み へび 巳(蛇)にまつわる民話 ヘビの宝(東京都) むかしむかし、江戸のある町で、たくさんの ヘビが坂道の途中(とちゅう)に集まって重な り、なわであんだおけのようになっていまし た。 あまりにもめずらしい光景なので、坂道を ゆきかう人々は足を止めてながめていまし た。 1 ヘビの宝(東京都) するとその話を聞いた近くに住む十四歳の 千吉(せんきち)と言う男の子が、急いでその 坂へ走って行きました。 そしてとぐろを巻いておけのように重なり あっているヘビのかたまりの中へ、いきなり 手を突っ込んだのです。 「おいおい、馬鹿な事をするな。ヘビに噛(か) みつかれたら、どうするんだ」 見ている人たちが心配して言いましたが、 千吉は平気な顔でニッコリしました。そして 突っ込んだ手の先で何かをつかむ 2 ヘビの宝(東京都) と、引き出した千吉の手には古い銅銭(どう せん)が一枚にぎられていたのです。 千吉は小さい時に死んだおばあさんから 聞いた話を、ずっと覚えていたのです。 千吉のおばあさんは、こう言ったのです。 「いいかい。ヘビがたくさん集まっている所は ヘビ塚(づか)と言って、その中にはヘビの宝 があるんじゃ。その宝を手に入れた者は運 が開けて、一生お金に困ら 3 ヘビの宝(東京都) ないというぞ。もしも、ヘビ塚を見つけたら怖 (こわ)がらずに手を入れてみなさい」 おばあさんが言った事は、本当だったので す。 そのヘビの宝である銅銭を大切にした千 吉は、それからどんどん運が開けて大金持 ちになったという事です。 おしまい 福娘童話集許可転載<http://hukumusume.com/douwa/> 4 ヘビの宝(東京都)
© Copyright 2024 ExpyDoc