hakuhodo

Hitotsubashi University
Numagami Seminar 2004
デンパクがハクデンになる日は来るか
Ⅰ、業界の現状分析
Ⅱ、業界の収益構造
Ⅲ、博報堂の現状分析・戦略的課題
Ⅳ、博報堂のとるべき戦略
Ⅴ、博報堂の戦略に対する他社の反応
Ⅵ、まとめ
2004年10月7日
Numagami Seminar
Okada Research Team
1.1 業界の現状分析(売上高対GDP比)
・対GDP比が1%前後の「景気連動型産業」。
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1.2 業界の現状分析(売上高推移)
・1965年頃から成長期に突入。
・1992年頃から成熟期に突入。
70000
(億)
60000
50000
40000
その他
テレビ
ラジオ
雑誌
新聞
30000
20000
10000
0
1960年
1965年
1970年
1975年
1980年
1985年
1990年
1995年
2000年
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1.3 業界の現状分析(市場シェア)
・市場シェアは一部の上位企業に集中。
・大手と中小間の格差が大きい。
・電通の力が圧倒的に強い。
1971年市場シェア
2001年市場シェア
25%
24%
46%
50%
7%
2%
2%2%2%
12%
3%
2%
5%
1%1%2%2% 3% 3%
6%
電通
博報堂
ADK
東急エージェンシー
大広
読売広告社
I&S/BBDO
マッキャンエリクソン
朝日広告社
その他合計
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2.1 業界の収益構造(コンペ方式)
◆基本となるのは「コンペ方式」
商品ごとに広告主が取引先の広告会社数社に概要を提示
↓
概要に沿った広告案を各社がプレゼンテーション(コンペ)
↓
コンペに勝った1社がその商品のCM
(広告枠獲得およびCM製作)を手がける
D代理店
広告主
H代理店
コンペ
受注決定
③コンペで勝つ
①依頼
A代理店
②広告案作成
2.2 業界の収益構造(コミッション)
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◆広告枠販売による手数料:コミッション
・メディアの持つ広告枠を広告主に売ることで、メディアからその見返り
として手数料をとる。
・手数料相場は15~20%。
⇒広告代理店の売り上げの大半を占める。
・広告会社の中抜きは行われていない。
(メディアは広告枠を広告会社に専売)
・時間や視聴率によって広告枠の値段は変化。
・テレビやラジオの放送局は広告収入が収入の大半。
②広告枠販売
広告主
③枠代金
①広告枠販売
代理店
④枠料金
⑤取引手数料
メディア
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2.3 業界の収益構造(フィー)
◆広告の企画や制作の料金:フィー
・CMの企画制作や、マーケティング調査などにかかった費用を広告主へ請
求する。
・こちらも手数料相場は15%程度。
⇒現状では、広告会社にとって制作は媒体の広告枠を売る時に付随する
サー ビスのようなもので、重要度は高くない 。
①依頼
広告主
④納品
⑤代金支払い
②依頼
代理店
③納品
製作部門
調査部門
(外注あり)
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2.4 業界の収益構造(現状)
◆収益構造の現状
・現在は広告主に対して媒体料金とフィーが合算されて請求されているた
め、媒体料金とCM制作費が実際どの程度なのかが不明確。
・欧米などでは、媒体獲得と広告制作をする会社が分かれており「広告会
社は広告制作に専念する」というフィー制度が主流。
・コミッション収入が大半を占める日本ではこの制度は浸透せず、社内で
媒体獲得部門と広告制作部門として別れているだけである。
外国は分かれている
広告主
広告制作
媒体獲得
