一次元ダクトの消音制御系における低コスト化

7.一次元ダクトの消音制御系における低コスト化
機械創造工学課程 00110289 石垣慎太郎
指導教官 小林泰秀助手・矢鍋重夫教授
1.はじめに
ANC(Active Noise Control)は大規模なビル、自動車、
ヘッドホン等に実用化されているが、DSPを用いており高
価であるため一般には広く普及していない。
case0)構造の制約なし(一般形)
case1)可制御正準形
n
1
case2)bidiagonal form
case3)bidiagonal formをブロック毎に可制御正準形
case1
case0
本研究ではより安価なマイコン(PIC)を用いる事で
ANC装置の低コスト化を図ることを目的としている。
※全て同じサイズのMatrix
A
n
** ・・・・・*
100・・・・0
010・・・・0
0010・・・0
B
000・・010
ディジタル補償器をPICに実装するための準備として、
まず、PCを用いた既存のANCシステムに制限を加えた
結果を報告する。
C
1
case2
PIC(16F877)の仕様
マイクロチップ社
動作速度:20MHz データメモリ:368Bytes
10bit、8chA/D変換器
8bitALU(加算器)×1個
2.既存ANCシステムに対する変更箇所
* *
* *
0
0
* *
* *
**・・・・・*
D
・・・ 0
・
・
・
0 ・・・
・
・
・
0
* *
* *
* * * * ・・・・ * *
0
case3
*
*
*
*
:
:
*
*
*
0
0
* *
1 0
*
・・・ 0
・
・
・
0 ・・・ 0
・
・
・
0
* *
1 0
* * * * ・・・・ * *
1
0
1
0
:
:
1
0
*
6.実験結果
制御なし
◎演算語長を短くする
(double型→float型)
◎補償器の計算量を減らす
・A/D,D/A変換の分解能を落とす
・補償器の低次元化
Tab.1 実験結果
制御あり
case
0
1
2
3
3.実験装置
演算語長
double float
○ ○
○ ×
○ ○
○ ○
(a)case0-double
108
計算量 ()内はn=20の場合
乗算回数
加算回数
(n+1)^2 (441) n(n+1) (420)
2n+1
(41) 2n
(40)
4n+1
(81) 3n
(60)
2n+1
(41) 2n
(40)
※nは次数
φ10
62
* *
1 0
1
0
0
0
:
0
―:case1-float
―:case0-double
―:case3-float
(b) case1-float
Fig.1 実験装置
4.補償器の設計
z
G
y
w
u
K
Fig.2 H∞制御問題
1. 周波数応答実験を行い、Gのノミナル
プラントを求める
(c) case3-float
Fig.3 エラーマイク出力信号(z)の時間応答
2. Gyuのモデル化誤差を加法的摂動
モデルで考慮
3. ロバストH∞性能問題(定数スケールドH∞制御問題)
を解いてK(s)を設計
4. サンプリング周期0.2msecで離散化(双一次変換)
x[k+1]=A x[k]+B y[k]
u[k]=C x[k]+D y[k]
・・・状態方程式
5.実験
Fig.4 制御入力(u)の時間応答
7.考察
1) case0-doubleとfloat全てを比較したところ、case1-float以外は同じだった。
2) case3-floatでは消音精度を劣化させず、計算量を低減できた。
8.まとめ
可制御正準形は計算量が少ないが、演算誤差が大きい。これに対して
bidiagonal formをブロック毎に正準形に変形したものは、計算量を増やす
ことなく演算誤差を小さくすることができる。
上のようにして求められた離散時間H∞補償器の状態空間実現に対して
相似変換を行い、以下の4つの場合について消音制御の実験を行う。
9.今後の課題
それぞれの場合において、演算語長はdoubleとfloatの2通りを考える。
n=10の補償器をPICに実装すると1ステップの演算(A/D変換含)に約4msec
必要であることを確認している。ANCの帯域を500Hzとするため、今後は補償
器の低次元化を行い、1msecに抑える。