授業改善への提言 - 情報科学研究科

授業参観報告 と 授業改善提言
奈良先端科学技術大学院大学 情報科学研究科
ファカルティディベロプメント 研修会/シンポジウム
平成18年3月14日
平成19年1月18日
この資料は上記2回の講演におけるスライドを一つに編集し、
一部加筆したものです
奈良先端科学技術大学院大学 授業評価担当
情報科学研究科 学外FD委員
谷口 健一
本学における私の役目
情報科学研究科の教員授業評価・授業改善
授業参観は 平成16年度 第III期から
教員授業評価
検討中
ファカルティディベロプメント(FD)
学内FD研修会での講演など(16年度から)
平成18年度第II学期から、参観授業について、主に助教授の
先生方と面談
今年度、主にM2対象に(FDも兼ねて)、論文の書き方、研究
発表の仕方について講演
2
授業参観の報告
- 講義の様子および全体的印象について -
3
授業参観のコマ数
(18年度は2007年1月末日までの分を含む)
17 18年度
17 18年度
情報理論I
2
3
音情報処理論I
4
3
情報理論II
1
1
音情報処理論II
2
2
計算理論I
2
1
人工知能基礎論
2
1
計算理論II
1
1
人工知能論I
1
1
ハードウェア設計論I
2
1
人工知能論II
1
1
ハードウェア設計論II
1
1
計算言語学
2
1
ソフトウェア基礎論I
1
1
ソフトウェアシステム論
1
0
ソフトウェア基礎論II
1
1
ソフトウェア工学I
2
1
計算モデル論
1
1
ソフトウェア工学II
2
1
計測情報処理I
2
1
ソフトウェア工学III
-
1
計測情報処理II
2
1
データ工学I
2
1
データ工学II
2
2
4
17 18年度
17 18年度
高機能計算機アーキテ
クチャ
-
1
ヒューマンインターフェー
ス論
2
1
情報ネットワーク論I
3
2
計算神経科学
3
2
情報ネットワーク論II
2
4
バイオインフォマティクスI
0
0
情報通信システム論I
2
1
バイオインフォマティクスII
0
0
情報通信システム論II
3
0
構造機能ゲノム学
0
1
システム工学I
2
1
比較ゲノム学
1
0
システム工学II
1
1
論理生命学
0
1
システム制御I
2
1
生命機能計測学
3
1
システム制御II
3
1
情報生命学I
0
0
画像情報処理論
1
1
情報生命学II
0
0
ロボティクスI
1
1
情報生命科学特別講義
0
0
ロボティクスII
2
1
5
アルゴリズム概論
17 18年度
2 2
基礎数学I
17 18年度
1 0
計算機構造概論
1
1
基礎数学II
1
0
システムプログラム概論
2
2
数理科学概論I
0
1
情報科学概論I
0
0
数理科学概論II
0
1
情報科学概論II
0
0
英語コミュニケーション法
3
1
バイオサイエンス概論I
0
0
英語プレゼンテーション法
0
0
バイオサイエンス概論II
0
0
英語ライティング法
1
0
実習、演習等
0
0
科学英語上級
0
0
先端領域特論 群
2
5
学際領域特論 群
0
0
情報倫理
0
2
ゼミナールI
0
1
生命/科学倫理
0
0
ゼミナールII
2
4
環境と情報
0
0
修論発表
2
公聴会
0
1
6
講義方法
- ほとんどの科目は 自作pptファイルをプロジェクタで提示
(黒板(ホワイトボード)のみ使用の授業もあるが)
随時、黒板(ホワイトボード)を使う科目あり
- いくつかの科目で、学生の文献調査報告、ツール使用実習
報告もあり
- いくつかの科目で、演習やその解説もあり
- ときたま助手の先生の代理講義あり
7
講義内容
カリキュラム・シラバスに沿った適切な内容であると思われるが、
扱う範囲、詳しさ等の適/不適の判断は私には無理(専門に依存)
盛りたくさん 網羅的 学会の解説講演風 という印象
聞き流されているのではと思う
