5 情報社会と情報の価値 • • • • • • • • 5-1 社会構造の変化 5-2 情報社会のイメージ 5-3 社会の価値の中に占める情報の価値 5-4 個人における情報の利用 5-5 社会における情報の利用 5-6 組織における情報の利用 5-7 国レベルの情報の利用 5-8情報社会における情報の価値の特徴 5-1 社会構造の変化 • • • • (1)狩猟社会 (2)農耕化社会 (3)工業化社会 (4)情報化社会と情報社会 (1)狩猟社会 • 自然から生活に必要な物を入手していた • 社会の価値 – ほとんど物の価値 • 生きるために必要な本能的な欲求を満足させる ため努力が必要な社会 – 一次欲求 • 情報は物を入手するために必要 – 食料はどこで手にいるか (2)農耕化社会 • 農耕技術の進歩により定着した生活が可能となる – 人類が個体や種族の維持のために必要な食料が安定 して入手できるようになった社会 • 社会の価値 – 物の価値+労働の価値(農耕) • 本能的な欲求(一次欲求)が満たされた社会 – 狩猟社会に最も重要であった欲求が満たされた • 情報は収穫を向上させるために必要 – 明日天気の予報 (3)工業化社会 • 産業革命により農業から工業を基礎とする経済秩 序への転換が起こった社会 – 18-19世紀 – 人や会社に利益をもたらす経済的価値が主体となる • 社会の価値 – 物の価値+エネルギーの価値(労働の代替物) – エネルギーの価値の割合が高くなる • 物質的欲求が満たされるようになった社会 – 農耕化社会に不足していた物質に対する欲求(二次欲 求)が満たされた社会 • 情報は生産効率を上げるために必要 – 最適な生産方式、最適な生産量 (4)情報化社会と情報社会 • 情報により価値を生産するようになった社会 – 工業社会と対応する概念 • 社会の価値: – 情報の価値 > 物の価値+エネルギーの価値 • 情報社会と知識社会 – 経済活動と情報の関係で使用されることが多い – 個人と情報との関係で使用されることが多い • 工業化社会に不足していた精神的な欲求が満た されるであろう社会 5-2 情報社会のイメージ • Information Society • (1)価値を生産する要素が物質、エネ ルギーから情報へ移る社会 • (2)脱工業化社会 • (3)情報が正当な価値を持つ社会 • (4)個人の生活を快適にする社会 • (5)コミュニケーションの手段が進歩し情報 の交換が容易になる社会 ICT (1)価値を生産する要素が物質、 エネルギーから情報へ移る社会 • 経済中心の観点 • 価値の半分以上が情報によって作られる – 付加価値生産額の半分以上が作られる – 物質,エネルギーに比べて、情報の重要性が高くなる • 大量の情報が不断に生産,蓄積,伝播される社会 – – – – コンピュータによる迅速な情報処理 多様な通信メディアに 広範な情報伝達 通信とコンピュークー技術の飛躍的な発達が背景 (2)脱工業化社会 • post-industrial society、経済中心の観点 • 工業化社会との対比 – 物の「生産、貯蔵、運搬、消費」などが中心となった社会 から、 – 情報の「生産、貯蔵、伝達、消費」などが中心となった社 会へ • 物の生産から情報の生産へ重点が移行した社会 – 付加価値を生産する産業が、GNPや産業従事者数で 50%以上を占める – 情報を使って情報を生産する:知識産業、情報産業 (3)情報が正当な価値を持つ社会 • 情報そのものが正当な価値を持つ – これまで情報にお金を払う習慣は、日本では 殆どなかった – 情報の価値が正当に評価されて、取引きの対 象とされる – ソフトウエア、著作物など • 情報の価値を正当に評価できる社会 (4)個人の生活を快適にする社会 • 人間中心の観点 – 情報化社会はさまざまな利便をもたらし,個人の生活 を快適なものにしていく – 多くの情報の存在と利用環境の実現は,最適の判断 を可能にする • 個人が情報を所有し自身の生活の向上、社会へ の貢献に使える – 情報社会では一部の人間や集団が情報を独占できな くなった – 個人の実力を発揮しやすくなった社会 • 個人の精神的欲求に応えることのできる社会 – 情報の活用が精神的欲求を満たす (5)コミュニケーション技術の進歩 によ り情報の交換が容易になる社会 • 通信技術の進歩 – 携帯電話 – インターネット • グローバル社会 – 地球市民 – 24時間稼動 • ユビキタスネットワーク社会 – いつでも・どこでもアクセスできる (6)否定的なイメージ (肯定的な現実が前提) • 格差(地域間、地域内) – ディバイド • • • • プライバシーの侵害 情報犯罪 人間性の希薄化 マイナスイメージが誇張 5-3社会構造の変化と情報の価値の変化 • 国、部族と情報 – – – – 国家間、部族間の競争、戦争に勝つこと 国家の立場を他国より優位にすること 国家、部族を統治すること、社会を維持すること 情報は最も有効に活用された • 社会、地域 – 地域のまとまりは通常は緩やかなつながり – 情報の利用は少なかった • 企業、組織 – 目的が明確(なため情報の利用は活発 • 利益を上げること • 企業間競争に勝つこと • 開発競争に勝つこと 社会構造の変化と情報の価値の変化(続き) • 個人 – まず知ることが個人にとって重要 • 知ることにより個人的興味を満足させることができ る – 次に自分で考え判断すること • 知ることによりどんな相手に対しても対等に考える ことができる – 知ることにより人々の生活を快適なものにす ることができる。 