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デジタル情報学概論
2004年11月11日 第7回資料
担当 重定 如彦
高度情報通信社会の光と影
インターネットの出現により、ありとあらゆる情報をデジタル
化して通信を行うという高度情報通信社会が訪れ、我々の
社会・生活・文化に非常に大きな影響を及ぼした
その影響の大きさから、インターネットが登場する前の時代
をBI(Before Internet)、登場後の時代をAI(After Internet)と
呼ぶこともあるくらいである
何事にも表と裏があるように、高度情報通信社会にも我々の
生活を便利にする良い面と、悪影響を及ぼす悪い面がある
高度情報通信社会の特徴 その1

空間と時間の超越


インターネットが登場する前
離れた場所で起こった情報を伝える為には時間の制約があった

新聞の場合、編集、発行、購入という手間と時間が必要

TVの場合、番組が限られた時間しか放送されないという制約
インターネットの登場後
世界中がインターネットでつながっているため、情報を編集するという手間は必
要であるが、どんな場所からでも情報を発信し、それを世界中のどこからでも、
いつでも受け取ることが可能になった
インターネットによって、国境によって守られていた近代的な国家の社会制度や
法律が通用しなくなりつつある
高度情報通信社会の特徴 その2

個人レベルでの情報の発信

インターネットが登場する前
世界に向けて情報を発信することができたのはマスコミや政府などの限られ
た機関だけであった

インターネットの登場後
誰でも自分のウェブページを作るなどの方法で、世界に向けて自分の意見を
簡単に発信することが可能になった
一方、個人レベルで誰でも海外の人々とコミュニケーションが容易に行える
ようになった反面、異文化への不理解によるトラブルなどが増加している
高度情報通信社会の特徴 その3

ボーダレスでグローバルな情報化社会の出現

国家だけでなく、地域、会社、家庭などを取り巻く境界(ボーター)の消滅

地域的な境界、組織の中で支えられてきた社会システムの変容

様々な分野の情報が混じりあうようになったことにより、特定の分野の中での
み通用していた様々な法律や制度が従来のままでは機能しなくなっている

新しい情報コミュニケーションの場の形成

官(政府)でも民でも会社でも家庭でもない、新しい情報コミュニケーションの
場の広がりによって、従来では考えられなかったような独創的な事業が次々
と起こされている

一方、従来では考えられなかったような新しい犯罪やトラブルも発生している
⇒既存の世界観が通用しない新しい情報社会の到来
高度情報通信社会の影 その1

ネット犯罪 その1

コンピュータウィルス
電子メールなどを媒体にコンピュータに様々な被害をもたらすプログラム

コンピュータシステムへの不法な侵入
不法にコンピュータに侵入し、重要な情報を盗んだり、システムをダウンさせる
被害の大きさや対象によってはサイバーテロと呼ばれる場合がある

不法コピー
知的財産権の侵害

オンラインショッピングに関する犯罪
オンラインオークション詐欺(金だけ取って商品を渡さないetc.)
クレジットカード番号のスキミング(番号を盗んで不正利用する)
ネット上の仮想世界だけでなく、現実の世界にも被害をもたらす場合がある
高度情報通信社会の影 その2

ネット犯罪 その2

社会的犯罪
ポルノ、詐欺、ねずみ講、不正販売など(ポルノに関しては、1999年に風営法が改正され、
インターネットの有料アダルトサイトが規制の対象となっている)

個人的犯罪
個人に対する誹謗・中傷、個人情報の不正な売買や流出など

嘘や偽の情報
犯罪ではないが、インターネットは容易に匿名で情報を発信することが可能なため、事実
確認の取れていない不確かな情報や、故意に流した嘘の情報などが数多く混じっている

犯罪に対する自衛
実社会と同様にインターネットの利用者にも、良い人と悪い人が存在する
インターネットは便利な面だけが強調されがちであるが、ネット犯罪の存在はれっき
とした事実である。ネット犯罪の被害者にならないためには、どのような犯罪があり、
どうすれば防げるかを知り、自分自身で自衛するしか方法はない
高度情報通信社会の影 その3

