2005.5.15 日本気象学会2005年度春季大会 中層大気 D106 赤道QBOの影響の統計的有意性 ― 大標本法に基づいた評価 ― 内藤 陽子 ・ 余田 成男 (京大・理) 長時間積分データの統計解析 Naito, Taguchi & Yoden (2003) [JAS, 60, 1380-1394] ↓ 現実大気データの見直し Naito & Yoden (2005) [SOLA, 1, 17-20] 中高緯度へのQBO影響に関する過去の研究 現実大気データの解析 e.g. Holton & Tan (1980, 1982) QBOの位相 西風相(W) 東風相(E) 月平均で見た 強い 冷たい 弱い 暖かい 少ない (7回 / 26年) 多い (13回 / 20年) 極渦の状態 大昇温 (大規模な突然昇温) 数値実験 • 現実大気データの解析結果を支持 e.g. Holton & Austin (1991) Naito, Taguchi & Yoden (2003) Naito, Taguchi & Yoden (2003) [JAS, 60, 1380— ] 使用したモデル 簡略化した3次元大気循環モデル QBO位相を模した強制 du / dt = …… - aQBO ( u - UQBO ) aQBO : 緩和時間係数 ; UQBO : 基本プロファイル (いずれも赤道域下部成層圏に限るような分布) 長時間積分 • 10800日 x 9とおり 標本の大きさ • 境界条件:常に冬の状態、QBO強制も時間変化なし 対流圏 449hPa での 冬極の温度の 頻度分布 W1.0 ~1K Frequency (%) データ数: 10800日ずつ E1.0 ほとんど重なっている 差は約1K→ 有意性検定 有意性検定 Temperature (K) 大標本法による、二つの平均値の差の検定 統計量 Z : NW と NE が十分大きければ標準正規分布 Z= TW - TE W 2 NW = E 2 NE 226.8 - 225.8 2 2 1.87 1.75 10800 10800 = 40.6 [TW] : TW の平均値 [TE] : TE の平均値 W2 : TW の分散 E2 : TE の分散 NW : TW の標本サイズ NE : TE の標本サイズ 標本を取り出した母集団の平均が等しいという仮説のもとで Z が 40.6 に達する確率は非常に小さい (< 10-27) 二つの平均値の差は非常に有意 Naito & Yoden (2005) [SOLA, 1, 17-20 ] 解析したデータ NCEP/NCAR再解析データ 1958-2003年(46年分) - 12月-1月-2月(北半球の冬)の日々のデータを解析 QBO位相の定義 赤道東西風データ (courtesy of Dr. Naujokat) - 40-50hPaの平均値を使って、冬ごとに位相を決定 西風相(W) 2316日、東風相(E) 1834日 連続データの独立性 (Laurmann & Gates 1977) 標本サイズ N を N’ N / t0 に置換え t0 : Effective sampling time (日) - およそ成層圏で月、対流圏で週のオーダー Z= TW - TE W 2 NW E2 NE 帯状平均温度の Effective sampling time t0 (日) 灰色: t0 > 300日 30 pressure (hPa) 成層圏 月(数十日) のオーダー 20 10 latitude 対流圏 週(十数日) のオーダー 帯状平均温度のコンポジット差 (K) 青色: 西風相(W)のほうが低温 pressure (hPa) 50 hPa 差が最大 ~4K 250 hPa ~2K latitude 帯状平均温度のコンポジット差の統計的有意性 (%) 灰色: t0 > 300日 pressure (hPa) 50 hPa 98.30 % 250 hPa 最も有意 99.9985 % latitude 冬極の温度の頻度分布: 対流圏 250hPa 西風相(W) 2316日 ~2K 東風相(E) 1834日 有意性 99.9985 % ほとんど重なっている まとめ 統計解析手法を提案 • 中高緯度成層圏対流圏循環の変動に対する 赤道QBOの影響の統計的有意性を 大標本法で検定 • 大きなサイズの標本 ← 日々のデータから確保 ※ 連続するデータの独立性を考慮 • 成層圏だけでなく対流圏でも有意な差を検出 この手法の応用 • 他の外的強制の影響もこの手法で調べられる (例: 太陽活動11年周期変動、火山エアロゾル、 エルニーニョ南方振動、等々)
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