EBMのための 確率・統計 EBM • エビデンスの活用 – エビデンスを応用するために自分の対象の条件 を把握 • エビデンスの収集 – 情報の判断 • エビデンスの発信 – 意義のあるエビデンスを – 利用可能な形で エビデンスの活用のために プレゼンテーション エビデンスを活用するために 目の前の対象を正確に捉えて 正確な情報を共有しよう 記述統計 • 自分の収集した情報をかいつまんで伝える • 伝える内容には「主張」がある • 過不足なく • 順序よく プレゼンテーション 記述統計 • よくできたプレゼンテーション(臨床症例提示・ 論文発表)は美しい – 情報を相手と共有することに成功している – 共有した情報に基づいて、「同士」として理性的・ 科学的・論理的に考えると、おのずと結論(確率 的な結論)は同じになる プレゼンテーション 記述統計 • 「一人前」になることは、 – プレゼンテーション – 理性的判断 をコミュニティと共有すること プレゼンテーション 記述統計 • 10個の値 • それを伝えるためにどうしたい? 10回の実験 • ns<-10 • data1<-rnorm(ns) • data1 • 何が知りたい? データのすべてを伝える • ではどうやって データのすべてを伝える -0.3334334 -0.9447382 0.1015756 0.2125417 -0.7217014 -0.3216988 -0.3189620 0.9856608 -0.4171438 2.0279134 データのすべてを伝える -0.3334334 -0.9447382 0.1015756 0.2125417 -0.7217014 -0.3216988 -0.3189620 0.9856608 -0.4171438 2.0279134 いかにも、不細工・・・ 慣れない世界に入るとたいていのプレゼンテー ションは、こんな感じ。 不細工なことに気がついていないだけ。 でも、伝えないよりはまし! データを伝える方法 • その情報で、わかる? • その情報で、『自分は』わかる? • 伝えたけれど、「かいつまむ」作業、「解釈す る」作業は相手任せ • 「わかった」ことにはならない データのすべてを伝える • データの伝え方 – 全部を、伝える – かいつまんで、伝える • つまみ食いでなく、「全体」を伝えるために「かいつま む」 • わかるように伝える – 自分がわかる – 相手がわかる – 自分と相手が「同じようにわかる」 > summary(data1) Min. 1st Qu. Median Mean 3rd Qu. Max. -1.8510 -1.1060 -0.6635 -0.5608 -0.1530 1.4210 ns<-1000 > summary(data1) Min. 1st Qu. Median Mean 3rd Qu. Max. -3.907000 -0.677100 -0.000667 -0.008329 0.623600 3.868000 複数の値の伝え方 • 分布がわかるように • 分布を見ないうちは、かいつまめない 問題1 • 赤線は10問中8問正解し たときの、「真の正答率」 の尤度分布、黒線は、「真 の正答率が赤線のような 確率分布のときに、10問 テストを受けたときに取る 点の確率分布である。 • その形を中学生に説明す るための文を書きなさい 0 1 問題2 • 現在の教室において席が占められている分 布について、自分の位置を含めて説明しなさ い。 • 『今、みんなはどういう具合に着席してて、あなたはどこにいたの?』とい う質問に答えなさい。 複数の値の伝え方 と 複雑な情報の伝え方 • 分布がわかるように • 分布を見ないうちは、かいつまめない • 全体がわかるように • 全体を見ないうちは、かいつまめない 違いを伝えるか伝えないか • 疾患A,B,Cの検査値Xの分布です。 X A B C • X – A,B,Cは平均xa,xb,xcと違っていて、分散は等 しくv X A B C • X – A,B,Cは平均xa,xb,xcと違っていて、分散は等 しくv… – もっと良い伝え方はある? – あるとしたら、それはなぜ? X A B C • X – それはなぜ? X A B X C A B C 意味のあるデータ 意味のないデータ • 多すぎるデータはかえって邪魔 • 意味のあるなしの判断は – 基礎研究データの場合 • 検定による統計的有意差 – 臨床研究データの場合 • 検定による統計的有意差 ケース プレゼンテーション 主訴 • 「救急隊からの連絡です。