乳酸菌発酵果汁飲料の継続摂取が 通年性アレルギー性

2016年9月23日
乳酸菌発酵果汁飲料の継続摂取が
通年性アレルギー性鼻炎症状を改善
株 式 会 社 ヤ ク ル ト 本 社 ( 社 長 根 岸 孝 成 ) で は 、 NPO 法 人 日 本 健 康 増 進 支 援 機
構の 榎本 雅夫 理事長との共同研究として、通年性アレルギー性鼻炎症状を有す
る 方 を 対 象 と し て 、 乳 酸 菌 「 ラ ク ト バ チ ル ス プ ラ ン タ ル ム YIT 0132」( 以 下 、 乳
酸 菌 LP 0132)を 含 む 発 酵 果 汁 飲 料( 以 下 、乳 酸 菌 発 酵 果 汁 飲 料 )の 飲 用 試 験 を 実
施 し た 結 果 、乳 酸 菌 発 酵 果 汁 飲 料 に 、通 年 性 ア レ ル ギ ー 性 鼻 炎 症 状 を 改 善 す る 効 果
が確認されました。
な お 、 本 研 究 成 果 は 、 科 学 雑 誌 「 Beneficial Microbes」 の 電 子 版 ( 9 月 1 6 日
付)に公開されました。
1.背
景
近年、日本においてアレルギー疾患の有病率は増加傾向にあります。
一方で、手軽に摂取できるというニーズから、抗アレルギー効果を有する
乳酸菌やそれらを利用した食品への期待が高まっています。
当社はこれまでに、過剰な免疫反応の鎮静化に関わる因子であるインター
ロ イ キ ン -1 0( IL-10)の 誘 導 能 を 指 標 に ア レ ル ギ ー 症 状 を 緩 和 す る 可 能 性 を
も つ 菌 株 の 選 定 を 行 い 、 乳 酸 菌 LP 0132 を 選 び 出 し ま し た 。
そ し て 、乳 酸 菌 LP 0132 に よ り 柑 橘 類 の 果 汁 を 発 酵 さ せ た 乳 酸 菌 発 酵 果 汁 飲
料の継続摂取が、スギ花粉症患者の花粉飛散時期における症状やQOL
( Quality of Life: 生 活 の 質 ) の 悪 化 を 抑 制 す る こ と 、 ま た ア ト ピ ー 性 皮 膚
炎患者の症状を改善することを明らかにしてきました。
アレルギー疾患に罹患する方の中にはいくつかのアレルギー疾患を併発す
る 方 が お り 、花 粉 症 、ア ト ピ ー 性 皮 膚 炎 に 加 え 、ハ ウ ス ダ ス ト 等 を 原 因 と す る
通年性アレルギー性鼻炎は、有症率が高い疾患の一つです。これらの疾患は、
発 症 メ カ ニ ズ ム に 共 通 す る 部 分 が あ る こ と か ら 、既 に 花 粉 症 、ア ト ピ ー 性 皮 膚
炎 に つ い て の 有 効 性 が 確 認 さ れ て い る 乳 酸 菌 LP 0132 の 他 の ア レ ル ギ ー 疾 患 に
対する飲用効果が期待できます。
こ の こ と か ら 、今 回 当 社 で は 乳 酸 菌 LP 0132 を 含 む 乳 酸 菌 発 酵 果 汁 飲 料 の 飲
用 が 、通 年 性 ア レ ル ギ ー 性 鼻 炎 症 状 を 有 す る 方 に も た ら す 影 響 を 、無 作 為 化 プ
ラセボ対照二重盲検試験にて検証しました。
2.研究の内容
通 年 性 ア レ ル ギ ー 性 鼻 炎 症 状 を 有 す る 方 33 名 を 無 作 為 に 2 群 に 分 け 、 う ん
し ゅ う み か ん 果 汁 を 乳 酸 菌 LP 0132 で 発 酵 さ せ た 乳 酸 菌 発 酵 果 汁 飲 料 ま た は 、
乳 酸 菌 LP 0132 を 含 ま な い 果 汁 飲 料 ( 以 下 、 プ ラ セ ボ ) を 1 日 1 本 、 8 週 間 飲
用してもらい、飲用前、飲用期間(8 週間)の鼻炎症状を調べました。また、