日本は同一社内に部門として存在
メディア
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3.1 博報堂の現状分析(博報堂について)
◆基本的性格
・電通同様、ラジオ・テレビ広告に
積極的に進出していったことによ
り急成長。
上位9社の売上高推移
16000
電通
14000
博報堂
12000
・1位との差は大きいが、3位以下と
の差も大きいという万年2位の位
置。だが、業界2位としての地位
に甘んじることなく、電通を追い
抜くことが目標。
ADK
10000
東急エージェンシー
大広
8000
読売広告社
6000
I&S/BBDO
4000
・対電通の売り上げ比は年々上昇し
ているが、実際の売上高では依然
として大きく水をあけられている。
マッキャンエリクソ
ン
朝日広告社
2000
0
1971年 1981年 1991年 2001年
3.2 博報堂の現状分析(パートナー制)
◆パートナー制&分社化を実行
広告主の数を増やすのではなく、
顧客単価を伸ばすという経営方針。
→パートナー制により、一貫性の
あるフルサービスを広告主と築く。
→パートナー制では1業種1社制が基
本(情報漏洩の危険などにより)。
⇒同業種内でも多数の広告主を得る
ため、組織構造を職能制から事業
部制へと変更(4つの独立した社
内カンパニー)。
※将来的には完全な分社化。
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3.3 博報堂の現状分析(経営統合)
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◆大広・読売広告社と経営統合
博報堂DYホールディングスを設立
・単独では電通との格差是正は不可能
・グローバルスタンダードへの移行
※大広(業界5位):関西地方に強み。流通へ
のノウハウ。
※読売広告社(業界6位):アニメ番組やス
ポーツ番組に強み。
→それぞれの強みを殺すことなく、ス
ケールメリットを追求。
→持ち株会社および共通の媒体獲得部
門の設立という形で経営統合。
⇒電通の売り上げ1兆4500億円に対して博報堂単体では7500億円だったのが
グループ計で1兆円規模となった。
3.4 博報堂の現状分析(戦略的課題)
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◆戦略的課題
・業界全体が成熟期であるため、新規顧客が存在しない。だが、売り上げ
は増やしたい。
→パートナー制度では顧客単価を上げることは出来るが、これだけでは電
通を追い抜くだけの売り上げの爆発的な増加にはつながらない。
⇒新規顧客を開拓する方法があれば、市場がさらに拡大し、売り上げ増加の
機会がもたらされる。
1社あたりの単価を増やす
パートナー制
新規顧客を増やす
どうやって?
売り上げを増やす
4.1 博報堂のとるべき戦略(概要)
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既存の顧客を奪いにくい&市場のパイが増えにくい以上、とるべき戦略は
「新規顧客の開拓」。
そこで博報堂のマーケティング力を生かして以下のビジネスを展開。
◆概要(5つのポイント)
・広告業務によって今まで培ってきたマーケティングノウハウを活用し、
・BtoC分野における将来性のあるベンチャー企業に対して、
・「広告という実行力」を伴うマーケティング中心のコンサルティングを、
・市場よりも安価な価格で提供し 、
・潜在的な広告主を育てる。
→この際ターゲットとしている顧客は、これまで博報堂がコンサルティン
グ を行っていたような成熟期にある企業ではなく、成長期にある企業。
ベンチャー企業は資金不足であることを考慮に入れて、コンサル料は損
を しない程度に抑える。
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4.2 博報堂のとるべき戦略(説明)
◆現在行われているベンチャー企業に対する支援体制
博報堂ビジネスコンサルティング
強力
広告主
↓
広告は争奪戦
広告枠占有
新事業
銀行
強力!