『腹痛』の患者さん が運ばれてきます。よろしくお願いします」 鑑別診断 • 事前分布を作ろう – 確率空間 – 頭の中にあるリスト – 頭の中にリストがないなら 頭の中にリストがなくても • リストを作るための種 –何のための基礎系科目? • 余談 – パラダイムシフト・・・ • 概念を作る・枠組みを変えることは、「種」に関する画期的進歩だからす ばらしい・・・ 問診 • 訊きたい質問のリストを作る – その質問は何のため? • あなたに必要な情報 • あなたの同僚に必要な情報 – 知識があるということ • 余談 – 問診 • • • 取りたくても、取れない (相手のあることだから) 問診特有の技術 (相手のあることだから) 終わり無き課題 – だから、面白い・・・ 身体所見 • 取りたい所見のリストを作る – その所見は何のため? • 取りたい所見を取る • どちらが大事? • 取りたいのに取れなかったら • 余談 – 身体所見 • • 所見の標準化 標準化は大事 – でも、「自分にだけ出来る」ということもある・・・だから面白い??? – 手技も??? 検査 • やりたい検査のリストを作る – その検査は何のため? • やりたい検査をする • どちらが大事? • やりたいのにやれなかったら A 疫学 問診・身体所見 検査 さらなる検査は疾患別 B C D A 疫学 問診・身体所見 検査 さらなる検査は疾患別 B 仮説の○の大小コントラストを 大きく変える情報が有用な情報 C D 仮説の○の大小コントラストを 大きく変える情報が有用な情報 A 疫学 問診・身体所見 検査 さらなる検査は疾患別 B 事前確率と事後確率を大きく変 える情報が有用な情報 C D さらなる検査は疾患別 スタート A,B,C,Dのうちの どれから先に、詰める? どう、詰める? それが戦略 A B C D やることはいっぱい やれることもいっぱい やり忘れはだめ 1度に1つのことしか出来ない 分岐木を完全にたどる 順序がよければ、やらずに済むことも多い 順序を間違えると、重大なことになるかも ヤミクモに情報を集めても判断に困るだけ 整理が必要な量の情報がたまったら一時、 中段して整理しよう • 情報が集まった • 整理して – 鑑別診断リスト – その軽重を決める – 確定診断への戦略を決める はじめは、しばしば立ち 止まってOK 「一人前」になるのは、 情報処理をしながら基 本検査の結果の判断ま でを無意識のうちにで きるようになったとき 意味のあるデータ 意味のないデータ • 多すぎるデータはかえって邪魔 • 意味のあるなしの判断は – 基礎研究データの場合 • 検定による統計的有意差 – 臨床研究データの場合 • 検定による統計的有意差 – 臨床情報の場合 • 判断に使えるデータか • 仮説の事前確率・事後確率を「十分に」変えるデータか – 「十分に」 » 収集の手間 » 費用 » プレゼンテーションの手間(話すヒトの時間・聞くヒトの時間) (レベルはどうあれ) プレゼンテーションの基礎 • 集めた情報を(自分のために)整理する • 1度に1つのことしか言えない • 順序を考える • 軽重を考える • 心がけ – けちけちすること – 思いやりがあること プレゼンテーション • 自分しかいなくてもプレゼンテーション • 自分の中の他人にプレゼンテーション – 客観的に判断するため • 必要な情報が取れたかどうかの判断ができ る? – 必要な情報って何? • 戦略の正当化 プレゼンテーションを終えたけど • 話し手と聞き手で意見が違うとき – 提示した情報と、頭の中で使った情報が違う? – 事前確率が違う? プレゼンテーション 記述統計 • よくできたプレゼンテーション(臨床症例提示・ 論文発表)は美しい – 情報を相手と共有することに成功している – 共有した情報に基づいて、「同士」として理性的・ 科学的・論理的に考えると、おのずと結論(確率 的な結論)は同じになる NEJM case record エビデンスの収集 • ちゃんとした情報に基づいて行動(医療行為) しよう 情報を収集して使う • 方法・定義 (自分の目の前のケースとの整合 性は? • p値 – 信用してよいかどうか • 推定値 – 