がら努力することが,科学であり良心ではないかと.この討論は各氏のご協力で “in a spirit
of scientific detachment”(Bertrand Russell; Why man should keep away from the
moon, The Times, July 15, 1969)で進められたことを感謝する次第です.
20世紀の名曲Smile (Charlie Chaplin; Modern Times, 1936) の調べを聴きながら,
本メール討論が21世紀の貴重なアーカイブとなる何十年も先の未来に思いを馳せて.
2008年12月18日
コーディネーター:編集実行委員会 副委員長 吉田英生 Hideo Yoshida
Part 1
Albert Gore, IPCC, COP
Part 2
地球温暖化の科学的基礎
Part 3
肯定派・懐疑派・否定派
Part 4
エネルギー・資源 e-mail 討論
付録
Arrheniusと宮沢賢治
Part 1
Albert Gore, IPCC, COP
Nobel 平和賞 2007
http://www.ipcc.ch/
http://nobelprize.org/nobel_prizes/peace/laureates/2007/
An Inconvenient Truth
tenthingstodo
Change
a light
Drive less
Recycle more
Check your tires
Use less hot water
Avoid products with a lot
of packaging
Adjust your thermostat
Plant a tree
Turn off electronic devices
Spread
the word!
Encourage your friends to
buy An Inconvenient Truth
http://www.climatecrisis.net/pdf/10things.pdf
The Intergovernmental Panel on Climate Change
The World Meteorological
Organization (WMO)
The United Nations
Environment
Programme (UNEP)
1988: 設立
Assessment Report
1990: 1st
1995: 2nd
2001: 3rd
2007: 4th
(TSU: Technical Support Units)
http://www.ipcc.ch/organization/organization_structure.shtml
日本での担当
WG I: 気象庁+文部科学省
WG II: 環境省
WG III: 経済産業省
TF (温室効果ガス目録に関して):
IPCC第4次評価報告書 第1作業部会報告書(自然科学的根拠)
主な結論(その1) 平成19年2月2日
気候システムに温暖化が起こっていると断定するとともに,人為起源
の温室効果ガスの増加が温暖化の原因とほぼ断定.(第3次評価報告
書の「可能性が高い」より踏み込んだ表現)
20世紀後半の北半球の平均気温は,過去1300年間の内で最も高温
で,最近12年(1995~2006年)のうち,1996年を除く11年の世界の地上
気温は,1850年以降で最も温暖な12年の中に入る.
過去100年に,世界平均気温が長期的に0.74℃(1906~2005 年)上
昇.最近50年間の長期傾向は,過去100年のほぼ2倍.
1980年から1999年までに比べ,21世紀末(2090年から2099年)の平
均気温上昇は,環境の保全と経済の発展が地球規模で両立する社会
においては,約1.8℃(1.1℃~2.9℃)である一方,化石エネルギー源を
重視しつつ高い経済成長を実現する社会では約4.0℃(2.4℃~6.4℃)
と予測(第3次評価報告書ではシナリオを区別せず1.4~5.8℃)
http://www.env.go.jp/press/press.php?serial=7993
http://www.data.kishou.go.jp/climate/cpdinfo/ipcc/ar4/ipcc_ar4_wg1_spm_Jpn_rev2.pdf
IPCC第4次評価報告書 第1作業部会報告書(自然科学的根拠)
主な結論(その2) 平成19年2月2日
1980年から1999年までに比べ,21世紀末(2090年から2099年)の平
均海面水位上昇は,環境の保全と経済の発展が地球規模で両立する
社会においては,18cm~38cm)である一方,化石エネルギー源を重視
しつつ高い経済成長を実現する社会では26cm~59cm)と予測(第3次
評価報告書(9~88cm)より不確実性減少)
2030年までは,社会シナリオによらず10年当たり0.2℃の昇温を予測
(新見解)
熱帯低気圧の強度は強まると予測
積雪面積や極域の海氷は縮小.北極海の晩夏における海氷が,21
世紀後半までにほぼ完全に消滅するとの予測もある.(新見解)
大気中の二酸化炭素濃度上昇により,海洋の酸性化が進むと予測
(新見解)
温暖化により,大気中の二酸化炭素の陸地と海洋への取り込みが
減少するため,人為起源排出の大気中への残留分が増加する傾向が
ある.(新見解)
United Nations Framework Convention on
Climate Change 気候変動枠組条約:京都議定書
1995: COP1 Berlin, Germany
1996: COP2 Geneva, Switzerland
1997: COP3 The Kyoto Protocol on Climate Change
1998: COP4 Buenos Aires, Argentina
1999: COP5 Bonn, Germany
http://www.env.go.jp/earth/cop3/index.html
2000-2001: COP6 The Hague, Netherlands; Bonn, Germany
2001: COP7 Marrakech, Morocco
2002: COP8 New Delhi, India
2003: COP9 Milan, Italy
2004: COP10 Buenos Aires, Argentina
2005: COP11 Montreal, Canada
発効の条件
2006: COP12 Nairobi, Kenya
(1) 55ヵ国以上の批准
2007: COP13 Bali, Indonesia
(2) 批准した国の1990年の
2008: COP14 Poznan, Poland
CO2排出量が全附属書I国
2009: COP15 Copenhagen, Denmark
の排出量の55%以上
2010: COP16 Cancun, Mexico
2011: COP17 Durban, South Africa
京都議定書 (2005年2月16日に発効): 2008~2012年の5年間を第1約束期間と
する.附属書 I 国 (Annex I Parties) 全体で,CO2,CH4,N2Oについては基準
年を1990年とし,HFC,PFC,SF6については基準年を1995年として,二酸化炭素
換算での総排出量を少なくとも5% (日本は6%) 削減
Part 2
地球温暖化の科学的基礎
太陽系の惑星の比較
地球を考える前に、まずもっと大きなところから考えよう
Mercury
水星
Venus
金星
Earth
地球
Mars
火星
Jupiter
木星
Saturn
土星
太陽からの距離
[106km]
57.9
108.2
149.6
227.9
778.3
1,427
公転周期[days/years]
88 d
224.7 d
365.26 d
687 d
11.86 y
29.46 y
自転周期[hours/days]
59 d
243 d
逆転
23 h 56
m4s
24 h 37
m 23 s
9 h 50
m 30 s
10 h 14
m
半径 (a) [km]
2,440
6,050
6,380
3,390
71,400
60,000
質量 [地球 = 1]
0.055
0.815
1
0.108
317.9
95.2
体積 [地球 = 1]
0.06
0.88
1
0.15
1,316
755
密度 [水 = 1]
5.4
5.2
5.5
3.9
1.3
0.7
大気
なし
CO2
N2, O2
CO2
H, He
H, He
< 10-5
90
1
0.007
2
560
720±20
280±20
180±30
入射ふく射(Fs) [kW/m2]
2.60
1.38
0.58
0.05
アルベド (A)
0.77
0.30
0.15
0.58
地表面圧力[atm]
地表面温度[K]
(反射率)
巨大な地球と相対的には極めて薄い大気層
『地球にやさしい』
という言葉の
不遜さ!
http://www.srh.weather.gov/srh/jetstream/atmos/atmprofile.htm
ふく射(輻射=放射):電磁波の波長による分類
三島市緑町しゃぎり保存会
http://web.thn.jp/toramaru/s-ys.htm
人間の進化と可視光: 網膜に光をとらえるための細胞(視細胞)があり,その中に光
センサー分子(タンパク質にビタミンAの誘導体が結合した分子でロドプシンと呼ばれ
る)がある.ロドプシンのタンパク質部分をコードしている遺伝子が進化の過程で重複
して数を増やしかつ変化することにより,可視光全域に応答するロドプシンや,赤・
緑・青に強く応答するロドプシンができたと考えられている.アミノ酸のみからできてい
るタンパク質(高分子)では可視光近辺に吸収を持つことはできないが,これにビタミ
ンAの誘導体(レチナール,低分子)がつくことにより,可視光を吸収するようになる.
黒体ふく射とプランクの法則

