PPT - 大阪大学大学院文学研究科・文学部

日本の大学キャンパスにおける
自主的参加を基本とした
タンデム学習プロジェクトの試み
第9回国際日本語教育・日本研究シンポジウム
青木直子(大阪大学)
脇坂真彩子(大阪大学大学院生)
欧麗賢(大阪大学大学院生)
アウトライン
1. タンデム学習とはなにか?
2. 大阪大学文学研究科の
タンデム学習プロジェクト
3. 学期末のアンケート
4. プロジェクトの評価と今後の課題
タンデム学習とはなにか?
• 異なる言語を母語とする2人がパートナーとな
り、互いの得意な言語を学び合うという学習
形態
• 2つの原則
互恵性
学習者オートノミー
(Little & Brammerts, 1996)
互恵性
• パートナーが互いにそれぞれの目標を達成し、
言語学習の成果を上げるために助け合う関係
• プロジェクトの枠組み
自分が目標言語を学習する時間と、パートナーが自
分の母語/得意な言語を学習するのをサポートする
時間を半分ずつ明確に分ける
学習者オートノミー
• 自分自身の学習に責任を持つ
– それぞれが自分の学習時間に「何を」、「どのように」
学びたいのか、パートナーからどのような助けが必
要なのかを決め、自分自身の学習を管理する
• プロジェクトの枠組み
–「振り返り」と「学習計画」のための時間を組み込む
–学習日記に学習計画と実際の学習活動の記録を残し、
学習活動を振り返る
タンデム学習の利点
• 目標言語でのコミュニケーション能力を伸ばす
(Brammerts, 2005)
• 異文化に関する学びが起こる(Stickler & Lewis,
2003; Woodin, 2003)
• 学習者オートノミーの発達を促す(Little, 2003)
• 外国語学習の動機づけの維持に貢献する
(Lewis, 2003; Bower, 2007; 脇坂, 投稿中)
• 外国語学習への肯定的態度を育てる(Wakisaka,
2012)
大阪大学文学研究科の
タンデム学習プロジェクト
背景:
• 留学生が日本人学生との交流に困難を感じ
ることが多い。
• 特に短期留学生の増加によるチューター経
費の増大
• お金をかけずに、留学生が日本人学生との
社会的ネットワークを作るのを助け、日本語
学習を支援する方法はないか?
大阪大学文学研究科の
タンデム学習プロジェクト
• 2012年4月に開始
• 対象
文学研究科/文学部に所属する学生等
他研究科/学部に所属する学生等
• 申し込み数59名
• パートナーを紹介できた人36名
• 学習希望言語
日本語23、英語15、中国語7、ドイツ語6、その他10
大阪大学文学研究科の
タンデム学習プロジェクト
日本語学習者と英語学習者の1時間半のタンデム学習の例
5-10分・・・
35分・・・
35分・・・
5-10分・・・
振り返り
例)英語学習
それぞれの
学習活動
例)日本語学習
次回の計画
大阪大学文学研究科の
タンデム学習プロジェクト
私たちの行ったサポート
• 申込書にあるプロフィール等を参考に相性の
よさそうな人を組み合わせる。
• コーディネーターによる個別ガイダンス
• 1回目のセッションの後に、様子を尋ねるメー
ルを送る。
• 質問、相談があれば、対応すると伝える。
• 親睦パーティーの開催
参加の動機
参加の動機
人数
言語能力の習得
10名
留学生/日本人との交流
5名
人の役に立ちたい
3名
方法に興味を持った
2名
そのほか(知人の推薦、語学学習を 2名
経験する)
印象に残った学習活動
学習活動
人数
語学学習用のテキストを使ってした
会話
自分の書いたものを訂正してもらった
発表の練習
役割練習
記入なし
8名
6名
2名
1名
1名
1名
語学学習用のテキストを使った例
• 学習者:ポルトガル語を学んだ日本人
• 印象に残った活動:
一般向けのポルトガル語の教科書(ニューエクスプ
レス・ブラジルポルトガル語)を使って、会話の練
習をした。少しずつ実力が身についていると思っ
た。パートナーは、その単元で出てきた表現を使
い、単語の入れ替え練習などをさせてくれた。関
連語句なども示してくれた。
会話をした例
• 学習者:英語を学んだ日本人
• 印象に残った活動:
オーストラリアの難民受け入れについて話したこと。
日本ではあまりなじみのない話題であるために
大変興味深かった。
リソース:ニュース記事
パートナー:難民と移民の違いや、オーストラリア人
の意識など丁寧に教えてくれた。
書いたものを訂正してもらった例
• 学習者:日本語を学んだドイツ人
• 印象に残った活動:
I tried to write a summary of a story I have
written, which was very difficult because of
a lot of non-everyday language.