信頼区間を含めて EBM • 診察・検査の結果を「ちゃんとした情報」に基 づいて使おう ちゃんとした情報はこのグラフ 仮説の 尤度 診察・検査の結果 ちゃんとした情報 • ちゃんとした情報は事前確率と事後確率との 関係を与えるもの • 「AだったらB」 • 「aだったらb」 • 「Aだったら、確率xxでB」 • … • 情報は、「条件」と「確率」を教えてくれる ちゃんとした情報 • 情報は、「条件」と「確率」を教えてくれる – 「条件」は研究で言えば、「方法」 – 「確率」は研究で言えば、「結果」 – 収集しているエビデンスには、「方法」と「結果」があるは ず – その内容が理解できて – 目の前のケースとの整合性について判断できたら – そのエビデンスを使います • 1番簡単な例 これだけは! 感度・特異度 PPV・NPV 検査の作り方 – 病気X • Xである • Xでない 検査陽性率 p 検査陽性率 q 陽性 陰性 X p 1-p 1 感度 p non X q 1-q 1 特異度 1-q p 感度 病気X non 病気X q 1-q 特異度 1-p 検査の使い方 知りたいことは不明 調べられることはこちら 陽性 陰性 1-p p 感度 病気X 1-p p 1-q non 病気X q 1-q 特異度 q PPV=p/(p+q) NPV=(1-q)/((1-p)+(1-q)) 1-p p 感度 病気X 1-p p PPV non 病気X q 1-q NPV 1-q 特異度 q 事前確率の違い 病気X p 感度 PPV NPV non 病気X 1-q 特異度 検査の解釈 陽性 陰性 1-p この図があれば、解釈できる p 1-q q この図を作るために必要だったもの 感度 特異度 事前確率 役に立たない情報 p 感度 1-p 病気X non 病気X q 1-q 特異度 役に立つ情報 偏り・関連 p 感度 1-p 病気X non 病気X q 1-q 特異度 役に立たないか、立つか 独立か、独立でないか 関連があるか、ないか 帰無(独立)仮説を棄却 検定で有意 ちゃんとした情報は • 情報は、「条件」と「確率」を教えてくれる – 「条件」は研究で言えば、「方法」 – 「確率」は研究で言えば、「結果」 が、しっかりしていて、 • 統計学的に有意 – 帰無(独立)仮説を棄却 – 検定で有意 2x2表だけではなく 観測 体重 身長 観測 使える情報 • 偏りのある関係 • 「関係があるかないか」は「検定」が「有意差」 のありなしで支える 関連をみつける • • • • データ 関連のありなし 手法はたくさん 手法は「関連のありなしについての数値情報 」を得る手段 研究における関連を検定する • 『遺伝子Xは●●機能を持つのだ!』 • 『分子Yは●●と結合するのだ!』 – 対立仮説 • 「またまた、そんなこと、あるわけないでしょ」 – 帰無仮説 仮説 • 帰無仮説 – 特にアイディアがないときの仮説 • 対立仮説 – 『新しいこと』 – 『知見』 • 「対立仮説」は、いくらでも作れるので、それ にいちいち付き合うよりは、「帰無仮説」が正 しくないかどうかを判定する方がよいことが多 い 帰無仮説は仮 説の一つ 仮説の広がり 帰無仮説の棄却 • 帰無仮説でないことを示すことで、『知』を進 める • 帰無仮説が正しいと仮定すると、観察した データがありそうもないことを示す 帰無仮説での データの確率 低い確率でお きるデータ値 実力 データ値 臨床における検査結果の活用と推定 • 臨床検査 – 直腸癌検診 • 便潜血 3日分 • →便に血が混じることがある可能性の高さ・・・ – 血清コレステロール値 • ある日、ある時 1回分 • →真の血清コレステロール値・・・ 便潜血 大腸・直腸に癌が あるとき 便に血が混じる確 率 大腸・直腸に癌が ないとき 便に血が混じる確 率 精密検査をすること で、大腸・直腸癌 を検出する確率 便潜血 大腸・直腸に癌があるとき 便に血が混じる確率 精密検査をすること で、大腸・直腸癌 を検出する確率 大腸・直腸に癌がないとき 便に血が混じる確率 便潜血 大腸・直腸に癌があるとき 便に血が混じる確率 大腸・直腸に癌がないとき 便に血が混じる確率 精密検査をすること で、大腸・直腸癌 を検出する確率 治療をすることで効 果のある確率 便潜血 大腸・直腸に癌があるとき 便に血が混じる確率 大腸・直腸に癌がないとき 便に血が混じる確率 