3囚人問題は 図による問題表象 寺尾敦(青山学院大学) 伊藤朋子 なぜ難しいのか 構築支援の効果 (日本学術振興会・早稲田大学) 目的 • 3囚人問題の解決援助を行い,高い正答率を 達成することで,3囚人問題の難しさがどこに あるのかを明らかにする. – 支援の効果あり=解決の難所 – 高い正答率を達成した先行研究なし. – ベイズの定理を学習後に3囚人問題に取り組む. 先行研究での参加者のほとんどはベイズの定理 を知らない. (変形)3囚人問題 • 3人の囚人A,B,Cがいて,1人が釈放され, 2人が処刑される. • それぞれの釈放確率は,1/4,1/4,1/2. • 誰が処刑されるか知っている看守に対し,囚 人Aが,「BとCのうち,処刑される1人の名前 を教えてくれないか」と頼む. • 看守は「Bは処刑される」と答えた. • Aの釈放される確率はいくらか? 3囚人問題の難しさ • 多くの先行研究で,正解者はほとんどいない. – さらに,正解をきいても納得できない. • ベイズの定理を学習し,「ベイズ型くじびき課 題」への正答率が上がった後(54.4%)でも,3 囚人問題での正答率は0%だった.(2009年の 教育心理学会に報告した実験での,未発表データ) ベイズ型くじ引き課題 くじびき遊びをします.くじ袋の中には,白箱と黒 箱がひとつずつ入っています.白箱の中には赤 いボール2個と青いボール1個,黒箱の中には 赤いボール1個と青いボール1個が入っていま す.箱もボールもそれぞれ同形同大で,触った だけでは区別できません.袋の中の箱もその中 のボールもよく混ぜてから,袋の中を見ないで手 を入れ,まず箱をひとつ選び,さらに,選んだ箱 の中から,箱の中を見ないで手を入れボール(く じ)をひとつ選びます.取り出したボールが赤な ら当たりで,青ならはずれです. 青 赤 赤 青 赤 方法 • 参加者:青山学院大学社会情報学部での1 年生必修科目「統計入門」の受講者57名. 方法 • 手続き:確率についての授業を2週にわたっ て実施. 第1週 第2週 学習 問題演習 (加法定理・乗法定理) 学習 (ベイズの定理) くじびき テスト くじびき 問題演習 テスト 3囚人(1) 3囚人(2) 方法 • 授業で学習した樹形図あるいはルーレット図 を描いて,課題解決を試みた. – くじびき:樹形図50名,ルーレット図7名 – 3囚人:樹形図54名,ルーレット図3名 • 3囚人問題への1回目のトライでは未完成の 図,2回目は完全な図(+説明)が提示された. • 授業資料参照可.3囚人問題ではくじびき課 題の正解を参照することが許された. 方法 • 樹形図(未完成) A釈放 1 4 1 4 1 2 B釈放 C釈放 方法 • 樹形図(完成) 1 2 1 2 A釈放 1 4 1 4 1 2 「Bは処刑される」と言う 1 B釈放 「Cは処刑される」と言う 「Cは処刑される」と言う 1 C釈放 「Bは処刑される」と言う 1 1 4 2 1 1 4 2 1 1 4 1 1 2 方法 • ルーレット図(未完成) 1 P{A釈放}= 4 1 P{C釈放}= 2 1 P{B釈放}= 4 方法 • ルーレット図(完成) P{C釈放 and 「Bは処 刑される」と言う} 1 1 = 2 1 P{C釈放}= 2 P{A釈放 and 「Bは処 刑される」と言う} 1 1 = 4 2 1 P{A釈放}= 4 1 P{B釈放}= 4 2つの課題での成績 くじ引き 正答 誤答 合計 3囚人+完全な図 正答 誤答 24 18 9 33 6 24 合計 42 15 57 3囚人問題でのパフォーマンス • 1回目のチャレンジ(不完全な図提示) – 3名が正しい樹形図を作成 – 3囚人問題への正解者なし. • 2回目のチャレンジ(完全な図提示) – 33名(58%)が正解. – くじ引き課題に失敗しても,3囚人問題を解決で きているのは,(くじ引き課題への解答後に)くじ 引き課題の正解が提示されたため? 結論 • ベイズの定理を学習し,正しい表象形成の支 援を受ければ,高い確率で3囚人問題に正解 することができる. – 正答率は58%.先行研究および出発点データで の(ほぼ)0%の正答率に比べれば,非常に高い. • 尤度の表象を形成することが難しい. – ベイズの定理を使用するスキルがあっても(くじ 引き課題に正答できても),完全な図なしでは3 囚人問題は困難.
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