ベンチャーキャピタル
微弱
成長をサポート
:お金の流れ
インキュベーター
微弱
導入期
成長段階では稼ぐことが目的でなく、
:ノウハウの流れ
成熟段階まで成長した時に専属的な
広告収入で利益を確保する。
成長期
成熟期
4.3 博報堂の取るべき戦略(実行理由)
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◆この戦略を行う理由
・広告代理店として培ってきたノウハウを生かせる分野である。
・ベンチャーが大きく成長する下地が社会に出来上がってきており、大き
な広告主になる可能性が以前と比べてより高まってきている。
・ベンチャーに対するコンサルティングはベンチャーキャピタルが付随的
な業務として行っているところがほとんどであり、大手企業として参入
しているところはない。
・マーケティングの中でもとりわけ重要である広告という有効なバックグ
ラウンドを持ち合わせているという事実は、ベンチャー推進において強
力な実行力。
・自社にとっての利益となりそうな相手をこちらが選ぶため、単純なベン
チャー支援に対して効率がよい。
5.1 博報堂の戦略に対する他社の反応(Five Forces)
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新規参入の脅威
・電通
・他の広告代理店
・未参入のコンサル
ティングファーム
供給業者の交渉力
・自分たちが価値を
生み出すので該当
はなし
既存企業間の対抗度
・ベンチャーキャピ
タル
・既存のコンサルテ
ィングファーム
・既存の中小広告代
理店
代替品の脅威
・経営のノウハウ伝
授を他の方法で行
ってしまうもの
買い手の交渉力
・支援先ベン
チャー企業
補完財の存在
・ベンチャー企業支
援の政策
・ベンチャー間の情
報ネットワーク
5.2 博報堂の戦略に対する他社の反応(既存企業)
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◆既存企業の脅威
・ベンチャーキャピタル
→主に資金面でのベンチャー支援をしており、ノウハウの提供は微弱。
⇒広告会社であることの強み、スケールメリットを生かすことで勝てる。
・既存のコンサルティングファーム
→中小企業は数が多いので主だった反応はしない。
⇒安価なコンサルティングサービスの提供や、広告会社の強みを生かす
ことによって勝てる。
・既存の中小広告代理店
→参入しようとしている業界は中小広告代理店が相手としている一般的な
中小企業ではなく、ベンチャー企業なので直接的な競争にはならない。
⇒もし直接的な競争になったとしてもスケールメリットで勝てる。
5.3 博報堂の戦略に対する他社の反応(新規参入企業)
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◆新規参入の脅威
・電通
→このモデルでは恒常的な利益が得られるわけではないため、初期の段
階で追随することはない。
→もし博報堂がインパクトを持って成功したとしたら参入を考えるかもし
れない。
→ただし、博報堂がサポートした企業が大きな利益をあげるようになるに
は数年の期間は必要。
⇒その間、博報堂が真摯な態度でこの事業に取り組めば業界内の評判はあ
がり、将来性の高いベンチャーを先にすくいとれる。
・他の広告代理店(博報堂より格下)
→自分の事業範囲内ではないと考える企業と追随する企業が多い。
⇒もし追随してきても、スケールメリットを生かして勝てる。
・未参入のコンサルティングファーム
⇒これを本業とするには恒常的利益が少なすぎるため、参入はしない。
5.4 博報堂の戦略に対する他社の反応(買い手&代替
品)
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◆買い手の交渉力
・支援先ベンチャー
⇒こちらにとっては短期的に見れば採算度外視の事業であること&あま
りに違いすぎる企業規模などの理由により、買い手の交渉力は非常に弱
い。
◆代替品の脅威
・コンサルティングのノウハウ伝授を他の方法で行ってしまうもの(自社
内でマーケティングをまかなってしまうもの)
⇒そもそもそのような物が社内にない、もしくは貧弱なためにコンサル
ティングを行うのだから、脅威にはならない。
5.5 博報堂の戦略に対する他社の反応(補完財供給者)
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◆補完財供給者がもたらす影響
・ベンチャー支援の政府方針・政策
→立ち上がるベンチャーの数が増えるため、市場が増える。
⇒ベンチャー育成が日常的になされるようになれば、手厚い保護という意
味での政策は減っていく可能性がある。
・中小企業同士のネットワーク
⇒コンサルタント業界は評判や信頼が重要な業界であるため、このような
ネットワークは強力な補完財となりうる。
・インキュベーター
⇒導入期から成長期へとベンチャーを押し上げる存在であるインキュベー
ターは補完の働きを示す。
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6.1 まとめ
以上のことより・・・
確かにこの事業だけでは電通を追い抜く決定打には“なりえない”ものの
新規顧客獲得モデルを創出していくということは
長期的なビジョンである「電通追随達成」という目標への布石として
非常に重要な意味を持つものである