JALT 2013 Developing a support system for tandem learning タンデム学習のサポート・システムの構築 脇坂真彩子(同志社大学) 欧麗賢(大阪大学大学院生) 青木直子(大阪大学) アウトライン 1. 2. 3. 4. タンデム学習とはなにか? 発表の目的 大阪大学文学研究科のタンデム学習プロジェクト 分析 1学期末アンケートの分析(青木・脇坂・欧, 2012) 4-1. 浮かび上がった問題点 4-2. それを基にした改善策 4-3. その効果の検証(1学期と2学期のアンケート結果の比較) 5. まとめ 6. 今後の課題 1. タンデム学習とはなにか? • 異なる言語を母語とする2人がパートナーとな り、互いの得意な言語を学び合うという学習 形態 • 2つの原則 互恵性 学習者オートノミー (Little & Brammerts, 1996) 互恵性 (Reciprocity) • パートナーが互いにそれぞれの目標を達成し、 言語学習の成果を上げるために助け合う関係 • プロジェクトの枠組み 自分が目標言語を学習する時間と、パートナーが自 分の母語/得意な言語を学習するのをサポートする 時間を半分ずつ明確に分ける 大阪大学文学研究科の タンデム学習プロジェクトの枠組み 日本語学習者と英語学習者の1時間半のタンデム学習の例 5-10分・・・ 35分・・・ 35分・・・ 5-10分・・・ 振り返り 例)英語学習 それぞれの 学習活動 例)日本語学習 次回の計画 学習者オートノミー (Learner Autonomy) • 自分自身の学習に責任を持つ – それぞれが自分の学習時間に「何を」、「どのように」 学びたいのか、パートナーからどのような助けが必 要なのかを決め、自分自身の学習を管理する • プロジェクトの枠組み –「振り返り」と「学習計画」のための時間を組み込む –学習日記に学習計画と実際の学習活動の記録を残し、 学習活動を振り返る タンデム学習の利点 • 目標言語でのコミュニケーション能力を伸ばす (Brammerts,2005;Lewis, 2003) • 異文化に関する学びが起こる(Stickler & Lewis, 2003; Woodin, 2003) • 学習者オートノミーの発達を促す(Little, 2003) • 外国語学習の動機づけの維持に貢献する (Bower, 2007; Ushioda, 2000;脇坂, 2013) • 外国語学習への肯定的態度を育てる(Wakisaka, 2012) しかし、 学習者が2人だけでタンデム学習を続けていく のは難しい タンデム学習の成功のためには、良いサポー トシステムが鍵となる (Schwienhorst, 2009) 2. 発表の目的 • 日本の大学キャンパスで留学生と日本人学 生のタンデム学習プロジェクトにおいて、 参加者が: どのようなことに困難を感じ、 それを解決するために主催者側がどのような サポート・システムをデザインしたか、 その効果はどうだったかを報告する。 3. 大阪大学文学研究科・文学部 タンデム学習プロジェクト 2012年4月開始 カリキュラム外の活動 対面式タンデム学習 (face-to-face tandem learning) 1学期のプロジェクトの流れ 1. 2. 3. 4. 5. 6. 7. 参加者の募集 ペアリング ガイダンス 学習開始 コーディネーターからのサポート 親睦パーティー 学期末アンケート 4-1. 1学期のプロジェクトの問題点 参加者が感じた問題点(1学期のアンケート) • 参加者の語学力 (初級の学習者にはメリットが少ない・語学力に差が あると難しい) • パートナーとの相性 • 時間(時間が短い・回数が少ない) • 参加者に語学学習に関する専門知識がない 4-1. 1学期のプロジェクトの問題点(続き) 運営側が感じたプロジェクトの問題点 • 定期的にやらない人がいる • 学習日記をつける人が少ない 4-2. 1学期末アンケート結果を基にした変更点 1. 2. 3. 4. 5. 6. 7. 申し込み書の改訂 参加者の募集 ペアリング ガイドラインの内容の改 ガイダンス 善(学習日記の例と注 意点・学習例を示す) 学習開始 コーディネーターからのサポート 親睦パーティー ワークショップの実施 学期末アンケート 変更点① 申込書の改訂 1学期 2学期 名前・性別・所属・身分・在学期 間・専門 名前・性別・所属・身分・在学期間 ・専門 ガイダンスに参加可能か 言語能力(母語・得意な言語) 学習希望言語 学習したい言語の学習歴 学習したい言語について学びたい こと 趣味・感心のあること 週に1回、最低1時間の時間は確 保できるか タンデム学習のパートナーと会う ことのできない時間帯 そのほかの特別な希望 • 1学期と2学期のもの 言語能力(母語・得意な言語) 学習希望言語 学習したい言語の学習歴 学習したい言語について学びた いこと 趣味・感心のあること 週にタンデム学習に使える時間 そのほかの特別な希望 変更点② ガイドラインの改訂 1学期 2学期 1. タンデム学習とは何か 2. タンデム学習の進め方 3. タンデム学習をうまく進めて いくために大切なこと 1. タンデム学習とは何か 2. タンデム学習の進め方 3.タンデム学習から最大限の 効果を得るために大切なこと ・学習者オートノミー ・互恵性 ・予習と復習 ・計画と記録と振り返り ・二人にとって無理なく実行で きる予定を立てる 付録1:学習日記の例 付録2:学習活動の例 4.