精密検査をすること で、大腸・直腸癌 を検出する確率 治療をすることで効 果のある確率 治療をすることで副 作用のある確率 便潜血 大腸・直腸に癌があるとき 便に血が混じる確率 精密検査をすることで、大腸・ 直腸癌を検出する確率 • 効果 • 治癒 • 延命 • Quality of Life(QOL) 大腸・直腸に癌がないとき 便に血が混じる確率 治療をすることで効果 のある確率 治療をすることで副 作用のある確率 便潜血 大腸・直腸に癌があるとき 便に血が混じる確率 精密検査をすることで、大腸・ 直腸癌を検出する確率 大腸・直腸に癌がないとき 便に血が混じる確率 治療をすることで効果のある確 率 • 効果 • 治癒 • 延命 • Quality of Life(QOL) • 患者・家族の価値観 治療をすることで副作用のある 確率 大腸・直腸に癌があるとき 便に血が混じる確率 精密検査をすることで、大腸・ 直腸癌を検出する確率 • 効果 • 治癒 • 延命 • Quality of Life(QOL) 大腸・直腸に癌がないとき 便に血が混じる確率 治療をすることで効果のある確 率 治療をすることで副作用のある 確率 • 医療政策 • 患者・家族の価値観 • 集団としての価 値観 • • • 臨床医=医療アドバイザ 大腸・直腸に癌があるとき • 大腸・直腸に癌がないとき 計算可能な情報を 便に血が混じる確率 • 便に血が混じる確率 「かいつまんで」 • 精密検査をすることで、大 腸・直腸癌を検出する確率 提示して、 • 治療をすることで効果のあ る確率 個人と集団に価値判断させる 効果 • 治療をすることで副作用の 『科学』『提示力』 • 治癒 • 延命 • Quality of Life(QOL) ある確率 • 医療政策 個人・集団 • 患者・家族の価値観 提示情報を元に価値判断する • 集団としての価 『科学の向こう』 値観 臨床医=医療アドバイザ 計算可能な情報を 「かいつまんで」 提示して、 個人と集団に価値判断させる ものすごく複雑 非常にたくさんの要素 数値にしても伝わらないことも・・・ 数値にできないことも・・・ 診断する • • • • 鑑別診断 :仮説リスト(空間)を確認する 除外診断 :ありえない仮説をリストから外す 診断的治療 :情報をひとつ加えてから判断する 診断基準 :あいまいな状態に「定義」を与えて扱い やすくする • 確定診断 :1つの診断の尤度が圧倒的に高くなる わからないときにも決断する • 事前確率を与えないと始まらない • 事前確率は完璧でなくてもよい・バイアスが あってもよい – 完璧ではないから事前確率 • 「ありえない」と決めつけない • 事前確率を事後確率に変えるとき(情報を活 用するとき)にはバイアスを入れない • 研究はわからないことを対象にする – 未知が対象 – 「○○」はありえない – 棄却検定 • 臨床は不十分な情報に基づいて行動する – 既知のリストから選び出す – 「○○」は「××」よりもありそうだ – 推定 – もしも、既知のリストで説明がつかなかったら・・・ 最後に。EBMの基礎 • • • • 疑り深いこと 他人の伝聞を信用しないこと 自分が信じるための基準を持つこと その上で、他人の判断とすり合わせること おまけ?帰無仮説の棄却 • 検定 – PropTestQuiz<-function(n=2,m=2,N=1000){ – library(MCMCpack) – – – – – – – – – ns<-rdirichlet(1,rep(1,n)) ms<-rdirichlet(1,rep(1,m)) ns<-rep(1,n)/n #es<-t(ns)%*%ms es<-ns%*%ms data<-sample(1:length(es),N,c(es),replace=TRUE) tdata<-table(data) mat<-matrix(tdata,nrow=n) chiout<-chisq.test(mat,correct=FALSE) – – – fisherout<-fisher.test(mat) list(table=mat,chisq=chiout$st,p=chiout$p.value,fisherp=fisherout$p.value) }
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