Eb   Eb d
0
Eb 
C1
5 exp(C 2 T )  1
黒体ふく射と関連法則
Eb [W/m2]
:全放射強度 (total emissive power)
Eb [W/(m2mm)]:単色放射強度 (monochromatic
emissive power)
プランク(Planck)の法則
Eb 
ウィーン(Wien) の変位則
C1
5 exp(C 2 T )  1
 maxT  2897 .6 [mm K]
ステファン・ボルツマン (Stefan-Boltzmann) の法則


0
0
Eb   Eb d  
  5.67 10
8
C1
 exp(C 2 T )  1
5
[W/(m2K4)]
d  T 4
ステファン・ボルツマン の法則

Eb   Eb d  
0
高温:627℃=900K

0
C1
 exp(C 2 T )  1
5
d  T
4
常温:27℃=300K
石焼き芋の石からは(900/300)4=81倍のふく射エネルギー
地球の平衡温度と温室効果
板ガラスの図:
日本板硝子 http://glass-wonderland.jp/products/floatsheetglass.html
 kW 
Fs  1.37  2 
m 
1  AFsa 2  4a 2Te4
Te  255 [K ] (=-18℃:平衡温度)
6000 [K]
max=0.5 [mm]
300 [K]
max=10 [mm]
水蒸気と二酸化炭素の吸収率
新版ボイラー便覧(丸善1997)、吉田担当部分より
太陽からのふく射
http://en.wikipedia.org/wiki/Greenhouse_effect
http://en.wikipedia.org/wiki/Image:MODIS_ATM_solar_irradiance.jpg
大気中でのエネルギーバランス
http://www.srh.weather.gov/srh/jetstream/atmos/energy_balance.htm
そもそも大気と海洋が運動する必然性は?
全熱輸送
入射光
大気による輸送
海洋による輸
送
放射光
潜熱輸送
入射光強度分布:おおむねcos関数
放射光強度分布:赤道と両極との比は
おおよそ (300K/250K)4 = 1.24 = 2
小倉義光: 一般気象学 第2版, 東京大学出版会 (1999)
Richardsonの夢と数値予報のパイオニア
Lewis Fry Richardson (1881-1953)
高橋庸哉・坪田幸政 共訳: 理科年表読本 ワクワク実験気象学
地球大気環境入門,(丸善,2000)
http://www.islandnet.com/~see/weather/almanac/arc2004/alm04dec.htm
John von Neumann (1903 - 1957) & ENIAC
(Electronic Numerical Integrator and Computer)
GFDL (Geophysical
Fluid Dynamics Lab.)
の真鍋淑郎 (1931-)等
を中心とする大気大循
環モデルの開発
気候モデル・ GCM: General Circulation Model
短期の天気予報も長期の気候予測も原理的には変わらない
http://www.kishou.go.jp/know/whitep/1-3-1.html
海洋大循環と数値シミュレーションに用いる方程式
http://www.anl.gov/Media_Center/Frontiers/2003/d8ee2.html
表面付近:風成循環
中層深層:熱塩循環
x :東西 y :南北 z:鉛直
T :温度 S :塩分濃度
f :コリオリパラメーター
  F T , S , P
  2u  2u 
Du
1 p
 2u
 fv  
 A 2  2   B 2
Dt
 x
y 
z
 x
  2v  2v 
Dv
1 p
 2v
 fu  
 A 2  2   B 2
Dt
 y
y 
z
 x
1 p
0
g
 z
u v w
 
