シャドーイングとは

高職日文科之聴講指導
─開口説日文─
池畑裕介
今日の内容
1、シャドーイング
2、コミュニケーション能力向上
3、まとめの言葉
シャドーイングとは
シャドーイングとは
「聞こえてくるスピーチと同じ発話を
ほぼ同時に(0.5秒ぐらい後)口頭で再生する行為」
つまり
シャドウ(shadow)のように、
聞こえてくる音声をまねする。
なぜシャドーイング?
・台湾の中等教育において文法中心の指導がよく見られる。
(能力試験、学校の実績、学生の評価、クラスの人数など)
・上記を踏まえて短い時間で毎回授業ごとにできる方法はないか。
シャドーイングの効果1
日本人特有の音感が身につく。
・シャドーイングは、日本語のアクセントから、モーラ、
イントネーション、ポーズまですべてをまねする練習。
つまり、日本人特有の音感を身につけるのに効果的であ
る。
・中国語は高低差が激しい、日本語の高低差が穏やか。
シャドーイングの効果2
日本人の日本語のスピードに慣れる。
・日本人が普通に話す会話スピードに対応できるようにな
る。
シャドーイングの効果3
高度なリスニング力が身につく。
・正確に音を聞き取らないとできないため、シャドーイン
グは集中力と注意力を最大限に高めたリスニングの訓練
になる。
シャドーイングの効果4
語彙・例文の暗記に役立つ。
・シャドーイングの練習をしているうちに、単語や例文を
自然に覚えてしまう。
シャドーイング
≪やり方≫
1、テキストを見て意味を確認する。
↓
2、初めは文字を追いながら、CDから出る
日本語をシャドーイングする。
↓
3、慣れてきたら、文字を見ないでシャ
ドーイングを行う。
指導法や注意点
・Aだけ、またはBだけをシャドーイングしてもかまわない。
(例:教師がA、学生がBなど。)
・学生をA、Bに分けて練習させる。
・途中でCDの音声についていけなくなったら、
次の会話から始めるように学生に言う。
・1日(1回)10分が目安。
あまり長くやると集中力が続かなくなる。
・慣れるまで時間がかかる。
評価方法
・学生の声を録音する。
ないしは録音を宿題として提出させる。
・口頭試験の機会を設ける。
(クラス分けをするなどして人数を調節する。)
教材の紹介
基本的にCDのある教材はシャドーイングとして使えます。
傾聴日語Ⅰ~Ⅱ「わくわく日本語」(小林典子・他:大新書局T)
軽鬆聴日語Ⅰ~Ⅱ「楽しく聞こう」
(文化外国語専門学校日本語科:大新書局T)
シャドーイング日本語を話そう
(斎藤仁志・宮本恵子・他:くろしお出版)
エリンが挑戦! にほんごできます。(国際交流基金)
話す行為のプロセス
①言いたい内容を伝える。
↓
②どのように言うかを考える。
↓
③実際に言う。
コミュニケーション能力とは?
1、文法能力
2、社会言語能力
3、談話能力
4、ストラテジー能力
1、文法能力
言語を文法的に正しく理解し、使用する能力。
例1)な形容詞・い形容詞否定形の間違い。
・昼ご飯はおいしくなかったです。○
・昼ご飯はおいしいじゃなかったです。×
例2)助詞の間違い。
・昼ご飯はレストランで食べました。○
・昼ご飯はレストランを食べました。×
2、社会言語能力
社会や文化で決まっている固有のルール。
例)高校の職員室で。
学生:「先生の授業、おもしろいですね。
すばらしいですね。
本当に先生はすごいですね。」
先生:「・・・・」
3、談話能力
話の展開を考え、意味のまとまりをもった談話を
組み立てる能力。
例1)
A:子供が熱を出したので、帰らせていただきたいんですが。
B:あ、そうですか。いいですよ。
例2)
A:あのう、すみません。
B:どうしたんですか。
A:実は、子供が熱を出したので、帰らせていただきたいんですが。
B:あ、そうですか。いいですよ。
A:忙しいときにすみません。
B:いいえ。
4、ストラテジー能力
話をしているときに困ったことがあっても、ほかの方法で、コミュニケーショ
ンの目的を達成できる能力。
この能力があれば、文法能力や社会言語能力、談話力が足りなくても、コ
ミュニケーションの目的を達成することができる。
初級の段階では特に大切である。
4、ストラテジー能力
・すみません、もう一度言ってください。
・すみません、もう少しゆっくり言ってください。
・すみません、中国語(英語)でなんですか。
・自分の言っている事が伝わらなかったら、紙に漢字を
書いて伝えたり、違う言葉に言い換えたりする。
コミュニケーション能力まとめ
能力
まとめ
文法能力