飲 用 前 、飲 用 8 週 間 後 の 血 中 免 疫 パ ラ メ ー タ ー に つ い て も 調 べ ま し た 。結 果 は
以下のとおりです。
(1) 通 年 性 ア レ ル ギ ー 性 鼻 炎 症 状
乳 酸 菌 LP 0132 を 含 む 乳 酸 菌 発 酵 果 汁 飲 料 群 で は 、プ ラ セ ボ 群 と 比 較 し て 、
総 合 鼻 症 状 ス コ ア が 有 意 に 改 善 し ま し た 。ま た 、鼻 閉 (鼻 づ ま り )ス コ ア の み を
見ても、プラセボ群と比較して有意に改善しました。
こ の こ と か ら 、 乳 酸 菌 LP 0132 を 含 む 乳 酸 菌 発 酵 果 汁 飲 料 の 継 続 飲 用 は 、
通年性アレルギー性鼻炎症状を改善することが明らかになりました。
[総合鼻症状スコア]
鼻アレルギー診療ガイドラインが定める、
「くしゃみ」
「鼻汁」
「 鼻 閉 」の
3 項 目 か ら 算 出 す る 「 鼻 の 自 覚 症 状 の 重 症 度 」 を 0~ 4 の 5 段 階 で ス コ ア
化したもの。
[鼻閉スコア]
鼻 づ ま り の 程 度 を 0~ 4 の 5 段 階 で ス コ ア 化 し た も の
鼻閉スコア
総合鼻症状スコア
前
0
観
察
期 -0.4
か
ら
の -0.8
変
化
量 -1.2
プラ セ ボ
乳酸菌
LP 0 1 3 2
改善
しなかった
改善した
前
観
察
期
か
ら
の
変
化
量
プラ セ ボ
0
乳酸菌
LP 0 1 3 2
改善
しなかった
-0.4
-0.8
改善した
-1.2
(2) ア レ ル ギ ー 関 連 血 液 マ ー カ ー
乳 酸 菌 LP 0132 を 含 む 乳 酸 菌 発 酵 果 汁 飲 料 群 で は 、総 IgE ※ 1 、ECP ※ 2 、Th2 の
値 が 、 前 観 察 期 と 比 較 し て 有 意 に 減 少 し 、 Th1/Th2 比 ※ 3 が 増 加 し て い ま し た 。
一方、プラセボ群では、これらの変化は認められませんでした。
こ の こ と か ら 、 通 年 性 ア レ ル ギ ー 性 鼻 炎 に 対 す る 乳 酸 菌 LP 0132 を 含 む 乳
酸 菌 発 酵 果 汁 飲 料 の 有 効 性 は 、総 IgE、ECP、Th2 な ど の ア レ ル ギ ー 関 連 因 子 の
改善を介したものであると考えられます。
※ 1: 免 疫 グ ロ ブ リ ン E の こ と で 、 体 内 に 侵 入 し た 異 物 を 排 除 す る 抗 体 の 一 種 。
特 定 の 物 質 に 対 し て 反 応 す る IgE を「 特 異 的 IgE」と 呼 ぶ の に 対 し 、全 て の
特 異 的 IgE 抗 体 の 総 和 を「 総 IgE」と 呼 ぶ 。ア レ ル ギ ー 症 状 を 発 症 し て い る
ヒトでは過剰に産生され、症状の原因となることが知られている。
※ 2: Eosinophil Cationic Protein の 略 で 、 好 酸 球 か ら 放 出 さ れ る 炎 症 性 物 質 。
ヒトがアトピー性皮膚炎や花粉症等アレルギー症状を発症している状態で
は 、 2 型 ヘ ル パ ー T 細 胞 (Th2)の 働 き が 活 発 に な る こ と が 知 ら れ て い る が 、
Th2 は 好 酸 球 に 対 し て 働 き か け 、 ECP を 放 出 さ せ る 。 ECP は 細 胞 傷 害 性 を
持 つ こ と か ら 、ア レ ル ギ ー 症 状 の 重 篤 化 に 関 係 す る も の と 考 え ら れ て い る 。
※ 3: 免 疫 細 胞 で あ る 1 型 ヘ ル パ ー T 細 胞 (Th1)と 2 型 ヘ ル パ ー T 細 胞 (Th2)の 数 の
