プロジェクトNo.22 発泡石膏ブロックの作成と重金属類除去効果の評価

プロジェクトNo.22
発泡石膏ブロックの作成と重金属類除去効果の評価
10ME222 :姜 東(キョウ トウ)、08ME207 :河野 和宏
(担当教員: 藤野 毅)
方法
背景
発泡石膏の成分(重量比):
世界中、湖底や地下水にヒ素などの重金属類が高濃度で含まれ
石膏(無水)
CaSO4
94%
ていることが報告されている。特に、地下水を生活用水として利用す
硫酸アルミニウム Al2(SO4)3
5%
る途上国では、長期にわたる摂取により人体に重大な影響を与えて
炭酸水素ナトリウム NaHCO3
1%
いるものの、これを安価で簡易に取り除く方法がないため、問題はま
これを、紙コップに入れて、
すます深刻になっている。
水
H2O
75%
本プロジェクトは、年々廃棄量が増加する石膏の有効利用法として、を加えて、すぐに5秒間、すばやく攪拌する。これを、乾燥炉(ADVANTEC製
ヒ素をはじめとする重金属除去のためのフィルターとして活用するこ 定温乾燥器,DRA330DA)に入れて80℃で24時間乾燥させた。
とを試みる。ここでは、細粒化した無水石膏を発泡させ、ブロック状
にすることで、透水性を確保し、速やかに除去するための工夫を考 発泡中の化学反応式
える。
Al2(SO4)3+6 NaHCO3=3 Na2SO4+2 Al(OH)3↓+6 CO2 ↑
発泡石膏の乾燥
写真: 攪拌直後の状態
サンプル平均値
87.97
直後質量、g
83.52
1時間後
79.5
3時間後
72.09
5時間後
56.66
22時間後
56.34
24時間後
0.64
24時間後/直後
写真: 出来上がった発泡石膏
発泡石膏の透水試験
L
Q
KT  
h A(t 2  t1)
KT:透水係数(cm/s)
h:水位差(cm)
Q:透水量(cm2)
(t2-t1):測定時間(s)
A:供試料の断面積(cm2)
L:供試料の長さ(cm)
0.040
0.0376
0.035
透水係数 , cm/s
定水位法:水位差hを一定に保持し、
土試料を通過した水量(透水量Q)を
測定する方法で、透水係数kは下の
式を使って求めた。
80度で乾燥して 24時間後質量減らないで乾燥終了です
0.030
0.025
0.020
L=4.8cm, h=6cm,
0.0132
2
0.015
2
A=πr =3.14*5.76=18.09cm
0.010
(t2-t1)=180秒の場合は
Q=54ml
KT=0.0132(cm/s)
0.005
0.000147
対照するために砂と土の透水係数も測りました」
0.000
砂の場合:
砂
ローム土
発泡石膏
(t2-t1)=60秒 KT=0.0376(cm/s)
土の場合:
同様の試験を砂とローム土で行い、比較を行った結果、発泡石膏は砂とロー
(t2-t1)=300秒 KT=0.000147(cm/s)ム土の間に位置し、フィルターとして適度な範囲に収まってる。
表1
炭素含有量の比較
イオン測定
ヒ素の除去効果の評価
人の健康の保護に関する環境基準(最終改正平成7年環境庁告示)及
び水道水の水質基準等では、「ヒ素」の基準値を 0.01mg/l 以下と定めて
います。
水道水のヒ素濃度は0.01mg/L。ヒ素標準液の濃度は1000mg/L 希釈し
て 水道水の濃度の10倍(0.1mg/L) 20倍(0.2mg/L) 50倍(0.5mg/L)
の溶液を用意します。
この三つの溶液 発泡石膏で濾過して ヒ素どのぐらい取り除きますか、
ヒ素測定セットで測ります。
一. 10倍(0.1mg/L)の場合
水温は19度
ヒ素の濃度は0.065mg/Lになりました。除去率35%
二.20倍(0.2mg/L)の場合
水温は20度
ヒ素の濃度は0.13mg/Lになりました。除去率35%
三.50倍(0.5mg/L)の場合
水温は20度
0.22mg/Lにになりました。除去率56%
イオン測定
発泡石膏(無水)を水が入ってるビーカーに入れて 24時間後
どのぐらいイオンが浸みだすか、イオン濃度(Na, Ca, Mg, PO4な
どのプラスイオン)を測定した結果、何も検出されませんでした。
石膏の組成分析
市販石膏
炭素平均値%
廃石膏ボードの組成をX線回折により解析した。
0.14
2水石膏から半水石膏へ変換はスクリューコンベ 60℃加熱
0.20
アの加熱時間を長く、出口温度を高くするほど増 160℃加熱
0.00
大し、164℃では残存する二水石膏が1.8%になり、 650℃加熱
半水石膏は89.2%であった。残りの9.0%は残存し
廃石膏
た無水石膏とパルプ分であった。
炭素平均値%
さらに、廃石膏は市販の石膏と比べてやや灰色
がかっており、付着成分が影響していると思われ 60℃加熱
1.19
る。そこで、炭素量がどれほど残存しているかを 160℃加熱
1.20
元素分析装置(CHNコーダー,Yanaco社)で調べ 650℃加熱
0.00
た。
ヒ素吸着特性の振とう実験
市販石膏と廃石膏1gずつ取り、それぞれ1.01mg/L、0.20mg/L、5.00mg/
Lの濃度を用い、30mlのチューブに入れて、24時間振動してから砒素をど
のぐらい吸着するかを調べた。
サンプル1
サンプル2
サンプル3
サンプル4
サンプル5
サンプル6
サンプル7
サンプル8
サンプル9
mg/L
0.01
0.05
0.10
0.20
0.50
1.0を0.1に希釈
2.0を0.1に希釈
5.0を0.1に希釈
10.0を0.1に希釈
振動後のデータ
市販
除去率
0.009
10%
0.047
6%
0.075
25%
0.100
50%
0.240
52%
0.080
20%
0.070
30%
0.010
0%
0.010
0%
廃石膏
0
0.030
0.060
0.075
0.200
0.075
0.050
0.010
0.010
除去率
100%
40%
40%
62.5%
60.00%
25.00%
50.00%
0%
0%
ポイント:物理吸着比表面積が大きい、いろいろな粒度を持つ
今後の課題
石膏を発泡させ、大小様々な空隙中を溶液が通ることによる1回の
重金属の除去率は35-56%にとどまった。滞留時間が1分であるた
め、十分な除去を行うためには、今後も空隙率と滞留時間による効
果を検証し、一度でなく、数回循環させて除去することを考える。
*発泡石膏の作成には、(株)クレーバーン技術研究所の後藤優一研究
員にご協力いただきました。