0
x y z
  2T  2T 
DT
 2T
 C  2  2   D 2
Dt
y 
z
 x
 2S 2S 
DS
2S
 C  2  2   D 2
Dt
y 
z
 x
雲の数値シミュレーションの例 (Soong & Ogura, 1973)
温位の式
パラメタリゼーション
D
L  dQvs


 Er   拡散項

Dt c p  dt

水蒸気の式(添字:v)
DQ v dQvs

 E r  拡散項
Dt
dt
k1 Qc  a : Qc  a 
Ar  

:Qc  a 
0
Cr  k 2Qc Qr
0.875
 
1 1  Qv Qvs C Qr
Er 
5
7
雲粒の式(添字:c)
 5.4  10  0.41  10 es
DQ c
dQvs

 Ar  C r  拡散項
Dt
dt
0.1364
Vr  3634 Qr
0.525

 
雨粒の式(添字:r)


DQr 1 

Vr Qr  Ar  Cr  Er
Dt
 z

Coffee Break: Bergen School of Meteorology
Carl Anton
Bjerknes
(1825-1903)
Vilhelm Friman
Koren
Bjerknes
(1862—1951)
Jacob Aall
Bonnevie
Bjerknes
(1897—1975)
J. Bjerknes (1921)
Coffee Break: Carl-Gustaf Rossby (1898-1957)
17 Dec. 1956
Bull. Ame. Met. Soc. Vol. 73, No. 9. p. 1435, 1992
Coffee Break: コリオリ力 (1) 渦の回転方向は?
慣性力
Ro 
Coriolis 力
2
U L U
=