どこが大事か、なぜかの説明が少ない
8
提示するpptファイル
内容は豊富であるが、
アニメーションを使って順次表示とかは少ない
論旨の流れ、主張点等がほとんど書かれていない
講義時の資料としての役目のみ(テキストには不向き)
表記でまずい点として
ページ番号無しが多い
不適切な階層段付け表記が見かけられる
9
テキスト
ほとんど、講義時に提示するpptファイルのコピー
学生が事前に印刷して持参する という方式が多い
(しかし、これは予習・復習には不向き)
なかには、それに加え、文書での資料も
10
授業時の雰囲気について
活気がない(学生を引き込む迫力に欠ける、学生との対話がない)
先生は準備した教材で熱心に説明されているが
- 講義・説明の調子が単調(解説講演調) など
pptファイル提示の講義は単調になりがち
先生は固定したパソコン近くの位置にいることが多い
アニメーションもない場合はとくに
- 学生は乗ってきていない
ノートを取る(メモを書き込む)のは皆無に近い
尋ねても反応はない
L1教室で後ろから座る
遅刻が多い
居眠りやパソコン使用も
11
遅刻の状況(17年度第II期、第III期の授業例)
[数字(人数)はその授業の開始時と終了時の着席学生数]
1時限目の授業
2,3時限目の授業
開始時
終了時
人
人
→ 75
* 55
開始時
終了時
人
人
* 33 → 40
23
13
12
→
→
→
35
16
19
38
19
10
→
→
→
46
25
13
12
* 15
11
→
→
→
41(15分後は32人)
25
13
15
6
8
→
→
→
22
11
10
14
15
5
→
→
→
21
27
12
*印は学期1回目の授業
[観察によれば18年度は17年度に比べ少なくなっている]
12
居眠りの状況(17年度第II期、第III期の授業例)
1時限目の授業
35 人中
約70
7 人居眠り
13
2,3時限目の授業
14 人中
約70
3 人居眠り
10
16
3
14
4
19
4
41
13
27
14
4
4
22
46
40
0
6
5
12
13
3
3
約50
25
11
18
2
2
10
3
受講意思のない学生が含まれるかもしれない学期1回目の授業は除いている
13
持参ノートパソコンの授業に関係ない使用
パソコン使用はゼミナール、特論、ビデオ講義では特に多い
1/3くらいの学生がそうしていることも
しかも授業の最初から最後まで
[出席点を与える授業では問題]
14
授業の進め方・運用
(宿題、演習、試験、成績、学生発表の取り入れなど)
科目によりいろいろ
15
授業改善への提言
各授業科目で評価検討すべき項目は
- 講義内容(扱うテーマ・詳しさなど)
- 教授技術(話し方、教材の見せ方など)
- 教材(テキスト、提示教材など)
- 運用(演習、宿題、成績評価など)
提言ではそれぞれについて次の観点で:
大学教育で一般的なことも(今どきの学生向けに)
大学院学生向けに(特に奈良先端大向けに)
16
講義内容について
網羅的に多くの知識・技術を(技術事典式に)教えようとする傾向が見受けられるが、
教育効果上、必ずしも良いとはいえない
- なぜその話題を取りあげるかを説明する
- 考え方を教える
研究開発を進めてきた経験を通し、その魅力を
(問題に遭遇したときにどのように解決していくか 疑似体験)
- 技術の出現・発展の理由や必然性を説明する
- 概念を整理する
本来の機能(アイデアとか抽象的手順)と実装は区別して
個々の技術や具体例の位置づけを明確に
- 具体例(使用例)で基本アイデア/機能を理解させる
17
教授技術について
(1)授業では 先生と受講学生との一体感 が必要
学生さんは大事な「うちの子」という感じで
講義は、学会の解説講演と違う
- 語りかける
こうでしょ こうなるでしょ
- 念を押す
分った?
- 問いかける
どうなると思う? どっちがよい? どんな例がある?
