国家の「内的」な意味

トドロフの『われわれと他者』 より
「国民とナショナリズム」
I.「国家」および「民族」という言葉は、
同時に2つの集団を指摘する。
1. 「民族」又は「文化」的な集団。「同じ」言語、空間、
そして記憶を共有する共同体であるはず(例外もある)。
2.「国民国家」又は「市民」的な集団。政治および法に
造られた共同体。法に保証される、法への義務を持つ
共同体。「成員全員を(お互いに)知るためには大き
すぎる」共同体。
1
トドロフの『われわれと他者』 より
「国民とナショナリズム」
II.トドロフが引用する人物(フランスの主な哲学者・文芸人)
•
•
•
•
•
•
アントニン・アルトー 20世紀前半の劇 p272~
モンテスキュー(君主) 18世紀(啓蒙時代)の政治法哲学者
p272~
オーギュスト・コント 19世紀のフランスの哲学者 p275~
ヘロドトス 5世紀紀元前のギリシアの歴史学者
p274~
ルナン 19世紀のフランスの歴史学者
p277~
ヴォルテール 18世紀(啓蒙時代)のフランスの作者
p278~
アントニン・アルトー
2
トドロフの『われわれと他者』 より
「国民とナショナリズム」
III. 国民国家の一つの定義は、
国家が国民へ期待する場、
国民による期待される場。
モンテスキュー
3
トドロフの『われわれと他者』 より
「国民とナショナリズム」
普遍性・個別性の区別
IV. 「普遍性」の例:自分の文化への忠実・忠誠感。
自分の文化の特徴を好むし、別の国の民族が同様
に自分たちの文化を好むことを寛容する。異なる民
族がその異なる文化に忠誠感を持つことは普遍的
だという概念。
この場合、「普遍的」の意味は、自分が感じる
ことは全ての人間が別な国に居ても同様に
感じられるという意味である。
4
ヘロドトス
トドロフの『われわれと他者』 より
「国民とナショナリズム」
V. 国民国家の個別的な意味:
政治的な国家とこれへの「愛着」。
自分の国が他国より優れたと思いたいから
他国を卑しむことに導く可能性がある。
が、卑しむだけではなく、
国際関係のなかの政治的、
経済的な優位を正当化する。
5
オーギュスト・コント
トドロフの『われわれと他者』 より
「国民とナショナリズム」
VI. ヨーロッパの近代化が広めた「国民」の
概念の定義付け 第一部
封建制度の下で「不動産」のように君主又は
王家の気まぐれによって自分が属する地方又
は国籍を移るのではなく、
国家が自分の国家であるという忠誠感を
常に守っていく。
6
トドロフの『われわれと他者』 より
「国民とナショナリズム」
VI のつづき 第二部
「国民」の語の中の2つの政治的な意味がある。
第1意味:国家の「内的」な意味
•国家とは、「国民は正当化のための空間であり、権力
の源泉として」・・・ の存在。
王室による権力又は神による権力ではなく、国民がも
つ、国民による正当化される権力を好む(優先される)。
•国民のなかの個々人ではなく、「国民の名において
行動をする」権力や正当性がある。
•さらに、この国家という場は「平等の空間として知覚さ
れている」はずである。 (p277)
7
トドロフの『われわれと他者』 より
「国民とナショナリズム」
VI のつづき 第3部
国家の「外的」な意味:
自分の国を、
別な国と対立させる(対照を成させる)立場を
つくりだす。
(p277)
ルナン
8
トドロフの『われわれと他者』 より
「国民とナショナリズム」
VII。 「近代の外的ナショナリズムという近代特有 の産
物を生み出した」・・・その結果、
• 「他のすべての国をないがしろにする」
• 国家の内的な意味と外的な意味が同時に存在する。
• 同時に文化的な意味も・政治的な意味も持つはずで
あるが、この2つが対立する可能性もある。
p278
9
サイードの概念のトドロフの概念との関係
I. 類似点
トドロフ:外的ナショナリズム=自分の国を他国よりも
優先する
サイード:「オリエント」の諸定義が、反対の「西洋」を定義作
り出す(p96)
II. 相違点
トドロフによる「普遍的」なことは、自分の文化への忠誠感に
起源をもつ、他国における自分たちの文化への忠誠感を、
理解する、共感する、寛容する立場である。
サイードによる「普遍的」なことは、植民地統治を行った西洋
諸国が構築した「知識」。この知識を未知の他国に客観的で
普遍的に応用する知識。(サイード p95)
10