社会構造の変化と情報の価値の変化(続き) 情報の価値の変化 狩猟社会 情 報 の 価 値 物の価値 農耕社会 物の価値 情 報 の 価 値 労働の価値 工業社会 物の価値 エネルギーの価値 (労働の代替価値) 国:情報 の価値 企業:情 報の価値 情報社会 物の価値 国:情報の価値 企業:情報の価値 エネルギーの価値 個人:情報の価値 情報社会 における 情報の利 用 情報社会における情報の利用 • • • • 5-4 5-5 5-6 5-7 個人における情報の利用 社会における情報の利用 組織における情報の利用 国レベルの情報の利用 5-4個人における情報の利用 • (1) 情報を知ること • (2)情報と精神的欲求 • (3) 個人による情報の分野 (1)情報を知ることと • 情報の利用 • 情報を知ることが個人にとって非常に重要 – 個人にとって「競争に勝つために使う場合」は少ない • 個人のレベルで必要なことはまず現状を知ること – 現状を知らなければ競争に勝つどころか、他人と同じ レベルで考えることすらできない – 情報を知ればその情報をもとに自分で判断できるよう になる • 薬害エイズ、ダイオキシン、石綿 – 現状を知らない、あるいは知ることができないため考 えることができなかった – 情報を収集し、現状を知ることが重要 • 情報社会は知ることのハードル(障壁)が非常に 低くなった – – – – 会社、政府のために情報が使われてきた 個人でも入手できる情報が増えた 情報社会では個人のために情報を利用できる 個人の生活の質を良くするため、快適にするために利 用できる • 知ることで考えることができる – 知ることにより適切な判断が可能になる – 個人が、企業、行政と対等に考えることが可 能になる • 多くを知ることにより多様な判断が可能に なる – 絶対的な正解は存在しない – 画一化から、多元化、個性化、個別化へ (2)精神的欲求を満たすための利用 • 経済価値生産のためだけではなく、個人の質の 高い生活を実現するために情報を使うことができ る – 情報社会における情報の価値は、精神的満足度に置 き換えられる可能性が高い – 精神的満足を得られる度合いによって情報の価値が 決まる • 生活の質の向上 – 情報を自己実現のために利用する • 個人の意志の多くは精神的な部分からなる • 意志の形成、意志の実現のために利用する • ゆとりの創造 情報検索課題となった興味のある分野 • • • • • • • • • • • • • 旅行 スポーツ 政治 社会問題 環境 車 健康 経済 就職 音楽芸能 趣味 買物 コンピューター 単なる興味 分野? 生活の質を向上 自己実現 ↓ 想定される分野 (3)個人の情報利用が想定される分 野 • 個人の精神的満足度に関係すると思 われる分野 • A.学習分野 • B.教養分野 • C.精神分野 • D.娯楽分野 A. 学習分野 • 知識、技能、態度を修得する分野 – 知的欲求 – 人は知らないことがあると知りたいと思う • 実用分野 – 生活に役立つ知識や技術 • 学習分野 – 専門的、実務的な専門知識と技術 – 家事など日常生活に関する知識と技術 • 教育分野 – 自分の知識を他人に教える • 自己創造分野 B.教養分野 • 一般教養を得る • 教養分野 – 単なる知識ではなく、人がその素質を精神的、 全人的に開花、発展させるために学び養われ る学問や芸術 • 文化分野 – 社会の様式、主に精神的な活動から生じたも の – 学問、芸術、言語、習俗、道徳、宗教など • 審美分野 – 自然、芸術などの美的現象を対象とし学問 (スーパー大辞林) C.精神分野 • 信仰や心の豊かさ,生きることなど精神世界を形成 する • 哲学分野 – 世界や人間についての知恵・原理を探求する学問 • 論理分野 – 正しい思考の形式や法則を研究する学問 • 宗教分野 – 経験的、合理的に理解し制御することのできないものに 積極的な意味と価値を与えようとする体系 – 情報の活用とは矛盾する (スーパー大辞林) D.