レジュメ

年金改革の経済学2
年金の基礎理論
• 年金とは、予想外に長生きをしてしまって、生
活費が枯渇してしまい、老後に悲惨な生活状
態に陥ることを防ぐために存在している「保
険」
• 保険原則からいって、世代間再分配は不要。
保険は同質のリスク集団内にかけられるべき
もの。保険にはそもそも損得は無い。
• 保険の原則から言って、積立が本来あるべき
• 公的部門で運営されるべき理由
• 所得内再分配を行なわなければいけないか
らではなく、民間よりもうまく運営できるから
• 逆選択
• モラルハザード:ありとキリギリス
積立方式と賦課方式
創設期の
高齢者⇒
高齢期
第1期世代⇒
現役期
高齢期
第2期世代⇒
現役期
高齢期
第3期世代⇒
現役期
第1期
第2期
第3期
高齢期
第4期
創設期の
高齢者⇒
高齢期
第1期世代⇒
現役期
高齢期
第2期世代⇒
現役期
高齢期
第3期世代⇒
現役期
第1期
第2期
第3期
高齢期
第4期
• 創設期の高齢者の問題⇒賦課方式が必然で
はない。
国の負債
創設期の
高齢者⇒
高齢期
第1期世代⇒
現役期
高齢期
第2期世代⇒
現役期
高齢期
第3期世代⇒
現役期
第1期
第2期
第3期
高齢期
第4期
高齢者・現役比率
高齢者年金(月当たり)
現役保険料(月当たり)
給付負担倍率
第1期
第2期
第3期
第4期
第5期
第6期
第7期
1:10
1:5
1:4
1:3
1:2
1:1
-
10万円
10万円
10万円
10万円
10万円
10万円
10万円
3.3+0.13万円 3.3+0.13万円 3.3+0.13万円 3.3+0.13万円 3.3+0.13万円 3.3+0.13万円
0.99倍
0.99倍
0.99倍
0.99倍
0.99倍
0.99倍
-
-
• 国債で調達の必要は実はない
• 現実は、積立と賦課の間、両者はAll or
Nothingではなく、中間的な姿がある。
• 賦課方式から積立方式の移行も可能。逆も然
り。
• わが国は修正積立方式
第1期世代⇒
現役期
高齢期
第2期世代⇒
現役期
高齢期
第3期世代⇒
現役時代
第1期
第2期
第3期
高齢期
第4期
• 賦課方式になった理由1:社会保険のパラ
ドックス
1100万円
1000万円
利子率
現役期
高齢期
人口成長率
1000万円
現役期
• 賦課方式になった理由2:積立金は埋蔵金
• 賦課方式に移行してしまえば、これまで積み
上がっていた多額の積立金は、賦課方式の
年金の運営にとって必要なものではない。
• 宙に浮いた資金として、政治家や官僚にとっ
て大変な魅力。
• 賦課方式であるからといって勝手に使ってい
いものではない。
• 賦課方式から抜け出せない政治経済学
• 「人口成長率>利子率」 から「人口成長率<
利子率」 へ
• 積立金を使ってしまっているので、積立方式
に移行するには、もう一度調達しなおさなけ
ればならない。
• 責任の問題や、高齢者に不人気の政策⇒官
僚や政治家が積立方式移行に反対する理由。
100年安心プランは既に崩壊している
•
•
•
•
•
100年安心プランの現状
少子高齢化の進行
厚生年金の積立金予測
自動安定化装置は機能しない
先送りする仕組みができた年金改革(財政再
検証)
20
0
20 5
1
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1
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2
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3
20 0
3
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4
20 0
4
20 5
2050
5
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6
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6
20 5
7
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7
20 5
8
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8
20 5
9
20 0
9
21 5
00
兆円
200.0
150.0
100.0
50.0
0.0
-50.0
-100.0
-150.0
-200.0
2004年改正時
新人口推計に
よる予測
<コラム7> 少子高齢化が進んでも
年金財政は「好転」のトリック
• 厚生労働省「人口の変化等を踏まえた年金財政への
影響(暫定試算)」
• 50.2%であった所得代替率(現役時の平均所得に対
する年金受給額の割合)見通しは、51.6%と返って高
まるという驚くべきもの