Correcting/rewriting it together with my
partner was very helpful (and also fun!)
学習日記をつけること
学習日記をつけること
人数
何らかの形で学習日記をつけた人
途中でやめてしまった人
13名
6名
学習日記を書くのを途中でやめた理由
• 学んだことは多岐にわたり、日記の質問には
そぐわない
• 会話中心でその場で話題が変わることもあっ
たので、計画が必要なかった
• 帰宅してから復習と来週の準備をして学習内
容を整理する
• ぎりぎりまで学習活動を行い、時間がなくなっ
た
• 忘れた
学習日記をつけた利点
• これまで何をしたか、次回は何をするかを把
握することができた。(1名)
• 前回何をやったか思い出せる。(1名)
• 次の回の予定を立てるのに役立った。(2名)
• 学習の成果を確認できた。(2名)
• 反省が書き留められた(1名)
• 目標言語で書いた内容をパートナーが訂正し
てくれたのでよかった。(1名)
タンデム学習を体験して変わったこと
変わったこと
人数
先行研究
語学力が伸びた
7名
目標言語でのコ
ミュニケーション
能力を伸ばす
異文化について学んだ
5名
異文化に関する
学びが起こる
友達ができた
4名
友人意識ができ
る(脇坂, 2012)
タンデム学習を体験して変わったこと
(続き)
変わったこと
人数
話す能力に自信ができた
2名
外国語でのコミュニケーショ 1名
ンに関心が生まれた
母語を含め言語について関 2名
心を持つようになった
異文化交流は素晴らしいと 1名
思った
日本での生活が楽しくなっ
てきた
1名
先行研究
外国語学習へ
の肯定的態度
を育てる
タンデム学習を体験して変わったこと
(続き)
変わったこと
人数
先行研究
1名
留学の動機づけ
(大河内, 2011)
パートナーがいるのであきら 1名
めずに楽しく勉強を続けられ
た
わからない・記入なし
2名
外国語学習の動
機維持に貢献す
る
自分も海外に出て学びたい
と思った
タンデム学習に対する満足度
9
8
7
6
5
4
3
2
1
0
5
6
7
8
8.5
9
10
不明
タンデム学習の利点
タンデム学習の利点
人数
自分たちのニーズや関心、語学力に合っ
た学習がマイペースでできる柔軟性
参加者の自主性に任せられているところ
互恵性(助け合い、学び合い)
自分の知識を伝えられる
9名
一対一なのでちゃんと話せる、恥ずかし
がらずに話せる
友だちができる
1名
5名
1名
2名
7名
タンデム学習の限界
タンデム学習の限界
人数
限界なしと答えた
初級の人にはメリットが少ない
パートナーの語学力に差があると難しい
パートナーと関心、意欲などが合わないと
難しいだろう
時間がないとできない
自習する時間がない人には効率が悪い
7名
1名
3名
2名
3名
1名
タンデム学習の限界(続き)
タンデム学習の限界
人数
参加者は教師ではないので、教えられ
ることに限界がある。
学習スケジュールの立て方がよくわか
らない。アドバイスがほしかった
メンターの助言を受ける機会が必要
1名
1名
1名
本プログラムに改善を望む点
改善を望む点
もっと多くの人に紹介すべきだ
他研究科の学生も受け入れて、専門の違う人と知り合
えるようにしてほしい
学期が始まって早いうちに始めてほしい
学習方法のアドバイスや例を教えてほしい
客観的に現在の自分たちの在り方を見られるようにで
きればいいと思います。
テストの前などの回数が減らないように日時や場所を
運営側が設定したほうがいい
来学期もタンデム学習に参加したい
来学期も参加したいか
人数
参加したい
帰国する
13名
3名(うちの1名は
帰国しなければや
ると答えた)
3名
考慮中
プロジェクトの評価
• タンデム学習は概ね好評と言える。
根拠:
– 満足度の平均が約8
– プロジェクトへの要望がないと答えた人が12名
(約63%)
– 来学期もやりたいと答えた人が13名(約68%)
今後の課題
• 学習日記の意義の周知と、書きやすい形式への
改良
• 学習計画の作り方、学習方法の例、自己評価の
方法などについて情報提供をする
• パートナーと語学力に差がある場合の対処方法
について情報提供をする
• 参加者が試験やサークルなどの行事を優先して、
セッションをキャンセルすることのないよう、週1
回程度の頻度で定期的に行うように指導する
ありがとうございました。
タンデム学習プロジェクトのホームページ:
http://www.let.osaka-u.ac.jp/kokuren/tandem/