娯楽分野 • 精神に安らぎを与える • 休息分野 – ゆったりとした気分でくつろぐこと • 娯楽分野 – 心を慰め楽しむこと – 商業ベースのものが大半 • 趣味分野 – 専門ではなく楽しみに行うこと 出展:室伏武1992 情報の利用 • • • • 5-4 5-5 5-6 5-7 個人における情報の利用 社会における情報の利用 組織における情報の利用 国レベルの情報の利用 5-5社会・地域における情報の利用 • A. 教育分野 – 次世代へ知識を伝える – 人類の資産を組織的に伝達する • B. 環境分野 – 環境保護のために情報を利用する – 環境保護活動、自然保護活動、リサイクル活動 • C. 社会貢献分野 – – – – 福祉活動 NGO(非政府組織)活動 NPO(非営利組織)活動 ボランティア活動 • D.コミュニティー分野 – – – – 共感者グループの創造 同じ意志を持ったグループ(社会)の活動 自己の意志を伝える価値、意志を共有できる価値 弱いつながり • E.ソサイアティー分野 – 特別な目的を持った人の集団 – 同じ習慣、法律を共有したコミュニティー(コミュニ ティーより狭い) – 強いつながり • E.協会(アソシエーション) – 特別な目的を持った人の集団(プロフェッショ ナル・アソシエーション) – いっしょに考える価値 • F. バーチャルな社会 – メディアを介した同じ意志,目的を持つ人の社 会 – メディアの両側に同じ価値観を作る 個人の活動から社会的活動のための情 報利用へ • 能動的な情報利用 – 情報の受動的利用から情報の発信へ • 情報利用・発信により個人活動から社会活動へ – – – – 娯楽、休息から趣味へ 余暇からレジャーへ 個人の活動から地域社会・グループの活動へ 自分のための活動から他人・社会のための活動へ • ボランティア的社会活動 • 社会的活動が自己実現に結びつく場合が多い 情報の利用 • • • • 5-4 5-5 5-6 5-7 個人における情報の利用 社会における情報の利用 組織における情報の利用 国レベルの情報の利用 4-6組織における情報の利用 • 情報に価値が生まれる場合 – 戦争、統治、金もうけなど – いずれも競争に勝ちたい場合に最もその価値が高く なる – 情報の利用価値は、他人より有利な立場に立ち、競 争に勝ちたい場合に大きくなる • 企業における情報の利用 – – – – – 目的 利益を上げる 経営方針を決める 開発競争に勝つ 日本のサービス産業は情報収集能力が劣っている • 営業部門部門 – マーケティング戦略 – 商品計画 • 生産部門 – 品質管理 – 生産計画 – 在庫管理 • 調査分野 – 事業企画 – 市場調査 • 研究開発、技術開発分野 – これまで存在しなかった物、機能、方法の創 造、新しいものを創る – 研究開発、創造的価値>生産性の向上、作 業効率の向上 – 技術情報とビジネスが密接な関係にある • 知的財産 – 知的所有権 • 特許、工業所有権、意匠、商標 – 著作権 • 本、音楽、映画 • 他 – – – – – 情報管理が多くの場面で必要となる PL法 生産物責任 情報公開法 コンプライアンス リコール – 危機管理 4-7国レベルの情報の利用 • 国、部族と情報(既に説明) – – – – 国家間、部族間の競争、戦争に勝つこと 国家の立場を他国より優位にすること 国家、部族を統治すること、社会を維持すること 情報は最も有効に活用された • 情報の国家的価値 – – – – – 国を治める 予算を決める 法律を作る 戦争に勝つ 経済戦争 • 多くの情報を持っている国ほど国力がある – – – – 発展が早い 競争に強い 経済が強い 軍事力が強大 • 国家の利益 – 自国を優位にするために使用されている – 利益の調整 4-8情報社会における情報の特徴 • (1)個人的価値と社会的価値の接近 – 個人的価値のウエートが高くなる – 個人レベルの判断に近づく判断が求められる – 社会も国も個人より成立 • (2)情報の多様化 – 画一化から、多元化、個性化 – 多様な情報が存在する • 多様な判断が生じる • インターネットが多様化を促進 – 多量の情報から必要な情報を見つけ出し、目的に応じ た判断が重要になる – 多様な判断を持つことに価値がある • 進歩につながる – 正しくない情報の存在は普通のこと • (3)情報の発信の価値 – 情報発信は情報の効率的に収集につながる – ブログ – 情報の発信が自己実現・精神的満足につながる • (4)情報の共有価値 – 多くの人が情報を共有し、新しい価値観を生み出す – 情報の活用範囲が広くなる • (5)時間により情報の価値が変化する – メール情報、新聞情報 – 天気予報 • 時がたつと価値が下がる – 哲学 • 時がたつっても変化しない – 絵画 • 古くなると価値が無くなるものと上がるものがある
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