発表ポスター jaep13 - 青山学院大学附置情報科学研究センター

3囚人問題は
図による問題表象
寺尾敦(青山学院大学)
伊藤朋子
なぜ難しいのか
構築支援の効果
(日本学術振興会・早稲田大学)
目的
• 3囚人問題の解決援助を行い,高い正答率を
達成することで,3囚人問題の難しさがどこに
あるのかを明らかにする.
– 支援の効果あり=解決の難所
– 高い正答率を達成した先行研究なし.
– ベイズの定理を学習後に3囚人問題に取り組む.
先行研究での参加者のほとんどはベイズの定理
を知らない.
(変形)3囚人問題
• 3人の囚人A,B,Cがいて,1人が釈放され,
2人が処刑される.
• それぞれの釈放確率は,1/4,1/4,1/2.
• 誰が処刑されるか知っている看守に対し,囚
人Aが,「BとCのうち,処刑される1人の名前
を教えてくれないか」と頼む.
• 看守は「Bは処刑される」と答えた.
• Aの釈放される確率はいくらか?
3囚人問題の難しさ
• 多くの先行研究で,正解者はほとんどいない.
– さらに,正解をきいても納得できない.
• ベイズの定理を学習し,「ベイズ型くじびき課
題」への正答率が上がった後(54.4%)でも,3
囚人問題での正答率は0%だった.(2009年の
教育心理学会に報告した実験での,未発表データ)
ベイズ型くじ引き課題
くじびき遊びをします.くじ袋の中には,白箱と黒
箱がひとつずつ入っています.白箱の中には赤
いボール2個と青いボール1個,黒箱の中には
赤いボール1個と青いボール1個が入っていま
す.箱もボールもそれぞれ同形同大で,触った
だけでは区別できません.袋の中の箱もその中
のボールもよく混ぜてから,袋の中を見ないで手
を入れ,まず箱をひとつ選び,さらに,選んだ箱
の中から,箱の中を見ないで手を入れボール(く
じ)をひとつ選びます.取り出したボールが赤な
ら当たりで,青ならはずれです.
青
赤
赤
青
赤
方法
• 参加者:青山学院大学社会情報学部での1
年生必修科目「統計入門」の受講者57名.
方法
• 手続き:確率についての授業を2週にわたっ
て実施.
第1週
第2週
学習
問題演習
(加法定理・乗法定理)
学習
(ベイズの定理)
くじびき
テスト
くじびき
問題演習
テスト
3囚人(1)
3囚人(2)
方法
• 授業で学習した樹形図あるいはルーレット図
を描いて,課題解決を試みた.
– くじびき:樹形図50名,ルーレット図7名
– 3囚人:樹形図54名,ルーレット図3名
• 3囚人問題への1回目のトライでは未完成の
図,2回目は完全な図(+説明)が提示された.
• 授業資料参照可.3囚人問題ではくじびき課
題の正解を参照することが許された.
方法
• 樹形図(未完成)
A釈放
1
4
1
4
1
2
B釈放
C釈放
方法
• 樹形図(完成)
1
2
1
2
A釈放
1
4
1
4
1
2
「Bは処刑される」と言う
1
B釈放
「Cは処刑される」と言う
「Cは処刑される」と言う
1
C釈放
「Bは処刑される」と言う
1 1

4 2
1 1

4 2
1
1
4
1
1
2
方法
• ルーレット図(未完成)
1
P{A釈放}=
4
1
P{C釈放}=
2
1
P{B釈放}=
4
方法
• ルーレット図(完成)
P{C釈放 and 「Bは処
刑される」と言う}
1
1
=
2
1
P{C釈放}=
2
P{A釈放 and 「Bは処
刑される」と言う}
1 1

=
4 2
1
P{A釈放}=
4
1
P{B釈放}=
4
2つの課題での成績
くじ引き
正答
誤答
合計
3囚人+完全な図
正答
誤答
24
18
9
33
6
24
合計
42
15
57
3囚人問題でのパフォーマンス
• 1回目のチャレンジ(不完全な図提示)
– 3名が正しい樹形図を作成
– 3囚人問題への正解者なし.
• 2回目のチャレンジ(完全な図提示)
– 33名(58%)が正解.
– くじ引き課題に失敗しても,3囚人問題を解決で
きているのは,(くじ引き課題への解答後に)くじ
引き課題の正解が提示されたため?
結論
• ベイズの定理を学習し,正しい表象形成の支
援を受ければ,高い確率で3囚人問題に正解
することができる.
– 正答率は58%.先行研究および出発点データで
の(ほぼ)0%の正答率に比べれば,非常に高い.
• 尤度の表象を形成することが難しい.
– ベイズの定理を使用するスキルがあっても(くじ
引き課題に正答できても),完全な図なしでは3
囚人問題は困難.