イオン性液体 はじめに 例えば食塩のような無機塩は、Na+とCl-といったイオンから構築されており、一般的 に融点が非常に高い固体です。ところが、この陽イオンや陰イオンを有機イオンに置 き換えてみると・・・一般的に有機イオンは無機イオンよりイオン半径が大きいため、 その静電気相互作用が弱まり、室温付近で液体として振舞うようになります。このよ うな室温付近で液体の有機塩をイオン性液体(常温溶融塩:Room Temperature Molten Salt)と呼び、新規なクリーン溶媒や機能性材料として注目されています。 一般的に陽イオンとしてはピリジニウムイオンやイミダゾリウムイオンといった芳香族 系、トリメチルヘキシルアンモニウムイオンといった脂肪族アミン系が、陰イオンとし てはNO3-やCH3CO2-の他に、BF4-、PF6-、(CF3SO3)2N-、CF3CO2-といったフッ素系陰 イオン等が多く検討されています。 R + - X N R' ピリジニウム系 R N + N R' - X イミダゾリウム系 R' + R'' N R - R''' X 脂肪族アミン系 世 原 TECH 商 事 SEWON TECH CORPORATION 서울시 강남구 역삼동 635-4 과학기술회관 본관 402호 (135-703) TEL:02-555-8207, FAX:02-554-9695 E-mail: [email protected] イオン性液体 特 徴 イオン性液体は広い温度領域(-100~200℃)で液体状態をとり、次のような特徴があります。 ◆高導電率・・・・・・・10-1~10-3 S/cmという高いイオン伝導度を示します。 ◆高耐熱性・・・・・・・平均 250~300℃で安定で、化合物によっては400℃以上でも安定に存在 するものもあります。 ◆広電位窓・・・・・・・平均4~5前後の広い電位窓を有し、広いもので6V程度のものも存在します。 ◆大熱容量・・・・・・・一般的に熱伝導性が良好です。 ◆不揮発性・・・・・・・液体でありながら蒸気圧をほとんど持たず、揮発しません。 ◆自由な組合せ・・・陽イオンもしくは陰イオンの構造や組合せを選ぶことで、融点や溶解度の 各種物性をチューニングすることが可能になります。 イオン性液体の物性 ピリジニウム系 R + - X N イミダゾリウム系 R R' ガラス転移点 [℃] N + N 脂環式アミン系 n + N R' X- X- 脂肪族アミン系 R' R R' + R'' N R - R''' X 融点 [℃] 分解点 [℃] 粘度 [cp@25℃] 電位窓 [V] イオン伝導度 [S/cm@25℃] 屈折率 0.0 12.0 436.0 476.0 95.5 85.0 -1.2~+2.3[3.5V] -1.2~+2.2[3.4V] 1.7*10-3 1.8*10-3 1.446 1.449 イミダゾリウム系イオン性液体 IL-IM1 -89.0 11.0 372.0 43.0 -2.1~+2.3[4.4V] 1.5*10-2 1.413 脂環式アミン系イオン性液体 IL-C1 -76.6 N.D. IL-C3 -88.4 -8.0 IL-C5 -63.3 N.D. 486.5 482.9 479.4 214.4 88.1 812.8 -3.0~+2.3[5.3V] -2.7~+2.3[5.0V] -2.8~+2.3[5.1V] 1.1*10-3 2.5*10-3 1.7*10-4 1.432 1.424 1.435 脂肪族アミン系イオン性液体 IL-A1 -84.3 IL-A2 -81.1 IL-A3 -92.9~88.7 IL-A4 N.D. IL-A5 N.D. 480.4 484.6 393.0 468.8 454.2 300.8 634.9 224.6 67.8 168.0 -2.0~+2.2[4.2V] -3.2~+2.3[5.5V] -3.1~+2.1[5.2V] -3.1~+2.0[5.1V] -3.2~+2.3[5.5V] 5.3*10-4 6.1*10-5 1.2*10-3 2.5*10-3 1.1*10-3 1.436 1.440 1.414 1.420 1.415 ピリジニウム系イオン性液体 IL-P11 N.D. IL-P14 N.D. N.D. N.D. N.D. N.D. 34.0 イオン性液体の耐電圧(電位 窓) 0.4 Im sistem Py sistem Cyclic Amine sistem Aliphatic Amine sistem 0.3 Current(mA) 0.2 0.1 0 -0.1 -0.2 -0.3 -0.4 -5 -3 -1 1 Potential(V) 3 5 図-1 IL-A3/PC の各温度に於けるイオン伝導度 および粘度と濃度の関係 1.27M 10 2M 9 50 8 イオン伝導度 (mS/cm) 弊社が独自に開発を進めている脂肪族 系イオン性液体(IL-A3)のPC溶液を用 いて、粘度およびイオン伝導度の温度 ならびに濃度への依存性について検討 しました。 