第5回 官僚制について 公共政策大学院 鈴木一人 [email protected] 1 官僚制はどのような制度か 行政を執り行う国家の執行権を補佐する制度 権力者がすべてを行うことができない しかし「補佐」である限り、官僚は決定権を持たない ただし法律や命令を解釈する「裁量」は持つ そのため官僚制は以下のような特徴を持つ 何らかのルールや規則が基準となって運営される ピラミッド型の組織で上意下達の命令系統 組織内での評価は貢献度によって決まる 細分化された専門性と分業体制 2 官僚制の展開 中世から近代への展開 国王の支配強化→個人的な忠誠からシステムへ 近代的な王権システムがない国(米加豪など)は? 合理的な組織(ウェーバー) 行政は合理的に行われる 目的合理性と価値合理性 組織が持つ目的に対して合理的に行動する 組織が持つ価値や原則に対して合理的に行動する 目的のためにはどのような手段を取ってもよい 価値に合理的であるなら目的は達成されなくてもよい 3 官僚制の「逆機能」 官僚制は行政を動かすためには不可欠 しかし、その特徴から様々な副作用がある 規則万能主義→ルールを杓子定規に適用する 事なかれ主義→手段が合理的であれば結果責任はない 前例主義→前例がなければ新たなことには挑戦しない 権威主義→権力者の代理として対処する/上司による評価 文書主義→万事を文書化し、それ自身が目的となってしまう タテ割り主義→自分の仕事だけやっていればよい 集団的無責任→責任は自分以外の誰かが持っているはず 予算拡大主義→評価の基軸が予算(組織のリソース)の拡大 いわゆる「お役所仕事」「官僚主義」と呼ばれる 官僚制は行政組織だけではない→「大企業病」 4 日本の官僚制 官僚内閣制(『統治の構造』飯尾潤) 弱い政治的なコントロール 権力争いと大臣ポストの順送りシステム 民意の集約をする必要性がなかった 政官関係の逆転 政策立案は官僚が主導権を握り、閣僚は形式的に追従 省庁が民意を吸い上げ、利益を調整する機能を持った 政治による命令ではなく、官僚による「振付」 議院内閣制が持つ権力の集中機能の不全 官僚の「無謬性」→間違いを犯さない機関 秘密主義による失敗の隠蔽 5 国連は巨大な官僚組織 193ヵ国からなる複雑な国際機関 異なる行政規範・文化を持つ人々が共同で働く 意思決定機関は加盟国による総会・理事会 ルールに基づく管理の徹底 文書による手続きと決定(公用語は6つ) パーキンソンの原則+非効率な組織運営 機構改革がキーワードとなっている 共有される行政規範 各国エリートによる集合体→欧米での経験が長い 採用プロセスの官僚化→画一的・均質的な人材 6 (参考)講義の進め方 講義は試験以外、紙を配布しない(ペーパーレス) パワーポイントのスライドはウェブで公開する http://lex.juris.hokudai.ac.jp/~kazutos/intro2016/index.html 講義前日までにはアップロード/事前に入手し予習する パワーポイントのデータを使いやすいように改変すること は可。しかし、データを無断で再利用するのは禁止 授業はパソコン・タブレット持込み可。 質問はメールで受け付ける 講義当日中の質問に対してはウェブ上で回答する コメントや希望・要望などでもよい 7 (参考)シラバスからの変更点 成績について レポートテーマ:「民主主義・政党・官僚制の三つのキーワ ードを使って、現代日本の政治について自由に論じなさい」 提出日:5月31日23:59 提出方法:メールで提出([email protected]) 2000字以上(Wordで作成) 「論文作成ガイドブック」参照 シラバス:「毎回の授業の際に課すレポート(講義のまとめと質問) が50%、期末試験(論述と穴埋め)が50%」 変更後:「中間レポートが50%、期末試験(論述と穴埋め)が50%」 教室入退室時にカードリーダーに学生証をかざすこと http://lex.juris.hokudai.ac.jp/~kazutos/guide/guide.pdf http://www.juris.hokudai.ac.jp/~kazutos/guide/guide2.doc 参考文献、注は必ずつけること 8
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