2002年12月21日 日大文理 次々期情報科カリキュラムへの提言 杉田公生(東海大・理) 土田賢省(東洋大・工) 宮寺庸造(学芸大) 夜久竹夫(日大・文理) 第113回応用オートマトン研究会 1.はじめに • 平成2003年4月高等学校、情報科設置(数 学、理科と並列) • 情報科カリキュラムの運用を検討 (西野編、情報科教育・・・、丸善、2001) • 検討結果に基づく次々期カリキュラム案 (教育システム情報学会情報教育特別委員 会に報告予定、2002) 2.検討課題 • 検討の過程で出た問題点(以下) (1) 情報科とは何か • 情報科の概念に共通のコンセンサスが無い。 • 情報科の対象:コンピュータ、ネットワークなどの情 報システムのアーキテクチャとデジタル画像やアル ゴリズムなどのソフトウェア(一致) • 一方の意見:情報教育は家庭科のような技能教育 →普通教科情報の基本的考え方 • 一方の意見:情報教育は理科や数学と同じ学問教 育→専門高校対象の専門教科情報 • 情報科免許:普通教科情報と専門教科情報で共通 →情報科教員には専門的知識を要求 • 情報科の構成:情報活用能力(コンピュータリテラ シー)と情報の科学的理解(情報科学)、情報と社会 (情報倫理)、3分野 (2)情報の科学的理解、とは何か • この問題でも、しばしば議論があった。 • 一部の人たち:“情報の科学的理解”は情報 科学のことでは無い • 我々:情報の科学的理解は、情報科学という 意見→情報教育の世界では多数派とは言え ない。 (3) プログラミング教育 • 我々の考え:情報教育の中心はプログラムと アルゴリズム。 • H15情報科カリキュラムでは、プログラミング を対象にしない • アルゴリズムは対象に含まれている • プログラミングは、従来は教科数学で管轄 (4)高校で情報科は必要か • コンピュータサイエンティストの中でも、一部の人は、 高校では数学をきちんと教えた方が良いという意見。 • 我々は、形式的なロジックなどは情報科できちんと 教えるべきだと考えた。 • 情報科の時間数が増える⇒数学と理科の時間数が 減る⇒情報科で科学教育をしない場合は、高校教 育から科学教育が減る。 • 従って、我々は情報科でも科学教育を重視する。 (5) 情報システムを使う立場と作る立場 • 普通科情報科カリキュラム:ユーザ育成に重点。 • 設計者や保守する人の養成を重視しない→原理的 なことは歓迎されない。 • 社会今後の予想:従来の産業構造が変わって情報 通信産業の比重が大きくなる→情報通信技術に関 する理解者と開発者数の増大が必要 • 従来の教育だけではその担い手の養成は難しい • 作る立場を重視するよう考慮しながら検討を進めた。 3.次々期情報科カリキュラム案の概要 1. 2. 3. 4. 5. 情報科とは何か?→技能より学問 情報の科学的理解とは?→情報科学 プログラミング教育→管轄する 高校で情報科は必要か?→科学教育補完 作る立場と使う立場→作る立場重視 • • 分野を均等に(各分野5) 各分野の目標を明示する。 3.1 総論 • • • • • • IT技術の原理を理解させる事に重点を置く 活用能力は社会情勢に合わせて教授する。 ワープロなどは詳しく教えない←中学改訂。 エクセルの詳細は数学科にまかせる。 選択科目を8単位20項目新設する。 情報の科学的理解を10項目から17項目に 増やす 3.2 位置づけ H15普通科カリキュラム ⊂次々期カリキュラム案 ⊂H15専門情報科 ⊂岡本科研案 ⊂H15免許課程認定 3.3 各分野の目標一覧 • 各分野の目標は以下の通り: 分野 基本概念 理解項目 コンピュータ ビット列計算、コンピュー 速度と素子数の関 タの5大要素 係 簡単な接続 情報処理 アルゴリズムの基本要 素 問題とサイズの関 係 プログラム解読 ネットワーク プロトコルとアドレス 速度と設備の関係 インターネット設 定可能 マルチメディア ビット表現 表現とサイズの関 係 メディアの合成・ 変換 情報システム 入出力とオブジェクト、情 メニュー品種とサイ 報モデル ズの関係 実技項目 (到達レベル) Eコマースサイト の解読 注 • 項目数と単位数の関係:週2時間年間36週 (30週)で4単位 • 12単位30単元を必修とする。 4.