フォード生産システムと 労使関係管理 2014年6月14日 人事労務管理論A(第8回目) LT1022教室 前回をまとめてみれば 作業管理(労働管理) 頭(計画)の労働と手(実行)の労働の分離 管理原理としての 人事管理の成立 労働力の原理:肉体的負荷を排除 熟練への依存からの脱却 → 労働力の「機械的・合理的」利用に基づく能率向上 労働の単純化、標準化、反復化による能率向上 2 従業員管理のアメとムチ ---福祉的労務管理 高賃金政策 一日5ドル政策 当時のデトロイト周辺の平均日給2.5ドル 福利厚生 社会部の設置:社宅(寄宿舎)、レクリェーション施設 英語学校の創設:英語を話せない人へのサービス 年金制度、生命保険 3 従業員管理のアメとムチ(2) ---福祉的労務管理 従業員代表制 年金制度、生命保険 これらの目的は何か? 1.労働者に車の購買者になってもらう → 2.労働者の定着対策:第1次大戦の影響 3.企業忠誠心の育成 → 4 従業員管理のアメとムチ(3) ---福祉的労務管理 温情主義的な政策 労働者の権利を認めない 良き経営者として従業員の生活を保護 ねらいは企業忠誠心とモラールの向上 フォード自身は労務管理など不要と考えていた → 結局、 福祉的労務管理を築いたという名声は虚構? 5 反組合主義 オープン・ショップ攻撃: ショップとは何か:従業員としての職の獲得と組合 員資格の関係のこと クローズドショップ制:特定の組合員 オープンショップ制:組合員か否かを問わず ユニオンショップ制:特定組合に加入を 具体的には ブラック・リスト、労働スパイ、スト破り、 黄犬契約(yellow dog contract): 会社組合(company union)の育成 6 まとめてみれば テイラーとフォード主義は管理原理としては同一 頭(計画)の労働と手(実行)の分離 を通した資本による 作業(労働)管理 作業の仕方、作業の速度、作業の手 順が資本による 労働力の「機械的・合理的」利用に基づく能率向上 労使関係としては温情主義と反組合主義 管理・統制への反発、機械への単純な 憎悪・反発を招く 7 フォード生産システムの矛盾 大量消費なき大量生産! 売れない、在庫増大 → 組合の反発!! 失業、労働条件の悪化、労働争議 8 労使関係管理成立の社会的背景(1) なぜ組合を承認したのか? 組合を承認しなければならなくなったのはどうしてか 人事労務管理として何をねらったのか 大恐慌 失業者の急増、労働条件の悪化 1930年17万人、32年1160万、33年1300万人、34年1700万人 9 労使関係管理成立の社会的背景(2) 労働運動の高揚 労働争議の勃発、暴動、社会不安 新たな労働組合運動 産業別労働組合の台頭 CIO(Committee for Industrial Organization:産業別組合会議) 熟練工中心のAFLから分裂して結成(1935年) 熟練・不熟練を問わず 10 AFLとCIO 1886年 American Federation of Labor(アメリカ労働総同盟)を結成 1938年 Congress of Industrial Organizations (産別会議) 1955年、冷戦体制下の高まる組合攻撃の中、その対 抗に向けて両者が合同し、AFL-CIO(アメリカ労働総 同盟産別会議)となる 11 ニューディール政策 完全雇用政策:ケインズ主義 国家財政投資(公共事業) → 需要の拡大 → 求人の増大 → 失業率の減少 → →国民所得の増大 → 生産の増大 → 福祉国家 1933年、全国産業復興法(National Industrial Recovery Act, NIRA) 1935年、全国労働関係法(ワグナー法) 12 反組合主義からの脱却 不当労働行為の禁止 組合公認:組合の在り方の対策が必要になる 反組合主義から労使協調へ ビジネスユニオニズムに立脚した労働組合 労使協調は労使癒着ではない それぞれの違いを認めた上での協力関係 13 ちょっと本論から外れますが 労働組合とは何か Sidney & Beatrice Webb の定義 労働者が労働諸条件を維持・改善するための恒常 的な団体 日本の労働組合法の定義 http://www.houko.com/00/01/S24/174.HTM 労働者が主体となつて自主的に労働条件の維持改 善その他経済的地位の向上を図ることを主たる目 的として組織する団体 ※この法律で「労働者」とは、職業の種類を問わず、賃金、給料その他これに準 ずる収入によって生活する者をいう。 14 ちょっと本論から外れますが(2) 労働組合の条件 労働者の労働者による労働者のための 自治組織とは? ①労働者だけで組織されていること →使用者的地位にある者は加入できない ②自発性・独立性が保持されていること →使用者側から経費の援助を受けてはならない ③民主性をもつこと 15 ちょっと本論から外れますが(3) 労働組合の機能 経済的機能: → 労働者相互競争の排除=「労働力の供給独占」 共済的機能: → 労働力の安売り防止=標準労働条件の維持 政治的機能: → 労働条件の法制化 → 社会保障制度 16 ちょっと本論から外れますが(4) 労働組合の形態 職業別組合 ( craft union ) もっとも古いタイプの組合、熟練技能が組合の基本、 就職斡旋、訓練制度 一般組合 ( general union ) 産業別組合 ( industrial union ) 日本は?? 不熟練工も含めて幅広く組織、 労働力の供給独占は困難:政治(立法)活動を重視 特定産業のすべての労働者を組織 労働力の供給規制を重視 産業政策(政治活動)をも重視 17 ちょっと本論から外れますが(5) 労働組合と従業員の関係 クローズド・ショップ制 組合員から従業員を採用 労働組合員であることが雇用(採用)の前提 オープン・ショップ制 従業員への採用の前提条件として組合員であるか 否かを問わない ユニオン・ショップ制 組合員であることを採用条件にはしないが、採用後 は組合に加入しなければならないとするもの 日本の民間大企業ではこのタイプが多い(約60%) 18 ちょっと本論から外れますが(6) 労働三権と不当労働行為 労働三権(労働基本権); 日本国憲法28条 労働組合を作る権利 経営者(使用者)と交渉する権利 その他、集団で行動する権利 不当労働行為 労働基本権を犯すような使用者側の行為のこと 労働組合法第7条でこのような行為を禁じている 黄犬契約も不当労働行為 19 閑話休題!! 労使関係管理の考え方 労働組合を承認する ① ② ③ 考え方 パイの理論を基礎に パイの生産 パイの分配 20 参考までに:パイの理論 労使関係の二元性 第1次関係---経営vs組合=企業外労使関係 労使関係 第2次関係---経営vs従業員=企業内労使関係 パイ=成果(利潤) M W M W 21 具体的には 生産(友好・協力関係) 第2次関係(経営vs従業員)を重視 友好・協力関係を確立する 生産協力のための制度 → 分配(対立関係) 第1次関係(経営vs組合)を穏便に 分配のための制度 → 労使協議制と団体交渉の違いは? 22 団体交渉と労使協議制 労使協議制 joint consultation system とは 労使間で意見交換をする 経営問題(生産問題)= 団体交渉collective bargainingとは 労働条件=パイの分配について話し合う しかし単に話し合うだけでなく、 目的 組合員(従業員)の生産協力 労使関係の安定化 団体交渉の穏便化 23 最後に! 人事労務管理の進化 労働力の効率的利用 適材適所原理による能率向上: 作業(労働)の単純化・標準化・専門化(反復化) 労使関係の安定化 労使関係のあり方の制御が必要となる 組合を承認の上での制御 団体交渉と労使協議制 24
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