10月2日 - 多々納研究室

- リスクとその管理 -
多々納 裕一
京都大学防災研究所社会システム研究分野
[email protected]
リスクマネジメント(10月7日講義)
Disaster Prevention Research
Institute Kyoto University
リスクマネジメント(10/7)
目次


リスクとその管理
 個人のリスク,企業のリスク
リスクマネジメントの目的は何か?
 リスクコストとは?
 企業価値の最大化とリスクコストの最小化
 社会的厚生とリスクマネジメント
 効率的なリスク水準とは?
Hirokazu Tatano
Disaster Prevention Research
Institute Kyoto University
リスクマネジメント(10/7)
リスクとは
損失の期待値と
期待値の変動性(分散)
純粋リスクと投機的リスク
Hirokazu Tatano
Disaster Prevention Research
Institute Kyoto University
リスクマネジメント(10/7)
リスクと不確実性の分類(ナイト,1921)
既知
結果のリスト
既知 結果の確率分布
RISK
リスク
未知
未知
IGNORANCE
無知
不確実性
UNCERTEINTY
Hirokazu Tatano
Disaster Prevention Research
Institute Kyoto University
リスクマネジメント(10/7)
企業のリスク
価格リスク
産出価格リスク
信用リスク
投入価格リスク
商品価格リスク
為替リスク
金利リスク
純粋リスク
資産損害
法的賠償責任
労働者障害
従業員福祉
Hirokazu Tatano
Disaster Prevention Research
Institute Kyoto University

価格リスク


産出価格と投入価格のリスク
信用リスク


リスクマネジメント(10/7)
顧客や貸出先の支払いが遅延,または不能に
なるリスク
純粋リスク


企業資産の価値減少リスク(実体損害,盗難,
強制押収,他)
法的賠償責任リスク(利害対立,労災,他)
Hirokazu Tatano
Disaster Prevention Research
Institute Kyoto University
リスクマネジメント(10/7)
個人のリスク
個人のリスクの主なタイプ
収入
医療費
賠償責任
実体資産
金融資産
死亡
自動車
自動車
株式
就業不能
家屋
家屋
債券
高齢化
失業
長寿
その他
ボート
電子製品
Hirokazu Tatano
Disaster Prevention Research
Institute Kyoto University
リスクマネジメント(10/7)
リスクマネジメントの手段
リスクの回避・予防
リスク
リスクの
発見
評価
(頻度,
程度等)
コントロール
リスクの軽減
(リスク発生の
未然防止・軽減)
リスク
ファイナンス
(リスク発生の
場合の金銭的備え)
リスクの移転
(各種保険等)
リスクの
保有
保有
自家保険
キャプティブ
その他(FR等)
山口(1998)
Hirokazu Tatano
Disaster Prevention Research
Institute Kyoto University
リスクマネジメント(10/7)
リスクマネジメントの手段(教科書)
ロス・コントロール
ロス・ファイナンス
内部リスク軽減
保有(自家保険)
分散
保険
情報の収集
リスキーな活動水準の引下げ
より慎重な行動
ヘッジ
保険以外の契約によるリスク移転
Hirokazu Tatano
Disaster Prevention Research
Institute Kyoto University
リスクマネジメント(10/7)
ロス・コントロール(リスクコントロール)

損失=損失の頻度×損失の強度(規模)





損失予防手法・・・損失頻度の影響
損失軽減手法・・・損失強度に影響
例えば地震リスクの場合は?頻度は?強度は?
リスキーな活動の水準の引き下げ
ある行為によって生じる損失に対して慎重

例:ドライバーの行動
Hirokazu Tatano
Disaster Prevention Research
Institute Kyoto University
リスクマネジメント(10/7)
ロス・ファイナンス
保有・・・資金積み立て(自家保険)
 保険・・・保険会社は多数と契約
 ヘッジ・・・先渡し契約,先物契約,オプショ
ン等の金融デリバティブ
 保険以外の契約によるリスク移転
・・・請負契約時の免責や補償の合意など
ロス・ファイナンスコストには取引費用を含む

Hirokazu Tatano
Disaster Prevention Research
Institute Kyoto University
リスクマネジメント(10/7)
内部リスク軽減

分散と情報収集


分散
・・・会社は活動を分散させることにより,内部的
なリスクを軽減可能
情報収集
・・・期待損失の正確な把握
期待値周りの変動性の縮小
→適切なリスクマネジメント手段の選択へ
Hirokazu Tatano
Disaster Prevention Research
Institute Kyoto University
リスクマネジメント(10/7)
まとめ


リスクには,損失の期待値を指す場合と期
待値周りの変動性(分散)を指す場合があ
る
企業価値の変動要因


価格リスク,信用リスク,純粋リスク
リスクマネジメントの手法

ロス・コントロール,ロス・ファイナンス,内部リス
ク軽減
Hirokazu Tatano
リスクマネジメントの目的
多々納 裕一
京都大学防災研究所社会システム研究分野
[email protected]
リスクマネジメント(10月7日講義)
Disaster Prevention Research
Institute Kyoto University
リスクマネジメント(10/7)

リスクマネジメントの目的とは何か?

リスクコストとは?