各科目の詳細 4.1 情報A(1年次必修) 項目 分野 (1-ア)コンピュータ周辺機器 コンピュータ (活用) (1-イ)ソフトウェアの分類 コンピュータ (活用) (1-ウ)ファイルの種類 コンピュータ (活用) (1-エ)ファイル操作実習 コンピュータ (活用) (2-ア)メール ネットワーク (活用) (2-イ)プロトコル ネットワーク (科学) (3-ア)情報機器の種類 マルチメディア (活用) (3-イ)文書メディア マルチメディア (活用) (3-ウ)マルチメディア マルチメディア (科学) (3-エ)情報著作権 マルチメディア (社会) 4-2 情報B(2年次必修) (1-ア)コンピュータ仕組み コンピュータ (科学) (1-イ)情報とビット表現 コンピュータ (科学) (2-ア)プログラム 情報処理 (科学) (2-イ)プログラミング実習 情報処理 (科学) (3-ア)アドレス方式 ネットワーク (科学) (3-イ)ネットワーク設定実習 ネットワーク (活用) (4-ア)情報システム 情報システム (科学) (4-イ)データ検索 情報システム (活用) (5-ア)標本化とビット化 マルチメディア (活用) (5-イ)静止画と動画の仕組み マルチメディア (科学) 4.3 情報C(3年次必修) 項目 分野 (1-ア)情報モデル 情報処理 (活用) (1-イ)表計算実習 情報処理 (活用) (1-ウ)グラフ作成 情報処理 (活用) (1-エ)アルゴリズム 情報処理 (科学) (2-ア)ネットの仕組み ネットワーク (科学) (2-イ)インターネットモラル ネットワーク (社会) (3-ア)eコマース 情報システム (活用) (3-イ)情報システムの仕組み 情報システム (科学) (3-ウ)ネットプログラム 情報システム (科学) (3-エ)情報と社会 情報システム (社会) 4.4 選択科目(1) 情報1A(情報活用) 情報1A(情報科学) 項目名 項目名 (1-1)プレゼンテーショ ン (1-2)文書作成 (4-1)暗号と符号理論 (1-3)HTML言語 (4-3)WWW (1-4)コンピュータデザ イン (1-5)図形処理 (4-4)社会情報システム (4-2)インターネット (4-5)オペレーティングシ ステム 4.5 選択科目(2) 情報3(プログラミング) 情報2B(コンピュータ科学) 項目名 項目名 基本制御構造 (4-1)コンピュータの歴史 配列 (4-2)計算機の歴史 線形探索 (4―3)スイッチング回路 整列 (4-4)オートマトン 数値計算と図形描画 (4-5)チューリングマシン 5 各項目間の連関関係 (1)コンピュータ分野 分野 情報A 情報B コン ピ ュ ー タ (1-ア)コン ピュータ周辺 機器 (1-ア)コン ピュータ仕 組み (1-イ)ソフトウェ アの分類 (1-イ)情報と ビット表現 (1-ウ)ファイル の種類 (1-エ)ファイル 操作実習 情報C 項目 数 6 (2)情報処理分野 分野 情報 処理 情報A 情報B 情報C 項目 数 (2-ア)プロ グラム (1-ア)情報モデ ル 6 (2-イ)プロ グラミング実 習 (1-イ)表計算実 習 (1-ウ)グラフ作 成 (1-エ)アルゴリ ズム (3)インターネット分野と (4)情報システム分野 分野 情報A 情報B 情報C イン (2-ア) メール タ ー (2-イ) ネ プロト ッ コル ト (3-ア)アドレス 方式 (2-ア)ネットの仕組 6 み (3-イ)ネット ワーク設定実 習 (2-イ)インターネッ トモラル 情報 シ ス テ ム (4-ア)情報シ ステム (3-ア)eコマース (4-イ)データ 検索 (3-イ)情報システ ムの仕組み (3-ウ)ネットプログ ラム (3-エ)情報と社会 項目数 6 (5)マルチメディア分野 分野 情報A 情報B マルチメ (3-ア)情報 ディ 機器の種 ア 類 (5-ア)標本 化とビット 化 (3-イ)文書 メディア (5-イ)静止 画と動画 の仕組み 情報C 項目 数 6 (3-ウ)マル チメディア (3-エ)情報 著作権 項目数 合計 10 10 10 30 まとめ 評価 • 目標 科学的理解の徹底 • 結果 – 分かりやすい目標の提示を試みた – 全体の流れを科学的原理にもとづき構成した – 選択科目の詳細は再検討の必要 今後の課題 • 分野別のわかりやすいコンセプトの徹底 • 全体の流れをもっと分かりやすくする • 各項目の詳細の検討
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