中学部自閉症の生徒が 2枚の好きな遊びのカードから選択し, カードと対応する玩具と交換できるための 支援 板野支援学校 中学部 教諭 立和名 信行 指導目標 【長期目標】 ・複数のカードの中から,適切なカードを選ん で取り,教員に手渡すことで望みのアイテム を要求することができる。 【短期目標】 ・2枚の好きな遊びのカードから選択し,カー ドと対応する玩具と交換することができる。 【標的行動】 ・選択した遊びのカードと提示された玩具 を マッチングして,教員に要求する。 方法 【対象生徒】 ・生徒A(中学部2年生 男子)自閉症 ・PEP-R発達検査結果:1歳7ヶ月(平成21年1月) 太田のStage:StageⅠ-3(平成21年5月) 【指導場面】 ・休み時間 【般化場面】 ・指導者以外の大人にカードで望みの玩具を要求する 【教材】 ・コミュニケーション・ボード,写真カード,玩具( 歌の絵本,手作りおもちゃ) 実態 〈コミュニケーション面〉 ・簡単な声かけは理解できる。 ・教員に「ななに」などと声をかけてくる。 ・要求場面では「ある」「おい」という表出 と共 に,クレーンがほとんどであ る。 ・写真を介してやりとりができつつある。 〈休み時間の過ごし方〉 ・ひもなどを振る ・食べものが載った本や広告を見る ・歌の絵本を聴く 実態 その1~やりとり遊びの場面( 例) ・食べ物の本を見て,好きな食べものを指さ し,教員を呼ぶ。それに対して教員が「○○だ ね。はいどうぞ」と食べさせる真似をすると ,笑う。こうしたやりとりを何度か繰り返す 。 その2~スケジュール カード ・スケジュールにある買い物や散歩などの写真カー ドを見て,期待感を持つ姿や教員の手を引っ張り 一緒にカードを見ようと誘う姿が多く見られた。 【目標設定の理由】 ・ことばでのコミュニケーションが 難しい ・好きなカードを見 る ・写真を介してやりとりがで きる カードを使って,要求することができれば 自発的なコミュニケーションにつながる 【指導の流れ】 〈2学期まで〉 ・一番好きなアイテムである「ひも」の絵カー ドと実物の「ひも」を交換することができた ・離れた教員にカードを渡して交換することが できた 〈1月まで〉 ・一番好きな「ひも」と全く興味のない 「おもり」の写真カードから「ひも」の カードを教員に手渡し,「ひも」を要求 することができた 【指導の流れ】 〈2月〉 日常生活の観察から,「ひも」以外の興味がありそうな4つ の好子を加え,コミュニケーションブックに提示しておく。 5つのアイテムから,「ひも」は確実に選 ぶ ことができた。 「ひも」以外の4つのアイテムから さらに2つのアイテムに絞り込み,弁別する練習を行う 【指導の流れ】 好子アセスメント 観察から,「ひも」以外のアイテムの中から, 使う頻度高いアイテムを二つ選んだ。 【ベースラインの手続き】 1.2枚のカードを提示し,選択するように声 かけで促す。 2.選んだカードを渡すように,プロンプト を入れる。 3.二つの玩具の入ったかごを提示し,「ど うぞ」とだけ声をかける。手に取ったも のが渡してきたカードと異なっても,プ ロンプトを入れない(修正はしない)。 指導の手続き 1.2枚のカードを提示し,選択するように声 かけで促す。 2.選んだカードを渡すように,プロンプ トを入れる。 3.二つの玩具の入ったかごを提示し,「ど うぞ」とだけ声をかける。正解したら賞賛 する。 4.カードと対応していない玩具を手にし たら, 即座に修正し,再び1~3の手続きを行う。 【記録の方法】 正反応:プロンプトなしで,選択したカード と 対応した玩具を取ることができ る。 誤反応:プロンプトが必要である。 ×10 対応した玩具を取った回数 ・一日のうち,正反応の回数を記録し正反応率 カードを渡した回 0 を出す 数 正反応率(%)= 【達成基準】 5日間連続,正反応率が100% 【改善基準】 3日間連続,正反応率が20%以下 結果(1) BL 指導 図:カードに対応した玩具と交換できる正反 応率 結果(2) ・試行回数が増えると,誤反応も増えた。 ・指導を始めると,再び正反応率が上がった。 ・正反応率が下がったときは,不安定でカードあ るいは玩具を注視できていないときだった。 ・誤反応後は,カードと玩具の提示を対象生徒の 目線に合わせると正反応になることが多かった 。 考察 ・試行回数が増えると,誤反応も出ていたが, カードと玩具を対応させて交換できることを 学習しているため,指導を継続することが定 着につながると考えられる。 ・誤反応時には,カードや玩具の提示を生徒の 目線の高さに合わせると,正反応が引き出し やすかったため,注視する練習を行う必要で ある。 ・体調不良など不安定な時は,指導の効果が低 いため,安定しているときでの練習が必要で ある。 今後の課題 ・対象生徒とコミュニケーション・ボードの距 離を長くしていく。 ・より日常生活に近い場面設定での経験を積ん でいき,般化につなげていく。 ・カードの枚数を増やし,経験を積んでいく。 ・一日の試行回数を決め,データを取っていく 。
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