乳癌の術中電子線照射に使用 する金属プレートの検討 大島隆嗣、田伏勝義、青山裕一 背景 乳房の腫瘍を切除した 後の腫瘍床に対して術 中電子線照射を行う際、 大胸筋にある程度の 線量がかかってしまう。 大胸筋の電子線入射側にプレートを挿入す ることにより、大胸筋への線量を低減する。 乳房 大胸筋 目的 大胸筋の電子線入射側へ挿入するプレー トに使用する材質とその厚さについて検討 プレートの構造① 過去の論文において10 mmのアクリルを大胸筋の電子線 入射側に挿入して照射を行っているものがある。 100 アクリル PDD [%] 80 60 40 20 アクリルのみでは不十分 0 0 1 2 3 4 Depth [cm] 5 6 7 プレートの構造② 金属を用いて乳房を透過してきた電子線を 遮蔽する。 金属の電子線入射側にアクリル (PMMA)を 配置し、金属に入射する電子線を減弱させ、 かつ、金属からの後方散乱を吸収させる。 Electron Beam PMMA Metal 検討項目 各種金属の電子線の遮蔽能力 前方への透過線量のPDDが1 %を下回るまでの金 属表面からの距離(dF) 後方散乱の最大飛程とその大きさ 後方散乱線量(Back Scatter Dose : BSD)のPDDが 1 %を下回るまでの金属表面からの距離(dB)、およ びBSDの最大値 dFとdB PMMA Metal 100 PDD [%] 80 60 後表面 Total Dose 前表面 Back Scatter Dose 40 dB 1% 20 dF 0 0 0.5 1 1.5 2 Depth [cm] 2.5 3 3.5 シミュレーションの流れ 1. 金属ごとの電子線の遮蔽能力と後方散 乱の大きさの比較 2. 金属からの後方散乱を吸収する最適な PMMA厚の検討 3. 電子線を遮蔽するために必要な最小の 金属厚の検討 シミュレーション1 水槽中のPDDが90 %に なる深さdR90にプレートの 電子線入射側表面がくる ように配置 金属は、アルミニウム(Al)、 銅(Cu)、鉛(Pb)を使用 x Electron Beam PMMA Metal z dR90 5 cm Aquarium 30 ×30 cm2 シミュレーション1の条件① 粒子数:3×107 個 線質:varian 6, 12 MeV 電子線* 照射野:10×10 cm2 Boxel size:1.0×1.0×0.1 cm3 ECUT=521 keV, PCUT=10 keV chard=0.05 cm Material Density [g/cm3] Material Density [g/cm3] H2O 1.0 PMMA 1.2 Al 2.7 Cu 8.9 Pb 11.3 * : G.X. Ding and D.W.O Rogers ; PIRS-0439 シミュレーション1の条件② Beam Energy [MeV] 6 12 dR90 [mm] 18 38 Thickness of PMMA [mm] Thickness of Metal [mm] 5.0, 10 3.0 6.0 後方散乱 ① 金属からPMMAへ 入る全ての粒子 Electron Beam PMMA ② 方向余弦のZ成分 が入射方向と逆 Metal Back Scatter Aquarium 結果(6 MeV; PMMA 5 mm) PMMA 100 Metal PDD [%] 80 60 Al ( Total Dose ) Cu ( Total Dose ) Pb ( Total Dose ) Al ( Back Scatter Dose ) Cu ( Back Scatter Dose ) Pb ( Back Scatter Dose ) 40 20 0 0 0.5 1 1.5 2 Depth [cm] 2.5 3 3.5 結果(12 MeV; PMMA 5 mm) PMMA Metal 100 PDD [%] 80 Al ( Total Dose ) Cu ( Total Dose ) Pb ( Total Dose ) Al ( Back Scatter Dose ) Cu ( Back Scatter Dose ) Pb ( Back Scatter Dose ) 60 40 20 0 0 0.5 1 1.5 2 2.5 3 3.5 Depth [cm] 4 4.5 5 5.5 6 6.5 結果(12 MeV; PMMA 10 mm) PMMA 100 Metal PDD [%] 80 Al ( Total Dose ) Cu ( Total Dose ) Pb ( Total Dose ) Al ( Back Scatter Dose ) Cu ( Back Scatter Dose ) Pb ( Back Scatter Dose ) 60 40 20 0 0 0.5 1 1.5 2 2.5 3 3.5 Depth [cm] 4 4.5 5 5.5 6 6.5 結果のまとめ Energy [MeV] Metal dF [mm] PMMA dB [mm] 5 mm Maximal Value of BSD [%] dF [mm] PMMA dB [mm] 10 mm Maximal Value of BSD [%] Al 3.86 6 Cu - Pb - Al 10.2 12 Cu - Pb - 3.18 4.38 5.98 5.51 8.34 11.8 11.4 19.8 30.2 13.4 24.0 37.5 4.06 2.48 1.68 1.26 3.88 5.68 7.90 2.90 5.02 7.79 9.85 16.9 26.2 考察 dFの値は、Alのみ認められた。 CuとPbが遮蔽体として使用できる。 PMMAが5 mmでは後方散乱がPMMA厚を超 える場合があったが、10 mmではPMMA厚を 超えるものはなかった。 BSDの最大値は、Pbが最も大きく、Alが最も 小さかった。 PMMAは5 mmより厚く、10 mmより薄いものが良い。 Pbはプレートが厚くなるため好ましくない。 シミュレーション2 12 MeVにおいて、金属厚は6 mmのまま でPMMA厚を6、7、8 mmとして計算 金属にはCuを使用 最適なPMMA厚を検討 結果 (Back Scatter Dose) 25 6 mm PMMA 20 PDD [%] 7 mm PMMA 15 8 mm PMMA 10 5 0 0 0.2 0.4 0.6 0.8 1 Distance from metal surface [cm] 1.2 1.4 1.6 検討 Thickness of PMMA [mm] 6.0 7.0 8.0 dB [mm] 7.7 7.0 6.6 7 mmのとき最大飛程とPMMA厚が一致 安全側で、7.5 mm程度が適切である シミュレーション3 12 MeVにおいて、 PMMA厚を7 mmとして Cu厚を1、2、3 mmにして計算 前方への透過線量がなくなる限界の厚さを検討 結果(前方透過線量) 25 1 mm Cu 20 PDD [%] 2 mm Cu 15 3 mm Cu 10 5 0 0 0.1 0.2 0.3 0.4 0.5 0.6 0.7 0.8 0.9 1 Distance from metal surface [cm] 1.1 1.2 1.3 1.4 1.5 検討 Thickness of Cu [mm] 1.0 2.0 3.0 dF [mm] 14.1 5.7 - PDD at 0.5 mm [%] 21.8 2.9 0.69 3 mmではdFが認められない 2.5 mm強が限界 安全側で、3 mm程度が適切である 結語 最も適した遮蔽体は銅であった。 12 MeVでの電子線からの後方散乱は7 mm のPMMAで吸収できる。 12 MeVでの電子線を遮蔽できる銅の限界の 厚さは2.5 mm強であると推測された。 今後の課題 複数の金属を組み合わせて、プレートを薄 くすることを試みる。 照射ヘッドを再現して再計算する。 試作品を作成し実測を行い、計算結果と 比較する。
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