思想と行為 第10回 ベンサムとミル 「功利主義、公共性、自由」 吉田寛 ミ ベ ベンサム 秀才、まじめ、 がんこ、意思、 偏屈、同情家、 孤独 1748年生 法律家の家庭 英才教育 5歳で「哲学者」と呼ばれる オクスフォード大(12歳-15歳) 法律家の道は挫折、法哲学者へ(30-40歳ごろ) 1776年『政府論断章』、89年『道徳および立法の原理序 論』出版→名声と社交生活の確保 40歳-60歳ごろならぬ恋→ロシアへ、生涯独身 1791-1802年パノプティコン(監獄)の設計 1808年ごろよりジェームズ・ミル(40歳)とその子J.S.ミル (7歳)と交友 1826年 市民の大学「ロンドン大学」設立に参加 1832年 没 解剖→ロンドン大へ J.S.ミル 天才、緻密、誠実、 知性、ロマンス、バラ ンス ベンサムの友人で功利主義者 活動的官僚の父 1806年生 英才教育+天才(IQ190?)11歳で ローマ政体史とアリストテレスに関する論文執筆 15歳 ベンサム主義『経済学要綱』(父と) 17歳 東インド会社就職(1863年まで) 1826年(20歳) 美や愛、信仰の尊重とベンサム流功利主 義への疑問 1830- テイラー婦人とのロマンス 51年(45歳)結婚 1837年『論理学体系』、1842年『経済学原理』など 1858年 婦人没 功利主義の改良と自由主義の完成へ 1859年(53歳)『自由論』 1863年『功利主義』 1865年 代議士 1867年セント=アンドリュース大学総長 1873年 没(65歳) 信 仰 ・ 教 会 ベンサム・ミルの時代 → 理 性 ・ 王 権 帝 国 主 義 と 福 祉 産 業 の 発 展 J.S. 市 場 と 自 由 主 義 議 会 と 市 民 の 台 頭 ベ ン 1633年 ガ裁判、41年 デ『省察』 サ 1640-60年 清教徒革命、 51年 ホ『リバイア ム サン』 1688年 名誉革命、87年ニュ『プリンキピア』、 89年 ロ『統治論』 1733年 ケイ「飛び緋」、65年 ワット蒸気機関 1776年 ベ『政府論断章』、81- カ『○○批判』 1775年 アメリカ独立戦争、89年 フランス革 命、ナポレオン 1815年 ウイーン会議 1832年 選挙法改正(民主化)、46年穀物 法廃止(自由化) 1859年 ミ『自由論』 1868年 日本明治維新 ミ ル ベンサムの「幸福」 人間=快と苦に支配されている存在 – 快苦は人のなすことの原因 人は快に従う(事実) – 科学としての人間科学 人は快に従うべき(価値) – 「善く生きる」に関わる倫理学 快=幸福=善を基本とした合理的(科学 的?)倫理学 快楽計算 2. 行為A→結果a、行為B→結果b 快楽計算 a>b 行為の倫理的判断 A(善)>B(悪) 計算の基準 1. – – – 快楽の強度、持続性、確実性、近接性(行為と 結果の時空的な近さ) 豊富さ(プラスの相乗効果)、純粋さ(マイナス の効果、副作用がないこと) 範囲(快苦を感じる人の数)→次項へ 「最大多数の最大幸福」 快楽計算は範囲を考慮する – 社会の総ての人について、 (快の合計)-(苦の合計)を計算 – a = (a1+ + a2+ + a3+ +・・)-( a1- + a2- + a3- +・・ ) – b = (b1+ + b2+ + b3+ +・・)-( b1- + b2- + b3- +・・ ) – a > b なら A > B 快楽計算によって、最大多数の最大幸福を 実現するのが善い選択 – 個人の行為選択、立法や政策の判断の基準 – 国民による多数決(議会など)を正当化 ベンサムの功利主義 特徴 – 人間理性による判断(計算)が道徳を実現する – 幸福の定量化 快苦を基本とする生物としての 人間 道徳の科学化(≠カント、ウィトゲンシュタイ ン) – アトミズム 社会とは個々の人間の集合でしかな い(個人主義>公共、コミュニティ) – 善悪を社会全体と相対的に判断(穏やかな普遍 主義? 相対主義?) – 快苦や幸福を善とする(≠カント) ベンサムへの批判 カント主義(義務論) – 道徳は普遍的→欲望や感情での行為は× 結果主義 – どんな行為でも結果が善かったらそれでOK? • 「うそも方便」「わいろも効果しだいでOK」 – たまたま結果が善くなれば行為も善くなる? • 人を殺した→たまたま悪人だった→よい行為だった? – ベ:結果そのものでなく、結果の見積もりが大切 情操や、質的な違いを無視している – 「満足なブタよりも、不満足なソクラテスでありたい」 (J.S.ミル) J.S.ミルの功利主義 ベンサムの功利主義の批判的発展 ベンサムの継承 – 最大多数の最大幸福が善である 批判「不満足なソクラテス」 – ただし、「幸福」な生(善く生きる)には、情操(愛 や美、崇高、利他的感情など)がポイント(T) – 快にも質の区別がある(生理的な快に対して、情 操的な快の区別) – 快楽計算は、質の高い快に重み付けして、最大 化をはかるべき。 公共性の重視 質の高い快として利他的な快を重視 – =公共の領域(他人に関わる領域)における功利 主義(質も考慮した快楽計算) – 選挙制度の改良(比例区、専門性に重み付け) – 教育(リテラシー)の必要 – 社会福祉、平等(女性、植民地)の重視(T) 他人に関する領域→まず公共性を優先 人に害を及ぼさないなら自由(危害原理) 自分自身にのみ関わる領域→自由を尊重(T) 自由の尊重 (功利計算外の)私的領域に関する自由の尊重(≒カ) – 思想と両親の自由 – 趣味と探求の自由 – 団結の自由 議会制民主主 義を支える 自由を侵害するもの – 社会の慣習や道徳法則(カント) – 不当な政治権力 公共・福祉/個人・自由のバランス – バランスのとれた社会、人間を善しとする 参考文献 『人と思想 ベンサム』、山田英世(著)、清水 書院。紹介本 『人と思想 J.S.ミル』、菊川忠夫(著)、清水書 院。紹介本 『公共性の哲学を学ぶ人のために』 安彦一 恵/谷本光男(編著)、世界思想社 – ミルの政治論に関する紹介、ほかロックやホッブ ス、カントらの政治的な思想の整理と紹介など 『世界の名著38 ベンサム J.S.ミル』関嘉彦 (編著)中央公論社(絶版)。ベ『原理序説』、ミ 『自由論』、ミ『功利主義』などの翻訳。 連絡など(もう一度) 日程:共通教育の日程は、12月18日、20日が年内 最終で、年始は1月15日、17日から、1月29日、31日 までだそうです。ただし、1月17日(水)の授業は休講 の予定です。 最終日1月29日、31日はレポート提出日にします。 一週間前にはレポートのテーマを出します。その場 で書ける内容にしますので、その場で書いても、授 業の最初に提出しても、どちらでもかまいません。 (の、予定です) – 2月15日が早い人の成績締め切りなので、早めに提出し てもらって、急いで成績つけに入るつもりです。
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