• 安倍政権が進めていた「上げ潮路線」が大成功する
2007年時点でほぼ0%であった賃金上昇率は2011年
には4.1%にも高まり、運用利回りも4.4%、女性や高
齢者の労働者割合も8~9割と大幅に高まる
• 2012年以降の長期的な経済想定も賃金上昇率が
2.1%から2.5%、運用利回りが3.2%から4.1%
厚生年金と共済年金の一元化で年金
財政は改善するのか
• 厚生年金と各種共済年金の一元化(被用者年金一
元化)
• 共済年金は、厚生年金よりも保険料率が低く、「職
域部分」と呼ばれる企業年金に当たる3階部分の上
乗せ給付があるなど、「官民格差」が問題視
• され、小泉内閣の指示によって、関係各省(被用者
年金制度の一元化等に関する関係省庁連絡会議)
や与党(被用者年金一元化等に関する政府・与党
協議会)での議論が行われた。
• 2006年4月の閣議決定ののちに、2007年4
月に通常国会に法案提出がなされ、現在、継
続審議中。
• 賦課方式の年金2つの合併では本質的な問
題の解決にはならない。
• 厚生年金の財政改善にもならない。
• ①厚生年金と同率の保険料率への引き上げ
と固定、②「職域部分」年金の廃止とそれに
代わる3階部分の新型年金の設立、③厚生
年金の積み立て比率を上回る部分の積立金
の共済内での活用
基礎年金の財源を税方式化すべきか
保険料方式にすべきか
• 本質的論議を避けるための目くらまし
• 社会保障国民会議の議論では、消費税負担
だけに焦点が当てられる
年度
ケースA
ケースB
ケースC
ケースC’
2009年度
5.1%
3.3%
8.5%
11.8%
2015年度
5.3%
3.6%
8.6%
12.0%
2025年度
5.0%
3.7%
7.8%
10.5%
2050年度
6.8%
6.2%
8.2%
9.6%
• 税方式化による保険料負担減が考慮されず。
• 損という計算は、事業主負担のトリック
月平均負担額(万円)
0.0
-0.5
-1.0
-1.5
-2.0
-2.5
-3.0
第Ⅰ分位
第Ⅱ分位
基礎年金分の保険料減少額
第Ⅲ分位
第Ⅳ分位
第Ⅴ分位
所得階層
税方式の場合の消費税負担の増加額
• 消費税化は、ケースA、B、C、C’という4つの
ケースで示されているが、現実的な選択肢は、
ケースBのみであり、あとの3つは非現実的で
(特にC)、わざわざ消費税率を高く見せるた
めに、作為的に作られたシナリオ
• 保険料方式を続けることのデメリットに焦点
が当たっていない点も問題。そもそも、税方
式が提案されてきた背景は、近年の未納・未
加入者の深刻化に伴って、将来の生活保護
世帯の急増が見込まれたことにある。
• このような批判があることを考慮してか、試算では、
「未納率の違いによっても所得代替率があまり変わ
らないので、国民年金未納率が財政に与える影響
は小さい」との結果を合わせて発表
• 第一に、所得代替率とは厚生年金の場合の概念で
あり、基礎年金もしくは国民年金の話が厚生年金に
すりかえられている。
• 第二に、問題は単なる未納率の問題ではなく、減免
者や猶予者を含めて半分以上の人々が保険料を
払っていないということにあります。
• 第三に、保険料率方式を続ける場合の問題は、む
しろ、将来の生活保護費の増加にあり、この生活保
護費増が国民生活に与える影響も加味すべき
税方式への批判
• 「受益(給付)と負担の関係が希薄化して、保
険である認識が低くなる」
• ⇒現在はどうか。消費目的税
• 給付と負担の関係が切れると、所得制限が
持ち込まれたり、権利性が弱められ、第二の
生活保護化する恐れがある」
• ⇒消費目的税
• 「消費税化では少子高齢化の進展で税率が
引き上がり、若い世代の負担が重くなる」
• ⇒保険料も同様
• 「消費税は弱者に厳しい税金であるので、所
得再分配の観点から問題である」
• ⇒現在の年金が弱者にやさしいか
• 「消費税化をすると、事業主負担が無くなり、
その分も税負担に回るので個人の負担が重
くなる」
• ⇒事業主負担に対する無理解
基礎年金の資格期間(25年)短縮論
の落とし穴
• 25年の資格期間(保険料納付をしたり、減免
を受けている期間)を「たとえば10年とする」と
いう見直案
• ①25年の資格期間を満たせないことによって、
近年、無年金者が増加しており、生活保護受
給者増の大きな要因となっていること、②ま
た、現在、保険料を払い続けながら、既に25
年の期間を満たせないことが分かっている
人々が70万人以上存在しており、今後の大
きな火種になること
<コラム8> パート労働者の厚生年
金加入は、年金財政を好転させない
• 被用者年金制度の一元化等を諮るための厚
生年金保険法等の一部を改革する法律案」
• ①週所定労働時間が20時間以上、②賃金が
月額98000円以上、③勤務期間1年以上が
見込まれること、④従業員301人以上の事業
所に雇用されていることといった条件が加え
られたため、その追加対象は10万人程度と
かなり限定的