fU
fL
f  10
4
s 
1
小倉義光: 一般気象学 第2版,
東京大学出版会 (1999)
Coffee Break: コリオリ力 (2) Ekmanスパイラル
Fridtjof Nansen (1861-1930)
NansenとともにFram号で3年間も北
極海に閉じこめられたEkmanは,海
面に浮いた氷が風向より45度右向き
に流されるのに気付いた.
↓
コリオリ力の作用による
Ekmanスパイラル
↓
El Niñoにも関係する重要メカニズム
Vagn Walfrid Ekman (1874 – 1954)
http://oceanworld.tamu.edu/resources/ocng_textbook/chapter09/chapter09_02.htm
http://ww2010.atmos.uiuc.edu/(Gh)/guides/mtr/eln/upw.rxml
Coffee Break: 通常の状態と El Niño
通常は東風の作用でペルー沖などで深海の冷たい水が湧昇する(そのためにプラ
ンクトンも上昇してよい漁場となる)が,東風が弱まるとその作用も弱まり海表面の
温度が高くなる.
http://ww2010.atmos.uiuc.edu/(Gh)/guides/mtr/eln/nrmyr.rxml
http://ww2010.atmos.uiuc.edu/(Gh)/guides/mtr/eln/elyr.rxml
Part 3
肯定派・懐疑派・否定派
論 点
温暖化は本当に起こっているのか?
温暖化しているとしたら人為起源(CO2)なのか?
温暖化がさらに進むとしたらどうなるのか?
温暖化は避けるべきことなのか?
温暖化の予測に用いられる気候モデル(数値シ
ミュレーション)は信頼できるのか?
Global Warming Has Begun, Expert Tells Senate
(on June 23, 1988)
Dr. James E. Hansen of the National Aeronautics and Space
Administration told a Congressional committee that it was 99 percent
certain that the warming trend was not a natural variation but was caused
by a buildup of carbon dioxide and other artificial gases in the
atmosphere. (from THE NEW YORK TIMES, June 24, 1988)
First, that the world was getting warmer on
decadal time scales, which I said could be
stated with 99 percent confidence. Second,
that with a high degree of confidence I
believed there was a causal relationship with
an increased greenhouse effect. And third,
that in our climate model there was a
tendency for an increase in the frequency
and the severity of heat waves and droughts
with global warming.
http://magazine.audubon.org/global.html
代表的な肯定派・否定派(米国)
Stephen H. Schneider
Department of Biological Sciences
Stanford University
Michael E. Schlesinger
Meteorology Department of Atmospheric Sciences
University of Illinois at Urbana-Champaign
Frederick Seitz
Formerly, President of the National Academy of Sciences
Formerly, President of Rockefeller University
Chairman Emeritus of the George C. Marshall Institute
Richard S. Lindzen
Department of Earth, Atmospheric and Planetary Sciences
MIT
Stephen H. Schneider (1945-2010)
http://stephenschneider.stanford.edu/index.html
地球温暖化の時代―気候変化の予測と対策:内藤正明・福岡克也訳,
ダイヤモンド社,1990
地球温暖化で何が起こるか:田中正之訳,草思社,1998
Frederick Seitz (1911-2008): Global Warming Petition
http://www.petitionproject.org/
http://www.oism.org/pproject/s33p36.htm
Photo:
http://www.pbs.org/transistor/album1/addlbios/seitz.html
Seitzらの反論 (1)
(LEFT) Figure 1 : Atmospheric CO2 concentrations in parts per million by
volume, ppm, at Mauna Loa, Hawaii.
(RIGHT) Figure 12 : Eleven-year moving average of global surface
temperature, as estimated by NASA GISS, plotted as deviation from 1890
(left axis and light line), as compared with atmospheric CO2 (right axis and
dark line) . Approximately 82% of the increase in CO2 occurred after the
temperature maximum in 1940, as is shown in figure 1.
http://www.sitewave.net/pproject/review.htm
Seitzらの反論 (2)
Figure 14
In addition, incomplete regional temperature records have been used to
support ''global warming.'' Figure 14 shows an example of this, in which a
partial record was used in an attempt to confirm computer climate model
predictions of temperature increases from green-house gases
(41) Santer, B. D., et. al. (1996) Nature 382, 39-45.
http://www.sitewave.net/pproject/review.htm
Richard S. Lindzen
Taking Greenhouse
Warming Seriously,
Energy & Env.,
18, 937-950 (2007).
Photo:
http://eapsweb.mit.edu/people/person.asp?position=Faculty&who=lindzen
http://www-eaps.mit.edu/faculty/lindzen.htm
http://www.opinionjournal.com/extra/?id=110008597
肯定派の文献・HP例
R. Weart: The Discovery of Global Warming (2003)
邦訳:温暖化の<発見>とは何か(みすず書房2005)
Spencer
http://www.aip.org/history/climate/
A hypertext history of how scientists came to (partly) understand
what people are doing to cause climate change.
住
明正(東大):さらに進む地球温暖化(ウェッジ選書,2007.6)
増田耕一(海洋研究開発機構 JAMSTEC)
http://web.sfc.keio.ac.jp/~masudako/index_ja.html
江守正多(国立環境研究所):地球温暖化の予測は「正しい」か?(化
学同人,2008.11)
http://www.nies.go.jp/escience/ondanka/ondanka01/index.html
経済学者
宇沢弘文(東大名誉教授):地球温暖化を考える(岩波新書,
1995.8) [自動車の社会的費用(岩波新書,1974)などの著書も有
名]
佐和隆光(京大名誉教授):地球温暖化を防ぐ-20世紀型経済シス
懐疑派(skeptic)・否定派(naysayer)などの文献例


