健康面への悪影響

電磁波の人体に対する影響
コンピュータや無線通信の際に発生する電磁波が人体に悪影響を与えるといわ
れている。実際に電磁波が人体に悪影響を与えているかどうかは諸説があり、
まだはっきりとしたことは言えていない

ネット中毒
実世界と異なり、インターネットは誰でも匿名でコミュニケーションを行えるため、
現実よりもはるかに気ままな人間関係を持つことが出来る。そのため、インター
ネットの電子メールやチャット、オンラインゲームにはまってしまう人がいる

仕事や食事、睡眠を忘れて電子メールやオンラインゲームにはまる

送った電子メールの返事がすぐに返ってこないと疎外感を感じる

長時間ディスプレイを見ることにより、眼精疲労だけでなく体内に様々な悪影響

ゲームの世界と現実の世界の区別がつかなくなる
ITと社会の関係の再構築

ITによる社会の構造や文化の変化
例えば、地球上のある出来事がほんの数秒で世界中に伝えられ、数時間後に株や
通貨の市場を破綻させるほど乱高下させることがある

国境のない社会基盤
国境を持たないインターネットでは、ある国の法律で禁止されている情報などを、他の
禁止されていない国から容易に手に入れることが可能であるため、特定の国家の法律
が役に立たない場合が多い

異文化とのコミュニケーション
異文化の不理解によるささいな誤解が国家レベルの紛争の原因になる可能性がある
ITが21世紀の最も基本的な社会基盤(インフラストラクチャ)となった今、
ITを利用する時代の基本的な新しい、思想・哲学・倫理観を確立し、社会と
ITとの関係を再構築する時が来ている
行政の情報化 その1

電子政府によるワントップサービス
政府が扱う情報をデジタル化し、ネットワークを使って共有することでこれまでいくつ
もの役所で行う必要のあった手続きを一つの窓口で一括して行うことが可能になる
また、このような電子政府をつくることで、電子申請化や行政事務の情報システム化、
ネットワークを用いた行政情報公開などを行う事も可能

登記情報提供システム
今まで登記所に行かなければ見ることができなかった不動産登記情報をインターネットを
通じてパソコン等の画面上で確認できる有料サービス

電子投票システム
インターネットを使って投票を行うシステム。海外からの不在者投票を容易に行うことが可
能になる。また、投票の集計もコンピュータを使って高速かつ正確に行うことが可能
行政の情報化 その2

特許出願システム

特許の出願の簡略化
特許の出願は、従来は役所に出向くか、弁理士に依頼する必要があったが、
特許庁が提供するソフトを使うことでインターネットを使って簡単に出願を行う
ことが可能になる

審査状況の確認
従来は特許の審査の状況をすぐに確認することは困難であったが、審査の
状況を電子化し、インターネットに公開することで、いつでもインターネットから
すぐに審査の状況を確認することが可能になる
参考:現在特許庁では出願ソフト3というソフトを配布している
行政の情報化 その3

自治体行政の情報化
自治体が管理する住民の4情報と呼ばれる氏名・住所・性別・生年月日を電子化し、
自治体が管理することで、住民票、戸籍謄本、パスポートの発行など、自治体での
行政のワントップ化を行う事が可能
情報通信網を整備すれば過疎地や離島など、それらのサービスを受けるのが困難
な地域でもサービスを受けることが可能になる

住基ネットシステム
住民の情報を専用のコンピュータネットワークで管理し、住民が一人一人自分の個人情
報の入ったICカードを持ち、それを使って様々なサービスを受けるシステム
身分証明や住民票の発行などに使用できる。残念ながら現在ではこれ一つで全ての手続
きを一括して行うことはできないが、ワントップサービスの大きな可能性を秘めている
行政の情報化 その4

行政の情報化の問題点
行政の情報化によるサービスの中で個人情報を扱うものには特に注意が必要である

個人情報の流出の防止
デジタル化した情報がコンピュータのクラックなどにより流出しないことを保障する

偽造やなりすましに対する対策
個人に関する手続きを本人以外が行えないようにする(様々な認証の技術が使われる)
例えば、利用者の確認をICカードをつかって行う場合、ICカードが偽造されたり盗難されても
情報が流出しないことを保障する必要がある

