理科教育法ー物理学ー II 羽部朝男 前回のまとめ • 理科教育と物理学 – 理科教育(科学的なものの見方)の重要性 – 物理学の特徴と位置づけ(物事を原因と結果とい う見方をする) • 運動学(関係)と力学(仕組み) • 関連する情報を与える重要性 – 互いに相互に関連する知識<->ゆとり教育 – 知的な関心を引き起こす話題(例 相対論と光) • 相対論入門 – 一般相対論 – 重力による光の曲がり 前回の感想(1) • 物理は高校で勉強していなかったので、 今日の授業のお話はほとんど初めて聞 くことばかりでした。特に光速不変の 原理の話はすごく不思議だと思いまし た。なぜそうなのでしょう。 前回の感想(2) • 最近、家庭教師のアルバイトをしていて、理 科を教えていると、まず内容が非常に薄ッペ ラということに気がつきます。しかも、抜け ている部分は原理的な部分ばかりで、「これ では逆に理解するのが難しいのでは?」と思 うことが良くあります。もっと根本的なとこ ろから体系的に学べることができれば、きっ と理科はもっと楽しくなると思います。 前回の感想(3) • 講義のはじめの方で話されたように、現在の 子供たちは社会の状勢や不合理から、何か超 常的なものを求めてしまう傾向があると思い ます。しかし世の中に起こっていることはど のようなことでも何か法則に基づいているの だと言うことを正確に伝え、現象に対して科 学的思考を行うことが理科、特に物理の大切 な役割だと思います。私はこの講義を通して それを伝えるための具体的な方法を学べたら と思っています。 前回の感想(4) • この授業では(各論)では、どういう 事柄を主として展開されるのでしょう か?教育における物理学の位置づけ、 意味合い?それとも物理学の中のある 単元について修得するのか? 高校での物理の内容について • 力学(物理の歴史的発展や現代物理との関連 を意識して教えるべきでは) • • • • • 落下運動(物体の落下は質量によらない) 慣性系 運動量保存 ニュートンの力学の三法則 仕事とエネルギー • 熱力学 – 熱と仕事との関係、 – 熱エネルギーも含めたエネルギーの保存 • 電磁気学 – 静電気力と電場、電荷と電流、電流と磁場 高校物理の教科内容の現状(1) • 物理 I – 電気 • 生活の中の電気 –波 • いろいろな波、音と光 – 運動とエネルギー • 物体の運動 • エネルギー 高校物理の教科内容の現状(2) • 物理 II – 物理 Iでふれられなかった、 • 1)力と運動、2)電気と磁気、それと – 3)物質と原子 – 4)原子と原子核 – 3)と4)は選択 高校物理の教科内容の特徴 • 物理Iは、中学の内容が入ってきている こともあり、かなり内容が薄く系統的 に教えるのが難しい • 物理IIは、3)と4)が選択になっているが 内容が高度であり教えるのに工夫がい る 今回のお話 • 前回、力学の落下運動は質量によらないこと は、アインシュタインが一般相対論に思いい たるうえで非常に重要な事実であった(慣性 質量と重力質量)ことを述べた。 • 今回は、アインシュタインのエレベータの思 考実験にもとづいて光に対する重力の効果を 推定し、相対論の考え方について紹介する。 相対論入門 • 相対論 – 光速一定、時間の同時性 – 動いている系の時計の遅れ – 動いている座標系の収縮 • 一般相対論 – – – – 重力質量と慣性質量の一致 重力による光の曲がり(前回の説明) 重力による光の振動数の減少 重力による時間の遅れ 重力による光の曲がり • エレベータの思考実験 • 光速cと加速度a、長さL光が伝わる時間tに ずれの値hを次のように推定できる • t= L /c, v=a t, h=0.5 a t2 = 0.5 a L2 / c2 • h / L = 0.5 a L / c^2 = 0.5 a (L/c) /c L • 例 – a =9.8 m/s^2, L=1000,0000 m, – c=30,0000km/s – t= L/c =1 /30 sec, v=at = 0.33 m /s, – h/L=0.16/c=5.4 x 10-10 非常に小さくて観測できない h 太陽の重力による光の曲がり • • • • • • 太陽を例に重力による光のずれを推定 光が太陽のそばを通るときの重力効果を考慮 光 L=2rとする。rは太陽半径 7x 108m a= GM/r2 G=6.67 x 10-11, M=2 x 1030 kg 太陽 θ= h / 2r = GM/r2 x r /c 2 = GM/c2 / r = 10万分の0.4 これはほぼ0.9 秒角(正確な計算では1.75秒角) エディントンは、日食のときに星の位置の ずれを観測し一般相対論を検証 重力による光の曲がり • h / 2r = GM/r2 (r /c )2 / r • 質量は太陽のままでrを小さくしていくとh / 2r =1になる場合 r=GM / c2 • 光は外へいけない ブラックホール L • このrをブラックホール半径 正確にはr=2 GM/c2 太陽質量では3km) 光速一定 • 光速一定 – 光速cで光がdtの間にdx進む • cdt = dxの関係が成り立つ。これは (cdt)2 = dx 2 – 光速は一定にならないのでは? – 実験では光速は止まっている座標系でも動いてい る座標系でも一定(光速不変の原理) • マイケルソン・モーレーの実験 – 光速一定より、二つの座標系の間で(cdt) 2 ーdx 2 を不変にするような関係がなりたっている • この関係は光だけでなく、粒子がdtの間にdx動く場合に も成り立つ(アインシュタイン) • この変換をローレンツ変換と呼ぶ 動いている自動車の上で光速を測 定しても光の速度は変わらない 光速不変の原理から • 静止した座標(t、x) • 動いている座標(t’, x’) – – – – – この座標系の速度をv この座標に静止ている時計はdtの間にdx=v dt 移動 この時計は、dt’の時間をきざむ 相対論から(cdt’)2=(cdt) 2 -(dx) 2 よって • dt’=( (dt) 2 -(dx/c) 2)1/2=dt (1- (v/c) 2)1/2 • dt’はdtより小さい。時間はゆっくり進む、ただしv/cが大 きくないとその効果は大きくない • 動いている座標の時間はゆっくり進む 動いている座標は相対的なも のでは • 双児の兄のほうが、光速に近い速度の宇宙船 に乗って旅行して帰ってきた時に、兄はほと んど年をとらないのに対し、弟はかなり年を とっている • ところが、兄から見ると動いているのは弟だ から弟は年をとらないのでは? – 双児のパラドックス • 実際は、宇宙船は地球から離れる時と地球に 到達する時に加速する。そのため、互いに まったく相対的ではない。 • パラドックスはない まとめ • 相対論入門(知的な好奇心を引き起こししか も重力落下運動と密接に関連したテーマ) – 特殊相対論 • 光速不変の原理 • (cdt)2-(dx)2の不変、ローレンツ変換、相対性原理 • 動いている座標系の時間の遅れ – 一般相対論 • エレベータの思考実験 • 重力による光の曲がり • 重力による時間の遅れ • 自然はおもしろいことを伝えてほしい
© Copyright 2025 ExpyDoc