薬師院仁志(帝塚山学院大):地球温暖化論への挑戦(八千代出版,2002.2)
伊藤公紀(横国大):地球温暖化(日本評論社,2003.1)
渡辺 正(東大):これからの環境論(日本評論社,2005.1)
槌田 敦(元名城大):CO2温暖化説は間違っている(ほたる出版,2006.2,2007.4
の第2版で若干補足) http://env01.cool.ne.jp/index02.htm
矢沢 潔:地球温暖化は本当か(技術評論社,2007.1)
薬師院ほか6名:暴走する「地球温暖化論」(文芸春秋,2007.12)
池田清彦(早大)・養老孟司(元東大):ほんとうの環境問題(新潮社,2008.3)
伊藤公紀・渡辺 正:地球温暖化論のウソとワナ(KKベストセラーズ,2008.4)
丸山茂徳(東工大):「地球温暖化」論に騙されるな!(講談社,2008.5)
赤祖父俊一(アラスカ大):正しく知る地球温暖化(誠文堂新光社,2008.7)
丸山茂徳:科学者の9割は「地球温暖化」CO2犯人説はウソだと知っている(宝島
社,2008.8)
丸山茂徳:地球温暖化対策が日本を滅ぼす(PHP研究所,2008.10)
武田邦彦(元名大)・丸山茂徳:地球温暖化」論で日本人が殺される!(講談社,
2008.10)
丸山茂徳:今そこに迫る「地球寒冷化」人類の危機(ベストセラーズ,2009.12)
スティーブン=モシャー・トマス=フラー(渡辺 正 訳):地球温暖化スキャンダル-
2009年秋クライメートゲート事件の激震(日本評論社, 2010.6)
澤昭 裕:エコ亡国論(新潮新書, 2010.6)
広瀬 隆:二酸化炭素温暖化説の(集英社新書, 2010.7)
深井有:気候変動とエネルギー問題 ─ CO2 温暖化論争を越えて─ (中公新書,
2011.7)
GCM批判:廣田勇京大名誉教授 グローバル気象学(東大出版1992
)
予測の議論でさらに難しいのは,その当否を確認できない領域(時
間・空間・状況)に踏み込もうとするときである.天気予報のような場合
には,日々でその予測の当否の検定が行われるが,たとえば数十年,
数百年先の気候予測などを試みようとする場合,これは深刻な問題と
なる(だからこそ気候予測は重要なのだ,などというのは自然科学では
なく社会学の発想である).何故深刻かといえば,GCMを使ってそれを
行おうとするとき,その道具立ての正当性の裏づけは,現在の大循環
の観測結果のみによって与えられているからである.その中には,運
動方程式などのようにその原理がまず間違いなく確認されているもの
ばかりとは限らず,雲や雪氷に関する諸量の決定には,依然として(現
状だけにしか当てはまらないかも知れないような)いくつかの経験則が
含まれている.このようなGCMを使って未来予測を試みた結果,もし
現在の気候とかなり異なった状況が出現するとなったとしたら,それは
同時にその正当性の裏づけを失ったことになる,という論理的に皮肉
な状況を露呈する.それ故に,21世紀の気候予測などという試みは,
社会的要請はあっても,学問的意義の不明な行為であるとしかいいよ
うがない.これもまた,哲学の欠如した悪しき例である.
Part 4
エネルギー・資源 e-mail 討論
論者の立場を把握するための予備的調査結果
IPCC第4次評価報告書第1作業部会報告書政策決定者向け要約(気象庁訳)
(Summary for Policymakers:略称SPM)より
http://www.data.kishou.go.jp/climate/cpdinfo/ipcc/ar4/ipcc_ar4_wg1_spm_Jpn_rev3.pdf
http://www.ipcc.ch/pdf/assessment-report/ar4/wg1/ar4-wg1-spm.pdf
赤
伊 江 草 丸
祖
藤 守 野 山
父
世界の二酸化炭素,メタン及び一酸化二窒素の大気中濃度は,1750年以降の人
間活動の結果,大きく増加してきており,氷床コアから決定された,工業化以前
何千年にもわたる期間の値をはるかに超えている.世界的な二酸化炭素濃度の ○ ○ ○
増加は,第一に化石燃料の使用及び土地利用の変化に起因する一方,メタンと
一酸化二窒素については,農業による排出が主な要因である.
△ ×
気候システムの温暖化には疑う余地がない.このことは,大気や海洋の世界平
均温度の上昇,雪氷の広範囲にわたる融解,世界平均海面水位の上昇が観測
されていることから今や明白である.
○ △ ○ ○ ○
古気候に関する情報によって,過去半世紀の温暖な状態が,少なくとも最近1300
年間において普通ではないとの考察が裏付けられている.
× △ ○ × ×
20世紀半ば以降に観測された世界平均気温の上昇のほとんどは,人為起源の
温室効果ガスの増加によってもたらされた可能性が非常に高い.識別可能な人
間の影響が,気候の他の側面(海洋の温暖化,大陸規模の平均気温,異常高低
温や風の分布)にも及んでいる.
× × ○ × ×
温室効果ガスの排出が現在以上の割合で増加し続けた場合,21世紀にはさらな
る温暖化がもたらされ,世界の気候システムに多くの変化が引き起こされるであ
ろう.その規模は20世紀に観測されたものより大きくなる可能性が非常に高い.
× △ ○ × ×
1. 導入討論
第
1
部
2
0
世
紀
後
半
の
気
温
上
昇
の
原
因
は
?
1.1 赤祖父俊一
1.3 江守正多
1.4 赤祖父俊一
1.5 江守正多
温暖化が止まった
1.2 伊藤公紀
温度上昇 = 自然変動
+ 人為影響+ 観測誤差
反対意見には誤解多く,整合性と定量性が欠如
現在の地球温暖化の原因である二つの自然変動
IPCCは自然変動を無視していないし,予測を外してもいない
2. 温度測定の不確かさ
3. 気候感度の大小
2.1 伊藤公紀 IPCCは結論を急ぎすぎ
- 拙速は危険
3.1 伊藤公紀
観測による気候感度の見積
もりは,やはり小さめ
