ロス・コントロール(11月13日). - 多々納研究室

- ロス・コントロール -
多々納 裕一
京都大学防災研究所社会システム研究分野
リスクマネジメント
Disaster Prevention Research
Institute Kyoto University
リスクマネジメント
目次





ロス・コントロールのタイプ
 損失予防と損失軽減
 分散化と期待間接損失
費用便益分析による最適なロス・コントロール
行政による安全制度
生命損失の価値評価
安全規制の費用便益分析
Hirokazu Tatano
Disaster Prevention Research
Institute Kyoto University
リスクマネジメント
ロス・コントロールとは
期待損失額を減少させるために,
時間、努力、及び資金を支出する
こと
Hirokazu Tatano
Disaster Prevention Research
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リスクマネジメント
ロス・コントロールのタイプ
期待損失=損失の頻度×損失の強度

損失予防・・・損失の頻度の減少
•

損失回避
損失軽減・・・損失の強度の減少
•
損失発生前,発生後の活動
Hirokazu Tatano
Disaster Prevention Research
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リスクマネジメント
分散化と期待間接損失

エクスポージャ・ユニットの分離
地域A
5000万円
地震発生
5000万円
地域B
地域C
5000万円
5000万円
地域A,B,Cそれぞれ0.05の確率で被害
期待損失額 0.05×(5000×2)
0.05×5000+ 0.05×5000
期待損失額は同じ
Hirokazu Tatano
Disaster Prevention Research
Institute Kyoto University
地域B
5000万円
地域C
5000万円
直接損失
1億円
5000万円
0億円
損失の頻度の期待値
損失強度の期待値
リスクマネジメント
確率
0.05×0.05=0.0025
2×0.05×0.95=0.095
0.95×0.95=0.9025
0.0975 (=0.0025+0.095) > 0.05
5128万2000円 < 1億円
=5000万円×(0.095/0.0975)+1億円×(0.0025/0.0975)
損失を受ける頻度の増加
資産の分散化 ⇒
損失発生時に受ける強度の減少
高い直接損失が間接損失を引き起こしうるならば,資産の分離は有効
⇔ トレードオフ
労働生産性の低下,輸送コストの増大
Hirokazu Tatano
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リスクマネジメント
保険がロス・コントロールに与える影響
保険料が保険金支払額の期待値に与える
ロス・コントロールの効果を正確に反映
⇒ロス・コントロールへのインセンティブを阻害
しない


リスクコントロールとリスクファイナンスの代
替可能性

ロス・コントロールを行うことで保険料は低下す
る
Hirokazu Tatano
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リスクマネジメント
最適なロス・コントロール


リスクコストの最小化(限界便益と限界費用の一
致する水準のロス・コントロールが望ましい)
純キャッシュフローの現在価値

n 0

費用や便益を1期だけでなく,継続的に考慮する
必要がある場合には,純キャッシュフローの現在
価値で判断
0期
便益 0
費用 -15

Bn  Cn
(1  r ) n
1期
6
-1
2期
6
-1
3期
6
-1
4期
6
-1
資本コストが0.05のとき,企業はこのロス・コントロールを
実行すべき?
Hirokazu Tatano
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リスクマネジメント
最適なロス・コントロール(事例)

スプリンクラーの設置




財産に対する直接損害に関する火災保険料の軽減
火災保険の免責額以下の部分の期待損失額の低下及
び保険担保範囲外において生じる事業中断損失の期
待値の低下
スプリンクラー自体にかかる費用,設置に要する費用
維持管理を行うための費用
Hirokazu Tatano
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リスクマネジメント
最適なロスコントロール(実例)

安全装置の設置
労働者災害補償保険の保険料の割引
 企業負担の労働者災害補償コストの節約(保険の免責
額に満たない部分の費用)
 労働者事故による一時的な生産の中断
そうしたときに一時的,恒久的に雇う従業員に要する費
用の低下
 より大きな安全性に対する賃金への影響




安全性は労働者の職業選択に影響
賃金と労災リスクのトレードオフ
設置に要する費用,維持管理に要する費用
Hirokazu Tatano
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リスクマネジメント
最適なロス・コントロール(実例)

子供が簡単に開封できない市販薬のパッケージ
の導入


包装工程の再編
1単位当たりの材料費の上昇

製造物責任保険の保険料の低下
保険担保外の賠償責任費用,訴訟費用の低下
評判の下落に伴うリスクの低下

パッケージの変更は製品の価格,需要にも影響




消費者がこの問題に関心があれば,高く売ることが可能
関心がなければ,他の安価なメーカーに需要を奪われる可能
性もある
Hirokazu Tatano
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行政による安全制度

行政の必要性


社会的に最適な水準のロス・コントロールを行うインセンティブを企
業が持たないため(たとえば外部性)
十分な安全決定を行うための必要な情報を各個人,企業がもって
いるよりも行政に集約させた方が効率的(重複コストの回避)
しかし・・・



行政の規制にもコストがかかる
行政の公表する安全規制に対してそれを強制することに
対する最適なインセンティブを持っているとは限らない
集約された情報による安全決定が必ずしもすべての企業
にとって最適な規制とは限らない
Hirokazu Tatano
Disaster Prevention Research
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リスクマネジメント
生命損失の価値評価と
安全規制のコスト便益分析

生命の価値の評価

人間は暗黙のうちに生命の価値と死亡確率の
トレードオフを考慮した行動をとっている

例えば,大型自動車か小型自動車かの購入の選択
は低い死亡確率と安い価格を暗黙のうちに天秤に
かけている
Hirokazu Tatano
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リスクマネジメント
生命評価方法

一例に過ぎないので注意
工場A
死亡リスク 0
賃金 500万
工場B
死亡リスク 0.001
賃金 600万
どっちを選ぶ?
100万円=0.001×生命の価値
工場Bを選択した人は生命の価値は10億円より安い?
Hirokazu Tatano
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リスクマネジメント
安全規制の費用便益分析

安全規制の観点からも費用便益分析が必
要


規制担当者は費用のかかる規制に対して,そ
の便益,すなわち死亡確率の減少に伴う価値
を評価しなければならない
規制の有効性も様々


排気口のない暖房設備において生命価値(一人の
命を救うために投入された費用)は10万ドル
砒素の規制に伴う生命価値は7億6400万ドル
Hirokazu Tatano
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リスクマネジメント
要約





ロス・コントロールは期待損失額を減少させるため
に,時間・努力・資金を投入すること
損失予防は頻度を減少させるロス・コントロール
損失軽減は強度を減少させるロス・コントロール
資産の隔離はリスク分散のための1つの手段,期
待直接損失は変化させなくても期待間接損失を変
化させる可能性有り
人間の生命の価値の評価が必要な場合も場合を
ある.その評価方法の一例として,個人の死亡リ
スクの選択に基づくものがある
Hirokazu Tatano