- 質問させる
(質問はないですか?で普通は出ないので、『じゃ、こんな
ことは知りたい/もっと聞きたいですか?』と仕向ける)
学生を教壇の近くに座らせる
18
(2)講義時の情熱・迫力 が必要
先生の情熱を示すこと
学生を引き込むこと
- 動く
- 手振り身振り
- 声の調子
19
(3)説明の工夫
アイデアを トップダウンに、例で直感的に分かるように
アルゴリズムの説明には特に重要
教材を準備するときに説明の仕方などを十分検討し、
それに沿ったスライドも用意する
20
(4)pptスライド
常に注視したくなるように
説明に沿って
アニメーションで順次表示する
詳細部は挿入する形で
とか
記述内容の論理的・構造的な表示の工夫を
テキストと兼ねる場合は、できるだけ、論旨の流れや言いたい結論も
記述する
21
これはまずいぞ
『えーっと? どうだったかな』
『あ、アニメーションになってたんや』
『あ、つぎにあったんか』
資料が完全に昨年と同じ
[準備不足がまる分かりです]
しかもそれが学生に分かる
先生の遅刻
[以上のことは、先生に熱意がないと学生に思われます]
講義が、発表の仕方やスライドの悪い見本
22
教材について
(1)提示pptスライドの内容
本来は、一連の話の各時点で、要約、データ、話の流れなどを目で見せて
理解を助けるもの(話し(シナリオ)が主、表示物は従)
論理の流れも書いておいた方が聞いていても話が理解しやすい。
説明用資料やデータという意味なら、論理の流れや全体での位置づけは
書かれてなくてもよいが、そのコピーは予習復習には役立たない。
初めて見て理解できない
学生はメモ/ノートを取らない 忘れる ので
23
(2)テキスト
原則は、予習・復習に役立つものであるべき
ほとんど作成配布されていないが、あった方がよい。
提示pptファイル(多くの場合はそのpdfファイル)が資料として
提供されているが、予習復習向きのテキストとしては多くの場合、不適
論理の流れの記述が省略されている
データや動画には主張したいことが書かれていない
アニメーションで重なりがあればpdfでは見えない
pdfでは動画が見えない など
24
運用について
複数教員による担当に関して:
複数教員での担当の本来の目的は
教育効果を上げるため、学生のため
しかし、先生の都合で飛び飛びになって
内容の順が不適切になっているのも見受けられる。
できるだけ、学生が理解しやすいように。
出席表の活用を
反応や理解度のチェックなどにも
25
1コマ90分 18万円
「先生。私たち学生は、先生のこの講義で、1コマにつき18万円
払っているのです。よく考えられた魅力的な授業をお願いします」
年間授業料535,800円×約130人×2学年÷約50科目 = 約280万円/科目
約280万÷15コマ=約18万円/コマ
約280万円/科目は 給料3,4ヶ月分?
「3ヶ月間は勤務時間のせめて半分を授業のために」
というのはどうでしょうか
26
面談で申し上げた事項の例
平成18年度第II学期から参観した授業について主に助教授の先生方と面談
2007年1月17日まで15人の先生方と授業当日に15~30分の面談
授業で説明された内容やスライドなどに直接言及しつつ申し上げましたが、
多かった事項は、まとめると、
どんな意図で、何を、どんな風に 教えるかを
十分に考え設計し準備してほしい
27
どんな意図で何を
- その話題を取り上げた理由を説明すること
話題は大きいテーマから小さい項目まであるが
基本技術として知っておく必要があるから
将来こう役立つから
あとの授業でこう使われる
とか
- 何を伝えたいのかも説明すること
ユーザ向けのノウハウか
設計者研究者向けの技術か など
それによって教え方や説明する内容も違うはず
28
どんな風に
- 説明の筋道を構造的・論理的に
いきなり、実装レベルの説明をするので分かりにくい
ネットワークの分散制御、アルゴリズムとかで
教科書や論文ではそういう記述が多いが、
スライドも使った口頭での説明ではいろいろ工夫できる
- スライドの改善を
論理的な構造での表示 など
研究発表指導で多分学生に言っていることを自身でも実行して頂きたい
学生へのよい見本となるように
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学生を引き込む工夫を
一本調子でなく
ちょっと問いかけを
身近な具体例を
具体イメージが湧くように
このことは君らに大事だから教えておくぞという調子で
講演調では乗ってこない。『つぎに・・・をご紹介します』、『ご説明します』などと言わないこと
30
ゼミナール・修論発表会・公聴会
について
31
ゼミナールについて
