pptファイル - 京都大学 大学院経済学研究科・経済学部

Network Economics (11)
インセンテイブ規制
京都大学 経済学研究科
依田高典
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伝統的規制
• 費用積み上げ(Cost-Plus)
公正報酬率規制
P=(C+ρK)/Q、ρ=iD/K+ r E/K
利点:(1)社会的受容、(2)規制ラグ・インセンティブ、
(3)投資とサービスの水準確保
欠点:(1)非効率性(AJ効果・X非効率性)、(2)規制の失敗
(規制の虜・レントシーキング)
AJ効果の図解
ρ≧(PQ-wL)/KとΠ=PQ-wL-iKから、Π/K≦ρ-iなので、
K0>K*
2
Π
利潤曲線
K*
公正報酬率規制
K0
K
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インセンティブ規制
• 利潤分配規制
余剰の残余請求権を一部認める
• プライスキャップ
価格の上限の範囲内でリバランシングを認める
• ヤードステイック
他企業の指標を物差し
• フランチャイズ・ビッディング
事業免許の競売
• ベイズ型プリンシパル・エージェント
企業の自己選抜型裁量
• ハイブリッド
伝統型・諸インセンティブ型の混合
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インセンティブ規制(2)
• 企業経営効率化と消費者便益向上
(1) ベル電話地域電話会社:
低報酬率の州:インセンティブ規制は利潤率を低める
高報酬率の州:インセンティブ規制は利潤率を高める
(2)インセンティブ規制ほど、料金水準が低い
(3)規制緩和の長い州ほど、料金水準が低い
• インセンティブ規制の現況
(1)最良のインセンテイブ規制は多様である
(2)インセンティブ規制は企業と消費者に有益
(3)インセンティブ規制と競争政策は影響しあう
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利潤分配規制
• 社会契約・スライディングスケール
NTTの幅公正報酬率規制/ガスの報奨金制度
実際に得る利潤は、基準利潤と実現利潤の加重和
Π=Π0+α(Πa-Π0)=(1-α)Π0+αΠa
• Leob&Magatメカニズム
補助金=消費者余剰ー税金とすると、
利潤=売上高+補助金ー費用
=消費者余剰+売上高ー費用ー税金=社会厚生
消費者側から公平性上問題あり
• Sappington&Sibleyメカニズム
補助金=△消費者余剰ーその期の操業利潤とすると、
総利潤=操業利潤+補助=操業利潤+△消費者余剰
最終価格に到達すれば、補助金は不要
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P
P1
P2
A
B
E
F
H
G
C
F
MC
D
Q1
Q2
Q
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プライスキャップ
• 英国の電話・電力・ガス・水道・航空、米国の電話
Pt = Pt-1(1+RPI-X+Z)
利点:(1)経営効率化、(2)価格リバランシング、(3)規制の透明
化・簡素化、(4)規制コスト削減、(5)AJ効果回避
欠点:(1)急激な価格リバランシング、(2)X項決定の困難、(3)過
少投資・サービス劣化
• Vogelsang&Finsingerメカニズム
制約条件P2 Q1≦AC1 Q1のもとで自由な価格設定
ラムゼー価格に収束
• X項をめぐるプライスキャップと公正報酬率規制の曖昧化
• バスケットによる価格リバランシング緩和措置
• 日本の地域電話にも導入
接続部門との整合性・東から西への補填金
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P
D
P1
AC1=P2
AC
ACt=Pt
Q1
Q2
Qt
Q
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表 1: 英国公益事業の X 項の変遷
電話
ガス
3(1984-89)
2(1987-92)
4.5(1989-91)
5(1992-94)
6.25(1991-93)
4(1994-97)
7.35(1993-97)
航空
水道
送電
1(1987-92) 通時平均
0(1990-93)
8, 8, 4, 1, 1 +5.4(WSCs)
3(1993-97)
(1992-97) +11.4(WOCs)
配電
買電
+0~+2.5
0(1991-94)
2(1994-98)
(出所: Armstrong, Cowan and Vickers 1994 Table6-1)
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ヤードスティック
• 地域独占企業の実績の比較
• 英国の水道、日本の私鉄・バス等々
• Shleiferモデル
1
1
ci 

n 1
ji
c j , Ri 

n1
j i
Rj
仮定:(1)費用・需要条件の企業間等質性、(2)共謀の不可能性
企業のポテンシャリティの計測の試み
• 日本の電力産業の費用補正係数
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表 2: ヤード ス ティ ッ ク 規制の費用・ 需要条件の補正
電気料金の補正係数
北海道 東北
設備
経費
0.97
0.90
1.00
0.96
東京
中部
北陸
関西
中国
四国
九州
沖縄
0.95
1.06
1.01
1.10
1.15
1.07
1.07
1.12
1.02
1.03
0.94
0.93
0.93
0.96
0.95
ガス 料金の補正係数
設備
経費
東京
大阪
東邦
西部
北海道
北陸
京葉
広島
1.1250
1.0216
1.1331
1.0209
1.0284
0.9790
0.9092
0.9048
0.8290
0.9161
1.4145
1.3229
1.0819
1.0855
0.8799
0.9388
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プリンシパル・エージェント(1)
• アドバースセレクション規制
Baron&Myersonモデル
政府が企業の費用パラメーターを観察できないケース
θ∈[θ-,θ-]を企業の私的情報である費用パラメーター
θ0を企業が自己報告する費用、Q(θ0)を企業の報告に応じた生産量、T(θ0)を企
業の報告に応じて与えられる補助金
社会厚生を消費者余剰とαでウェイト付けられた生産者余剰の和
社会厚生の最大化を政府の目的
誘因両立条件は、Π(θ, θ)≧Π(θ0, θ)
参加条件(Participation Condition)は、Π(θ, θ)≧0が
このとき、価格条件式は、P(Q(θ))=θ+(1-α)(θ-θ-)
すなわち、価格は費用と情報訂正項の和に等しくなる
θ>θ-かつα<1である限り、配分上の非効率性が発生
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プリンシパル・エージェント(2)
• モラルハザード規制
Laffont&Tiroleモデル
θを費用パラメーター、eを費用削減努力、cを費用水準とし、政府はθとeの両
方を観察できないが、cを観察できると仮定
政府は費用水準を観察できても、それが費用パラメーターのせいなのか、企業
努力の欠如なのかを識別できない
簡単に、c=θ-eとおく
価格条件式は、P(Q(θ))=c(θ)
すなわち、価格は限界費用に等しい
費用条件式は、c(θ)>c*
すなわち、費用削減努力が過少であるため、限界費用は完全情報水準c*よりも
水増しされる(価格とインセンティブの「二分法(Dichotomy)」)
努力が与えられた下での最適生産量の決定(配分的効率性)と生産量が与えられ
た下での最適な費用削減努力の決定(技術的非効率性)との間でトレードオフ
が発生
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ハイブリッド規制のすすめ
• 米国地域電話の州際アクセスチャージ
X項
4.3%
4.7%
5.3%
下限報酬率
12.25
12.25
なし
50/50 利潤分配
12.25-13.25
12.25-16.25
なし
上限報酬率
13.25
16.25
なし
• 伝統的+インセンティブ、諸インセンティブのハイ
ブリッド
• 諸政府間のヤードスティックとハイブリッド
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