2.2 江守正多
3.2 江守正多
気候感度が小さいという証
拠は弱い
不確実性はもちろんあるが,不確実
性を示唆する知見にも吟味が必要
4. 太陽活動の評価からリアルタイムのメール討論へ
4.1 江守正多
太陽黒点数グラフの真偽を問う
4.2 丸山茂徳
江守君への回答,古気候学の役割,今後の研究方向について
4.3 江守正多
将来予測は古気候データでは決まらない
4.4 丸山茂徳・江守正多
われわれはリアルタイムでメール討論を行った
5. 数値シミュレーションの現状と能力,予測モデル
第
2
部
今
後
の
予
測
は
?
5.1 草野完也
未来予測における数値シミュレーションの信頼性
5.2 江守正多
予測モデルの信頼性は過小評価,未知の要因は過大評価されている
5.3 草野完也
人為起源温暖化説は未だ仮説:実証の為には様々な変動機構の解明こそ重要
5.4 江守正多
宇宙線説等の理解により「実証」がもたらされるとは思えない
5.5 草野完也
相互理解のために
5.6 江守正多
人為起源温暖化説そのものの妥当性の議論と定量的な精度の議論を明確に区別すべき
5.7 草野完也
定量的な予測精度や不確実性評価を論じることの重要性
5.8 江守正多
相互理解に至ったかもしれません
5.9 伊藤公紀
予測モデルについて
5.10 江守正多
IPCCは素朴な手法による予測を排除していない
5.11 伊藤公紀
予測とモデルについて
5.12 江守正多
予測とモデルについて
6. 今後の地域・局所気候を支配する因子
6.1 伊藤公紀
地域的・局所的な気候変動の観点からはCO2は小物 - しかし大物の理解は不十分
6.2 江守正多
近未来の地域・局所規模では確かに温室効果ガス以外も重要
7. その他
第
3
部
そ
の
他
7.1 伊藤公紀
IPCCへの本質的な批判とは?
7.2 伊藤公紀
IPCC報告書の科学は要注意:ハリケーンの例
7.3 伊藤公紀
気温とCO2濃度との関係について
7.4 江守正多
「事実関係」と「ものの見方」
7.5 伊藤公紀
理解し合えないのも悪くはない?
Hockey stick controversy
Michael E.
Mann (1965- )
1900年以前の気
温変化(北半球)
を過小評価してい
る?との批判
http://www.ipcc.ch/pdf/climate-changes-2001/scientific-basis/scientific-spm-en.pdf
http://www.ipcc.ch/ipccreports/tar/wg1/005.htm#figspm1
過去700年の北半球気温変動の再現と原因推定
■Mobergの結果は中世温暖期や小氷
期などを明確に示している.(伊藤)
■下側のグラフは強制力の原因毎にそ
れがもたらした気温変動を推定したも
の.気温変動の推定と強制力の推定に
は大きな不確実性があるものの,不確
実性の範囲内で強制力(吉田注:火山
や太陽)は気温変動をよく説明できる
ことを示しており,内部変動(吉田
注:ENSOや北極振動)の影響は大き
くなさそうである.1700年ごろの低
温期(赤祖父様が言及されているモン
ダー・ミニマムに相当すると思われ
る)は主に火山噴火に起因するように
見えるが,他の原因が効いている可能
性もある.いうまでもなく,近年の温
暖化については温室効果ガスの増加が
重要であることを示している.IPCC
WG1 AR4, Figure 9.4.(江守)
気候における振動とテレコネクション
■エルニーニョ・南方振動 (ENSO: El Niño Southern Oscillation)
大気と海洋が密接に結びついて起こる気候の内部変動 (internal
variability) の1種.赤道東太平洋の海水温度の上昇下降と連動して,
インドネシア付近と南太平洋東部で海面の気圧がシーソーのように変
動する.テレコネクション (teleconnection,長波長の大気波動によっ
て遠く離れた場所での大気が同期して変動すること) により世界中の
天候に影響を及ぼす.
■十年規模・数十年規模振動 (decadal /multidecadal oscillation)
大気と海洋が結びついて起こる気候の内部変動 (internal
variability) で,十年から数十年の周期をもつものの総称.
太平洋十年規模振動 (Pacific Decadal Oscillation: PDO)
大西洋数十年振動 (Atlantic Multidecadal Oscillation: AMO)
などが知られている.長波長の大気波動によって遠く離れた場所での
大気が同期して変動する,テレコネクション・パターン(teleconnection
pattern) を伴う.
伊藤:温度計測の不確かさ (1)
■ランク1 「平らな土地で,高さ10センチ以下の植生,
人工的熱源(建物,コンクリート面,駐車場など)
から100メートル以上離れ,多量の水がある場所
からも十分離れており,太陽の高度が3度以上の
時に影ができないこと」.気温測定の誤差は,
0.5℃以下.
■ランク2 「植生は高さ25センチまで,人工的熱源と
の距離は30メートルまで,太陽高度5度以上で
影ができないこと」.気温測定の誤差は,1℃以下.
■ランク3 「人工熱源との距離10メートルまで」.
■ランク4 「人工熱源との距離10メートル以下」.
■ランク5 「温度計が人工熱源のそばにある」
伊藤:温度測定の不確かさ (2)
地上気温(地球平均)
海洋気温(地球平均)
誤差が1℃以下の環境良好な観測点は10%程度しかありません.特に
問題なのは,基準となるべき田舎観測点の劣化です.
1960年辺りまでは,地上気温と海表面温度は,変化の大きさが良く対
応しているようだ.しかし,1970年以降は地上気温の上昇が大きい (
伊藤)
赤祖父:温暖化が止まった (1)




