消費者 - JAIST 北陸先端科学技術大学院大学

2008.10.16
ゼミ発表
消費者のふるまいに着目した
陳列デザインに関する研究
A Study of Design Display
Focusing on the Consumer Behavior
北陸先端科学技術大学院大学
知識科学研究科
永井研究室
s0750049
宮崎隆紀
はじめに
デザインを考える上で,人とモノとの関係が重視されている.その中
で注目されているのがふるまいの理解である.

(例)水道の蛇口から水を出すふるまい→蛇口型音楽プレイヤー
(寺沢・田浦・永井,2005)
…ふるまいを観察することで,デザイナーは優れたアイデアを生む.
ふるまいを観察し,
デザインを考える.
ふるまい
人
同様に売り場においても…

デザイナー
眼球運動や導線の行動量などを計測することで,消費者の関心度を分析し
て適切な商品の組み合わせを考えたり,ゴールデンゾーンの特定など配置
の傾向を明らかにしようとする試みが行われている.
陳列デザイン(売り場の商品配置を考える)上でも
消費者の「振る舞いの理解」が重要であると考える.
2
背景
実際の売り場では…
プライベート・ブランド
→小売店主体で企画開発する商品ブランド(例)トップバリュー
 「店舗内での観察は企画を行う上で重要な意味を持つ.」

(ビーロード,2007)

現場レベルで考えると,振る舞いは必ずしも活かされているわけではない
・当たり前の知識…「スルメはビールと一緒に売れることが多い」
・意外だが興味を引かない,あまり意味ない知識…「ビールは牛乳と一緒に売れることが意外
に多い」
・理由を知りたいが,背景の文脈がわからないので使えない知識…「ビールを野菜と一緒に買
う人は,魚も買うことが多い」

消費者の振る舞いと思考とを関連付けた研究を行うことで,背景
の文脈を理解し,現場レベルで活かすことができるのではないか.
3
背景
-探索-
本研究では,背景となる文脈を理解するには,消
費者が思考しやすい領域を扱うべきだという考え
のもと,探索という振る舞いに着目している.
探索:購買目的を明確にするために商品を探すこと
店に入る
店を出る
探索
・見渡す
・歩き回る
・立ち止まる
・商品を手に取る
購買目的が曖昧
など
購買目的が明確
売り場
4
背景

-探索-
探索の定義:

あらかじめ情報の在り処が明確である「検索」とは異なり,情報
の在り処を探し求め,未知の情報を発見する要素を含む活動.
(井上・小山内,2006)
探索

外部探索


内部探索

消費者

記憶以外の周囲の情報源を探索すること
消費者自身の経験や学習など記憶の中の情
報源を探索すること
(田中・清水,2006)
探索を思考レベルに落とし込んだデータを得るために,消費者の発
話をベースにした分析が可能ではないかと考える.
5
俯瞰化とイメージ化

まず,探索のパターンを特定するための実験を行った.発話によって
得られた結果から,外部探索や内部探索を通じて「欲しい商品を俯瞰
化して明確にしていく」「イメージ化して明確にしていく」のではな
いかということが確認された.
①スナック,クッキー,チョコ
レートが並んでいる陳列を見る.
②プリングルスのパ
ッケージに注目する.
③量が多くて高級そうな
もの探そうと思った.
購買関与が高まった?

商品や陳列を見て,欲しい・興味のある商品を明確にする→ 俯瞰化
①スナックのパッケージ
を見る
②ビールと一緒に食べた
くなる.
③ビールに合いそうなお
菓子を探そうと考える.
購買関与が高まった?

現在や買った時の状況をイメージすることで欲しい商品を明確にする.
→ イメージ化
6
俯瞰化とイメージ化

購買目的が明確になることは,購買関与が高まると考えられる
(青木,1988 )

関与とは:


関心の度合い
(例)ブランド・メーカー・機能等に詳しい・興味がある・情報を集めたいと思
っている消費者→高関与者

購買関与とは:


商品の購入をするという行為に関する関与の度合い.
俯瞰化,イメージ化といった探索パターンによって,そ
れぞれの商品を欲しいと思う度合いがどう変わるのか.
7
研究目的
消費者の「振る舞いの理解」として,探索と認知過程との関連付ける
方法を考える.
これにより
振る舞いの背景となる文脈を可視化するので,現場レベルで理由を知
りたい振る舞いの傾向を知ることができる.
探索パターンが購買関与にどう影響するのかを明らかにする.
これにより
俯瞰化やイメージ化しやすいデザインが分かれば,売り場の商品配置
を決める一つの指針となりうる.
8
実験概要

売店の業態や規模によって実験成果に大きな相違
が考えられるが,今回はコンビニのお菓子類を探
索するという場合を想定して実験を行う.