また、比較対照としてイミダゾール系イ オン性液体(IL-IM1)の PC 溶液につい て同様の検討を実施しました。 60 1M 7 40 6 3M 5 30 4 粘度 (mPa・s) IL-A3のイオン伝導度 イオン伝導度 ( 0℃) イオン伝導度 (25℃) 粘度 (10℃) 粘度 (25℃) 粘度 (50℃) 20 3 2 10 1 0 0 0 20 【サンプル】 40 濃度 (%) 60 80 図-2 IL-IM1/PC の各温度に於けるイオン伝導度と 濃度の関係 IL-A3/PC 溶液および IL-IM1/PC 溶液 24 イオン伝導度:測定温度(0℃、25℃)、 濃度(10wt%~70wt%) 粘度:測定温度(10℃、25℃、50℃)、濃 度(20wt%~70wt%) イオン電導度 (mS/cm) 【実験条件】 20 2M 3M 16 1M 12 ( 0℃) (25℃) 8 4 0 20 40 濃度 (%) 60 80 イオン性液体中での電解重合 種々の電解メディア中において作製されたポリピロール及びポリチオフェンの物性 ポリマー ポリピロール ポリピロール ポリピロール ポリチオフェン ポリチオフェン メディア H2O CH3CN EMImCF3SO3 CH3CN EMImCF3SO3 電気化学的 -3 容量密度[C cm ] 77 190 250 9 45 電気電導度 -1 [S cm ] -7 1.4 x 10 -6 1.1 x 10 -2 7.2 x 10 -8 4.1 x 10 -5 1.9 x 10 ドーピングレベル [%] 22 29 42 - 出典:機能材料 2004年11月号 Vol.24 No.11 東京工業大 渕上寿雄 総合理工学研究科教授 潤滑材への応用例 真空中におけるイオン性液体の摩擦係数 試 料 摩擦係数 (圧力:10-3Pa, 荷重:50N, 温度:RT) イオン性液体 比較油 L-P106 L-P208 L-P308 X-1P PFPE 0.097 0.072 0.067 0.135 0.142 イオン性液体: L-P106: R1=CH3 R2=C6H13 L-P208: R1=C2H5 R2=C8H17 L-P308: R1=C3H7 R2=C8H17 比較油: X-1P N P O CF PFPE 4 R1 P N N + N N O P R2 PF6 - F 2 3 CF3CF2 CFCF2O CF2CF2CF3 CF3 n 出典:機能材料 2004年11月号 Vol.24 No.11 岩手大 森誠之教授 南一郎助教授 出光興産㈱ 上村秀人主任 固体電解質への応用例 イオン性液体ゲルのイオン伝導度(室温);ゲル化剤の添加量とイオン伝導度の関係 4.5 イオン伝導度 [mS/cm] 4 3.5 IL-4 IL-2 IL-8 IL-3 IL-7 IL-5 IL-9 IL-6 3 2.5 2 1.5 1 0.5 0 0 10 20 30 40 50 60 70 80 ゲル化剤の濃度 [g/L] 化学工業 Vol.55, No.10 (2004) 信州大 英 謙二教授 OO O BF4- N + N N + N BF4- N + N IL-2 IL-1 BF4- N + N S PF6N + N IL-3 IL-4 PF6- N + N N+ IL-6 IL-5 IL-7 O O CF3 OO S S N - + N H O CF3 O + N O BF4- CF3 HN O O O NH H IL-9 IL-8 ゲル化剤 BF4- S N- O CF3 T-PE-A(トリペンタエリスリトールアクリレート) CH2OR R O CH 2 C CH2 O CH 2OR CH 2OR CH 2 C CH 2 OR CH 2 O CH2OR CH 2 C n CH 2 O R CH2 OR R: -CO-CH=CH 2 or -H n=1 : n>2 = 77 : 23 1.性状 外観 APHA 水分(%、KF法) 揮発分(%、120℃、2Hr) 酸価(mgKOH/g) エステル価(mgKOH/g) 比重 粘度(40℃)cp 皮膚刺激性(P.I.I.) 淡黄色透明液体 150以下 0.2%以下 3%以下 1以下 480以上 1.15~1.18 4000~6000 1以下 2.特徴 皮膚刺激性が低い。 硬化速度が大きく硬化性に優れる。 架橋密度が高く、耐摩耗性、耐擦傷性、高硬度を付与できる。 3.用途 紫外線、電子線硬化型インキ、コーティング他 n=1~3 <色素増感型太陽電池のしくみ> e- e① 色素が入射した光を吸収して 電子を放出する。 光 透 明 ガ ラ ス 電 極 対 向 電 極 ② 電子は透明ガラス電極を経由 して外部回路へ伝わる。 ③ 対向電極で電解質溶液中の ヨウ素が電子を受け取って、 ヨウ化物イオンになる。 ④ 電子を放って酸化状態にあっ た色素を、ヨウ化物イオンが 還元して元に戻す。 ・・・色素(ルテニウム金属錯体) ・・・二酸化チタン(触媒) 電解質溶液(ヨウ素を含む)
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