卒業論文構想 ~随伴性の設定が食物嗜好に 及ぼす影響について~ 心理学演習 KO 木村貴一 発表日:2008年 5月9日 問題意識 • 味嗅覚に関連した心理学的研究は少なく、特 に日本ではなされてこなかった(坂井2005)。 • しかし、食品の美味しさは食物自体の物質特 性のみではなく、文脈的、環境的要因によっ て大きく左右される筈である。 • 人間と環境との相互作用を分析する行動分 析学の立場からも、美嗅覚研究について一 定の貢献が可能なのではないか。 卒論計画 • 行動分析学の観点から味嗅覚を扱った研究 はほとんどない。 • ほとんど唯一の研究として、望月(1998)が 知的に傷害のある対象者に対して、刺激等 価性理論を用いた味名学習を紹介している。 →「言語行動(タクト)」としての味覚。 先行研究 • 鳥居(2007)はプリマックの原理を応用し、ア イスクリームの味覚評定についての研究を 行っている。 • ここでは「バニラアイスクリームを4個食べた 後でチョコレートアイスを1個食べてください」 といった随伴関係を(仮想摂食場面で)設定 することにより、制限されたアイスへの魅力 (おいしさ)が向上することを示している。 先行研究の意義 • 随伴関係の設定によって、制限された行動 (食品)の魅力が高まるという可能性を示した 点。 • これまでは随伴関係の設定による、随伴反応 の好ましさについて検討されてこなかった。 • 随伴関係の設定=与えられるのではなく自ら ゲットするという環境を設定するということ。 先行研究の意義2 • 純粋な「言語行動」として味覚を扱い、行動随 伴性の設定によって味覚に変化が起こるとい う、心理学的な現象を示唆した点。 • 行動分析学の枠組みから考えられる味覚研 究として、意義があると考えられる。 鳥井(2007)についての疑問 • 味覚評定は仮想摂食(言語行動)によるもの であり、実際の食品選択時に、同様の結果が 得られるか不明。 • 希少性や感性満腹感といった要因が、どの 程度評定に影響を与えているのかについて も不明。(随伴性だけの効果ではない) • 今のところ「随伴性」「希少性」「完成満腹感」 それぞれが入り混じっている。 目的 • 鳥井(2007)の追試として、行動的な従属変 数を採用し、本当に随伴反応の魅力が上昇 しているのかを行動的に検討することを目的 とする。 • あわせて、複数のアイスクリームを用いること により「感性満腹感」および「希少性」を統制し、 随伴性の効果を確認する。 方法 • 被験者 R大学生24名程度 • 実験デザイン 群間比較 方法 • 提示刺激(言語刺激) アイス4種(バニラ・イチゴ・チョコ・抹茶) • 摂食条件 ① 随伴摂食条件:8名 ② 非随伴異種摂食条件:8名 ③ 非随伴同種摂食条件:8名 独立変数 • 「非随伴同種摂食条件」 →同種のアイスクリームが置いてあると想定し、そ のうちの一方を指定して仮想摂取させる。 • 「非随伴異種摂食条件」 →4種類のアイスクリームが置いてあると想定し、 そのうちの1個を指定して仮想摂取させる。 • 「随伴異種摂食条件」 →机の上に複数のアイスが置かれていると想定し、 「他のアイスを全部食べたら、ある種のアイスを食べ てよい」と教示する。 各条件の比較 随伴性 希少性 感性満腹感 鳥井(2007)の随伴摂食条件 ○ ○ ○ 随伴多種摂食条件 ○ × × 非随伴異種摂食条件 × ○ × 非随伴同種摂食条件 × × × 従属変数 • 鳥井(2007)で用いた「好み」「魅力度」「美味 しさ」「値段」の質問紙による9段階評定に加 え、仮想選択項目を挿入する。 • 仮想選択項目 「もしも今、アイスを実際に食べられるとしたら、 どのアイスを選択しますか?」 質問項目例(随伴摂食条件) • 「抹茶以外の3種類をひとつずつ食べてくださ い。そして最後に抹茶を食べて、その抹茶ア イスの味を評定してください。」 • 「バニラ以外の3種類をひとつずつ食べてくだ さい。そして最後にバニラを食べて、そのバニ ラアイスの味を評定してください。」 仮想データ 好ましさ評定 9 8 7 おいしさ 6 5 4 3 2 1 0 随伴摂食 非随伴異種摂食 図1 おいしさの評定 非随伴同種摂食 仮想データ 0.8 0.7 0.6 0.5 0.4 0.3 0.2 0.1 0 随伴摂食 非随伴異種摂食 図3 随伴関係の有無と選択率 非随伴同種摂食 現状の課題 • 随伴性・完成満腹感・希少性それぞれの効果につ いて独立に調べるような実験を行いたい。 • 鳥井(2007)同様、2個群と4個群を設けるか?⇒ 希少性を変数に加える? • 随伴性のみを見る場合、非随伴異種摂食条件は不 必要か。 • 5月中に予備実験(追試)を行い、データの分析を行 うこと。 参考文献 • 鳥居,千里(2007)人の行動に影響を与えるプリマックの原理に関する実験 立命館大学卒業論文集. • 今関,仁智; 小野,浩一 (2007) 多肢選択肢の提示法が選択行動に及ぼす 効果 (ポスター発表1). 日本行動分析学会年次大会プログラム・発表 論文集(25),26. • 坂井信之; Bell,Graham Anthony 2005 食・文・化・論アーティスト 見 ることと味わうこと 食品・食品添加物研究誌 210(1),65~74. • 渡部,真理; Poulson,Clair L.; Sturmey,Peter (2002) 自閉症成人に 選択肢を与え、好まれないタスクにおける作業を促す. 日本行動分析学 会年次大会プログラム・発表論文集 (20). • 平岡,恭一 (2001)強化と選択行動理論.日本行動分析学会年次大会プロ グラム・発表論文集 (19),24-25. 参考文献 • 村中,智彦; 藤原,義博 (2001) 知的障害児における課題の選択が課題従 車行動に及ぼす効果 : 課題に対する好みのレベルからの検討.日本行 動分析学会年次大会プログラム・発表論文集 (19),126-127. • 望月昭 1998-1999 講座コミュニケーション指導・再考(10回連載).月刊 実践障害児教育. • 平岡,恭一 (1997) 選択行動の巨視的理論と微視的理論(<特集>選択行 動研究 の現在). 行動分析学研究 11(1-2),109-129. • 綾部,早穂; 菊地,正; 斉藤,幸子 (1995) 熟知しているニオイの再認記憶 に及ぼす言語的符号化の影響.日本味と匂学会誌 2(3),263264,1995 • Premack,D.(1965). Reinforcement theory. In D.Levin(Ed.), Nebraska Symposium of Motivation, Lincoln:University of Nebraska. pp.123-128. 参考文献 • Leann Lipps Birch, Sheryl Itkin Zimmerman, and Honey Hind (1980) The Influence of Social-affective Context on the Formation of Children’s Food Preferences. Child Development, 51 856‐861. • Leann Lipps Birch (1984) Eating as the “means” activity in a contingency; Effects on young children’s food preference. Child Development, 55 431- 439.
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