実験方法

振る舞いとその背後にある理由とを対応付けるため,
発話プロトコル法による実験と,発話を起点にした半
構造化インタビューを実施する.
9
実験の構成
教示
直 後
場所:研究室
・実験の概要を説明する.
・被験者に発話練習をさせる.
・場面想定のための教示を行う.
場所:コンビニエンスストア
・被験者の振る舞いを記録する.
実験
直 後
インタビュー
場所:研究室
・発話を起点に3段階で質問する.
・被験者の発話対象を選択形式で回答させる.
・その理由をインタビュー形式で質問する.
・前の発話と比較して被験者に評価させる.
・一連の被験者の発言を記録する.
10
実験方法

-教示-
手続き
1.実験の概要説明
・「本実験は人が物を考える時,何をどういった順番で考えるかを調べる
ためのものです」と告げる.
2.発話練習
・実験とは無関係な課題(一つ目は論理的な思考を要請する選択問題,二
つ目は論理的な思考と直感的な判断を要するクイズ形式の問題)を解く事
を求める.
・それぞれの課題達成に到るまでの過程において,頭に浮かんだ事を全て
声に出して発話することを要請する. ( ※ )
3.発話に関する補足説明
・頭に浮かんだ言語をそのまま発話する点や,同じ言葉を何度も発話して
よい点を強調しておく.
11
実験方法

-教示-
手続き
4.発話に関する確認
・課題を通じて,発話プロトコルについての誤った理解を被験者が持つと
見受けられた場合,発話が出来るようになるまで,実験者が繰り返し説明
する.
5.実験の説明
・「では今から実際にコンビニへ行き,商品購入を想定したタスク実験を
行います…」と説明する.
6.教示
・「今日は友達からパーティーに招待された.私は,友人にお菓子を買っ
てきてくれと頼まれているが,他のメンバーも同じようにお菓子を買うと
言っていた.そこで,とりあえず1個持っていけばいいだろうと考え,お店
の中で適当に選んで買おうと決めた.」
12
実験方法
-タスク-

概要

実験者は入店から店を出るま
で被験者を追跡し,ビデオカ
メラで撮影する.

機器

被験者の振る舞い記録用ビデ
オカメラ1台
コンビニエンスストアの見取り図
13
実験方法
-インタビュー-
 概要
・実験者と被験者が一緒にタスク時の映像を見ながら,発話を起点に3段
階で質問を行う.
 機器
・被験者の発言記録用ボイスレコーダー1台
・映像視聴用ノートパソコン 1台
PC
ボイスレコーダー
被験者
実験者
インタビュー時の配置図
 手続き
1.インタビューの説明
・「次に今行ったタスクの映像を視聴し,発話を起点にこちら側が質問し
ますので,お答え下さい…」と説明する.
14
実験方法

-インタビュー-
手続き
2.質問1(発話対象の選択)
・発話の起点毎に被験者の発話対象をあらかじめ用意した選択肢から最初
に選んでもらう.被験者に見せる選択肢の順番はバラバラにしておくが,
イメージ化と俯瞰化とそれ他の分類に分けておく.
Q.「あなたが発した言葉は次のうちどれに該当しますか」
●イメージ化
・過去の経験から思わず言葉が出た(記憶・経験)
・これまで自分が知っていたことが思わず言葉に出た(知識)
●俯瞰化の部類
・商品や値段といった周囲に書いてあった言葉が思わず出た(物体)
・暑い寒い周囲の状況によって思わず言葉が出た(環境)
●無関係の部類
・自分自身に問いかける言葉
・「えーと」と言った特に意味のない話し言葉
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実験方法

-インタビュー-
手続き
3.質問2(発話の理由)
・選択形式の質問でどれを選択するかによって質問文を使い分ける.
4.質問3(評価)
・発話時の購買関与度を知るため,前の発話との比較評価をしてもらう.
→個人が持つ評価基準は異なるので,比較による差で判断する.
Q.「前の発話時と比較して…」
●5段階評価
1.欲しい商品が明確になった
2.欲しい商品がやや明確になった
3.変わらない
4.欲しい商品がやや不明確になった
5.欲しい商品が不明確になった
16
コーディング

1.インタビューで録音された被験者の発言を全て
文章に書き起こす.

2.文章単位で俯瞰化・イメージ化を判別する基準
を設ける.(検討)
17
分析方法

質問2の発話の理由で得られた文脈のコーディング
の仕方が妥当かどうか,質問1と照らし合わせて検
証する.

質問1と質問3を比較することで,探索パターンと
購買関与の関係を明らかにする.インタビューで録
音された被験者の発言を全て文章に書き起こす.
18
今後の展望

今後は以下のスケジュールに沿って研究を進めていく.
日程
取組み内容
10月下旬
実験の実施
11月上旬
実験結果
11月下旬
分析結果
11月中
修士論文執筆開始
12月26日
全体の構成を作る

コーディングや分析方法を検討する(10月中)

より多くの実験データを得る.(目標10名)
19
おわり
◆参考文献

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
猪飼知宏,1998,「設計者の視点形成機構の研究」
清水聰,2004「消費者視点の小売戦略」,千倉書房
高原直子,2004,「消費者行動特性の解明と快適な消費者環境の提案」
寺沢秀雄・田浦俊春・永井由佳里,2005,「Found Behavior - 対話経験の
参照によるインタフェース発想」,日本デザイン学会研究発表大会概要集
井上順子・小山内靖美,2006,「「探す」ことのデザイン―情報探索のため
のインターフェースデザイン―」,日本デザイン学会研究発表大会概要集
蓮池公威・大山努・田丸恵理子・廣瀬吉嗣,2004,「人間の活動空間におけ
る視線情報を活用したインタラクション分析手法」,日本デザイン学会研究
発表大会概要集
田中洋・清水聡,2006「消費者・コミュニケーション戦略」,有斐閣
ビーロード,作り手の観点によるPBの捉え方に関する取材,2007年12月27日
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