地球平均気温は1800~1850年頃から連続的に上昇してきた.その
上昇率は0.5℃/100年であった.
今までの気温上昇の大部分は地球が1400年から1800年頃まで経
験した「小氷河期」からの回復 (すなわち温暖化,変化率=
0.5℃/100年) による
この回復に乗って約30~50年周期の自然変動 (準周期変動と呼ぶ
) もあり,この変動は1975年からポジティブであり,2000年頃ピーク
になっていた.この準周期変動がピークを過ぎてネガティブになり始
めている.
この準周期変動の変化率は0.1℃/10年以上であるので,短期間 (
50年程度) では,この影響が気温変化を大きくコントロールする.こ
れが原因で温暖化が止まった可能性が高い.この準周期変動の振
幅は北極圏で非常に顕著であるのでわかりやすい.
http://people.iarc.uaf.edu/~sakasofu/
赤祖父:温暖化が止まった (2)
赤祖父:温暖化が止まった (2’)
過去150年間の地球表面の平均温度と数値シミュレーション
IPCCの結論
20世紀前半:自然要因
20世紀後半:人為的要因
自然要因としては太陽と火山噴火が考慮
されたが,太陽の影響を過大評価し(て合
わせ)たため20世紀前半の温度変化は説
明できていないとする批判がある.
観測データに基づいて推定された気候感度の確率分布
局所気候:エアロゾルの影響
エアロゾル (aerosol)
気体中に浮遊する微小な液体また
は固体の粒子の総称
太陽光を散乱・吸収したり,雲の凝
結核として働く
透明エアロゾル
(硫酸エアロゾルなど)
太陽光を反射し(日傘効果で)温度
を下げる
着色エアロゾル
(すすなど)
太陽光を吸収し温度を上げる
インド,バングラデシュ近辺で見られるアジア褐色雲
http://visibleearth.nasa.gov/data/ev109/ev10980_India.A2001338.0505.1km.jpg
局所気候:フィリピンのピナツボ山が噴火(1991)と気温変化
編集実行委員会便り (2009年1月号)
今回は,恒例の新春対談をe-mail討論に変更しました.編集実行委員会で,
インターネット時代ならではのe-mail討論の試行は容易に賛同を得たものの,
そのテーマ設定と本会としてのスタンスについては少なからぬ議論がありま
した.まず人為起源地球温暖化論の真偽を議論することについては,科学
的に公正に実行できればという条件付きでほとんど異論なく承認いただけま
した.しかし,討論結果が及ぼすインパクトは,従来から地球温暖化対策を
真剣に検討してきた本会にとっても,また世間一般にとっても,決して小さく
はないため,本会として今回の結果を今後にどのようにつなげていくかという
ことには慎重を期すべきとの意見が出ました.確かに,IPCCの報告書に概
ね従って動いている世界の大きな流れの中にあって,今回の結果を,温室
効果ガス排出に関する現在進行中の政策の研究や議論にどのように反映
すればよいのか,また一部では過剰とも思える予防保全の議論もあるもの
の真剣に行動を起こしているNPOなどのグループなどにも,学会としてどの
ようなスタンスでこの結果を伝えればよいかなども,討論に付随して多少なり
とも検討・言及すべきことだったかもしれません.しかし,コーディネーターを
終えたばかりの筆者はその任にあらずと判断しました.ために,筆者からは
本e-mail討論を純粋に科学的な追求というスタンスでのみお伝えさせていた
だく次第です.なお,編集締切に間に合わなかった討論の一部は次号にも継
編集実行委員会便り (2009年3月号)
1月号発行の直前に,討論者のご賛同と編集実行委員会の承諾を得て,本
会としては異例の本文記事のインターネット公開を冊子発行と同時に実現す
ることができました.インターネットの効果はやはり絶大で,会員数(約2000
名)をはるかに超える世間一般の皆様に閲覧いただき,大きな反響が寄せら
れました.Google等で検索しても,おびただしい数のサイトで紹介,引用,コ
メントがなされています.それらのコメントの中には,企画者の意図を必ずし
も適切に汲み取っていただいていないようなものも見受けられますが,ともあ
れ地球温暖化の科学につき多くの関心を喚起でき,また貴重な情報を中立
的に提供できたことをなにより嬉しく思います.3月号では1月号で積み残し
た議論を掲載し,今後まだまだ議論は出て来る可能性はあるものの,ひとま
ずこの段階でe-mail討論を閉じさせていただきます.前号発行から今日(2
月20日)までの間で,世界ではいいことがあまり起こっていませんが,その中
にあってひときわ感動を与えてくれたのは1月15日に起きたUS Airways
1549便の “Miracle on the Hudson” でした.そのSullenberger機長の言
葉 “We were simply doing the job we were trained to do.” はプロの
厳しい姿勢を象徴するものとしてさらなる感動を与えてくれました.公益性が
求められる学会誌の編集に際しては, “We were simply doing the job
we were required to do.” と言えるようにしたいと願う次第です.
Climategate :2009年11月17日~ (1)
Climategate :2009年11月17日~ (2)
・渡辺 正: Cimategate 事件─地球温暖化説の捏造疑惑、化学 、2010.3
・渡辺 正:続・Climategate 事件─ 崩れゆくIPCC の温暖化神話、化学、 2010.5
(上記2記事は以下のサイトからダウンロード可
http://www.nippyo.co.jp/download/climategate/index.php)
・伊藤公紀・赤祖父俊一:拠りどころ失った温暖化対策法案、WEDGE、2010.4
・伊藤公紀:「温暖化CO2犯人説」を唱えるIの信頼が揺らいでいる、エコノミスト、
2010.3.28
・日本学術会議 公開シンポ「IPCC(問題の検証と今後の科学の課題」 2010.4.30
・スティーブン=モシャー・トマス=フラー(渡辺 正 訳):地球温暖化スキャンダル
2009年秋クライメートゲート事件の激震(日本評論社、2010.6)
1859.2.19 - 1927.10.2
付録
Arrheniusと宮沢賢治
(明治29)1896.8.27 - (昭和8)1933.9.21
地球の温度と二酸化炭素濃度関係に関する先駆的研究
・1859年2月19日生まれ
・1878年,B.S., Univ. of Uppsala
・1884年,Ph D., Univ. of Uppsala
・1884年,Univ. of Uppsala 講師
・1891年,Univ. of Stockholm 講師
・1895年,同教授
・1896−1902年,同学長
・1905−1927年,
Nobel Institute of
Physical Chemistry 所長
・1927年10月2日,没
 E 
k  A exp  