政府による個人の管理の危険性
個人情報を政府が不正に、悪用しないことを保障する必要がある
残念ながら住基ネットは上記のいくつかの点で疑問があるため反発の声も多い
ネットワークコミュニティ その1
場所と時間の制限にとらわれないインターネットを使って共通の興味や関心
を持った世界中の人々がネットワーク上でコミュニティを形成

コミュニティの形成の容易さ
これまでコミュニティが形成されなかったようなマイナーなテーマに対してもウェブや
雑誌などの情報交流手段を使ってコミュニティが形成される

地球サイズでのつながり

複雑な計算をコミュニティで分担
膨大な時間が必要な複雑な計算をコミュニティ参加者のコンピュータで分担作業
注:多くのコンピュータは、一般的に例えばウェブページの内容を読んでいる間など、実際には
計算を行っていない、開いている時間が比較的長時間存在する。この開き時間を利用する
例:白血病解析プロジェクト
白血病の治療のため、白血球の進行を促進するタンパク質を解析するプロジェクト
2600万時間必要であるという解析を参加者の協力で解析時間を短縮する
ネットワークコミュニティ その2
ネットワークコミュニティの効果

地球規模でのコミュニティの形成

興味・関心の輪を作りやすくする

新しい人間関係の形成の場
ネット上だけでなく、実際にコミュニティの参加者が集まるオフ会の開催

情報・科学技術の共有
専門家に独占されていた様々な技術が身近なものに

情報民主主義の到来
知識・情報・技術を共有することで、参加者同士が協議し共に楽しむことが可能
家庭の通信接続環境 その1

電話回線
通常の電話回線でインターネットに接続する方法で、数年前までは主流な接続方法
であった。後述の接続方法と比べて、低速であること、長時間の通信時はコストが
かかる(電話料金がかさむ)ことから、家庭の接続環境としては押され気味である

ISDN
ITU-T(電気通信標準化部門)によって定められた世界共通の規格。サービス総合
ティジタル網とも呼ばれる。電話回線と異なり、情報をデジタルで転送する、
ノイズの影響を受けにくい、通常の通話と同時に通信を行えるなどの利点がある

ADSL
電話回線を使った通信だが、会話で使用しない高い周波数を使って通信を行う

数メガビット/秒という高速な通信が可能
定額料金で通信が可能
 通常の会話と異なる周波数を使って通信を行うので、通話と同時に通信が可能

家庭の通信接続環境 その2

CATV(Cable Television)
ケーブルテレビ(有線のテレビ信号を受信するサービス)を使った接続サービス
CATVは元は山間部や人口密度の低い地域など、地上波テレビ放送の電波が届
きにくい地域でもテレビの視聴を可能にするという目的で開発された
インターネット通信にも同じ回線を利用できることから、家庭用の通信接続環境とし
て使われている。また、TV局とその付近の地域を結ぶネットワーク回線として利用
できるため、地域ネットワーク網としても利用されている場合が多い

光通信
家庭に光ファイバーを引くことで、非常に高速な通信を実現
2005年を目標にFTTH(Fiber To The Home)の整備が行わているが、Bフレッツ
など一部の都市部ではすでに家庭で光通信を利用できる場所も存在する
ライフスタイルの変化

携帯文化
携帯電話の爆発的な普及が、我々のライフスタイルを変化させている


親指文化(親指だけで情報のやり取りが可能)

耳の不自由な人にとってのコミュニケーションツール

メールによるコミュニケーションの拡大 (メル友という新しい言葉が出現)

遠距離コミュニケーション
これまででは考えられなかったような遠隔地の人にコミュニケーションが可能

人見知りなどの解消
口では言えないようなことも電子メールならば伝えることができる
バーチャルショッピング
ショッピング、ホームバンキング(銀行の口座振込みなど)、株式の売買注文、電車や航空機の
予約などを、携帯電話や自宅のパソコンから行うことが可能

SOHO(Small Ofiice Home Office)
情報通信システムを利用した在宅勤務の実現
特にアメリカのように広大な国ではSOHOを利用することで通勤時間の問題を解消
家庭内ネットワークの標準化