言語を文法的に正しく理解し使用する能力。
社会的言語能力
相手との関係や場面に応じて、いろいろなルール
を守って言語を適切に使用する能力。
談話能力
談話を管理し、組み立てることができる能力。
ストラテジー能力
コミュニケーションがうまくいかなくなったときに、
自分や相手の発話をコントロールして修復する能
力。
教室活動
1、インタビュー
2、スピーチ
3、ロールプレイ
インタビュー
≪やり方≫
1、準備活動
2、活動
3、まとめと評価
参考資料:クラス活動集101
準備活動
1、学習目的を明示する。
2、誰が誰に聞くかを明示する。
3、インタビューモデルを示す。
4、単語の確認・補充。
談話能力をのばすために
・インタビューの開始
・終了
・次の質問への移行
・相手の理解や感想の表示
ストラテジー能力をのばすために
・わからない単語を聞く。
・もう一度繰り返すように頼む。
・ゆっくり話して欲しいと聞く。
・中国語で意味を確認する。
単語の確認・補充
まとめと評価
・調査結果を書かせたものを提出させる。
・調査結果を口頭でさせる。
(インタビューの目的が達成できたかどうか。)
・インタビュー中に不足していた表現や
誤りをチェックする。
(録音や教師が学生の発言を聞きチェックする。)
・学生に自己評価をさせる。
スピーチ
≪やり方≫
1、準備活動
2、活動
3、まとめと評価
参考資料:自作レジュメ、日本語交流宝庫
準備活動
1、スピーチの内容、話す時間、
誰が話すかの設定(クラスを分けるか否か)。
2、スピーチモデルを示す。
3、単語の確認・補充。
4、教師が学生が書いた原稿を確認し、
口頭練習をさせる。
5、話し方やインターアクション、
姿勢や表情を確認する。
ストラテジー能力をのばすために
フィラーを教える。
フィラーとは?
1、聞き手を注目させる働き、話を始めることを
知らせる働き。
2、話す言葉、内容を考える時に時間稼ぎ。
多すぎたり長すぎたりするフィラーに注意!
まとめと評価
評価の方法
1,スピーチの内容
2.構成
3.言語(文法や表現の適切さなど)
4.話し方(声の大きさ、スピード、フィラーの適切さなど)
5.聞き手のインターアクション
6.表情や姿勢
7.学生にも評価に参加させる
ロールプレイ
≪やり方≫
1、準備活動
2、活動
3、まとめと評価
参考資料:会話に挑戦!日本語ロールプレイ、
みんなの日本語をもとにしたレジュメ
準備活動
1、学習目的を明示する。
2、モデル会話を示す。
3、必要な表現の提示や練習をど
のようにするか
4、小道具の準備(白衣、店員のエプロン、
めがね、背広、等)。
4つの技能すべての練習が
できる!
・表現を正確になめらかに使えたか(文法能力)。
・会話の流れを作る事ができたか(談話能力)。
・コミュニケーションがうまくいかなかったとき
の対応の仕方(ストラテジー能力)。
・表現や体の動きなどの非言語行動、相手や状況
に合わせた話し方(社会言語能力)
クラスの人数が多い場合は
どう評価する?
・発表する人数を2~3組に絞る。
・ロールプレイの会話を提出させる。
・録音をする。
・教師が見回り、よく学生がした
間違った表現を確認する。
・学生の自己評価表を提出させる。
教材の紹介
クラス活動集101(高橋美和子・平井悦子・三輪さち子:大新書局T)
日語交流宝庫・学生用(春原憲一郎・他:大新書局T)
日語交流宝庫・知恵袋(春原憲一郎・他:大新書局T)
みんなの日本語(大新書局T)
手絵旅遊日語(橋本友紀・池畑裕介:寂天文化T)
会話に挑戦!日本語ロールプレイ(中居順子・近藤扶美・鈴木真理子・他:ス
リーエーネットワーク)
まとめのことば
・興味を持たせて学習させる。
・効果的な短い練習を毎日繰り返す。
・日本語を使わせる練習をする。
まとめのことば
(興味を持たせる効果)
・「情意フィルター」を低くする。
つまり、「心の壁」のことである。学習者が自信がなく不安な状
態であったり、動機が欠けていたり、防衛的な気持ちの時は学
習効果がうすい。逆に自信があり、動機付けが高く、リラックス
した状態だと、多くのことがインプットでき、言語習得が効率的
に進むということ。
・自発的な学習を促すため。
まとめのことば
(効果的な練習)
・効果的な短い練習を毎日繰り返す。
まとめのことば
(日本語を使わせる練習)
・海外では学習者は日本語を聞く場面が少ないため、
日本語を使う環境を作る
例:
教室内ではすべて日本語。
教室以外の場所で先生に会ったら、日本語で挨拶する。
出来れば自発的に学生同士で話させる。