110930 GCOE若手フォーラム

海馬ニューロンの分散培養法について
森 靖典
生命科学研究科・
膜輸送機構解析分野
(福田研究室)
e-mail: [email protected]
トピックス
・海馬ニューロン分散培養法
・私たちの研究室での研究内容(膜輸送について)
1
分散培養による神経細胞の観察
利点
・軸索、樹状突起の観察が容易
・ほぼ単一の神経細胞を得ることが可能
(海馬から摘出した場合は90%以上が興奮性の錐体神経 (pyramidal neuron))
・遺伝子導入が容易(リポフェクション法)
・神経が成熟するまで長期培養できる→シナプス(軸索と樹状突起の接合部)の
観察も可能
etc....
欠点
・細胞が移動しない→層構造などの研究には不向き
・グリア細胞が存在しないので、グリア細胞による影響がわからない
・ディッシュ上の現象と、実際の脳内での現象で違う場合もある
・ニューロンが分散された状態なので、実際の神経回路は構築できない
etc....
2
海馬ニューロン分散培養法の
大まかな流れ
1.海馬の摘出
↓
2.海馬をトリプシン処理
↓
3.細胞をディッシュへ
↓
恒温室内で培養
Gary Banker
(Oregon Health and
Science University)
http://www.ohsu.edu/xd/research/centersinstitutes/neurology/jungers-center/research/bankerlab.cfm
(Kaech S and Banker G 2006)
(Banker GA and Cowan WM 1977)
摘出した海馬からニューロンを培養する方法は古くから確立されている
なお、この手法は別名 Banker Methodとも呼ばれている 3
海馬ニューロン分散培養法で
使用する道具
・実体顕微鏡
実体顕微鏡
(M50, Leica)
・解剖ばさみ
・No5ピンセット
etc...
4
1.海馬の摘出
1.海馬の摘出
↓
2.海馬をトリプシン処理
↓
3.細胞をディッシュへ
↓
恒温室内で培養
(Viesselmann C et al 2011)
胎生16.5日目のマウスから脳を取り出し海馬を摘出する
(この時期の大脳では神経幹細胞が豊富に存在する)
5
2.海馬のトリプシン処理
1.海馬の摘出
↓
2.海馬をトリプシン処理
↓
3.細胞をディッシュへ
↓
恒温室内で培養
(Viesselmann C et al 2011)
トリプシン処理とピペット操作による物理的な力で
組織から細胞を引きはがす
6
3.細胞をディッシュへ
1.海馬の摘出
↓
2.海馬をトリプシン処理
↓
3.細胞をディッシュへ
↓
恒温室内で培養
ガラスが入っているデッシュに細胞をまく
(顕微鏡下での観察のため)
(Viesselmann C et al 2011)
3日後にAraCという薬剤を加えて、神経以外の細胞を殺す
(AraCは分裂する細胞特異的に影響するが、神経細胞は非分裂なので影響はない)
7
神経細胞の発生の様子
1.海馬の摘出
Stage 1
↓
(0 hour)
2.海馬をトリプシン処理
↓
3.細胞をディッシュへ
↓
Stage 2
恒温室内で培養
(6 hour)
Stage 3
(24 hour)
まだ神経突起を伸ばしてい
ない状態
神経突起を伸ばし始める。
ただし、軸索、樹状突起の
運命決定はまだなされていない
神経突起が一本の軸索と
数本の樹状突起に決定される
(Dotti CG et al 1988)
8
軸索と樹状突起の伸長の様子
1.海馬の摘出
↓
2.海馬をトリプシン処理
↓
3.細胞をディッシュへ
↓
恒温室内で培養
http://www.youtube.com/watch?v=EP4yeyD8ktY
軸索と樹状突起では突起の伸長パターンが異なる
9
神経細胞への遺伝子導入
共焦点レーザー顕微鏡 (FV-1000, Olympus)
Lipofectamine 2000(リポフェクション法の試薬)を用いて
GFP遺伝子を導入して、共焦点レーザー顕微鏡による観察した画像
GFPにより神経の形態観察技術が飛躍的に向上した
10
成熟した神経細胞でのシナプス観察
プレシナプス;
軸索側、シナプス小胞の集積
ポストシナプス;
樹状突起側、スパインと呼ばれる
キノコ型の突起が形成され
そこに受容体が集積
21 DIV (day in vitro)
ポストシナプスマーカー プレシナプスマーカー
(Okabe S et al 1999)
樹状突起マーカー
合成像
11
膜輸送とは?-小胞について小胞:様々な物質や膜タンパク質が存在している膜
(小胞内物質:神経伝達物質 、ホルモン、メラニン、etc)
(膜タンパク質:トランスポーター、受容体、etc)
小胞(膜)は必要に応じて、
細胞内の様々な場所に輸送される
12
膜輸送に関する研究
-小胞(膜)の輸送の仕組みを調べる-
Stenmark H (2009)
Nat. Rev. Mol. Cell
Biol 10:513-525
国内には様々な交通手段があるのと同様に、
細胞内には小胞を運ぶために様々な交通手段がある
↓
私たちは、細胞の交通事情を研究しています
13
神経細胞の交通事情は?
receptor , etc
neurotransporter , etc
軸索には神経伝達物質の放出
に関わる分子が選択的に
運ばれる。
一方、樹状突起には神経伝達
物質の受容体分子が選択的に
運ばれる
↓
そのメカニズムは?
神経細胞における選択的な輸送メカニズムは、
まだ明らかになっていない部分が多い!
14
軸索もしくは樹状突起特異的な輸送メカニズム
の解明に向けて
モデル
receptor , etc
東海道新幹線
東北新幹線
neurotransporter
, etc
軸索もしくは樹状突起への特異的な輸送に関わる分子が
存在するのではないだろうか?
15
参考文献
Banker GA, Cowan WM (1977) Rat hippocampal neurons in dispersed cell culture. Brain Res. 126:397-342
Kaech S, Banker G (2006) Culturing hippocampal neurons. Nat Protoc 1:2406-2415
Dotti CG, Sullivan CA, Banker GA (1988) The establishment of polarity by hippocampal neurons in culture. J.
Neurosci 8:1454-1468
Okabe S, Kim HD, Miwa A, Kuriu T, Okado H (1999) Continual remodeling of postsynaptic density and its
regulation by synaptic activity. Nat. Neurosci 2:804-811
Viesselmann C, Ballweg J, Lumbard D, Dent EW (2011) Nucleofection and Primary Culture of Embryonic
Mouse Hippocampal and Cortical Neurons. Journal of Visualized Experiments
・田中秀和 海馬ニューロンの培養 日薬理誌 第119巻 163-166頁 2002年
・岡戸晴生、他 脳・神経研究プロトコール-細胞培養から機能解析へ 79-85頁 羊土社 1997年
・脳・神経研究の進めかた 羊土社 1998年
・京都大学・大学院薬学系研究科・生体分子認識学分野・ラボプロトコル・海馬神経初代分散培養法
http://www.pharm.kyoto-u.ac.jp/biochem/kaiba.htm
・東京医科歯科大学・大学院・病体代謝解析分野・実験プロトコル・海馬神経初代分散培養法
16
http://www.tmd.ac.jp/med/mmch/protocol/1-6.html