 RT 
http://nobelprize.org/nobel_prizes/chemistry/laureates/1903/index.html
On the influence of carbonic acid in the air
upon the temperature of the ground
The London, Edinburgh, and Dublin Philosophical Magazine
and Journal of Science, 41, 251 (1896), 237-276.
I should certainly not have undertaken these tedious
calculations if an extraordinary interest had not been
connected with them. In the Physical Society of
Stockholm there have been occasionally very lively
discussions on the probable causes of the Ice Age; and
these discussions have, in my opinion, led to the
conclusion that there exists as yet no satisfactory
hypothesis that could explain how the climatic
conditions for an ice age could be realized in so short a
time as that which has elapsed from the days of the
glacial epoch.
論文の章構成
I. Introduction : Observations of Langley on
Atmospherical Absorption.
II. The Total Absorption by Atmospheres of
Varying Composition.
III. Thermal Equilibrium on the Surface and in
the Atmosphere of the Earth.
IV. Calculation of the Variation of
Temperature that would ensure in
consequence of a given Variation of the
Carbonic Acid in the Air.
5. Geological Consequences.
ADDENDUM
Table VII. — Variation of Temperature caused
by a given Variation of Carbonic Acid.
緯度別・四季別の温度変化
(当時のCO2濃度を 0.67, 1.5, 2.0, 2.5, 3.0倍した場合)
『宇宙発展論(Das Welden der Welten)』
一戸直蔵訳 (1914大正3), 大倉書店
近時に至りて炭酸瓦斯及び水蒸気の熱に対する透過性につきて極め
て慎重なる観測の行われたるものあり,依て予は是等の材料に基きて,
もし大気中に炭酸瓦斯(容積にて〇.〇三ペルセントを含有するに過ぎ
ず)がなかりせば,地球表面の温度は約二一度丈降下すべきことを計
算し得たり.温度が此の如く降るときは大気中に存し得べき水蒸気の
量もまた減少するに至るべく,それがため温度は更に此と同じ位降下
するに至るべし.此れによりて,空気の成分に比較的意に介するに足
らざる程微量の変化あるも尚実際に於て頗る著大なる影響を来たすも
のなる事を明にし得べし.即ち空気中の炭酸瓦斯の量が現今に於ける
ものの二分の一に減少したりとせんか,地球の温度は約四度降るべく,
四分の一に減少するときは八度丈降るべし.是れに反して空気中に於
ける炭酸瓦斯の量が二倍となるに至れば,地球表面の温度は四度昇
るべく,四倍となれば温度は八度昇るに至るべきなり.且つ又炭酸瓦
斯の割合が減少するときは,地球表面上各点に於ける温度の差違が
著しかるべく,之れに反して其割合が増加するときは,地球上の温度
宮沢賢治(1896年:明治29年〜1933年:昭和8年)
『グスコーブドリの伝記』(1932年:昭和7年)
「先生,気層のなかに炭酸ガスが増えてくれば暖かくなるのですか.」
「それはなるだろう.地球ができてからいままでの気温は,たいてい空
気中の炭酸ガスの量できまっていたと言われるくらいだからね」
「カルボナード火山島が,いま爆発したら,この気候を変えるくらいの炭
酸ガスを噴くでしょうか.」
「それは僕も計算した.あれがいま爆発すれば,ガスはすぐ大循環の
上層の風にまじって地球ぜんたいを包むだろう.そして下層の空気や
地表からの熱の拡散を防ぎ,地球全体を平均で五度ぐらい暖かくする
だろうと思う.」
「先生,あれを今すぐ噴かせられないでしょうか.」
「それはできるだろう.けれども,その仕事に行ったもののうち,最後の
一人はどうしても逃げられないのでね.」
「先生,私にそれをやらしてください.(後略)」
宮沢賢治の詩のなかのアレニウス
詩集 春と修羅 第二集「五輪峠」(岩波文庫版)
五輪は地水火風空 昔の印度の科学だな
空というのは総括だとさ いまの真空だろうかな
つまり真空そのものが エネルギーともあらはれる
火という方はエネルギー アレニウスの解釈だ
詩集 春と修羅 第二集「晴天恣意」(新潮文庫版)
水風輪は云わずもあれ, 白くまばゆい光と熱,
電,磁,その他の勢力は アレニウスをば俟たずして
たれか火輪をうたがわん
5.むすび
─世界(地球)の見方─
Earth at night
http://apod.nasa.gov/apod/ap001127.html
FAO Hunger Map 2010
Prevalence of undernourishment in developing countries
(The Food and Agriculture Organization of the United Nations)
Somalia
http://www.fao.org/fileadmin/templates/es/Hunger_Portal/Hunger_Map_2010b.pdf
特定の視点にこだわる危険性(1)
Mercator projectionの場合:日本 ⇄ サンパウロ
特定の視点にこだわる危
険性(2)
アジア地図の場合
妹尾河童:河童の手のうち幕の内
新潮文庫、1992年、284ページ
再現された「遣唐使船」が上五島に入港します[ 更新日:2010年05月11日 ]
http://official.shinkamigoto.net/index.php?itemid=1238
Thermal Engineering Laboratory
熱工学研究室
どのような風向でも
無理なく離陸・着陸で
きる理想の円形空港.
あらゆることに挑戦
し,あらゆることを受
け入れることを表す.