比 の こ と 。 ヒ ト の 免 疫 に お い て は 、 ヘ ル パ ー T 細 胞 の う ち 、 Th1 と Th2 の バ
ランスが取れた状態が良いとされているが、アレルギー症状を発症した
状 態 で は 、 Th1 に 対 し て 、 相 対 的 に Th2 の 数 が 多 く な る 。 こ の た め 、 Th1 と
Th2 の 比 を み る こ と で 、 ア レ ル ギ ー 状 態 の 指 標 と す る こ と が で き る 。
2型ヘルパーT細胞(Th2)
10
1
8
0.8
6
0.6
%
μg / L
ECP
4
0.4
2
0.2
0
0
前観察期
プラセボ
8週後
乳酸菌
LP0132
LP 0132
前観察期
プラセボ
8週後
乳酸菌
LP0132
LP 0132
3.今後の期待
本 試 験 に お い て 、 乳 酸 菌 LP 0132 を 含 む 乳 酸 菌 発 酵 果 汁 飲 料 の 継 続 飲 用
が、花粉症やアトピー性皮膚炎のみならず、通年性アレルギー性鼻炎症状に
対しても改善効果を有することが明らかになりました。
さらに、本試験では、アレルギー性疾患と関わりが深い血液中のマーカー
( IgE、 ECP、 Th2) の 減 少 が 認 め ら れ ま し た 。 こ れ ま で の 研 究 に よ っ て 、 乳 酸
菌 LP 0132 は 、 貪 食 細 胞 の IL-10 産 生 を 強 く 誘 導 す る こ と が 明 ら か に な っ て
い る こ と か ら 、 今 回 の 結 果 と 合 わ せ て 、 乳 酸 菌 LP 0132 を 含 む 乳 酸 菌 発 酵 果
汁 飲 用 が 、 IL-10 を 誘 導 し て 過 剰 な 免 疫 反 応 を 抑 制 し 、 ア レ ル ギ ー 状 態 に 偏 っ
た免疫バランスを調節することによって、通年性アレルギー性鼻炎症状を軽
減した可能性が考えられます。今後、更なる詳細なメカニズムの解明が期待
されます。
アレルギー疾患に罹患している方は、近年ますます増加する傾向にあ り、
抗アレルギー効果を有する乳酸菌やそれらを利用した食品への ニーズは高ま
っ て い ま す 。 今 後 、 乳 酸 菌 LP 0132 を 含 む 乳 酸 菌 発 酵 果 汁 飲 料 が 、 こ れ ら の
ニ ー ズ に 応 え る 形 で 、 健 康 の 維 持 ・増 進 に 役 立 て ら れ る こ と が 期 待 さ れ ま す 。
4.ヤクルト本社にとっての本研究の意義
ヤクルト本社中央研究所長の石川 文保は、
「 こ れ ま で に 、ラ ク ト バ チ ル ス プ
ラ ン タ ル ム YIT 0132 に よ る 発 酵 果 汁 飲 料 に は 、ス ギ 花 粉 症 患 者 の 症 状 軽 減 や 、
ア ト ピ ー 性 皮 膚 炎 患 者 の 症 状 改 善 に 役 立 つ こ と を 明 ら か に し て き ま し た 。今 回 、
新たに通年性アレルギー性鼻炎患者の症状改善に役立つことが明らかになっ
た こ と で 、本 乳 酸 菌 の ア レ ル ギ ー 疾 患 に 対 す る 効 果 を よ り 確 か な も の に す る こ
とができたといえます。
また、本乳酸菌は、果汁で発酵できるため、乳原料を使わない飲料として、
提 供 す る こ と が 可 能 で あ る こ と か ら 、こ れ ま で 乳 酸 菌 の 利 用 を 控 え て い た 乳 ア
レ ル ギ ー の 方 も 利 用 で き 、よ り 多 く の 方 に 当 社 の 乳 酸 菌 を 活 用 し て い た だ け る
状 況 に な っ た と い え ま す 。」 と コ メ ン ト し て い ま す 。
以
上