環境中性子検出の予備実験として中性子線源でテストを行う。

環境中性子モニターのための予備実験
第39回 日本物理学会新潟支部例会
2010年12月4日 長岡技術科学大学
石田恭平, 川崎健夫, 高橋克幸
小野裕明A, 宮田等、宮本賀透
新潟大学, 日歯大新潟A
研究目的
1. 小型可搬型検出器を用いて、今まで測定されていな
い様々な地点での環境中性子量を測定する。
2. 主な環境中性子起源 : 宇宙線による核破砕
3.その他の環境中性子要因
(不安定核を含む)岩盤中の原子核崩壊による放出
–核廃棄物等が存在した場合、中性子量が増加
–
4. 様々な地点に移動しながら測定する為
「小型化」、「可搬型」にする。
→中性子検出効率を高める工夫が必要
本研究では、ガドリニウムを中性子吸収体に用いた
小型検出器のプロトタイプを作成しその性能評価を行う。
検出原理
ガドリニウム(Gd)を用いる事で中性子を効率よく検出する。
合計8MeVのガンマ線
陽子
Gd
中性子
熱中性子
中性子は陽子と衝突しながらエネルギーを失い熱化する。
熱中性子化するとGdに吸収され、合計8MeVのガンマ線を放出する。
そのガンマ線をガイガー・ミュラー計数管(GM管)や結晶シンチレータ
を用いて検出する。
ガイガー・ミュラー計数管:ガンマ線計数が可能なガス検出器
GM管を用いた検出器
1. 市販のGM管を用いて中性子検出器を作成
(GAMMASCOUT GmbH/ドイツ)
2. 中性子の減速、検出の為に
ステアリン酸ガドリニウムを使用する。
3. ステアリン酸ガドリニウム(C17H35COOH)の利点
– 水素原子を含むために中性子減速材となる。
– ガドリニウムにより熱中性子吸収効率が高い。
環境中性子検出の予備実験として中性子線源でテス
トを行う。
実験セットアップと結果
ガドリニウム有りの場合
36cm
測定時間:12時間
GM管 : 1時間毎計測数を記録
ガドリニウムの有無で比較する。
鉛ブロック
ステアリン酸ガドリニウム粉末
ホウ素入りポリエチレンブロック
241Am/Be中性子線源
12時間測定結果
ガドリニウム無しの場合
36cm
中性子線源
Gd有り
Gd無し
線源あり
6064カウント
6006カウント
線源無し
6064カウント
6030カウント
ガドリニウムの有無で優位な差は見
られなかった。
GM管を用いた測定のまとめ
1. GM管、ステアリン酸ガドリニウムを用いて
中性子信号の測定を行った。
2.中性子捕獲信号によるカウント数の増加は
観測できなかった。
3. 中性子吸収体であるガドリニウムを覆う検出器領
域が小さいため、検出効率が悪かったと考えられる。
→GM管の数を増やすことを考える
GSOZ結晶シンチレータを用いた
中性子検出器
GSOZ(Gd2SiO5Zr)結晶シンチレータ
陽電子画像診断(PET)に用いられる市販の結晶シンチレータ
-サイズ:4×6×20
mm (日立化成)
-密度がNaIと比較して大きい(6.7g/cm3)
-NaIと比較して信号が早く、潮解性がない
-内部にガドリニウムGdを含む
中性子検出器に応用できる可能性
NaI
GSOZ(Gd2SiO5Zr)
3.67
100
6.71
20
放射長(cm)
1.38
2.59
減衰時間
数usec
30~60ns
密度(g/cm3)
蛍光出力
NaI(TI):100
今回は環境中性子検出の
予備実験としてGSOZ結晶
シンチレータのエネルギー
較正を行う
実験セットアップ
GSOZ結晶シンチレータ
2inch PMT GSOZ(Ce) 2cm
Muon veto 検出器
6mm×2個
=1.2cm
Φ5mm
4mm
31.1mm
線源
21mm
31.5mm
鉛のコリメータ
シールド (最低でもそれぞれ5cmの厚さ)
白:ホウ素入りポリエチレンブロック
灰色:鉛ブロック
線源
8
線源からGSOZまで1cm
データ取得ロジック
Delay
PMT
Discri
ADC
G.G.
Gate
veto
PMT
Discri
VME ADCを用いてデータを取得
G.G.
Muon veto
*
信号
GSOZ結晶
50ns
Gate
Muon veto
350ns
100μs
9
* 信号の幅は約200ns
60Co線源でのエネルギー分布
60Co
Β-
2.505
γ1
1.332
γ2
0
60Ni
Γ1: 1.17MeV(100%)
Γ2:1.33MeV (100%)
1.17MeV
のピーク
エネルギー分布は
「コンプトンエッジ」と
「2つのガンマ線吸収ピーク」
が確認出来る。
1.33MeV
のピーク
コンプトンエッジ
一次直線+2つのガウス関数
でフィッティング
10count/bin
エネルギー較正(1)
エネルギー直線性
直線からのばらつき
μ0:1862
σ0: 60.44
μ1: 2160
σ1: 65.16
較正値:1609 ADCカウント/MeV
ばらつきは+-1.5%以内
エネルギー分解能評価
1.17 MeV ピーク
σ0
0
 3.2%
s/ (%)
1.17, 1.33 MeVの二つのガンマ線吸収ピークから
エネルギー分解能を評価する
エネルギー分解能
1.33 MeV ピーク
σ1
1
 3 .0%
エネルギー分解能 : 7% (FWHM)
E

E
3.33%
E (MeV )
GSOZ結晶の測定のまとめ
環境中性子観測の予備実験として、
GSOZ結晶シンチレータのエネルギー較正を
60Co線源を用いて行った。
(1) エネルギー分布の評価
→ コンプトンエッジ、1.173MeVと1.33MeVの
吸収ピークを観測しフィッティングを行った。
(2) 2つの吸収ピークからのエネルギー較正、
分解能評価を行った
→ エネルギー較正値:1609 ADC/MeV
E

→ エネルギー分解能:
E
3.33%
E (MeV )
今後の予定
1. GM管を用いた検出器
(1)検出器数を増やしアクセプタンスを増やす。
(2)長時間測定を行う。
(3)カリフォルニウム(Cf)線源を用い、中性子入射数を
増やしてみる。
2. GSO結晶シンチレータを用いた検出器
実際に241Am/Be線源からの中性子測定を行う。