家庭内LANの標準化
家庭内のコンピュータや様々な機器を接続する為の規格の標準化
電話回線や、無線を使って家庭内の機器を使ってコントロールが可能

家庭内のコンピュータを接続
異なった部屋のコンピュータのデータを共有

家庭内のテレビ、ビデオなどの家電製品を接続
隣の部屋のプリンターで印刷を行う

家の外から携帯電話などを使って家庭内の機器をコントロールする

ビデオの予約

戸締りの確認
帰宅にあわせて風呂を沸かす etc.

学校のインターネット環境

文部省の指導により全ての学校でインターネット環境を整備
学校の場でコンピュータネットワークを使った様々な利用例


インターネット環境での分散協調的学習支援(学校グループウェア)

分散協調的なマルチメディアデータの利用

コンピュータ支援による協同作業・協同学習
教材のインターネット化

紙ではなく、WWWを使って教材を配布

インターネットを使った通信教育(家庭にいながらにして授業を受けられる)

インターネット入試

インターネットを使った就職活動
募集、面接、採用などの情報をインターネット(WWWや電子メール)を使って行う
世界に開かれたボーダレス教室
学校のインターネット環境の整備と共に、インターネット上に様々な勉学
の交流の場としてのコミュニティを作成
教室が学校や国境を越え、世界的な広がりを持ってきている

インターネットによる講演会

子供向けの検索システムの提供

国内や、海外との学校とのインターネットを使った交流

電子メールやWWWを通して世界的な環境学習プロジェクトに参加

文部省と通産省が共同で行っているEスクエアプロジェクト(現在終了)や
その後継のEアドバンスプロジェクトなどがある
CAI・CMI

CAI(Computer Aided Instruction)
「コンピュータ支援教育」の略。子どもの教育(主として学校教育)にコンピュータを
活用すること。近年では娯楽と学習を融合し、楽しみながら学ぶことができるという
「エデュテインメントソフト」というジャンルが育ちつつある

CMI(Computer Managed Instruction)
「コンピュータ管理教育」の略。成績処理、入試管理など、教育に関する様々な事
務処理にコンピュータを活用すること。従来手で行っていた様々な事務処理をコン
ピュータで正確に高速で行うことが可能になった

CAI・CMIソフトの流通
教師などが自作したCAI・CMIのソフトがフリーソフトやシェアウェアとしてインター
ネット上に公開され、流通しはじめており、子供たちがそれらのソフトを使って自宅
で学習することが可能になっている
デジタル辞典・事典・図鑑
従来は、情報を調べるためには図書館で、事典や図鑑などを調べる
必要があったが、これらはほとんど紙に印刷されていた。これらの辞典・
事典・図鑑をデジタル化し、コンピュータネットワーク上に公開されている

情報の検索をより容易に効率的に行うことが可能

紙では実現不可能なマルチメディアデータを扱うことが可能
動画、音声などのマルチメディアデータを扱うことができる
視覚・聴覚に訴える、魅力的なコンテンツを提供可能

資料の整理が容易
検索した情報の保管、コピー、印刷などが容易に行える

同時に複数の人が同じ資料を閲覧可能
他の人物が資料を借りているために見ることが出来ないということがない

能動的な情報検索が可能
ハイパーテキストを使って、関連する情報を容易に辿ることができる
能動的に興味のある情報を辿ることで、理解を深めることが可能
遠隔教育・学習システム
インターネットを使って動画をリアルタイムに通信することで、離れた
場所で相手の顔を見ながら会議を行うことが可能(テレビ会議)

教室の壁、時間の壁を越えた新しい方式の学習

世界中の有用な情報の受信者になれる

世界中に自分の意見を発信できる

インターネット、通信衛星、地上波放送を使った遠隔教育
自宅にいながら、いつでも教育をうけることも可能に
近年になって、その内容が多様化し、充実しはじめている

NHK教育放送

放送大学

バーチャル大学(インターネットを使って大学の単位が取れる)

アメリカでのWBT(Web Based Training)の普及