日本の統計制度

第1章 日本の統計制度
ー 経済統計 ー
この章の内容
Ⅰ 統計の分類方法
Ⅱ 日本の統計組織
Ⅲ 統計制度改革と新統計法
<おもなポイント>
•国民の大事な税金を使って政府が統計調査をやる意義
•分散型の統計機構の長所・短所と、データの入手先
•現在過渡期にある統計行政の目指す方向
など
Ⅰ 統計の分類方法
統計の分類方法には
 作成者による分類
 作成方法による分類
の2種類がある
<作成者による分類>
 官庁統計(政府統計) - 国、地方公共団体などが作成
 民間統計 - 民間企業などが作成
<作成方法による分類>
 第一義統計(調査統計) - 統計を作成する目的で調査を
おこない、得られる統計
 第二義統計(業務統計) - 業務上の目的で得られたデー
タを転用したもの
分類を表にまとめると下のようになる。
官庁統計
第一義統計 国勢調査
(
調査統計)労働力調査など
第二義統計 人口動態統計
(
業務統計)出入国管理統計など
民間統計
視聴率調査
新聞社の世論調査など
自動車の生産台数の統計
コンビニのP O S システムなど
第一義統計作成のための調査には、多くのコスト(費用、
労働力)がかかる。
 政府のおこなう統計調査は、国民の税金でまかなわれて
いる。
 なぜ大事な国民の税金を使って、わざわざ統計調査をお
こなうのであろうか?
⇒ 公益性、信頼性、国際比較可能性などを有するから
※ 第二義統計(業務統計)だからといって、第一義統計
(調査統計)より重要でないというわけではない

<国勢調査の必要性>
 現在、国勢調査がおこなわれているが、これには約650億
円の税金が使われている。
 こんなにお金をかける必要があるのか?
国勢調査の役割


人口、世帯数の全数調査による把握
標本調査をおこなう際の、母集団リストの作成 → 次回説明する。
⇒ 人口、世帯数の調査なら、住民基本台帳(住民票をもとにその人数を把
握する)で十分という批判が長くある。
⇒ しかし、「名ばかり高齢者」の問題の問題が発生した。その際に、住民票
と居住実態との相違がクローズアップされることになった。
(1人ぐらしの学生、単身赴任、失踪等が相違の原因)
⇒ 国勢調査の重要性が再認識されている??
Ⅱ 日本の統計組織
a) 統計機構の種類
分 散 型
仕組み
メリット
採用国
集 中 型
それぞれの行政機関が独自に統計を作成する 1つの機関がすべての統計を作成する
行政のニーズに迅速に対応することができる
組織が経済的、機能的
統計調査の重複を排除できる
アメリカ、イギリス、フランス、日本、韓国ほか
カナダ、ドイツ、オランダ、中国ほか
出典:総務省統
計局HP
総務省統計局および政策統括官(統計基準担当)*
の役割


統計調査の総合調整(政策統括官(統計基準担当))
- 似たような統計がないかチェックする
複数の省庁にまたがる重要な調査の実施(統計局)
- 国勢調査など
→ 回答者の負担を軽減することが目的
* 総務省統計局は平成17年8月15日の組織改変により、統計局と政
策統括官(統計基準担当)に分けられた。
政策統括官といっても、特定の1人を指すのではなく、組織を指すこと
に注意。
なお、ホームページは同じhttp://www.stat.go.jpである。
政府統計の総合窓口 e-stat



「政府統計の総合窓口(e-stat)」 (http://www.e-stat.go.jp)は
総務省統計局が中心となって開発したものであり、これまで
各府省が各自のHPに掲載していたデータを、1か所にとりま
とめ、このサイトから直接閲覧できることを目指したサイトで
ある。
現在整備の途中であるが、各府省はデータをe-statのサイト
に置き、各府省のページからはこのサイトにリンクをはるとい
う、今までとは反対のシステムになってきている。
非常に多くの情報があるため、使いにくい面もある。
b) 統計調査の流れ
統計調査は国から都道府県、市区町村を経ておこなわれ
る。
直接調査をおこなうのは統計調査員であることが多い。
統計調査員とは?
• 総務大臣や都道府県知事から調査のたびに任命され
る臨時の公務員
• 守秘義務がある
• 普段は主婦や無職の人が多い
出典:総務省統
計局HP
Ⅲ 統計制度改革と新統計法
統計法 - 政府が統計調査を実施、公表する
際の根拠となる法律
※ここ数年、統計制度改革の検討がなされていた。その中で
統計法の全面改正が必要となり、2007(平成19)年5月23
日に新統計法が公布され、2009 (平成21)年4月1日に全
面施行された。
新統計法の基本理念として
「行政のための統計」から「社会の情報基盤としての
統計」へ
がある。
「行政のための統計」から「社会の情報基盤としての統計」へ
従来の統計調査は、行政が国内のさまざまな状況を把握する
ことを目的としていた。そのため、統計の真実性に焦点があり、
一部重要な統計(指定統計)に申告義務を課すとともに、一般
の人の利用はかなり制限されていた。(→プライバシー保護の
ため)
 新統計法では、統計の真実性の確保、プライバシーの保護の
ための利用制限は依然存在するが、一方で有効利用につい
ても焦点があてられ、そのバランスがとられている。

公的統計が「社会の情報基盤」としての役割を十分に果たす
ために、「基本計画」が閣議決定されたが、そのポイントは次
の4つである。
•
•
•
•
統計の体系整備の推進
経済・社会の環境変化への対応
統計データの有効利用の促進
効率的な統計作成

統計の体系的整備
調査統計のみでなく、加工統計や業務統計を含
め、公的統計の体系的整備の根幹となる統計を
「基幹統計」として指定し、その有用性を向上


各産業分野の経済活動を同一時点で網羅的に把握
する経済センサスを新たに創設
経済産業省など4省がそれぞれ作成している製造業
の生産動態に関する統計を一つに統合
国民経済計算とその基礎となる各種一次統計と
の連携を強化

経済・社会の環境変化への対応
• 環境統計の段階的な整備
温室効果ガスの排出及び吸収に関する統計データの充実、気候
変動による影響に関する統計を整備
• 観光に関する統計の整備
共通基準の策定により都道府県間の比較が可能な観光統計の
整備を推進

統計データの有効利用の促進
利用者のニーズに対応し、オーダーメード集計†、
匿名データ¶の作成・提供を開始し、段階的に拡
大
†一般からの委託に応じ、統計調査の調査票情報を利用し
て新たに作成した統計
¶調査票情報を特定の個体が識別されないように加工した
もの

効率的な統計作成
国民や企業等の負担を軽減し、効果的に統計を作成す
るため、行政記録情報等を積極的に活用
労働保険及び雇用保険の適用事業所情報、有価証券報告書デー
タ等の活用を検討