- 発表学生の所属研究室では、その具体例を通し学内ゼミナールにおける
発表の仕方、応答の仕方を教え、発表練習を積んでおくこと
(必要な技術である 少ない機会を利用すべき 教育の義務がある)
学会や学内ゼミナールなどでの発表の仕方の一般的教育は全体でも必要
- 司会教員は、発表および質疑の教育の場であるということを肝に銘じ、
理解を助ける質問をすること
発表の悪いところを指摘し、改善方向を教授すること
出席学生からの質問が出やすいよう運営にすること
発表学生への「ありがとうございました」という礼や質疑への礼は言わない
- M2以上の発表の場合、研究の本質をついた議論も望ましい
副指導教員との議論では専門的事項のみにならないように
- 教育効果上、緊張感も必要
発表学生に対しても 聴講学生に対しても
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修士論文発表会について
- 現状は、副指導教員を加えた研究室内の発表会のような印象
関連する(副指導教員が出ている)研究室と発表学生を
混在させ、活性化できないか
- 研究室で、論文の書き方および発表の仕方について十分指導をする。
- 発表および質疑の教育の場であるので(もちろん審査も兼ねているが)、
発表学生への礼や質疑応答の礼は言わない
教育効果上、緊張感も必要
- 研究の本質をついた議論も望ましい。
論文の書き方、発表の仕方 まずいのも・・・
研究室での指導に問題があると思われる
33
博士論文公聴会について
- webページの公聴会案内の内容梗概は、公聴会の目的にあったものを、日
本語で書かせる。研究室で指導すること。
行ったこと、得られた成果、新規性、有効性など、学位論文として
価値がある という主張点を明確に
- 配布資料はあった方がよいのでは
既発表論文とか、研究の内容、新規性、成果などのまとめ
- 事前に研究室の指導教授/助教授の指導のもと、発表練習をしておくこと
博士論文であるので、新規性、成果、達成度など、良さが分かるように
34
現状は本来の公聴会になっていないのでは
教員は所属研究室教員と副査予定の先生だけ?
学生は研究室の関係の者だけ?
[研究室の教員がその場で、こんなまとめ方をするべきとか、
この点を論じなければだめだとか指導している。こんな大事
なことは十分前もって指導しておくべき]
公聴会は、年度初めに実施日を決めておいて、集中的に、全員参加
という形で行うのはどうか
大学(研究科)や博士課程学生にとって、重要な行事であるから
35
発表の仕方、論文の書き方について
平成18年度にゼミナールIIの授業で、主として、M2向けに私が講義
発表の仕方
2006/ 7/ 28
論文の書き方
2006/ 12/ 4
それぞれ、テキストを配布
情報科学向けのノウハウやチェック項目を記載
学生のみならず指導者にも利用していただきたい
授業にも役立つと思います
36
研究科の教育システムについて
カリキュラム
履修指導
情報提供
授業
改善への努力(アンケート、FD、検討)
ここでは、限定的に、履修指導と情報提供の一部について
37
履修指導
高度技術者の養成という観点からは
コース・専門分野(5つの関連分野に分類)に沿った科目を統一的に
履修させることが大事
そうでないとその分野の実力が身につかない
学生は単位数のみで選び勝ちであるので研究室での強力な指導が必要
履修上の問題点として
学生の出身分野
入学時期
将来、研究者を目指す学生には、それに適した履修指導も必要
38
学生への情報提供
ほとんど電子化され、充実してはいるが
教材提供場所の不統一
/mandara/lecture内とか教員のwebページとか混在
/mandara/lecture内のディレクトリを見つけにくいことも
1回目授業時に非公開ディレクトリ名を伝える場合も
(ときどき参観する私には探しにくい)
/mandara/lecture内の教員ごとのディレクトリ名の付け方は統一した方がよい
使われていないのは別サブディレクトリにまとめるとかの整理をした方がよい
39
教材提供システムの再構築の必要性
教員にも便利
学生にも有効
シラバス等も含め
[18年度、新システムを作成中であるとのことであるが]
40
学生のしつけ(遅刻、パソコン使用などをなくす)
対話を交えた講義スタイル
などのためには
はじめが肝心
みんなでやることが重要
それにより、
奈良先での授業のよい習慣をつくってほしい
41
おわりに:
本学で、よい授業、よい教育研究を行って、卒業生に、将来、
「奈良先で受けた教育のおかげです」
「奈良先で受けた研究指導のおかげです」
と言ってもらえるようになって頂きたい。
そのためのお役に立てればと思っています。
42