学習日記をつけること ③ワークショップの実施 • 時期: 2012年12月11日 18:30-20:00 • 人数: 6名 • 内容:参加者それぞれに困っていることを 出してもらい、アドバイジングする 困っていること • • • • • 間違いの訂正の仕方 相手に役立っているかどうか心配 話題が続かない 文法の違いについて説明できない 限られた時間でどのように予習、復習するか 4-3. 効果の検証 1学期末と2学期末のアンケート結果の比較 運営側のサポート・システムはどのような効果をも たらしたか? 1学期と2学期のアンケートの概要 • 実施時期:各学期末 タンデム学習参加者数 回収数 回収率 1学期 32名 19名 59.4 % 2学期 28名 19名 67.8% 1学期タンデム学習に対する満足度 平均 8.02 2学期タンデム学習に対する満足度 平均8.3 10 9 8 7 6 5 4 3 2 1 0 5 6 7 8 9 10 プラス要因の比較 評価の理由 パートナーと良い関係が築けた 楽しかった 目標言語の上達に役立った 動機が上がった 1学期 (名) 2学期 (名) 4 7 6 0 2 6 1 2 マイナス要因の比較 学習活動の量に関するもの 1学期 (名) 4 2学期 (名) 1 もっと長い期間やりたい 1 0 キャンパスが家から遠い? 1 0 パートナーと会う回数が少な かった マイナス要因(続き) 活動の質に関するもの 学習の仕方に改善の余地がある 学習言語に関してパートナーの能力と 自分の能力に差があった ペアの2人とも言語の専門家でないた め解決できない問題があった パートナーのニーズを満たせたか不明 思うように話せなかった 1学期 (名) 7 2 2学期 (名) 6 1 0 1 2 1 1 0 タンデム学習の利点 タンデム学習の利点 1学期 (名) 4 2学期 (名) 3 参加者の自主性に任せられているところ 互恵性 学習時間が確保できる 4 3 1 2 3 1 ストレスが少ない環境 目標言語を話す機会 ネイティブから学べる 2 2 0 2 4 5 異文化と自国の文化を学べる パートナーと仲良くなれる 交流ができる機会 2 4 3 4 2 2 自分たちのニーズや関心、語学力に合っ た学習がマイペースでできる柔軟性 タンデム学習の利点 タンデム学習の利点 教員、コーディネーターのサポート がある 授業料を払わなく学べる 1学期 (名) 0 2学期 (名) 1 0 1 タンデム学習の限界 タンデム学習の限界 1学期 (名) 2学期(名) 限界なしあるいは空欄 7 5 パートナーと語学力、関心・意欲、気が 合わないと難しい 7 3 言語学習のアドバイスを受ける機会が 必要 専門家ではない 2 0 2 5 時間がないと最大限に利用できない 5 4 向かない学習内容がある 0 2 もっと多くの人に紹介すべきだ 1 0 本プログラムに改善を望むか 改善を望むか 要望なし 要望あり 1学期(名) 2学期(名) 12 13 7 6 本プログラムに改善を望む点 改善を望む点 1学期 (名) 1 1 2学期 (名) 3 0 一緒に交流するチャンスをもっと作ってほしい 1 2 学期が始まって早いうちに始めてほしい 1 0 テストの前などの回数が減らないように日時や場所 を運営側が設定したほうがいい 1 0 学習方法のアドバイスや例を教えてほしい 1 0 客観的に現在の自分たちの在り方を見られるように できればいいと思います。 1 0 タンデム学習を知っている参加者には詳しいガイダン スは不要 0 1 もっと多くの人に紹介すべきだ 他研究科の学生も受け入れて、専門の違う人と知り 合えるようにしてほしい 5.まとめ:運営側のサポートの改善の効果 アドバイスがほしかった、メンターの助言がほしかっ たという回答がなくなった タンデム学習の限界 言語学習のアドバイスを受ける機会が 必要 改善を望む点 1学期(名) 2学期(名) 2 0 1学期(名) 2学期(名) 学習方法のアドバイスや例を教えてほしい 1 0 客観的に現在の自分たちの在り方を見られる ようにできればいいと思います。 1 0 学習方法のアドバイス・例が提供できた! 5.まとめ:運営側のサポートの改善の効果(続き) パートナーと会う回数が少なかったという回答がなく なった 学習活動の量に関するもの パートナーと会う回数が少なかった もっと長い期間やりたい 1学期(名) 2学期(名) 4 1 1 0 「週は一回ぐらいやっていることは不足だと思う。新学期 から、できるだけ多くやりたい。」(日本語学習者) 申込書の形式やガイドライン、ガイダンスのやり方 の変更により、改善された! 6. 今後の課題 • パートナーと語学力に差がある場合の対 処方法について情報提供をする • 参加者が言語の専門家ではないため文法 的な質問に答えられないと感じることを克 服するためのアドバイスをする ワーク ショップ • 学習計画の作り方、自己評価の方法など について情報提供をする • 学習日記の意義の周知と、書きやすい形 式への改良 学習 日記 ありがとうございました。 タンデム学習プロジェクトのホームページ: http://www.let.osaka-u.ac.jp/kokuren/tandem/
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