発表資料

金星雲頂高度で見られる大気波動について
中村研 D2 神山 徹
Introduction
金星大気へ投下したプローブにより観測した
東西風の高度分布
図:Planet C ホームページより
・西向き高速帯状流
・最大風速 100 m/s (高度 70km)
⇔金星自転速度: 1.6 m/s
-効率的に運動量を上空へ
輸送するメカニズムによって維持
未解明
[Schubert, 1983]
Introduction
図:Planet C ホームページより
・太陽光加熱によって励起される熱潮汐波による加速
- 1日潮汐、半日潮汐
西
東
・下層から伝播する大気重力波による加速
- 赤道ケルビン波
西
東
Introduction
図:Planet C ホームページより
・太陽光加熱によって励起される熱潮汐波による加速
- 1日潮汐、半日潮汐
西
東
・下層から伝播する大気重力波による加速
- 赤道ケルビン波
西
東
Introduction
熱潮汐波
・シミュレーション
東西風速 [m/s]
高度70 km
雲層で太陽光吸収をさせ、熱潮汐波を励起
→スーパーローテーションを維持
子午面循環により中緯度帯に高速風
太陽地方時に固定された風速分布
- 赤道域、LT = 12時に極小
- Lat = 30°、LT=6時、18時に極大
0
18
12
6
Local Time [hour]
0
[Takagi & Matsuda., 2004]
・観測
Pioneer Venus による観測
・太陽地方時に固定された風速分布
- 赤道域、LT = 12時に極小
- Lat = 30°、LT=15時・10時に極大
[Del Genio et al., 1991]
Introduction
大気重力波
ジオポテンシャル分布
・シミュレーション
高度40 km :4日周期で金星を一周する
大気重力波を入力(赤道ケルビン波)
→ スーパーローテーションを維持
散乱係数分布(雲の明暗分布)
↓
傾圧不安定が生じロスビー波(5.5日周期)が
励起されジオポテンシャル分布にY字模様が形成
・観測
[Yamamoto, M. and H. Tanaka, 1997]
Pioneer Venus による観測
3.9日周期、5.2日周期の風速変動
[Del Genio et al., 1990]
紫外波長でY字模様
赤道ケルビン波・ロスビー波が
共存していることを示唆
金星紫外線画像 [Rossow et al, 1980]
研究目的
シミュレーション
→スーパーローテーションの維持に
大気波動が寄与している
赤道ケルビン波
大気波動 → 風速場に影響
熱潮汐波
ロスビー波
[大気科学講座3より]
大気波動に由来する風速分布、
風速変動を観測から捉えることで
波の諸パラメータを同定する
↓
定量的にスーパーローテーションへの
波動の寄与を見積もる
データセット
Venus Express
N
南極上空で遠金点を取る極軌道衛星
軌道周期 : 24時間
観測期間:2006 4月~現在
公開データは2007年2月まで
250 km
・Venus Monitoring Camera (VMC) 昼面観測
365 nm : 雲頂高度の未知吸収物質による模様を観測
(高度 70km [Moissl et al., 2008] )
S
66,000 km
Orbit 30 (2006/5/20)
30
Latitude [deg]
データセット
0
-30
-60
-90
Longitude
展開画像に幾何学補正・ハイパス処理
解析手法
- 連続した雲画像からの風速推定:相互相関を用いた特徴追跡
NASA/Galileo(SSI)
相関計算
精度を向上させる工夫
誤ベクトル修正[Qing, 1995]
ダブルマッチング法[大島, 1996]
解析手法
Orbit 279 (2007-01-25)
Template Size = 12°x 12°
緯度経度共に6°毎にTemplate を設定
30
太陽天頂角 < 71°
衛星天頂角 < 71°
(解像度 < 100 km/pix)
0
Latitude [deg]
時間差 ΔT ~ 1 [hour]
-30
-60
-90
18
16
14
12
10
8
6
Local Time [hour]
解析ではTemplate Size = 6°x 6°、緯度経度共に3°毎にTemplate を設定
解析
熱潮汐波
- 1日潮汐
- 半日潮汐
赤道ケルビン波
ロスビー波
太陽地方時固定 成分
非太陽地方時固定成分
u観測(LT,t) = U平均 + u太陽地方時固定(LT) + u非固定(t)
解析
U平均 + u太陽地方時固定(LT)
太陽地方時固定 成分
365 nm : 22 軌道平均 [2006/5 ~ 2007/1]
60
西向き正
120 Meridional Wind [m/s]