企業価値最大化はリスクコスト最小化を意
味するのか?
個人はリスクコストを最小にするのか?
企業や個人の自発的な行動でELR
(efficient level of risk)は達成可能か?
Hirokazu Tatano
Disaster Prevention Research
Institute Kyoto University
リスクマネジメント(10/7)
リスクマネジメントとリスクコスト


リスクマネジメントの目的はリスクコストの最小化
リスクコストの構成要素(純粋リスク)
期待損失
ロス・コントロール ロス・ファイナンス 内部リスク軽減 残余的不確実性
のコスト
のコスト
のコスト
のコスト
直接損失
予防対策の
増強
間接損失
損失軽減
活動
保有および
自家保険
保険
ヘッジ
分散化
リスク軽減の
ための情報
への投資
株主への効果
その他ステー
クホルダーへ
の効果
その他の
リスク移転
Hirokazu Tatano
Disaster Prevention Research
Institute Kyoto University
リスクマネジメント(10/7)
リスクコスト間のトレードオフ



直接/間接損失の期待コストとロス・コント
ロールのコスト
ロス・ファイナンス/内部リスク軽減のコスト
と間接損失の期待コスト
ロス・ファイナンス/内部リスク軽減と残余
的不確実性のコスト
Hirokazu Tatano
Disaster Prevention Research
Institute Kyoto University
リスクマネジメント(10/7)
ロス・コントロールへの投資
リスクコスト
ロス・コントロール
の費用
損失
カーブ
ロス・コントロールへの投資
Hirokazu Tatano
Disaster Prevention Research
Institute Kyoto University
リスクマネジメント(10/7)
企業価値とリスクマネジメント


企業価値(純キャッシュフロー,価値の大きさ
の期待値,タイミング,変動性)
損害が生じる以前におけるリスク及びリスク
マネジメントの企業価値への効果


純キャッシュフローの期待値
リスクを負っている株主によって要求された代
償額の影響力
Hirokazu Tatano
Disaster Prevention Research
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リスクマネジメント(10/7)
リスクコストの最小化
リスクコスト=リスクを除いた価値-リスクを伴う価値
→リスクを伴う価値=リスクを除いた価値-リスクコスト

最小化


リスクを除いた価値=損失と損失に関連した不確実
性がコストゼロにまで減少しうる世界における仮想的
な企業価値
企業のリスクコストの最小化=企業価値の最大化
(リスクコストをリスクが価値に及ぼす影響,及びリスクマネジメントが価値に
及ぼす影響の全てを含むものと定義した場合)
Hirokazu Tatano
Disaster Prevention Research
Institute Kyoto University
リスクマネジメント(10/7)
リスクコストの最小化
I :リ ス ク マネジメ ン ト 水準( 投資水準)
C ( I ) : 事前のリ ス ク マネジメ ン ト に要する 費用 C >0, C >0
L( I ) : 事後の期待損失 L>0, L<0
min L( I )  C ( I )
I
L( I )
C (I )
+
I
L( I )  C ( I )
=
I
Hirokazu Tatano
I
Disaster Prevention Research
Institute Kyoto University
リスクマネジメント(10/7)
限界減少損失と限界コスト
(費用対効果のトレードオフ)
I :リ ス ク マネジメ ン ト 水準( 投資水準)
C ( I ), L( I )
C ( I ) : 事前のリ ス ク マネジメ ン ト に要する 限界費用
L( I ) : 事後の限界損失
 L( I )
C ( I )
I*
I *::企業にと っ ての効率的な投資水準
I
Hirokazu Tatano
Disaster Prevention Research
Institute Kyoto University
リスクマネジメント(10/7)
リスクコストの測定と副次的目標


リスクコストの測定→コストがかかる
測定コストもリスクコストの一部
副次的目標やルールを定めて対応することも
場合によっては合理的
Hirokazu Tatano
Disaster Prevention Research
Institute Kyoto University
リスクマネジメント(10/7)
個人のリスクコストの最小化(1)

個人のリスク回避性
B
A
50%の確率で100万円
50%の確率で-100万円
50%の確率で1万円
50%の確率で-1万円
どっちを選ぶ??
Hirokazu Tatano
Disaster Prevention Research
Institute Kyoto University
リスクマネジメント(10/7)
個人のリスクコストの最小化(2)

個人のリスク回避性

リスクコスト→最小化

ただし,最適な投資の水準は個人のリスク回避
性の度合いや初期資産等に依存する
Hirokazu Tatano
Disaster Prevention Research
Institute Kyoto University
リスクマネジメント(10/7)
社会の総リスクコストの最小化




社会の総リスクコスト最小化を実現するリス
ク水準 →効率的なリスク水準
企業、個人がリスクコストを最小化すること
が、社会に対するリスクコストの最小化を導
くか?
外部性,所有権構造,市場の完備性
社会制度の役割
Hirokazu Tatano
Disaster Prevention Research
Institute Kyoto University
リスクマネジメント(10/7)
外部性の存在下では
SC ( I ) : 事前のリ ス ク マネジメ ン ト に
要する 社会的限界費用
C ( I ), L( I )
SC ( I )
 L( I )
C ( I )
I
*
必ずしも一致しない
I ::企業にと っ て効率的な投資水準
I **::社会的に効率的な投資水準
Hirokazu Tatano