Probabilistic Method 第2回 2: Linearity of Expectation 2.1 Basics 確率変数 X1,…,Xn の線形結合 X = c1X1+…+cnXn の期待値は、 E[X] = c1E[X1]+…+cnE[Xn] で表される。 ★ X1,…,Xn が独立でなくても成り立つ 例. 置換の対角成分 {1,…,n} 上のランダムな置換 s において、 X(s) で恒等変換 (1 … n) と一致している個 数を表す(e.g. X(1 4 3 2 5) = 3)。 X の期待値を求めたい。 X を分解すると X = X1+…+Xn ここで s(i) = i ならば Xi = 1、それ以外 0 と する。 例. 置換の対角成分 明らかに E[Xi] = Pr[s(i) = i ] = 1/n よって E[X] = 1/n+…+1/n = 1 実際の応用では、確率空間に X ≦ E[X] と なる X と X ≧ E[X] となる X の両方が必ず 存在することを利用する。 定理2.1.1 n!2-(n-1) 個のハミルトン路を持つ n 人のトー ナメントが存在する。 ハミルトン路の例 n 1 2 3 4 5 6 n!2-(n-1) 1.0 1.0 1.5 3.0 7.5 22.5 定理2.1.1 証明: ランダムなトーナメント T に含まれるハミル トン路の数を X とおく。{1,…,n} 上の置換 s でトーナメント上の路を表す。 X = S Xs ここで、路 s が T に含まれるとき Xs = 1、 それ以外 0 とする。 定理2.1.1 路 s が T に含まれる確率は、n-1 本の枝が すべて前向きである確率なので E[Xs ] = Pr[Xs ] = 2-(n-1) {1,…,n} 上の置換は全部で n! 個あるから E[X] = S E[Xs ] = n!2-(n-1) ■ 2.2 Splitting Graphs 定理 2.2.1 定理 2.2.2 定理 2.2.3 補題 2.2.4 定理2.2.1 n 頂点、e 枝のグラフ G = (V,E) は、最低 e/2 枝からなる部分二部グラフを持つ。 証明: T⊆V を Pr[x∈T] = 1/2 でランダムに選ぶ。B = V-T とする。枝 {x,y} の x,y いずれか1個 だけが T に含まれるとき、この枝は交差し ているという。 定理2.2.1 X で交差している枝の本数を表す。即ち X X x , y E xy ここで、枝 {x,y} が交差していれば Xxy = 1、 それ以外 0 とする。明らかに E[Xxy] = Pr[{x,y}:交差] = 1/2 定理2.2.1 よって、 EX EX x , y E xy e 2 どんなグラフに対しても、X ≧ e/2 となる T の選び方が存在する。交差した枝から部分 二部グラフが構成できる。 ■ 定理2.2.2 グラフ G が e 枝、2n 頂点からなるとき、最 低 2nen 1 枝の部分二部グラフを持つ。G が 2n+1 頂点からなるとき、最低 e 2nn11 枝の 部分二部グラフを持つ。 定理2.2.2 証明: G が 2n 頂点からなるとき、V の部分集合で サイズ n のものからランダムにひとつ選ん で T とする。このとき、 n n n n n Prx, y: 交差 2n 2n 1 2 n 2n 1 2 n 1 より、 en 2n 1 枝の部分二部グラフが存在。 定理2.2.2 G が 2n+1 頂点からなるときも同様に、V の 部分集合でサイズ n のものからランダムに ひとつ選んで T とする。このとき、 n n 1 n 1 n n 1 Prx, y: 交差 2 n 1 2 n 2n 1 2n 2 n 1 より、 e 2nn11 枝の部分二部グラフが存在。 ■ より複雑な例 定義 V = V1∪…∪Vk (Vi:互いに素,|Vi| = n) k-set … 枝みたいなもの h:[V]k → {-1,+1} … k-set の 2 彩色 k-set E がある Vi から高々 1 個の要素しか 含まないとき、E は交差しているという。 ある S⊆V に対し、 hS hE ES E:k set 定理2.2.3 k-set E が交差していれば h(E) = +1 である とする。このときある S⊆V が存在して、 |h(S)| ≧ cknk が成り立つ。ck は n と無関係な定数。 補題2.2.4 次数 k、各項の係数が絶対値 1 以下の同 次多項式 f (p1,…,pk) で、p1p2…pk 項の係数 が 1 であるものからなる集合 Pk を考える。 すべての f∈Pk について |f (p1,…,pk)| ≧ ck を満たす p1,…,pk∈[0,1] が存在する。ただし ck は f と無関係な定数。 補題2.2.4 証明: Mf max p1 ,, pk 0,1 f p1 ,, pk とおく。f∈Pk について、f は零多項式ではな いから M(f) > 0 である。Pk はコンパクトであ り M:Pk → R は連続なので、M の最小値は ck である。 ■ 定理2.2.3 証明: ランダムな S⊆V を次のようにして構成する。 Pr[x∈S] = pi, x Vi X = h(S) とし、各 k-set E について とする。 hE if E S , XE otherwise. 0 定理2.2.3 証明: k-set E が 1 ≦ i ≦ k について |E∩Vi| = ai の とき、E はタイプ (a1,…,ak) であるという。各 E について、 a1 ak EX E hE PrE S hE p1 pk である。タイプごとにまとめると、 EX a1 ak k a1 p1 pk ak h E E:type a1 ,, ak 定理2.2.3 仮定より、a1 = … = ak = 1 ならば h(E) = 1 であり、|Vi| = n かつ Vi は互いに素だから、 k h E n E:type1,,1 他のどんなタイプ の k-set の数もそれぞれ nk より少ない。タイプをひとつ固定すると、 hE n E:type a1 ,, ak k 定理2.2.3 よって、X の期待値は補題 2.2.4 で定義し た f∈Pk を用いて以下のように表せる。 E[X] = nkf (p1,…,pk) p1,…,pk∈[0,1] は |f (p1,…,pn)| ≧ ck とでき、 E[|X|] ≧ E[X] ≧ cknk 従って、ある S⊆V について、 |X| = |h(S)| ≧ cknk ■
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