-15
北向き正
15
Latitude [deg]
Zonal Wind [m/s]
Local Time [hour]
Local Time [hour]
[Takagi & Matsuda., 2004]
解析
太陽地方時固定 成分
Solar Fixed 成分 = 平均風速 + 熱潮汐波由来成分(1日潮汐:半日潮汐)
u(λ) = u0 + u1 sin (λ+ φ1) + u2 sin (2λ + φ2)
(λ: ローカルタイム、φ: 初期位相)
◇緯度0°~20°で平均した東西風速[m/s]
1日潮汐のみ
Fitting 結果
波数1の成分のみ:
u0 = 102, u1 = 16
風
速
[m/s]
1日潮汐+半日潮汐
ローカルタイム[hour]
波数1+波数2成分:
u0 = 59, u1 = 47, u2 = 21
夜面で風速が負となるパラメータ
→ 拘束条件が足らない
(夜面の情報が必要)
Planet C では・・・
夜面はLIRの観測で補完
解析
非太陽地方時固定成分
LT 14 時、南緯20°での東西風速 (m/s) 時間変化
t
Latitude [deg]
30
風
速
(m/s)
-10
0
-30
13.5
15.5
-60
-55
-90
18
16
14 12 10
8
Local Time [hour]
6
Orbit Number [day]
周期的な変動が見られる
解析
非太陽地方時固定成分
60
西向き正
120
13.5 < LT < 15.5 [hour] 平均
Latitude [deg]
Latitude [deg]
Zonal Winds [m/s]
-20
10
Brightness
Latitude [deg]
Meridional Winds [m/s]
北向き正
Orbit Number [day]
Orbit Number [day]
解析
非太陽地方時固定成分
トレンド成分を引き、各緯度でフーリエ変換
0
Meridional Wind
Latitude [deg]
Zonal Wind
周期 [day]
Lat > -35°
5.5日に大きな振幅があり、3.7日にも振幅
(~ 6 m/s)
(~ 2 m/s )
Lat < -35°
3.3日に大きな振幅、6日~8日に振幅
周期 [day]
-20° > Lat > -50°
5.5日に大きな振幅
(~ 4 m/s)
1.6
解析
非太陽地方時固定成分
5.5日周期成分について
f5.5(t) = F5.5 exp [ i (2π/5.5 t + θ5.5 ) ]
初期位相[deg]
f: 観測値、F:振幅、θ:初期位相、t:時間[day]
Δθ [deg]
Δθ = θ(各緯度) - θ(-10°)
東西風速
南北風速
東西風速
南北風速
Latitude [deg]
東西風と南北風に~90°の位相ズレ
Latitude [deg]
大きな振幅が存在する緯度範囲で
東西風と南北風ともに初期位相が傾いている
高緯度になるほど波が先行
解析
非太陽地方時固定成分
5.5日周期成分について
f: 観測値、F:振幅、θ:初期位相、t:時間[day]
f5.5(t) = F5.5 exp [ i (2π/5.5 t + θ5.5 ) ]
北半球
西
金星一周
東
赤道
波の進行方向
-35°
矢印:風の向き
?
南極
?
Orbit 279
傾いた構造をもつ
ロスビー波
議論
低・中緯度帯でロスビー波が卓越
シミュレーションによる予想
平均東西風速の鉛直勾配が傾圧不安定を励起
→ロスビー波の形成 (不安定を解消する方向に寄与)
Latitude [deg]
[Yamamoto, M. and H. Tanaka, 1997]
解析した期間の平均風速
低緯度帯に特に風速が大きい領域 = ジェットが存在
Lat = -35°を中心とするロスビー波を形成 ?
Local Time [hour]
・東西風速の鉛直勾配は?
・観測された状態が定常状態であるかどうか
・波動がスーパーローテーション維持にどの程度寄与しているか?
→ 複数の高度で大気波動を捉える必要 (Planet C)
平均風速と波動振幅の時間変化を追う必要
Summary & Future Work
Venus Express/VMC 取得データから風速分布を求めた
・平均風速
- 熱潮汐波に由来する特徴を持つ分布が得られた
- 熱潮汐波由来の振幅を同定するためには夜面の情報も必要
・周期的変動
- 赤道ケルビン波成分
- 大きな振幅を持つロスビー波成分
波動と平均流の相互作用を見るには
波の時間変動と平均流の時間変動の相関を見る必要がある
→ 新たな公開データの利用 (今週公開された様子)
極域での力学
- 極渦
- VIRTISの赤外波長観測とあわせ、複数高度での
大気循環を知ることができる